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第1章
精霊ですが何か?
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精霊視点
◇◇◇◇◇◇◇◇
「丸出芭歌さんの名前って何処に書いてましたっけ?」
この丸出芭歌まるでバカという人物の名前に何処か聞き覚えがあったので、異世界から来た人達ブックメモを見てみると、案の定見つかりました。
さっきから話している事を要約すると、この人の命を目の前にいる人達が狙っているという構図になります。『異世界から来た人達を偵察していたら物騒な展開になっている件』
「なにこれ? 人形?」
しまった......!? この言い草、目の前で不思議そうにしゃがんでいる状況......まさかバレてます? いや待ちなさい。僕は今、人間には見えていないはずです。まだ、全てを確信してしまうような発言をこの女はしていない。大丈夫、まだバレてない。
「くるとん。ちょっと来てほしいなーー!」
「なんですか? 頭クルクルパー女」
「その呼び方何とかならない!? それよりも今はこっちだよね。くるとん、ここに何か可愛い精霊みたいなのいない?」
ここにって完全に僕のことですよね。なんでこの美少女は僕の事見えているの? 普通の人は見えてないはずだから、すぐにスルーするはずなんですよ。
とにかく僕の『面白そうな人達を観察してみよう』という計画の行く末は、この男の一言で決まると言っていいです。もしこの男、名前はアリババ•イルゼ•クルトで合ってるかな? なんで着ている服にわざわざ本名を書いているのでしょうか、この人は......とにかくこの人の回答を聞いてみます。
「そこにある人形がどうしたのかな?」
「今さっき、この人形が動き出したような気がするんだよね......」
嘘ですよね......? まさか僕が隠れ忘れていた最悪のパターンということですか? いやいや、まだ分かりません。何かの間違いがあるかもしれませんし、もう少しだけ耳を傾けて見ましょう。
「バカか? 歌女よ、よく聞け。この人形が最初何処にあったのかは知らないけど、これが自分の意思で動くわけがないでしょうが。ただの見間違いですよ。僕は今からトイレに行くのに、あやうく漏らす所だったよ」
心なしかクルトさんの声が震えているような......もしかして精霊を見つけて震えているんじゃないのかも知れません。素性はバレないかも知れませんが何か複雑な気持ちになります。とりあえずクルトさんはトイレに篭こもりましたね。
「見間違い......ツンツン」
「アシャッ!?」
この女の人が突然僕の身体を突きはじめました。不意を突かれてうっかり声が出てしまう最悪の形に......あぁ、終わった。
「ギャァぁぁぁぁぁ!? シャァベッタァァァ!? こここれは間違いなく幻聴でもない、本物の声! なにこの人形? 幽霊? ポルダーガイスト?」
はいもう後戻り出来ない感じですね。分かりました。もうヤケクソです。
「違います! 僕は人形でも幽霊でもない、ただの精霊だ!」
この女の人は目を丸くして、僕の事をまじまじと見ています。多分ですが、これから僕はこの女に捕まって何処かに売られてしまうのでしょう。それが運命というならそれを受け入れます。
「精霊......精霊って妖精と同じ種族なのかな? そもそも精霊は普段から見えないはず......もしかしてあなた、友達になりたくて私の目の前に現れてくれたの!?」
「プキャッ? 友達......」
友達、そもそも僕達は別種族だよね? どういう状況ですか? この人凄く友好的に接してきますし、殺気みたいなものもない。この言葉を信じてもいいのでしょうか?
「さっきからうるさいよ鳥星女! ドアの向こう側でなにやってるの?」
ドアの向こう側に篭っているクルトが変な名前をたくさん言っていますが、この女の人への嫌がらせでしょうか?
「......君の名前はなんていうの?」
「私の名前は星歌! あなたの名前も教えて!」
僕の名前か。先に教えてもらったのに僕は名乗らないなんて星歌さんに失礼ですよね。わかりました、我ら精霊式の名乗りを上げてやりましょう!
「オホン! 我々の事を皆はこう証言する。天は祝福を呼びこむ妖精と、水は波を静かに揺らし、地は大地の歌を奏でるほど叫ぶ、そして人達は我々をこう読んだ! ムーンライト•フェアリーと! そう、僕の名前は......そういやまだ無いや」
よし、僕にしてはよく決まりました。星歌さんはどんな反応をしているでしょう?
「はぁ......はい? えっと......つまり、あなたは妖精みたいな種族で、名前は無いの?」
微妙な反応。久しぶりの名乗りだったから、鈍ってしまったのかもしれません。それとも僕の存在そのものが微妙な感じなのかも......
「と、とりあえず、あなたは幽霊でもゴーストでも無いことは分かったよ。そうだ、せっかくだし、私の仲間と会ってみる? 何かの縁だし」
「プキャッ!?」
星歌さんは半端怪奇現象のような存在である僕を、なんの疑いの無く仲間に会わせようと言いました。例え僕が見えたとしても、普通は僕達精霊の事を疑い深く質問責めにするはずなんです。この人は天性の強心臓持ちとか持っているのでしょうか?
いや待て、僕は毎日変わらない日常に内心飽き飽きしていました。これは新たな日常を作り出すチャンスなのでは? ですが、一応保険をかけときます。
「星歌さん、本気で言っています? 僕は精霊。あなたは人間ですよ? いきなり君達に危害を加えるかもしれない」
異種族同士は争いの元。私は警告しました。だけど、この少女は......
「あれ? 攻撃してきそうなオーラ出してないし、あなたは攻撃はしない。というかあなたは精霊なのね。てっきり妖精かと思った」
大丈夫そうです。少なくともあなたは信用できます。正直、僕は一応精霊ですが、下級精霊という立ち位置。あなた方御一行の旅に同行しても良さそうな気がしてきました。
「わかりました。星歌さんが言うなら、あなたの旅の仲間に会います」
「こんなにかしこまらなくてもいいんだよ?」
こうして僕は新たな日常を肌で感じ取る旅の一歩を踏み出しました。
「さっきから歌之介は誰と話して......うああああ!? 腹がぁぁぁぁ!?」
「このドアの向こうにいる人が私の仲間なんだよ。一応ね......あといい加減名前覚えて」
「これから楽しくなりそうです」
◇◇◇◇◇◇◇
次回に続く
◇◇◇◇◇◇◇◇
「丸出芭歌さんの名前って何処に書いてましたっけ?」
この丸出芭歌まるでバカという人物の名前に何処か聞き覚えがあったので、異世界から来た人達ブックメモを見てみると、案の定見つかりました。
さっきから話している事を要約すると、この人の命を目の前にいる人達が狙っているという構図になります。『異世界から来た人達を偵察していたら物騒な展開になっている件』
「なにこれ? 人形?」
しまった......!? この言い草、目の前で不思議そうにしゃがんでいる状況......まさかバレてます? いや待ちなさい。僕は今、人間には見えていないはずです。まだ、全てを確信してしまうような発言をこの女はしていない。大丈夫、まだバレてない。
「くるとん。ちょっと来てほしいなーー!」
「なんですか? 頭クルクルパー女」
「その呼び方何とかならない!? それよりも今はこっちだよね。くるとん、ここに何か可愛い精霊みたいなのいない?」
ここにって完全に僕のことですよね。なんでこの美少女は僕の事見えているの? 普通の人は見えてないはずだから、すぐにスルーするはずなんですよ。
とにかく僕の『面白そうな人達を観察してみよう』という計画の行く末は、この男の一言で決まると言っていいです。もしこの男、名前はアリババ•イルゼ•クルトで合ってるかな? なんで着ている服にわざわざ本名を書いているのでしょうか、この人は......とにかくこの人の回答を聞いてみます。
「そこにある人形がどうしたのかな?」
「今さっき、この人形が動き出したような気がするんだよね......」
嘘ですよね......? まさか僕が隠れ忘れていた最悪のパターンということですか? いやいや、まだ分かりません。何かの間違いがあるかもしれませんし、もう少しだけ耳を傾けて見ましょう。
「バカか? 歌女よ、よく聞け。この人形が最初何処にあったのかは知らないけど、これが自分の意思で動くわけがないでしょうが。ただの見間違いですよ。僕は今からトイレに行くのに、あやうく漏らす所だったよ」
心なしかクルトさんの声が震えているような......もしかして精霊を見つけて震えているんじゃないのかも知れません。素性はバレないかも知れませんが何か複雑な気持ちになります。とりあえずクルトさんはトイレに篭こもりましたね。
「見間違い......ツンツン」
「アシャッ!?」
この女の人が突然僕の身体を突きはじめました。不意を突かれてうっかり声が出てしまう最悪の形に......あぁ、終わった。
「ギャァぁぁぁぁぁ!? シャァベッタァァァ!? こここれは間違いなく幻聴でもない、本物の声! なにこの人形? 幽霊? ポルダーガイスト?」
はいもう後戻り出来ない感じですね。分かりました。もうヤケクソです。
「違います! 僕は人形でも幽霊でもない、ただの精霊だ!」
この女の人は目を丸くして、僕の事をまじまじと見ています。多分ですが、これから僕はこの女に捕まって何処かに売られてしまうのでしょう。それが運命というならそれを受け入れます。
「精霊......精霊って妖精と同じ種族なのかな? そもそも精霊は普段から見えないはず......もしかしてあなた、友達になりたくて私の目の前に現れてくれたの!?」
「プキャッ? 友達......」
友達、そもそも僕達は別種族だよね? どういう状況ですか? この人凄く友好的に接してきますし、殺気みたいなものもない。この言葉を信じてもいいのでしょうか?
「さっきからうるさいよ鳥星女! ドアの向こう側でなにやってるの?」
ドアの向こう側に篭っているクルトが変な名前をたくさん言っていますが、この女の人への嫌がらせでしょうか?
「......君の名前はなんていうの?」
「私の名前は星歌! あなたの名前も教えて!」
僕の名前か。先に教えてもらったのに僕は名乗らないなんて星歌さんに失礼ですよね。わかりました、我ら精霊式の名乗りを上げてやりましょう!
「オホン! 我々の事を皆はこう証言する。天は祝福を呼びこむ妖精と、水は波を静かに揺らし、地は大地の歌を奏でるほど叫ぶ、そして人達は我々をこう読んだ! ムーンライト•フェアリーと! そう、僕の名前は......そういやまだ無いや」
よし、僕にしてはよく決まりました。星歌さんはどんな反応をしているでしょう?
「はぁ......はい? えっと......つまり、あなたは妖精みたいな種族で、名前は無いの?」
微妙な反応。久しぶりの名乗りだったから、鈍ってしまったのかもしれません。それとも僕の存在そのものが微妙な感じなのかも......
「と、とりあえず、あなたは幽霊でもゴーストでも無いことは分かったよ。そうだ、せっかくだし、私の仲間と会ってみる? 何かの縁だし」
「プキャッ!?」
星歌さんは半端怪奇現象のような存在である僕を、なんの疑いの無く仲間に会わせようと言いました。例え僕が見えたとしても、普通は僕達精霊の事を疑い深く質問責めにするはずなんです。この人は天性の強心臓持ちとか持っているのでしょうか?
いや待て、僕は毎日変わらない日常に内心飽き飽きしていました。これは新たな日常を作り出すチャンスなのでは? ですが、一応保険をかけときます。
「星歌さん、本気で言っています? 僕は精霊。あなたは人間ですよ? いきなり君達に危害を加えるかもしれない」
異種族同士は争いの元。私は警告しました。だけど、この少女は......
「あれ? 攻撃してきそうなオーラ出してないし、あなたは攻撃はしない。というかあなたは精霊なのね。てっきり妖精かと思った」
大丈夫そうです。少なくともあなたは信用できます。正直、僕は一応精霊ですが、下級精霊という立ち位置。あなた方御一行の旅に同行しても良さそうな気がしてきました。
「わかりました。星歌さんが言うなら、あなたの旅の仲間に会います」
「こんなにかしこまらなくてもいいんだよ?」
こうして僕は新たな日常を肌で感じ取る旅の一歩を踏み出しました。
「さっきから歌之介は誰と話して......うああああ!? 腹がぁぁぁぁ!?」
「このドアの向こうにいる人が私の仲間なんだよ。一応ね......あといい加減名前覚えて」
「これから楽しくなりそうです」
◇◇◇◇◇◇◇
次回に続く
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