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第ニ章 記憶喪失の転生幼女〜幼女×モフモフは最強説!?
三国間会議 後編
しおりを挟むこうして白虎の番の奪還の話から、攫われたリューン帝国の子供達の保護に、犯罪に加担してしまった獣人の真相究明と救出にと様々な問題が浮上してしまい、この日の話し合いは一旦お開きとなった。
後日また会議を再開する事にして、各国の王達にはオブザーク王国に滞在する間王宮の貴賓室が充てがわれた。
話し合いの後、各王から聖獣白虎にも是非挨拶をしたいと言われ、シロちゃんを通して確認をとり会議に参加していた一行は保護している部屋へと向かった。
部屋にはアイリとシークもいて、どうやら一緒に遊んで待っていたようだ。
念の為近くにアレクとミリーナが控えており、ジーニアとサニアは王宮図書館で調べ物をしていた為席を外していた。
突然の王達の訪問に慌てたのはアレクとミリーナで、無邪気に白虎ママと遊んでいたアイリは不思議そうに首を傾げている。その相手をしていたシークも、突然大勢の人が現れて驚いてしまい、フードを被って顔を隠してしまった。
子供達がいるとは思わなかったルークは、近くにいたミリーナに声を掛けた。
「ミリーナ、アイリとシークを頼む。」
しかし、先にオルビス王の目に止まってしまった。
「おや、子供達は聖獣様と仲が良いのだな。この子達はどうしたのだ?」
「⋯はい。この子は私が後見人をしておりますアイリと申します。隣の少年はシークと言い、元王宮魔道士のジーニアが保護して育てております。共に王宮にきており、会議の間は自由に過ごさせていました。どうやらここで遊びながら待っていたようです。」
オルビス王に問いかけられたルークは、仕方なくアイリとシークを紹介した。
出来ればあまり子供達に興味を持たれたくなかったが、聞かれたのなら答えねばならない。
「あぁ、確かその少年が希少な闇属性を持っているとか?其方のパーティー結成の話は、隣国にまで届いておるからな。」
「えぇ、その通りです。ですがシークはまだ子供ですし、目立つのも人も苦手でして⋯。私のパーティーでジーニアと一緒に匿うことに致しました。」
「どうやらそのようだな⋯」
すっかりミリーナの後ろに隠れてしまったシークをチラッと見ると、オルビス王も苦笑しながらそれ以上は追求しなかった。
アイリはと言うと、さっきからライオンの獣人であるラオール王に興味深々だ。
ラオールは現在人型をとっているが、背が高くて体格も良く、黒の短い髪の間からライオンの耳が出ている。鋭い目付きに金の瞳は、目が合うだけで意図せず相手を怯ませてしまう為、子供には最も怖がられてきた。
しかし、それを全く感じさせない好意的なアイリの視線に、ラオールは内心驚いていた。
しかし、まずは聖獣へと挨拶をする為にオルビスとラオールは白虎の元へ近付くと軽く頭を下げた。
「初めてお目にかかります。私はリューン帝国国王オルビス・ドロイ・リューンと申します。此度の番様の件、微力ながらお力になりたいと思います。」
「お初にお目にかかります。セイラン王国国王ラオール・ジラスタと申します。此度の件、聖獣様の心痛お察し致します。」
それぞれの王の言葉に、聖獣白虎は柔らかな声で語りかける。
『リューン帝国国王、セイラン王国国王、お気遣いありがとうございます。私の夫と子供の事で、皆様にはご迷惑をお掛けします。どうか夫の救出にお力をお貸しください。それと、他の聖獣達の様子も気になります。そちらも気に掛けて頂けますか?』
聖獣白虎の言葉に王達は頷き、それぞれ自国の聖獣達の様子も確認することにした。
これは、各国に伝わる話だ。
この世界がまだ混沌としていた時代。四聖獣が現れ、それぞれ東西南北の土地に守護をもたらした。
各地に守護を与えられたことで漸く平和が訪れ、世界の均衡が保たれた。
