50 / 59
第三章 セイラン王国編
救出作戦
しおりを挟む
それは、冒険者ギルトに集まったルーク達が冒険者失踪や獣人の誘拐事件について各自分かれて話を聞いていた時。
突然どこからかアイリの声が聞こえ、最初会いたすぎるがゆえの幻聴かと思ったルークだが、影渡りの魔法を思い出しすぐに人気のない場所に移動した。
すると案の定、ルークの影からアイリが出てきた。
「ルークしゃん。たいへんなの~!」
アイリの第一声に何事かと問い質したい所だが、それよりも重大なことに目が向いた。
「アイリっ!?その格好は⋯!」
そう。アイリは王妃様の所に赤ちゃんを見に行った時の格好そのままで、黒い猫耳と尻尾をつけたままだったのだ。
話を聞かなければとは思ったが、とりあえずこんな所でアイリのこんな愛らしい姿を晒すわけにはいかない、と例のローブで姿を隠した。
勿論ルークにはローブの効果は効かない。一人で猫耳アイリを堪能し放題だ。
ここで漸く、他のメンバーも集めアイリから話を聞くことに。
アイリから簡単にエルモンドとリオが捕まった話を聞き、とりあえず急いで王宮に戻って欲しいとの陛下からの伝言を聞いて、一同はアイリの影魔法で王宮のミリーナの元まで移動した。
部屋には既にラオールと、救出に向かう為に集められた信頼の置ける獣騎士数名がおり、今後の対応を話し合う。
念の為防音結界を張ってルークが口を開いた。
「ふぅ⋯アイリには言いたいことも聞きたいこともいっぱいあるんだが⋯。とりあえず、アイリの話だと連れて行かれたリオ達の場所まで同じ様に影魔法で移動出来るらしい。ただ、いきなりリオ達のいる場所まで移動するのは危険だ。まずは近くまで移動して建物内の様子を探る方がいいだろう。」
ルークの言葉に頷き、後を引き継いだラオールが話す。
「建物内の様子を探るのは我が獣騎士に任せてくれ。特に潜入を得意とした者を揃えた。アイリには建物の近くまで彼らを移動させて貰いたい。」
「まかせてなのっ!」
やる気満々のアイリに、皆の表情が和らぐ。
「建物内の詳細が分かったら、魔法で俺達も移動して一気に中を制圧する。アイリはエルモンド殿下の側に移動して殿下と一緒に安全な場所に避難するんだ。側にリオも居れば一緒に行動してくれ。」
「あいっ。」
正直、ここまで明確な対策を立てられたのは、アイリの魔法が優秀過ぎるからである事は誰の目にも明らかだった。
それは普段魔法にあまり縁のないラオールや獣騎士達にも伝わっているのだろう。少数精鋭にしてくれたラオール側の配慮はルークにも分かった。
分かったからこそ、今回アイリに影魔法を使わせる事を容認したのだ。
しかし今回の鍵となるアイリの影魔法だが、できる事ならあまり人の目に触れさせたくはない。
そこで、定期連絡の予定より少し早いがシークに連絡を取ることにした。
「アイリ、この手紙をシークに届けてくれないか?」
これは以前シークが見せた『シャドー君(仮)』と同じ魔法で、あの後「アイリもできるよ~」とサラッと言われたのだ。
⋯俺のパーティーの子供達が規格外すぎる。
しかし今回ばかりは優秀な子供達に感謝した。
シークに手紙を届けてから然程時間も経たない内に、シークがアイリの影から現れた。
突然現れた人物に獣騎士達は警戒を滲ませるが、ルークの説明で警戒を解いた。
「シーク、よく来てくれた。今回お前にもちょっと手伝って欲しくてな。」
「大丈夫⋯。手紙はジーニアさんにも、見せてきたから。」
人見知りのシークは、相変わらずフードを被ったままボソボソと小声で話している。
「シークしゃん。久しぶり~!」
「⋯っ!?アイリ⋯その格好。⋯似合ってる。可愛い。」
王宮に戻り、室内では流石にローブを脱いでいたアイリの猫娘格好にシークもいち早く反応した。
「ミリーナさんも⋯似合ってます。アイリとお揃いなんですね。」
「シークくん、ありがとう。⋯でも、私には触れないで⋯」
部屋の端の方でひっそりと隠れていたミリーナに気付いたシークは、アイリと同じ様に声をかけたのだが、どうやら触れてはいけなかったらしい。
「やっぱり、救出に向かう前に私着替えて⋯」
「いや、救出に向かうのなら寧ろそのままの方が獣人に紛れられていいだろう。念の為もう一度匂い消しをつけて向かうといい。」
「ゔっ⋯⋯はぃ⋯」
ミリーナは自分の格好をこれ以上メンバーに見られるのは耐えられなかったのだが、ラオールに言われてしまえば反論出来るはずもなく、渋々受け入れた⋯。
