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第三章 セイラン王国編
ひとまずの事件解決
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クリスの提案でエルフの里に向かう事を決めた一同は、今後の行動を話し合っていた。そうして話し合いが落ち着いた頃、王宮の獣騎士が王からの伝言を伝えに来た。
捕まえた誘拐グループの事情聴取は現在進行系で行っているが、ルーク達が踏み込んだ建物からライオネル公国の物と思われる証拠品が複数見つかったそうだ。
そして詳しく話を聞きたいとラオールからの呼び出しを受けた。
そのまま獣騎士に案内され、ラオールが待つ部屋へと向かう。
今回向かったのはルークとクリスとデュラン、そしてジーニアとシークが一緒だ。他のメンバーは別の部屋を用意され、そこで休んでもらっている。
アイリは幼い身体にこれ以上無理をさせない為、ミリーナとシロちゃんの部屋で一緒に休ませ、念の為部屋には護衛とお世話係としてアレクとサニアとリヒト、ララとルイザが残ってくれた。
案内された部屋にはラオール王とフェリシア王妃、エルモンド殿下が勢揃いしており、ルーク達全員が椅子に腰を掛けたところでラオールが最初に口を開いた。
「まずはエルモンドを無事に救出してくれた事、心から感謝する。」
言葉に合わせてラオールが頭を下げると、フェリシアとエルモンドも揃って頭を下げてきた。
王族が他者に簡単に頭を下げることはあってはならないが、今回の事件はエルモンドの救出だけでなく同胞の解放や、長年煩わされていた王宮の膿を一掃する機会を得たのだ。
今回捕まえた中にいた魔道士は、調べるとライオネル公国の人間であることが分かった。人族至上主義で獣人を奴隷扱いしている国ならではの考えで、魔力の少ない獣人を捕まえ、魔導具で洗脳し都合よく操っていたのだろう。
リューン帝国側で誘拐に関わっていた獣人との照らし合わせなどは、まだこれからだ。
そして今回の事件で一番ラオールが懸念していたのが、反対派である一部の上層部とこの誘拐事件の繋がりが判明したことだった。
「今回のことは、我が国内の問題であったにも関わらず其方たちには大変世話になってしまった。これから問題を起こした者達の粛清も行っていく。そしてミリーナ殿とシロちゃん殿の件も部下から聞いておる。我々にできる事があれば何でも協力させてもらうゆえ、遠慮なく言ってくれ。」
ラオールの言葉に、ルークは先程自分達が話し合ったことを伝えた。
「陛下ありがとうございます。ミリーナとシロは“闇魔法”による攻撃を受けて、意識が戻らず眠った状態となっているみたいです。闇属性についてはまだ解明されていないことも多い為解除も難しく、我々はクリスの案内でエルフの里に向かい、エルフ達の知恵を借りれないか交渉してくるつもりです。その間、こちらでミリーナとシロのお世話をお願いできないでしょうか?」
「そうか⋯エルフの里に。そちらに関しては我々が力に慣れそうもないが、交渉が上手くいくことを願っておる。ミリーナ殿とシロちゃん殿の安全と身の回りの世話は、我が名において約束しよう。」
それから今後の事も含めて軽く話し合いが行われ、ルーク達は準備が整い次第エルフの里に出発する事となった。
ラオールは急遽増えた他の冒険者達の宿も手配してくれ、王宮にはルーク達オブザーク王国組が泊まれるよう部屋を準備してくれた。
ラオール達との話し合いが終わったルークは、アイリの眠る部屋へと向かった。
ずっと側にいたミリーナとシロちゃん二人が意識のない状態となってしまったのだ。それが幼いアイリの心にどれ程のショックを与えたのか⋯
部屋に入りベッドに向かうと、真っ赤に目を腫らして泣いていたアイリは、まだ若干目元が赤いが今は穏やかな寝息をたてていた。
「⋯ずっとシロちゃんとミリーナさんの側を離れなくて、眠ってからも時折涙を流していました。今は泣き疲れたのか深い眠りについたみたいで、落ち着いています。」
アイリの側についていたルイザが低く落とした声でルークに伝えると「起きたら水分を取らせてあげてください」と伝言を残し、部屋をあとにした。
「アイリ⋯悲しませてしまってすまない。笑顔を守ると誓ったのに、こんなにも泣かせてしまった。やはり、今回の任務に連れてきたのは間違いだったのか⋯」
ルークは後悔の念に駆られていた。
これからも、危険な任務が続くだろう。仲間の誰が傷付いても、アイリはきっと悲しむ。そして今回新たに現れた『謎の少年』に関しては、強力な闇属性持ちだと判明しているが、それ以外の情報が全くない。
何が目的なのか?ライオネル公国と関係があるのか?謎に包まれたままだ。
今現在、闇属性に関して使える魔法は謎が多いとされている。それは闇属性が希少すぎるのと、危険な魔法が多いとされ忌避されてきたからだ。しかし、長寿で魔法にも精通しているとされるエルフ族の中には、自分達の知らない闇属性の知識を持つ者がきっといるだろう。
あとはどうやってあのエルフ族の心を開かせるかだが⋯
一筋縄ではいかないエルフ族から何としてでも話を聞き出すしかない。
ミリーナとシロちゃんの魔法を解除するのは勿論だが、『謎の少年』に対抗する為にも闇属性に関して少しでも情報が必要だった。
ルークは、今まで自分一人の身を守る為に鍛錬を積み強くなってきた。そしてS級冒険者となり自他共に認める程強くなったと思っていたが、まだまだ足りなかったのだと今回痛いほど痛感していた。
それは他の庇護する者達も同じ気持ちだろう。
実際に、今回の一番の功労者はアイリとシーク達子供組だ。
日々急成長を遂げる子供達に、これ以上情けない大人の姿は見せられない。
ルークは眠るアイリのあどけない寝顔を見つめながら、『守る者』として自身も更に強くなることを心に誓った。
捕まえた誘拐グループの事情聴取は現在進行系で行っているが、ルーク達が踏み込んだ建物からライオネル公国の物と思われる証拠品が複数見つかったそうだ。
そして詳しく話を聞きたいとラオールからの呼び出しを受けた。
そのまま獣騎士に案内され、ラオールが待つ部屋へと向かう。
今回向かったのはルークとクリスとデュラン、そしてジーニアとシークが一緒だ。他のメンバーは別の部屋を用意され、そこで休んでもらっている。
アイリは幼い身体にこれ以上無理をさせない為、ミリーナとシロちゃんの部屋で一緒に休ませ、念の為部屋には護衛とお世話係としてアレクとサニアとリヒト、ララとルイザが残ってくれた。
案内された部屋にはラオール王とフェリシア王妃、エルモンド殿下が勢揃いしており、ルーク達全員が椅子に腰を掛けたところでラオールが最初に口を開いた。
「まずはエルモンドを無事に救出してくれた事、心から感謝する。」
言葉に合わせてラオールが頭を下げると、フェリシアとエルモンドも揃って頭を下げてきた。
王族が他者に簡単に頭を下げることはあってはならないが、今回の事件はエルモンドの救出だけでなく同胞の解放や、長年煩わされていた王宮の膿を一掃する機会を得たのだ。
今回捕まえた中にいた魔道士は、調べるとライオネル公国の人間であることが分かった。人族至上主義で獣人を奴隷扱いしている国ならではの考えで、魔力の少ない獣人を捕まえ、魔導具で洗脳し都合よく操っていたのだろう。
リューン帝国側で誘拐に関わっていた獣人との照らし合わせなどは、まだこれからだ。
そして今回の事件で一番ラオールが懸念していたのが、反対派である一部の上層部とこの誘拐事件の繋がりが判明したことだった。
「今回のことは、我が国内の問題であったにも関わらず其方たちには大変世話になってしまった。これから問題を起こした者達の粛清も行っていく。そしてミリーナ殿とシロちゃん殿の件も部下から聞いておる。我々にできる事があれば何でも協力させてもらうゆえ、遠慮なく言ってくれ。」
ラオールの言葉に、ルークは先程自分達が話し合ったことを伝えた。
「陛下ありがとうございます。ミリーナとシロは“闇魔法”による攻撃を受けて、意識が戻らず眠った状態となっているみたいです。闇属性についてはまだ解明されていないことも多い為解除も難しく、我々はクリスの案内でエルフの里に向かい、エルフ達の知恵を借りれないか交渉してくるつもりです。その間、こちらでミリーナとシロのお世話をお願いできないでしょうか?」
「そうか⋯エルフの里に。そちらに関しては我々が力に慣れそうもないが、交渉が上手くいくことを願っておる。ミリーナ殿とシロちゃん殿の安全と身の回りの世話は、我が名において約束しよう。」
それから今後の事も含めて軽く話し合いが行われ、ルーク達は準備が整い次第エルフの里に出発する事となった。
ラオールは急遽増えた他の冒険者達の宿も手配してくれ、王宮にはルーク達オブザーク王国組が泊まれるよう部屋を準備してくれた。
ラオール達との話し合いが終わったルークは、アイリの眠る部屋へと向かった。
ずっと側にいたミリーナとシロちゃん二人が意識のない状態となってしまったのだ。それが幼いアイリの心にどれ程のショックを与えたのか⋯
部屋に入りベッドに向かうと、真っ赤に目を腫らして泣いていたアイリは、まだ若干目元が赤いが今は穏やかな寝息をたてていた。
「⋯ずっとシロちゃんとミリーナさんの側を離れなくて、眠ってからも時折涙を流していました。今は泣き疲れたのか深い眠りについたみたいで、落ち着いています。」
アイリの側についていたルイザが低く落とした声でルークに伝えると「起きたら水分を取らせてあげてください」と伝言を残し、部屋をあとにした。
「アイリ⋯悲しませてしまってすまない。笑顔を守ると誓ったのに、こんなにも泣かせてしまった。やはり、今回の任務に連れてきたのは間違いだったのか⋯」
ルークは後悔の念に駆られていた。
これからも、危険な任務が続くだろう。仲間の誰が傷付いても、アイリはきっと悲しむ。そして今回新たに現れた『謎の少年』に関しては、強力な闇属性持ちだと判明しているが、それ以外の情報が全くない。
何が目的なのか?ライオネル公国と関係があるのか?謎に包まれたままだ。
今現在、闇属性に関して使える魔法は謎が多いとされている。それは闇属性が希少すぎるのと、危険な魔法が多いとされ忌避されてきたからだ。しかし、長寿で魔法にも精通しているとされるエルフ族の中には、自分達の知らない闇属性の知識を持つ者がきっといるだろう。
あとはどうやってあのエルフ族の心を開かせるかだが⋯
一筋縄ではいかないエルフ族から何としてでも話を聞き出すしかない。
ミリーナとシロちゃんの魔法を解除するのは勿論だが、『謎の少年』に対抗する為にも闇属性に関して少しでも情報が必要だった。
ルークは、今まで自分一人の身を守る為に鍛錬を積み強くなってきた。そしてS級冒険者となり自他共に認める程強くなったと思っていたが、まだまだ足りなかったのだと今回痛いほど痛感していた。
それは他の庇護する者達も同じ気持ちだろう。
実際に、今回の一番の功労者はアイリとシーク達子供組だ。
日々急成長を遂げる子供達に、これ以上情けない大人の姿は見せられない。
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