もしも木こりが金の亡者だったら

まちゃかり

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もしも木こりが金の亡者だったら

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 ある日木こりが木を切っていると......

_______ポチャーン!

「ああっ! 手が滑って泉へ斧を落としてしまった!」

 _______ブクブクブク

 すると泉から女神が現れました!

「貴方が落としたのは、この【金の斧】ですか? それともこの【銀の斧】ですか? それともこの【普通の斧】ですか?」

 木こりはなんかグイグイ聞いてくる女神に変な戸惑いを感じつつ、冷静になって答えた。

「普通の斧です......」

 すると女神は笑顔で微笑み全ての斧を木こりに差し出しました。

「貴方は正直者で素晴らしい。全ての斧を差し上げましょう」

 女神は柔やかに泉の中に消えていきました......

 木こりは金銀に輝く斧と使い古した斧を持って暫く立ち尽くしていました。そりゃあ短期間にいろんな情報が頭の中に入って来たら、誰だってこうなります。

 木こりはふと冷静さを取り戻し、この出来事を振り返ってみると『金銀の斧は金になるな』との思考に移りました。木こりは村でも有名な金の亡者でした。そうなると話が早い。

ボチャーン!

 木こりは金銀の斧を大切に抱えて、普通の斧だけを泉に投げ入れました。

_______ブクブクブク

 すると泉から金銀の斧をくれた女神が現れました!

「貴方が落としたのは、この【金の斧】ですか? それともこの【銀の斧】ですか? それともこの【普通の斧】ですか?」

 木こりはなにも迷う素振りすら見せずにこう答えた。

「普通の斧です!」

 すると女神は笑顔で微笑み全ての斧を木こりに差し出しました。

「貴方は正直者で素晴らしい。全ての斧を差し上げましょう」

 女神は柔やかに泉の中に消えていきました......

 木こりは1人でガッツポーズを決めました。そう、全ては木こりの思い通りに進んでいたのです。

 そして泉に普通の斧を落としては、その度に女神が現れ、金銀の斧を渡すを繰り返し、夕方になる頃には木こりの所持している斧は普通の斧1つと金銀の斧多数になっていました。

 もうそろそろ帰る時間だと木こりは思い、沢山の斧を抱えて帰る準備を始めたその時!

_______ブクブクブク

 泉からたいそう哀れな女神が現れました。

 木こりは戸惑っていました。もう斧は落としてないのに女神が現れたのですから。女神は震えた声で言いました。

「貴方が落としたのは【普通の斧】ですか? それともこの【女神の涙】ですか? 私は貴方みたいな正直者には初めて会いました。貴方は何者なんですか?」

 木こりは女神の質問に対してこう答えました。

「貴方に貰った斧を、店に売りにいくだけのただの人です」

 木こりはただの金の亡者でした。
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