記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子

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第ニ章 記憶喪失の転生幼女〜幼女×モフモフは最強説!?

獣人冒険者パーティー

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ニ日間に渡る三国間会議は無事に話が纏まり、結果ルーク率いる冒険者パーティーと、セイラン国リューン帝国の冒険者パーティーとの三国合同で任務に当たる事になった。

各国の王達は昼食会まで滞在すると、それぞれ国に帰る準備を始めた。
急に予定された会議であった為、あまり滞在期間に余裕を持たせられなかったのだ。

王都の街でも隣国の王達を見送ろうと沢山の人が集まり、アイリ達も特別に王宮前の広場でお見送りに参加した。アイリの両隣にはミリーナとシークがおり、その後ろにアレクとサニアが立って護衛をしている。
ルークは陛下リンカルトと共に各王や外交官に挨拶をしており、ジーニアも顔馴染みがいたのかそちら側にいた。

セイラン王国の馬車が到着しそれぞれが乗り込む中、ラオール王はアイリに気付くと近くまでやって来て声をかけた。

「先日の⋯アイリと言ったか?其方は獣人を怖がらないのだな。私の事も、怖くはないか?」

なるべく威圧しないようにだとは思うが、王が膝を曲げて目線を下げてアイリに話し掛けたのを、アイリの側にいた者を含めセイラン王国の外交官達も皆驚いて見ていた。

「こわくないでしゅよ。おうしゃまはとってもかっこいいでしゅ♪」

アイリは話しかけられて嬉しかったのか、ほっぺに両手を当ててモジモジ照れながら言った。
その様子にラオールも目尻を下げ、愛しそうに見つめる。
恐る恐るアイリの頭に手をおくと、艷やかな髪をそっと撫でた。

「またいつか会おう。我が国に遊びにくる機会があれば、城にも立ち寄るといい。歓迎するぞ。」

「あいっ!あしょびに行きましゅね。やくしょくでしゅ。」

そう言ってアイリは、ラオールの大きな小指に自分の小さな小指⋯が届かず掌でキュッと包んで「やくしょく」とにっこり笑った。

「あぁ、約束しよう。」

ラオールとアイリのやり取りを見ていたセイラン王国の外交官達は、複雑な表情を浮かべる者もいたが、殆どが温かい視線を注いでいた。

ラオールは立ち上がり他の人にも軽く挨拶をしながら馬車に乗り込んだ。
その際、再びアイリに視線を向けると大きく手を振ってこちらを見送ってくれていた。
ラオールも片手を上げてそれに応えると、馬車は出発し祖国を目指した。


その様子を伺っていたオルビスも自身の挨拶を済ませると、恙無つつがなく馬車に乗り込み出発した。
そして王達が去った後、アイリの周りにいた大人達はアイリのとんでもない人たらし具合に頭を抱えていたが、シークはどこか楽しそうにその様子を見ていた。

後からアイリとラオール王のやり取りを聞いたルークは、暫くアイリを人目に触れさせない方法を本気で思案していたとかなんとか⋯⋯



それはさておき、会議で決まった事をルークは皆を集めて説明する事にした。
シリウスにも話を通す為、ギルドの会議室を借りてそこで今後のことを話し合う。
他の国の冒険者とも合同で任務を行う為、まずは冒険者同士の顔合わせと作戦を共有する必要がある。
その為カンザックの冒険者ギルドに各国を代表した冒険者パーティーが訪れる事になった。

「今回の任務、合同パーティーと言う事で大人数になるが、責任者は俺になる。これまでも魔の森の討伐関連で他国と合同パーティーを組んだことはあるが、今回の任務にはアイリやシークも同行する。シークの属性については既に知られているだろうが、アイリに関しては水属性だけと言うことにしている。出来るだけ他の能力は隠す方向で動いてくれ。シロも俺の従魔と言うことで話している。登録も俺がしているから問題はないだろうが、契約の事は口にしないように気をつけてくれ。」

ルークの言葉に皆が頷く。
ルーク達は、アイリやシークを守る為にいくつかの約束事を予め決めていた。

一つ、アイリの魔法は水属性のみ使用可能。どうしても他の魔法を使う必要があった場合はルークかジーニアが判断。いなかった場合はその場にいる年長者が判断すること。
二つ、シークが上級魔法を使える事は箝口令が敷かれた為外には知られていないが、もし使う状況になった場合はルークかジーニアが判断する。いなければその場にいる年長者が判断すること。
三つ、シロちゃんに関しては基本幼獣姿で過ごし、いざという時は成体になってアイリと一緒に逃げる事を優先させる。(シロちゃんの首輪には、居場所探知機能が追加されていた)


