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第ニ章 記憶喪失の転生幼女〜幼女×モフモフは最強説!?
リューン帝国からの冒険者
しおりを挟むセイラン王国から派遣されたデュラン達冒険者の到着から少し遅れること1週間、リューン帝国からの冒険者パーティーもカンザックのギルドへと到着した。
漸く揃った今回の任務の参加者達はギルドの広い会議室を借りて、顔合わせを兼ねた今後の作戦会議を行う事にした。
まずは先にすっかり打ち解けた様子のルークとデュラン達が代表して自国のパーティーメンバーを紹介し、次にリューン帝国の冒険者パーティーのリーダーと思われる男が挨拶を始めた。
「まず先に、到着が遅れた事をお詫びします。数多くいる冒険者の中から今回の任務に適した者を集めるのに少々骨が折れまして。それに我々は同族意識が高いので、他の種族と組んでも問題ない者で今回はパーティーを組んでいます。実力は申し分ないメンバーですから、そこは安心して下さい。」
先にそう言って前置きをすると、そのまま自己紹介をしていった。
「私は今回のパーティーでリーダーを務めることになりました、クリスです。こう見えて一応ルークさんと同じS級冒険者です。宜しくお願いします。」
自分でも言うように、お世辞抜きにもとてもそんな強そうには見えない。
背は高くスラッとしており、筋骨隆々の他の冒険者と比べても見た目年齢的にも、サニアと変わらないくらい若くて程良い筋肉のついた好青年と言う風貌だ。
そしてS級冒険者ともなると、ルークのように他国にも名前は届くはずだが、そう言った名前を聞いたことがなかった。
そんなルーク達の、ちょっと訝しむ空気を遮るようにアイリが言葉を放った
「⋯クリスしゃんは、ひとぞくじゃないんでしゅか?」
その言葉に、クリスだけでなく他の冒険者も微かに目を見開いた。
「この子は⋯?あ、いえ。そうですね。いずれ分かることですし、別に隠している訳じゃないんです。私はこの通り⋯エルフなんですよ。」
そう言って横を向くと、髪の間から長く尖った耳を見せてくれた。『別に隠している訳じゃない』と言うとおり、特段帽子などを被っている訳でもない。
「えりゅふしゃん!本でみたけど、ほんとにきれーなの!」
エルフは特徴的な耳を持ち、色白で美形が多いと言われているが、その殆どがエルフの森から出て来ない為謎に包まれた種族だ。こうして外に出ていくのは腕に自信のあるものか、よっぽど好奇心旺盛なモノ好きだけらしい。
かく言うクリスも、大人しそうな見た目によらず、外の世界に興味を覚えて家出同然に里を飛び出したタイプだ。
「君みたいな可愛い子に綺麗と言ってもらえるなんて光栄だよ。」
先程まで何処か冷たい印象だったクリスの表情が、ほんの少しだけだけ柔らかく見えた。
クリスの肌は透き通るように白く、煌めく様な白い髪と透き通った青い瞳がまるで人形の様に整いすぎて、どこか冷たい印象に見せていた。
事実、一緒に来ていた冒険者達もクリスの笑った所なんて見たことも無かった。
それをほんの少し話しただけの幼女が、まるで春風が氷を溶かしたかのようにクリスの雰囲気を柔らかくした。
「ん゛んっ⋯紹介の続きをお願いしても?」
傍から見ると儚い美しさを持つ美青年と美幼女の見つめ合う、絵になり過ぎな2ショット。
すかさずルークがアイリを抱きかかえ、わざとらしく咳をして先を促す。
そんなルークの態度も気にせず、クリスは紹介を続けた。
「そうでしたね⋯。では次に、彼は龍人族のリヒト。そして隣の彼女が彼の番で同じ冒険者メンバーのルイザです。ルイザは人族ですよ。」
クリスの紹介に合わせて、一際ガタイの良い大柄な男性が軽く頭を下げた。
リヒトは正に龍人らしい体躯で、アレクよりも更に大きくて筋肉の塊だ。
表情も厳つく、所謂極悪人顔とも言え、頭の両サイドからは大きな角が生えている。大人でも近寄り難い見た目で、間違いなく子供にとっては恐怖の対象だろう。
周りはアイリの反応を固唾を呑んで見守る。
「リヒトしゃん⋯⋯」
ゴクッ⋯⋯
「アレクしゃんよりおっきぃのー!!きんにくもしゅごいの!そのツノもかっこいいのー!」
キャッキャと笑顔を見せたアイリに、一同はホッと胸を撫で下ろす。
しかし、リヒトは未だにアイリの反応に戸惑いを隠せない。
同性にすら怖がられる存在の自分が、番以外の異性に⋯ましてや幼い子に受け入れられるとは想像も出来なかった。
今回の任務にもギリギリまで参加を渋っていたのは、幼い女の子がいると聞いていたからだ。しかし蓋を開けてみれば、怖がるどころかアイリは興味津々とばかりに目をキラキラさせてリヒトを見上げてくる。
隣で見守っていたルイザも、未だに戸惑っているリヒトの手を取って声をかけた。
「リヒト⋯よかったね。陛下の仰ったように、アイリちゃんは見た目で怖がるような子ではなかった。」
「あぁ、本当だな。⋯アイリ、俺が怖くないか?」
リヒトが膝を付いて目線を下げて問いかければ、アイリはコテンッと首を傾げて不思議そうな顔をする。
「リヒトしゃんがこわい⋯?どぉして?」
逆に「どぉして?」と聞かれてしまい、リヒトは困ってしまう。
「その⋯体が大きいし、顔も⋯怖いだろう?」
「ん~よくわかんない。じゅうじんのみんなも、おうしゃまも、リヒトしゃんもやしゃしい人ばっかり。みんなあったかいの。」
アイリの言葉に全員が優しい目を向ける。
こんな幼い子の方が、よっぽど人の本質を見抜く目を持っている。
その言葉を聞いてリヒトも漸く納得いったのか、後で一緒に遊ぼうと約束をしていた。実はリヒトもかなりの子供好きだった。
余談だが、暫くアイリはリヒトに肩車をして貰って遊ぶのにハマっていた。
いつもよりも高い目線と、落ちないようにと持つ事を許されたリヒトの角の感触が気に入ったらしく、事あるごとにリヒトに肩車をして貰っていた。
そのまま町を散歩していた際には町の人にギョッとした目で見られていたが、楽しそうにしているアイリに和まされ、町の人にもリヒトは温かく迎えられていたとか⋯⋯
さて話は戻り、待ちきれないとばかりにクリスの隣にいた男の子?が元気な声で自己紹介を始めた。
「ねぇねぇ、次は僕が挨拶していい?初めまして。僕はリオ。ドワーフと人族の亜人なんだ。こう見えてもそこら辺の男の子より力は強いし魔力も多いんだよ。最近B級になったばかりでこんな大きな任務に参加できるなんて嬉しいな。期間限定だけど、宜しくね!」
リオと名乗った男の子は、褐色の肌に焦茶色の髪で背丈はシークと同じくらいだ。そして一際目を引いたのが、まるでエメラルドのように煌めくグリーンの瞳だった。
ドワーフには褐色肌が多く、瞳の色は人族の母親譲りらしい。とても元気な人懐っこい少年と言う印象だ。
その後再びクリスによって紹介されたのは、ずっとニコニコ優しい表情を浮かべて皆を見ていた男性だった。
「彼はタモ。B級冒険者で、冒険者歴は長く主に交渉事を任せています。補助系魔法が得意で、剣術も卒無くこなしますよ。」
何でも、お国柄種族意識が高い為、依頼を受ける時や他とパーティーを組む時に円滑に進むよう、人族の交渉役をパーティーメンバーに入れるのがリューン帝国では暗黙のルールらしい。
タモは長年の冒険者経験で他種族からの信頼もあり、これまで数多く交渉事を纏めている。今回のように他国との合同パーティーにはうってつけの人材だったのだ。
「タモです。ルークさんのご活躍は聞き及んでおります。まさかパーティーを組まれて、こんな幼い子や他にもまだ若い子達までいるとは驚きましたが、我々も出来る限り協力していきますので、何でも仰って下さい。」
親切に子供達にも気を遣ってくれ、協力を惜しまないと言ってくれるタモに好感は持てるものの、何処か引っかかりを覚えるルーク。
しかし他のメンバーや獣人達もにこやかに挨拶を交わしている為、ルークはそれ以上何も触れずに挨拶を交わした。
「⋯これで全員の自己紹介は終わったな。では、このまま今回の任務についての内容と、作戦を話し合いたいと思う。」
皆は各自席につき、アイリもミリーナの隣に大人しく座っている。
いよいよ、聖獣白虎の番奪還とセイラン王国の獣人達救出に向けての話し合いが始まった。
※年明け最初の本編の更新です。
中々時間がとれずに遅くなってしまいましたが、今後も楽しんで頂けるように頑張っていきます。
今年も宜しくお願い致します♪
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