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第三章 セイラン王国編
初めてのケンカ 2
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ジーニアは、ルークの立場に理解を示しながらも、同じ様に大切に思うアイリとシークを危険な目に合わせたくはない。
気持ちは同じなのだ。
大人達が何も言えず重くなった空気を破るように、シークが言葉を発した。
「ルークさんの気持ちも分かるけど、それって今更じゃないかな?それなら、最初からこの任務に連れてこなければ良かったのに、こうなる事も納得してルークさん達は僕とアイリを連れてきたんでしょ?」
「⋯⋯」
シークの言葉に何の反論もできないルークとジーニアは、グッと唸るように俯いた。
「別に、責めているわけではないんだ⋯。それに、一番は僕やアイリを守るためだってのも分かってる。確かに僕達は子供だけど、ちゃんと自分の意志でここに居るし、何かあっても頼れる大人が側にいるから⋯仲間がいてくれるから、僕もアイリも自分達に出来ることをして頑張ろうって、そう約束したんだ。」
いつの間にそんな約束をしていたのか。守らなければならないと思っていた子供達は、きちんと自分の意思で立って歩いていた。
「今回のことは『闇魔法』が関わっているんでしょ?だったら、僕とアイリ以外に適任はいないんじゃないかな?こっちには聖獣様の加護と膨大な魔力を持った闇属性が二人もいるんだよ?僕達だったら謎の少年にも対抗できるよ。その力をつける為にも、僕とアイリをエルフの里に連れて行くべきだと思う。」
ルークとジーニアは、シークの達観した言葉に驚いた。それと同時に、自分達がいかに不甲斐無い姿を見せてしまっていたのかと反省した。
シークの言うとおりなのだ。
今回の闇魔法に対抗するには、同じ闇属性を持つシークとアイリの存在が欠かせない。だがどちらもまだ子供で、守らなければならない存在であった。
そう、思っていた⋯⋯。
「ほっほっ、シークに説教されるようでは私達もまだまだでしたな⋯」
「あぁ、情けない姿を見せてしまったな。」
ルークとジーニアは、互いに苦笑しながらもその表情には先程までの憂いはなくなっていた。
シークは年齢の割に元々大人びた考えの持ち主だったが、人と接する事を極端に怖がり、今までは何処か一歩引いて人と距離を取っていた。
しかし、アイリと言う自分よりも年下で同じ闇属性持ちという存在ができ、聖獣の加護を受けて魔力の心配もなくなったことで、シークなりに『お兄ちゃん』としての意思が強くなったのだろう。
メキメキと逞しく成長を遂げ、しっかりと自分の意志を伝えるシークの姿に、ジーニアは嬉しさと寂しさを感じていた。
さて、本題に戻ろう。
居なくなってしまったアイリともう一度話し合うため、兎にも角にも居場所を見つけなければ話にならない。
しかし、頼みの綱であったシークの探知魔法が空振ってしまった。
「城の皆にも協力してもらって、王宮内を徹底的に捜索するか?」
「しかし、今城の者達は反乱分子を根こそぎ捕まえようと動いておられる。こちらに獣騎士をお借りするにしても、王達も忙しいでしょうな⋯。」
「だからと言って、俺達外部の者だけで勝手に王宮内を彷徨くのもあまり外聞が良くないな。」
う~ん⋯とルークとジーニアが頭を悩ませていると、そこはやはり柔軟な頭の持ち主ーーシークのアイデアが冴えていた。
「魔法で探知はできなかったけど、獣人なら匂いですぐにアイリを見つけられるんじゃないかな?」
「「!!」」
人族である自分達には思いもしなかったが、何せここは獣人の国だ。アイリがこの王宮内にいることは分かっているし、彼らにかかればアイリの匂いさえ分かれば居場所なんて直ぐに見つけられるだろう。
「ならば、デュラン殿あたりに頼めば直ぐに見つかるでしょう。」
納得の解決案に、ジーニアはホッと胸を撫で下ろした。
しかし、ルークはそれでは駄目だと首を振った。
先程のシークの探知魔法を拒否したのはアイリの意志だ。それなら、これは他の誰でもないルーク自身がアイリを見つけなければならないのだと思った。
その事をジーニアとシークに伝えると、それならばと二人があーでもない、こーでもないと何かを話し始めた。
ーー数分後ーー
「よし、出来た!これでどうかな?」
「⋯ふむ、これなら完璧でしょう。」
何やら二人が納得できる物が出来上がったようだ。
「一体何が出来たんだ⋯?」
ルークの問い掛けに反応する様に、作業に没頭していた二人が漸く顔を上げ、何も言わずにただニコニコとした表情でルークを見た。
⋯⋯何だか凄く嫌な予感がする。
※前回久し振りの更新にも関わらず、沢山のコメントを頂きありがとうございます(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
返信できておりませんが、一つ一つ目を通させて頂いております。たまに返信コメントに自爆してネタバレしてしまいそうになるのを防ぐため、一旦皆様への返信をストップしております。