「シークは冒険者でいてもおかしくない年齢だが、アイリに関しては幼いからと反対される可能性もある。だが、アイリを一人置いていく訳には行かない。念には念を入れて装備させているが、皆気を引き締めてアイリを守ってくれ。(アイリがやらかさないように見張るんだ!)」

皆ルークの心の声にしっかりと頷いた。

それから他の冒険者と合流するまで、アイリとシークはそれぞれ魔法の特訓をして、お互いのオリジナル魔法を密かに編み出していた⋯



そうして三国間会議から数週間後、遂にセイラン王国から獣人の冒険者パーティーがカンザックのギルドに到着した。
カンザックの冒険者ギルドには、人族以外にも亜人や獣人の冒険者も多く在籍している。
その為特に抵抗もなく、セイラン国の獣人冒険者達は受け入れられていた。


「ようこそ、カンザックの冒険者ギルドへ。私はここのギルド長をしております、シリウス・オルモンドと申します。そしてこちらが今回の任務の責任者であるルークです。」

「俺が今回の任務の責任者を務めるルークだ。宜しく頼む。」

シリウスとルークの挨拶に続いて、獣人冒険者を代表してパーティーのリーダーである豹の獣人が口を開いた。

「俺はセイラン王国から派遣されてきたこのパーティーのリーダー、デュランだ。隣から順に兎の獣人ラビ、犬の獣人ウルド、鷹の獣人グラン、そして双子の鼠の獣人ララとルイだ。ちなみに俺は豹の獣人だ。今回ルークさんと一緒に任務が出来ること光栄に思う。宜しく頼む。」

ルークの事を知っている冒険者からすれば、あの憧れのS級冒険者との合同任務だと浮かれているだろうが、デュラン達は自分達の役目をしっかりと把握しており、同胞の救出と真相を探る為ベストメンバーを揃えて気を引き締めてきていた。

「こちらこそ、君達の身体能力には期待している。俺のメンバーは明日改めて紹介させて貰う。今日は移動の疲れを少しでも癒やしてくれ。」

互いに軽い挨拶のあと、シリウスから滞在中の宿やギルド周辺の店のこと、鍛錬場の説明などをして、後日お互いのパーティーの顔合わせを約束してその日は解散となった。



そして翌日、アイリはルークにプレゼントされた服を身に着けてギルドに訪れた。
アイリの服それは一見すると普通に可愛い上下のセットアップだが、伸縮性があり汚れにくい素材に、体温調節機能まで備わっている。更にルークとジーニア考案の魔法付与で物理攻撃にも対応しており、刃先も通さないアイリの服は値段が付けられない代物プライスレスとなっていた。

その上に羽織るポンチョのようなフード付きローブには軽い認識阻害がかかっており、フードを被って顔を隠せばハッキリと表情を認識出来ない。
ついでにアクセサリーとして身につけているルークとお揃いの腕輪には、シロちゃんと同様居場所探知機能が備わっている。
これで万が一アイリやシロちゃんが攫われても、ルークの腕輪が反応して居場所を突き止めることが出来る。

そして極めつけは以前王都で購入していた聖属性の魔石(王都でお買い物編参照)を加工して漸く仕上がったネックレスをアイリにプレゼントし、普段から見えないように服の中に入れて身に付けさせている。
勿論ネックレスこちらにもルークの魔力が込められており、万全には万全を期しているがもしアイリが傷付けられる事があったら、直ぐに治癒と回復魔法が発動する仕組みとなっている。

ルーク親バカがこれでもかとアイリに惜しみなくお金を注ぎ込んだ結果、アイリの身につけている物だけで城の1つや2つ軽く建てられるだろう。


それはさておき、今日は獣人パーティーとの顔合わせだ。
ルークは、前回のセイラン国国王との対面でアイリが獣人に興味を持っていることを知り、正直会わせることに乗り気ではなかった。
しかしアイリも立派なパーティーメンバーであり今回の任務にも欠かせない存在である為、顔合わせは必須だ。

「はぁ⋯アイリ、このフードは被ったままでいてくれ。これ以上可愛いアイリを人目に晒したくない。」

「⋯?」

アイリにはいまいち伝わっていないが、とりあえず言われるままにフードを被って顔合わせへと向かった。
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