記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子

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第三章 セイラン王国編

トラブル発生

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走り去ったエルモンドにフェリシアはため息をつき、ラオールは侍女の持ってきた冷たいタオルを受け取るとアイリの手に当てながら心から申し訳なさそうに謝った。

「アイリ、すまない⋯エルモンドには後できちんと言い聞かせておく。我が息子ながら、最近何を考えているか分からなくてな⋯。」

最近以前にも増して余所余所しくなり、親子らしい関わりも持てない息子に手を焼いていたラオールは、つい愚痴が口をついて出てしまった。

「えりゅもるどしゃんは、さみしそうにみえまちた。さっきのも、わざとじゃないでしゅよ。ちゃんとお話しきいてあげてくだしゃい。」

アイリの言葉に、ラオールもフェリシアもハッとする。

「陛下⋯私も最近エイルこの子のことばかりで、エルモンドとの時間を取れていなかったの。あの子も急に環境が変わって、戸惑っているのかもしれないわ。」

「そうだな⋯。私もきちんと話を聞くこともせず、エルモンドを責めてしまった。アイリが可愛くてつい、息子にしてあげたかったことをアイリに求めてしまっていた⋯」

「アイリはアイリでしゅ。えりゅもるどしゃんの代わりはいないでしゅよ。」

こんな小さな女の子の言葉によって気付かされた二人は、先程出ていったエルモンドの後を追いかけた。

エルモンド付きの侍従に聞くと、どうやら部屋に戻ったとのことでラオールとフェリシアは二人で部屋を訪れた。
しかし扉をノックしても応答がなく、扉の前にいる護衛の話では部屋に入ってから外に出ていないので、中にいる筈だと言う。
もしかしたら拗ねてしまっているのかもしれない。
しかし、こういったすれ違いは早めに解決するに限る。応答はなかったが、ラオールとフェリシアは扉を開けて部屋に入った。

しかし、そこにエルモンドの姿は見つけられなかった。どこかに隠れているのか?そう思いベッドの中やバルコニーまで、部屋の隅々まで探したがその姿を見つける事は出来なかった。

「エルモンドは、確かに部屋に入ったのだな?」

「は、はい。間違いなく殿下は部屋に入られて、その後はずっと私が扉の前におりました。」

「陛下⋯エルモンドは何処へ消えてしまったの?」

突然姿を消した息子に、フェリシアは動揺を隠しきれずラオールに縋るように問いかけた。


「どーちたんでしゅか?」

そこへ、先程のことが気になって様子を見に来たアイリ達がやってきた。

「⋯エルモンドが部屋から出ていない筈なのに、何処にも姿が見えないんだ。」

ラオールもこの奇怪な現象に困惑しているようだ。

「姿が見えない?魔法ですか?」

「⋯魔力の気配はないから、魔法を使って転移したとかはなさそうだよ。」

ミリーナとリオはすぐに魔法を使っての誘拐等を考えたが、どうやら魔法が使われた形跡はないようだ。

「おへやに入ってもいいでしゅか?」

ラオールはアイリ達に入室の許可を出すと、アイリは一度捜索された部屋の中を歩き、その後をシロちゃんが付いていく。
そしてふとクローゼットの方に向かい、整頓された服の一部が乱れている事に気付き、その奥を覗き込む。

「ん~~?わっ、みんな~!ここのかべがうごいたの~!」

アイリが服を掻き分けて奥に進み壁の一部に触れると、ガコッと音がして壁の一部がズレて、子供一人通れるくらいの小さな穴が出現したのだ。

「何っ!?これは⋯⋯?」

「まぁ、この部屋に隠し通路なんてありましたか?陛下?」

王族ですら知らなかったの存在に場は騒然となったが、直ぐに持ち直しラオールが護衛に指示を出す。

「この穴からエルモンドが部屋を出た可能性がある。直ぐにこの穴を通れる獣騎士を集めろ!」

穴は子供しか通れないくらいの大きさしかなく、アイリは問題なく通れるが小柄なリオでギリギリの大きさだった。
エルモンドが獣化したとすれば、問題なく通れるだろう。

穴を通れるくらい小型に獣化できる獣騎士を集めている間に、リオとアイリが先に穴に入り調べてくると言い出した。
これには流石にラオールもミリーナも反対したが、捜索に時間がかかればその分エルモンドの身の危険も高くなる。

リオは見た目こそ子供だが、人より長く生きている。冒険者としても長い経験のあるリオは、こういったも何度もこなしてきていた。

「僕が先に入って危険がないか確かめながら進むから、後ろをアイリに頼みたいんだ。あ、シロちゃんも一緒に来て欲しい。それでもし僕に何かあったら、アイリ達には直ぐに元来た道を引き返して貰う。」

「リオしゃんはアイリがまもりましゅ!」

『アイリとリオは、ボクが守ってあげるー!』

アイリとシロちゃんの頼もしい言葉を聞いて、リオも「頼んだよっ」と二人(一人と一匹)を撫でる。

「リオ殿、アイリ、シロちゃん様。後で獣騎士も送りますので、決して無理はしないように。⋯どうかエルモンドを頼みます。」

ラオールはそう言ってフェリシアと頭を下げると、三人は隠し通路へと入っていった。
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