「よし、では一度皆でシロのいる場所に移動しよう。」
隠し通路の先にはシロちゃんが残っているので、そこまでの移動もアイリとシークの魔法で可能だった。
アイリは念話でシロちゃんに今から移動することを伝え、人数も多い為広い場所で待機していてもらう。
ルークとミリーナ、アレク、デュラン、ララ、クリスに獣騎士5名が一カ所に集まり、アイリとシークが手を繋いで魔法を発動させる。
「「影渡り」」
全員がとぷんっと影に沈み、その姿が王宮の一室から一瞬で消えた。
「⋯あの子達が過保護に守られる筈だ。いい大人に保護して貰ったな。⋯さて、私も王としてこの件をしっかりと片付けなくてはな。」
アイリ達を見送ったラオールは、王としての責務を果たす為従者を引き連れ部屋を後にした⋯。
突然どこからかアイリの声が聞こえ、最初会いたすぎるがゆえの幻聴かと思ったルークだが、影渡りの魔法を思い出しすぐに人気のない場所に移動した。
すると案の定、ルークの影からアイリが出てきた。
「ルークしゃん。たいへんなの~!」
アイリの第一声に何事かと問い質したい所だが、それよりも重大なことに目が向いた。
「アイリっ!?その格好は⋯!」
そう。アイリは王妃様の所に赤ちゃんを見に行った時の格好そのままで、黒い猫耳と尻尾をつけたままだったのだ。
話を聞かなければとは思ったが、とりあえずこんな所でアイリのこんな愛らしい姿を晒すわけにはいかない、と例のローブで姿を隠した。
勿論ルークにはローブの効果は効かない。一人で猫耳アイリを堪能し放題だ。
ここで漸く、他のメンバーも集めアイリから話を聞くことに。
アイリから簡単にエルモンドとリオが捕まった話を聞き、とりあえず急いで王宮に戻って欲しいとの陛下からの伝言を聞いて、一同はアイリの影魔法で王宮のミリーナの元まで移動した。
部屋には既にラオールと、救出に向かう為に集められた信頼の置ける獣騎士数名がおり、今後の対応を話し合う。
念の為防音結界を張ってルークが口を開いた。
「ふぅ⋯アイリには言いたいことも聞きたいこともいっぱいあるんだが⋯。とりあえず、アイリの話だと連れて行かれたリオ達の場所まで同じ様に影魔法で移動出来るらしい。ただ、いきなりリオ達のいる場所まで移動するのは危険だ。まずは近くまで移動して建物内の様子を探る方がいいだろう。」
ルークの言葉に頷き、後を引き継いだラオールが話す。
「建物内の様子を探るのは我が獣騎士に任せてくれ。特に潜入を得意とした者を揃えた。アイリには建物の近くまで彼らを移動させて貰いたい。」
「まかせてなのっ!」
やる気満々のアイリに、皆の表情が和らぐ。
「建物内の詳細が分かったら、魔法で俺達も移動して一気に中を制圧する。アイリはエルモンド殿下の側に移動して殿下と一緒に安全な場所に避難するんだ。側にリオも居れば一緒に行動してくれ。」
「あいっ。」
正直、ここまで明確な対策を立てられたのは、アイリの魔法が優秀過ぎるからである事は誰の目にも明らかだった。
それは普段魔法にあまり縁のないラオールや獣騎士達にも伝わっているのだろう。少数精鋭にしてくれたラオール側の配慮はルークにも分かった。
分かったからこそ、今回アイリに影魔法を使わせる事を容認したのだ。
しかし今回の鍵となるアイリの影魔法だが、できる事ならあまり人の目に触れさせたくはない。
そこで、定期連絡の予定より少し早いがシークに連絡を取ることにした。
「アイリ、この手紙をシークに届けてくれないか?」
これは以前シークが見せた『シャドー君(仮)』と同じ魔法で、あの後「アイリもできるよ~」とサラッと言われたのだ。
⋯俺のパーティーの子供達が規格外すぎる。
しかし今回ばかりは優秀な子供達に感謝した。
シークに手紙を届けてから然程時間も経たない内に、シークがアイリの影から現れた。
突然現れた人物に獣騎士達は警戒を滲ませるが、ルークの説明で警戒を解いた。
「シーク、よく来てくれた。今回お前にもちょっと手伝って欲しくてな。」
「大丈夫⋯。手紙はジーニアさんにも、見せてきたから。」
人見知りのシークは、相変わらずフードを被ったままボソボソと小声で話している。
「シークしゃん。久しぶり~!」
「⋯っ!?アイリ⋯その格好。⋯似合ってる。可愛い。」
王宮に戻り、室内では流石にローブを脱いでいたアイリの猫娘格好にシークもいち早く反応した。
「ミリーナさんも⋯似合ってます。アイリとお揃いなんですね。」
「シークくん、ありがとう。⋯でも、私には触れないで⋯」
部屋の端の方でひっそりと隠れていたミリーナに気付いたシークは、アイリと同じ様に声をかけたのだが、どうやら触れてはいけなかったらしい。
「やっぱり、救出に向かう前に私着替えて⋯」
「いや、救出に向かうのなら寧ろそのままの方が獣人に紛れられていいだろう。念の為もう一度匂い消しをつけて向かうといい。」
「ゔっ⋯⋯はぃ⋯」
ミリーナは自分の格好をこれ以上メンバーに見られるのは耐えられなかったのだが、ラオールに言われてしまえば反論出来るはずもなく、渋々受け入れた⋯。
「よし、では一度皆でシロのいる場所に移動しよう。」
隠し通路の先にはシロちゃんが残っているので、そこまでの移動もアイリとシークの魔法で可能だった。
アイリは念話でシロちゃんに今から移動することを伝え、人数も多い為広い場所で待機していてもらう。
ルークとミリーナ、アレク、デュラン、ララ、クリスに獣騎士5名が一カ所に集まり、アイリとシークが手を繋いで魔法を発動させる。
「「影渡り」」
全員がとぷんっと影に沈み、その姿が王宮の一室から一瞬で消えた。
「⋯あの子達が過保護に守られる筈だ。いい大人に保護して貰ったな。⋯さて、私も王としてこの件をしっかりと片付けなくてはな。」
アイリ達を見送ったラオールは、王としての責務を果たす為従者を引き連れ部屋を後にした⋯。
179
お気に入りに追加
8,921
あなたにおすすめの小説

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています
ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら
目の前に神様がいて、
剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに!
魔法のチート能力をもらったものの、
いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、
魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ!
そんなピンチを救ってくれたのは
イケメン冒険者3人組。
その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに!
日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。
『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。
もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです!
そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、
精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です!
更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります!
主人公の種族が変わったもしります。
他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので
そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。
面白さや文章の良さに等について気になる方は
第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました

夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します
もぐすけ
ファンタジー
私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。
子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。
私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる