34 / 59
第ニ章 記憶喪失の転生幼女〜幼女×モフモフは最強説!?
獣人冒険者パーティー
しおりを挟むニ日間に渡る三国間会議は無事に話が纏まり、結果ルーク率いる冒険者パーティーと、セイラン国リューン帝国の冒険者パーティーとの三国合同で任務に当たる事になった。
各国の王達は昼食会まで滞在すると、それぞれ国に帰る準備を始めた。
急に予定された会議であった為、あまり滞在期間に余裕を持たせられなかったのだ。
王都の街でも隣国の王達を見送ろうと沢山の人が集まり、アイリ達も特別に王宮前の広場でお見送りに参加した。アイリの両隣にはミリーナとシークがおり、その後ろにアレクとサニアが立って護衛をしている。
ルークは陛下と共に各王や外交官に挨拶をしており、ジーニアも顔馴染みがいたのかそちら側にいた。
セイラン王国の馬車が到着しそれぞれが乗り込む中、ラオール王はアイリに気付くと近くまでやって来て声をかけた。
「先日の⋯アイリと言ったか?其方は獣人を怖がらないのだな。私の事も、怖くはないか?」
なるべく威圧しないようにだとは思うが、王が膝を曲げて目線を下げてアイリに話し掛けたのを、アイリの側にいた者を含めセイラン王国の外交官達も皆驚いて見ていた。
「こわくないでしゅよ。おうしゃまはとってもかっこいいでしゅ♪」
アイリは話しかけられて嬉しかったのか、ほっぺに両手を当ててモジモジ照れながら言った。
その様子にラオールも目尻を下げ、愛しそうに見つめる。
恐る恐るアイリの頭に手をおくと、艷やかな髪をそっと撫でた。
「またいつか会おう。我が国に遊びにくる機会があれば、城にも立ち寄るといい。歓迎するぞ。」
「あいっ!あしょびに行きましゅね。やくしょくでしゅ。」
そう言ってアイリは、ラオールの大きな小指に自分の小さな小指⋯が届かず掌でキュッと包んで「やくしょく」とにっこり笑った。
「あぁ、約束しよう。」
ラオールとアイリのやり取りを見ていたセイラン王国の外交官達は、複雑な表情を浮かべる者もいたが、殆どが温かい視線を注いでいた。
ラオールは立ち上がり他の人にも軽く挨拶をしながら馬車に乗り込んだ。
その際、再びアイリに視線を向けると大きく手を振ってこちらを見送ってくれていた。
ラオールも片手を上げてそれに応えると、馬車は出発し祖国を目指した。
その様子を伺っていたオルビスも自身の挨拶を済ませると、恙無く馬車に乗り込み出発した。
そして王達が去った後、アイリの周りにいた大人達はアイリのとんでもない人たらし具合に頭を抱えていたが、シークはどこか楽しそうにその様子を見ていた。
後からアイリとラオール王のやり取りを聞いたルークは、暫くアイリを人目に触れさせない方法を本気で思案していたとかなんとか⋯⋯
それはさておき、会議で決まった事をルークは皆を集めて説明する事にした。
シリウスにも話を通す為、ギルドの会議室を借りてそこで今後のことを話し合う。
他の国の冒険者とも合同で任務を行う為、まずは冒険者同士の顔合わせと作戦を共有する必要がある。
その為カンザックの冒険者ギルドに各国を代表した冒険者パーティーが訪れる事になった。
「今回の任務、合同パーティーと言う事で大人数になるが、責任者は俺になる。これまでも魔の森の討伐関連で他国と合同パーティーを組んだことはあるが、今回の任務にはアイリやシークも同行する。シークの属性については既に知られているだろうが、アイリに関しては水属性だけと言うことにしている。出来るだけ他の能力は隠す方向で動いてくれ。シロも俺の従魔と言うことで話している。登録も俺がしているから問題はないだろうが、契約の事は口にしないように気をつけてくれ。」
ルークの言葉に皆が頷く。
ルーク達は、アイリやシークを守る為にいくつかの約束事を予め決めていた。
一つ、アイリの魔法は水属性のみ使用可能。どうしても他の魔法を使う必要があった場合はルークかジーニアが判断。いなかった場合はその場にいる年長者が判断すること。
二つ、シークが上級魔法を使える事は箝口令が敷かれた為外には知られていないが、もし使う状況になった場合はルークかジーニアが判断する。いなければその場にいる年長者が判断すること。
三つ、シロちゃんに関しては基本幼獣姿で過ごし、いざという時は成体になってアイリと一緒に逃げる事を優先させる。(シロちゃんの首輪には、居場所探知機能が追加されていた)
「シークは冒険者でいてもおかしくない年齢だが、アイリに関しては幼いからと反対される可能性もある。だが、アイリを一人置いていく訳には行かない。念には念を入れて色々装備させているが、皆気を引き締めてアイリを守ってくれ。(アイリがやらかさないように見張るんだ!)」
皆ルークの心の声にしっかりと頷いた。
それから他の冒険者と合流するまで、アイリとシークはそれぞれ魔法の特訓をして、お互いのオリジナル魔法を密かに編み出していた⋯
そうして三国間会議から数週間後、遂にセイラン王国から獣人の冒険者パーティーがカンザックのギルドに到着した。
カンザックの冒険者ギルドには、人族以外にも亜人や獣人の冒険者も多く在籍している。
その為特に抵抗もなく、セイラン国の獣人冒険者達は受け入れられていた。
「ようこそ、カンザックの冒険者ギルドへ。私はここのギルド長をしております、シリウス・オルモンドと申します。そしてこちらが今回の任務の責任者であるルークです。」
「俺が今回の任務の責任者を務めるルークだ。宜しく頼む。」
シリウスとルークの挨拶に続いて、獣人冒険者を代表してパーティーのリーダーである豹の獣人が口を開いた。
「俺はセイラン王国から派遣されてきたこのパーティーのリーダー、デュランだ。隣から順に兎の獣人ラビ、犬の獣人ウルド、鷹の獣人グラン、そして双子の鼠の獣人ララとルイだ。ちなみに俺は豹の獣人だ。今回ルークさんと一緒に任務が出来ること光栄に思う。宜しく頼む。」
ルークの事を知っている冒険者からすれば、あの憧れのS級冒険者との合同任務だと浮かれているだろうが、デュラン達は自分達の役目をしっかりと把握しており、同胞の救出と真相を探る為ベストメンバーを揃えて気を引き締めてきていた。
「こちらこそ、君達の身体能力には期待している。俺のメンバーは明日改めて紹介させて貰う。今日は移動の疲れを少しでも癒やしてくれ。」
互いに軽い挨拶のあと、シリウスから滞在中の宿やギルド周辺の店のこと、鍛錬場の説明などをして、後日お互いのパーティーの顔合わせを約束してその日は解散となった。
そして翌日、アイリはルークにプレゼントされた服を身に着けてギルドに訪れた。
アイリの服は一見すると普通に可愛い上下のセットアップだが、伸縮性があり汚れにくい素材に、体温調節機能まで備わっている。更にルークとジーニア考案の魔法付与で物理攻撃にも対応しており、刃先も通さないアイリの服は値段が付けられない代物となっていた。
その上に羽織るポンチョのようなフード付きローブには軽い認識阻害がかかっており、フードを被って顔を隠せばハッキリと表情を認識出来ない。
ついでにアクセサリーとして身につけているルークとお揃いの腕輪には、シロちゃんと同様居場所探知機能が備わっている。
これで万が一アイリやシロちゃんが攫われても、ルークの腕輪が反応して居場所を突き止めることが出来る。
そして極めつけは以前王都で購入していた聖属性の魔石(王都でお買い物編参照)を加工して漸く仕上がったネックレスをアイリにプレゼントし、普段から見えないように服の中に入れて身に付けさせている。
勿論ネックレスにもルークの魔力が込められており、万全には万全を期しているがもしアイリが傷付けられる事があったら、直ぐに治癒と回復魔法が発動する仕組みとなっている。
ルークがこれでもかとアイリに惜しみなくお金を注ぎ込んだ結果、アイリの身につけている物だけで城の1つや2つ軽く建てられるだろう。
それはさておき、今日は獣人パーティーとの顔合わせだ。
ルークは、前回のセイラン国国王との対面でアイリが獣人に興味を持っていることを知り、正直会わせることに乗り気ではなかった。
しかしアイリも立派なパーティーメンバーであり今回の任務にも欠かせない存在である為、顔合わせは必須だ。
「はぁ⋯アイリ、このフードは被ったままでいてくれ。これ以上可愛いアイリを人目に晒したくない。」
「⋯?」
アイリにはいまいち伝わっていないが、とりあえず言われるままにフードを被って顔合わせへと向かった。
229
お気に入りに追加
8,921
あなたにおすすめの小説

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)
ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。
流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定!
剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。
せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!?
オマケに最後の最後にまたもや神様がミス!
世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に
なっちゃって!?
規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。
……路上生活、そろそろやめたいと思います。
異世界転生わくわくしてたけど
ちょっとだけ神様恨みそう。
脱路上生活!がしたかっただけなのに
なんで無双してるんだ私???

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています
ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら
目の前に神様がいて、
剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに!
魔法のチート能力をもらったものの、
いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、
魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ!
そんなピンチを救ってくれたのは
イケメン冒険者3人組。
その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに!
日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~
夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。
雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。
女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。
異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。
調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。
そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。
※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。
※サブタイトル追加しました。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました

夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します
もぐすけ
ファンタジー
私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。
子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。
私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる