僕の義理兄弟

ベルーガ

「狡いーっ、二人だけで」
「ベルーガのショーに間に合わなくなるよ」
「早く行こう」

佑美の嘆きを二人で無視して、さっさと館に向かう。

「………うわっ、さっきのイルカとは全く違うんだね」
「本当に……真っ白だね、うわっ泡吐いた」
「丸いよ、凄い」

佑美と丞は始めてみるのか、盛り上がっている。
館に流れるベルーガの生体の説明を僕は聞く。
今やっている小説に役に立ちそうだ。
後一ヶ月と少しで10月になる。
10月は食欲の秋、読書の秋。
つまり、読書の秋という事で出版社は大忙しだ。

「……うわっ可愛い」

スピーカからベルーガの泣き声が聞こえる。



「うわっ、綺麗綺麗ーっ」
「音と光の誘導で魚が集まるんだね、それに一列だし、凄いな」

水槽から七色の光が漏れていて、キラキラと水の光で反射して幻想的な空間を作り出している。
この室内は今、暗闇だが水槽だけの光でこちらまで綺麗な光が途切れない。

「うわっ、魚丸ごとあげるのかよ」
「一口だからグロくないけど、うわっ、僕血がダメだよ」

丞が目をつぶる、僕は丞の反応に笑ってしまう。

「………大丈夫だよ、血は出てない」
「本当に」
「本当……ほらっ次行こう」

ショーを中断して、次のショーを目指して歩く。
こっから少し遠いので急ぎ足で次の場所に向かう。



「うわっ、拍手してる」

アザラシがパタパタと手を降ったり、お座りしたりおかわりお手をしたり、ふせをしたりお前は犬かというくらいなショーを見た後に、隣で行われる、アシカショーを見る。
アザラシと違い可愛らしさはないが、迫力はある。

「牙やばいな」
「ガブリッときたら、あの鋭い牙でやられるなぁ」
「嫌な想像させないでよ」

ぎゃぎゃと騒ぎながら、途中で買ってきた飲み物を飲む。
食べ物はチョロス、海の家でご飯は食べる予定だ。

「……うわっ、食べにくいなぁ」
「ポロポロ落ちるよね」
「でもシナモンチョコ上手い」

パクパクと食べて、ショーを見る。
立って食べているから、運転手さんは嫌な顔をしていたが気にしない。



「次はダイバーと魚だっけ」
「はい、先程の場所に戻らなければなりませんが、大丈夫ですか」

佑美の事を気にかける運転手さんに、苦笑いを漏らす。

「……大丈夫だよ」
「溪村様と結城さまも大丈夫ですか」
「こんなに歩いたのは初めてだけど、学園でも歩いているから、大丈夫です」
「確かに、学園の方が疲れるね、僕も大丈夫です」

ダイバーさんが水槽に入って魚と優雅に泳ぐ、魚と戯れながら餌をあげるが今度は小さな魚なので丞も大丈夫みたいだ。

「はい、今、ジンベイザメくんとマアジの群れ、クロマグロくん、イワシくんやアカシュモクザメ. マダラトビエイ. ウシバナトビエイ. ホシエイ. ヤジリエイ. オグロオトメエイ. グルクマなどなどがこの水槽には展示されています、上から餌をあげれますので行ってみてくださいね」

キラリッと丞と佑美の目が輝く。
目を反らす僕には罪はないはずだ。

「「やりたい」」
「……飼育員さんに何時までやっているか聞いてくる」
「お待ちください、私が聞いてきますので」