一般盾使いの冒険記

まちゃかり

文字の大きさ
上 下
24 / 69
第1章 旅路

1-18 ユウキ(中編)

しおりを挟む
 俺が下した決断はこれからどうなるかわからない。だけど、こんなにコケにされてさらにこの条件を飲めだ? ふざけんなと言いたいしなんならもうこの答えは決まってる。

「戦う? 土下座? 正直に言おう、どっちも嫌だね。俺は基本的に厄介ごとに巻き込まれたくはないし、どんなクソ野郎でも争いたくはない。だけど......俺は、今だけは譲れないものがある! だから戦う方を選ぶ……戦線布告だ!」

 正直な気持ち、今すぐ逃げ出したいし怖すぎて胃がキリキリしている。だけど、俺をここまで連れてってくれた本当の仲間に出会えた今、今更1人でスローライフとかやりたくはない。それに今ユウキによつばを明け渡したりしたらロクなことにはならないだろう。

 勇者ユウキ、いや冷城ユウキの好き勝手にはさせないよ。俺なりの反抗をしてやる!

 するとユウキは高々と笑い始めた。まるでおもちゃを見つけた子供のような純粋な笑い声で気味が悪い。そしてユウキは腰につけてあった禍々しい大きな剣を抜き、その矛先を俺に合わせる。

「あの時追放じゃなくて雑用として一生こき使うとかなんなら始末しとけばよかった。僕はこういうこと知ってるんだ。追放系からの成り上がりを!」

「さっきからアンタは何言ってるんだ? 追放系とか成り上がりとか意味がわからない」

 いきなり怒ったり怯えたり忙しい奴だなって思ってる場合じゃない。ていうか追放したのはお前、俺は自分から誘いに乗ったけど勝手にパーティーから追い出したのはお前らだろ?

 とにかくこの現状をなんとか打破しないと、後でよつばに事情を聞く前にこのままじゃユウキ一行に集団リンチに遭って殺されてしまいそうだ。始末しとけばよかったなんて言われているし。

 かと言って今の状況じゃ援軍も望めない。俺のなんだかんだ頼りになるアイツらの今を予想してみたけど多分寝ているか寝ぼけているかだろうし、なんなら入り口を封じられた今助けを呼ぶこともできない。

 てことは孤軍奮闘とか火事場の馬鹿力とかいう言葉を頼りに1人でなんとかするしかないわけか。

 だが、コイツら相手じゃ正攻法では絶対上手く事が運ばないだろうし。今俺が取れる選択肢としては油断してるとこに奇襲をかけるか、賠償金請求されるのを覚悟で店の壁を壊し、逃亡の2択。まあ後者は壊せるだけの力を俺は持ってないから無理なんだけど。

 たしかに戦うとは言ったが、あくまで俺の目的はここからの脱出。それにできるだけ人同士で傷つきあうのはしたくないし、争いたくはない。ユウキに一矢報いて自分は無事に逃げることが今の俺にとって理想的な展開かな。

 なんとかこの短期間で計画を立てた俺だったが、今ユウキは何をしているのだろうか? 確かあの時剣を抜いただけで何もしてこなかったけど。

「お前たちは手を出すな。ここは僕自身で決着をつける。

 奴はまんまと俺に背を向けて奴らにお気持ち表明をしていたのだ。ちょっとこれは絶好の好機じゃないか!?

「さすが勇者様!」

「なんと言う心意気!」

「邪魔者ハルトは今日で死ぬ!」

「一思いに散らせてあげるのがせめてのたむけですぞ!」

 なんだよユウキの仲間とはいえ意見はこんなに一致して......そんなに俺が嫌い? ていうかここは宗教かな?

 ああ......もうこの人らやばい奴らすぎる。あの時の俺はなんでこんな奴らと組んでいたんだろう。どうりでユウキ勇者パーティーにいた頃絶妙に話が噛み合わんわけだ。

 ていうかこんな大変な時にエリック達は何やってるんだ。腐ってもこの場を仕切る仲介役だったはずだろ?

 そう思ってたらエリックなりの考察を奴の仲間に話してたので、ちょいと耳を傾けてみたら......

 ユウキくんは一回追放した奴を改めて処罰を下し、仲間達に恐怖を植え付けるのが今回の目的なのかな? とか、違う可能性があるなら王女様が取られると思ったユウキくんの個人的な恨みからとか、他人事のようにベラベラといい、

 エリックの仲間の内の1人に至っては『どちらにせよ美味い料理を食い、美味い酒に酔う。そしてこれから巻き起こるショーを楽しむ。こんな楽しい生活はないぜ』とか言ってこれから起きそうな惨劇に毛ほども興味を示していなかった。

 ユウキ達もやばい奴らだっだが、自称エリートも大概だったぁぁぁ! それにコイツらグルだったの忘れてたぁぁぁ! グルだったらせめてこっちに興味を示せよ名前もよく分からん奴!

 うう.....そんなことにツッコミ入れてる場合じゃないだろうハルト! 今背を向けて油断している今、まともに一撃食らわせるのはここしかない! 倒せる可能性があるなら俺は戦う覚悟も持つ。比較的得意な魔法をぶつけて開戦といこうか。

「いっけぇぇぇ! フレイム!」

◇◇◇◇◇
次回に続く

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

RiCE CAkE ODySSEy

心絵マシテ
ファンタジー
月舘萌知には、決して誰にも知られてならない秘密がある。 それは、魔術師の家系生まれであることと魔力を有する身でありながらも魔術師としての才覚がまったくないという、ちょっぴり残念な秘密。 特別な事情もあいまって学生生活という日常すらどこか危うく、周囲との交友関係を上手くきずけない。 そんな日々を悶々と過ごす彼女だが、ある事がきっかけで窮地に立たされてしまう。 間一髪のところで救ってくれたのは、現役の学生アイドルであり憧れのクラスメイト、小鳩篠。 そのことで夢見心地になる萌知に篠は自身の正体を打ち明かす。 【魔道具の天秤を使い、この世界の裏に存在する隠世に行って欲しい】 そう、仄めかす篠に萌知は首を横に振るう。 しかし、一度動きだした運命の輪は止まらず、篠を守ろうとした彼女は凶弾に倒れてしまう。 起動した天秤の力により隠世に飛ばされ、記憶の大半を失ってしまった萌知。 右も左も分からない絶望的な状況化であるも突如、魔法の開花に至る。 魔術師としてではなく魔導士としての覚醒。 記憶と帰路を探す為、少女の旅程冒険譚が今、開幕する。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

処理中です...