記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子

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第三章 セイラン王国編

救出作戦

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それは、冒険者ギルトに集まったルーク達が冒険者失踪や獣人の誘拐事件について各自分かれて話を聞いていた時。
突然どこからかアイリの声が聞こえ、最初会いたすぎるがゆえの幻聴かと思ったルークだが、影渡りの魔法を思い出しすぐに人気のない場所に移動した。
すると案の定、ルークの影からアイリが出てきた。

「ルークしゃん。たいへんなの~!」

アイリの第一声に何事かと問い質したい所だが、それよりも重大なことに目が向いた。

「アイリっ!?その格好は⋯!」


そう。アイリは王妃様の所に赤ちゃんを見に行った時の格好そのままで、黒い猫耳と尻尾をつけたままだったのだ。
話を聞かなければとは思ったが、とりあえずこんな所でアイリのこんな愛らしい姿を晒すわけにはいかない、とローブで姿を隠した。
勿論ルークにはローブの効果は効かない。一人で猫耳アイリを堪能し放題だ。

ここで漸く、他のメンバーも集めアイリから話を聞くことに。
アイリから簡単にエルモンドとリオが捕まった話を聞き、とりあえず急いで王宮に戻って欲しいとの陛下からの伝言を聞いて、一同はアイリの影魔法で王宮のミリーナの元まで移動した。

部屋には既にラオールと、救出に向かう為に集められた信頼の置ける獣騎士数名がおり、今後の対応を話し合う。
念の為防音結界を張ってルークが口を開いた。

「ふぅ⋯アイリには言いたいことも聞きたいこともいっぱいあるんだが⋯。とりあえず、アイリの話だと連れて行かれたリオ達の場所まで同じ様に影魔法で移動出来るらしい。ただ、いきなりリオ達のいる場所まで移動するのは危険だ。まずは近くまで移動して建物内の様子を探る方がいいだろう。」

ルークの言葉に頷き、後を引き継いだラオールが話す。

「建物内の様子を探るのは我が獣騎士に任せてくれ。特に潜入を得意とした者を揃えた。アイリには建物の近くまで彼らを移動させて貰いたい。」

「まかせてなのっ!」

やる気満々のアイリに、皆の表情が和らぐ。

「建物内の詳細が分かったら、魔法で俺達も移動して一気に中を制圧する。アイリはエルモンド殿下の側に移動して殿下と一緒に安全な場所に避難するんだ。側にリオも居れば一緒に行動してくれ。」

「あいっ。」


正直、ここまで明確な対策を立てられたのは、アイリの魔法が優秀過ぎるからである事は誰の目にも明らかだった。

それは普段魔法にあまり縁のないラオールや獣騎士達にも伝わっているのだろう。少数精鋭にしてくれたラオール側の配慮はルークにも分かった。
分かったからこそ、今回アイリに影魔法を使わせる事を容認したのだ。

しかし今回の鍵となるアイリの影魔法だが、できる事ならあまり人の目に触れさせたくはない。
そこで、定期連絡の予定より少し早いがシークに連絡を取ることにした。

「アイリ、この手紙をシークに届けてくれないか?」

これは以前シークが見せた『シャドー君(仮)』と同じ魔法で、あの後「アイリもできるよ~」とサラッと言われたのだ。

⋯俺のパーティーの子供達が規格外すぎる。



しかし今回ばかりは優秀な子供達に感謝した。
シークに手紙を届けてから然程時間も経たない内に、シークがアイリの影から現れた。
突然現れた人物に獣騎士達は警戒を滲ませるが、ルークの説明で警戒を解いた。

「シーク、よく来てくれた。今回お前にもちょっと手伝って欲しくてな。」

「大丈夫⋯。手紙はジーニアさんにも、見せてきたから。」

人見知りのシークは、相変わらずフードを被ったままボソボソと小声で話している。

「シークしゃん。久しぶり~!」

「⋯っ!?アイリ⋯その格好。⋯似合ってる。可愛い。」

王宮に戻り、室内では流石にローブを脱いでいたアイリの猫娘格好にシークもいち早く反応した。

「ミリーナさんも⋯似合ってます。アイリとお揃いなんですね。」

「シークくん、ありがとう。⋯でも、私には触れないで⋯」

部屋の端の方でひっそりと隠れていたミリーナに気付いたシークは、アイリと同じ様に声をかけたのだが、どうやら触れてはいけなかったらしい。

「やっぱり、救出に向かう前に私着替えて⋯」

「いや、救出に向かうのなら寧ろそのままの方が獣人に紛れられていいだろう。念の為もう一度匂い消しをつけて向かうといい。」

「ゔっ⋯⋯はぃ⋯」

ミリーナは自分の格好猫耳姿をこれ以上メンバーに見られるのは耐えられなかったのだが、ラオールに言われてしまえば反論出来るはずもなく、渋々受け入れた⋯。


「よし、では一度皆でシロのいる場所に移動しよう。」

隠し通路の先にはシロちゃんが残っているので、そこまでの移動もアイリとシークの魔法で可能だった。

アイリは念話でシロちゃんに今から移動することを伝え、人数も多い為広い場所で待機していてもらう。

ルークとミリーナ、アレク、デュラン、ララ、クリスに獣騎士5名が一カ所に集まり、アイリとシークが手を繋いで魔法を発動させる。

「「影渡りシャドームーブ」」

全員がとぷんっと影に沈み、その姿が王宮の一室から一瞬で消えた。


「⋯あの子達が過保護に守られる筈だ。いい大人に保護して貰ったな。⋯さて、私も王としてこの件をしっかりと片付けなくてはな。」

アイリ達を見送ったラオールは、王としての責務を果たす為従者を引き連れ部屋を後にした⋯。
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