なのであえてこちらからは触れませんが、色んな意見や今後の予測など、存分にコメント頂ければと思います(笑)
気持ちは同じなのだ。
大人達が何も言えず重くなった空気を破るように、シークが言葉を発した。
「ルークさんの気持ちも分かるけど、それって今更じゃないかな?それなら、最初からこの任務に連れてこなければ良かったのに、こうなる事も納得してルークさん達は僕とアイリを連れてきたんでしょ?」
「⋯⋯」
シークの言葉に何の反論もできないルークとジーニアは、グッと唸るように俯いた。
「別に、責めているわけではないんだ⋯。それに、一番は僕やアイリを守るためだってのも分かってる。確かに僕達は子供だけど、ちゃんと自分の意志でここに居るし、何かあっても頼れる大人が側にいるから⋯仲間がいてくれるから、僕もアイリも自分達に出来ることをして頑張ろうって、そう約束したんだ。」
いつの間にそんな約束をしていたのか。守らなければならないと思っていた子供達は、きちんと自分の意思で立って歩いていた。
「今回のことは『闇魔法』が関わっているんでしょ?だったら、僕とアイリ以外に適任はいないんじゃないかな?こっちには聖獣様の加護と膨大な魔力を持った闇属性が二人もいるんだよ?僕達だったら謎の少年にも対抗できるよ。その力をつける為にも、僕とアイリをエルフの里に連れて行くべきだと思う。」
ルークとジーニアは、シークの達観した言葉に驚いた。それと同時に、自分達がいかに不甲斐無い姿を見せてしまっていたのかと反省した。
シークの言うとおりなのだ。
今回の闇魔法に対抗するには、同じ闇属性を持つシークとアイリの存在が欠かせない。だがどちらもまだ子供で、守らなければならない存在であった。
そう、思っていた⋯⋯。
「ほっほっ、シークに説教されるようでは私達もまだまだでしたな⋯」
「あぁ、情けない姿を見せてしまったな。」
ルークとジーニアは、互いに苦笑しながらもその表情には先程までの憂いはなくなっていた。
シークは年齢の割に元々大人びた考えの持ち主だったが、人と接する事を極端に怖がり、今までは何処か一歩引いて人と距離を取っていた。
しかし、アイリと言う自分よりも年下で同じ闇属性持ちという存在ができ、聖獣の加護を受けて魔力の心配もなくなったことで、シークなりに『お兄ちゃん』としての意思が強くなったのだろう。
メキメキと逞しく成長を遂げ、しっかりと自分の意志を伝えるシークの姿に、ジーニアは嬉しさと寂しさを感じていた。
さて、本題に戻ろう。
居なくなってしまったアイリともう一度話し合うため、兎にも角にも居場所を見つけなければ話にならない。
しかし、頼みの綱であったシークの探知魔法が空振ってしまった。
「城の皆にも協力してもらって、王宮内を徹底的に捜索するか?」
「しかし、今城の者達は反乱分子を根こそぎ捕まえようと動いておられる。こちらに獣騎士をお借りするにしても、王達も忙しいでしょうな⋯。」
「だからと言って、俺達外部の者だけで勝手に王宮内を彷徨くのもあまり外聞が良くないな。」
う~ん⋯とルークとジーニアが頭を悩ませていると、そこはやはり柔軟な頭の持ち主ーーシークのアイデアが冴えていた。
「魔法で探知はできなかったけど、獣人なら匂いですぐにアイリを見つけられるんじゃないかな?」
「「!!」」
人族である自分達には思いもしなかったが、何せここは獣人の国だ。アイリがこの王宮内にいることは分かっているし、彼らにかかればアイリの匂いさえ分かれば居場所なんて直ぐに見つけられるだろう。
「ならば、デュラン殿あたりに頼めば直ぐに見つかるでしょう。」
納得の解決案に、ジーニアはホッと胸を撫で下ろした。
しかし、ルークはそれでは駄目だと首を振った。
先程のシークの探知魔法を拒否したのはアイリの意志だ。それなら、これは他の誰でもないルーク自身がアイリを見つけなければならないのだと思った。
その事をジーニアとシークに伝えると、それならばと二人があーでもない、こーでもないと何かを話し始めた。
ーー数分後ーー
「よし、出来た!これでどうかな?」
「⋯ふむ、これなら完璧でしょう。」
何やら二人が納得できる物が出来上がったようだ。
「一体何が出来たんだ⋯?」
ルークの問い掛けに反応する様に、作業に没頭していた二人が漸く顔を上げ、何も言わずにただニコニコとした表情でルークを見た。
⋯⋯何だか凄く嫌な予感がする。
※前回久し振りの更新にも関わらず、沢山のコメントを頂きありがとうございます(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)
返信できておりませんが、一つ一つ目を通させて頂いております。たまに返信コメントに自爆してネタバレしてしまいそうになるのを防ぐため、一旦皆様への返信をストップしております。
なのであえてこちらからは触れませんが、色んな意見や今後の予測など、存分にコメント頂ければと思います(笑)
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