その為各国が己の地の聖獣を崇ており、今でも大切に信仰しているのだ。
北の大地を守護する『翠亀』
西の大地を守護する『白虎』
南の大地を守護する『朱鳥』
そして東の大地を守護していた『青龍』
現在東の地は、ライオネル公国が作られた時に聖獣もその地を離れた。
その為青龍はどの地にも属さず、魔の森の泉でひっそりと暮らしている。
聖獣白虎と王達の挨拶が終わると、リンカルトに案内されそれぞれが部屋を出ようとした。
出る際ラオールがアイリにチラッと視線をやると、アイリはそれが嬉しかったのか、にっこり笑って「バイバイ」と手を振った。
その様子にラオールは軽く目を見開いたが、直ぐに目尻を下げ軽く手を振り返した。
それ見ていたセイラン国の外交官達は王のそんな姿に驚愕していたが、すぐに後を追って部屋を出ていった。
「しゃっきのおうしゃま、かっこいいの~!」
王や外交官達を部屋の外に誘導していたルークは、アイリのその発言にピシリと固まり、王達への見送りもそこそこにすぐに部屋に引き返すと、アイリに詰め寄った。
「アイリ⋯その、さっきの王様は随分と年上だし⋯アイリにはまだそーゆーのはちょっと早いんじゃないか?」
その様子にミリーナが呆れている。
「ルークさん、大人気ないですよ。アイリちゃんはきっと、獣人を初めて目にして気になっただけかと。」
「アイリは獣人がタイプなのか?俺もカッコイイって言われたいっ!」
「「「・・・・」」」
駄々を捏ね始めたルークに、ミリーナもアレクも、ついでにシークまで呆れている。
「⋯?ルークしゃんはいちゅもかっこいいでしゅよ?」
天使の言葉でルークは持ち直し、よっぽど空気の読める4歳児に大人達の方が助かっていた。
各部屋に案内された王達は、晩餐会までは自由に過ごした。
セイラン王国に充てがわれた部屋では、ラオールと外交担当の狐の獣人パポイが先程の会議の話しを振り返っていた。
ある程度今日の纏めと、明日の会議についての内容が決まったところで、パポイは先程の様子を思い返しながら、王に話しかけた。
「ところで先程の幼子⋯アイリと申しましたか?とても不思議な子でしたね。」
獣人に対して、初対面で恐れを抱かない幼子などそうそう見たことがなかった為、パポイの印象にも残ったのだ。
そして、それは王の態度にも表れていた。
「貴方様のあの様なお姿、初めて目に致しました。」
獣人は特に子供を大切に想う種族であり、それは王であるラオールにも当てはまるのだが、いかんせんライオンの獣人である為威圧感があり怖がられやすいのだ。
ラオールは本当は子供達ともっと触れ合い、遊びたいのだが⋯ラオールの威圧に怯まずに泣かない子供はいなかった。
しかしそんなラオールの威圧をものともせず、笑顔を浮かべて手を振っていた女の子。
「聖獣様も、あの子には特別な感情をお持ちの様子でしたし、周りの者が皆彼女の存在に癒やされているようでしたね。」
幼子に笑みを浮かべて手を振る王の姿など、自国では目にする事は叶わなかっただろう。
是非また機会があれば、幼子と触れ合う場を設けさせて欲しいと切実に願うパポイの心中を察してか、ラオールも頷き言葉を繋いだ。
「あの子は我々獣人にとっても、希望の光なのかもしれぬな。先代までずっと閉鎖的だった我が国では、まだまだ他種族⋯それも、人族に対して良い感情を持たないものも少なくはない。」
「⋯そうですね。今回の原因でもあるライオネル公国の人族には、我々獣人は随分と虐げられてきましたからね。恐らく今回の真相を調べれば、悪感情はより深くなるでしょう。」
「全ての人族が悪と言うわけではないが、中々根付いた感情と言うものは簡単には拭いきれない。しかし、あの子はそんな我々の感情ごとひっくり返す存在なのかもしれん⋯」
苦々しく答えたパポイに、それでもラオールは希望を見出していた。
※週末何かと多忙でして、中々更新出来ずにすみません(* > <)⁾⁾
ちょいモブの狐の外交官役に、読者様のぱいぽさんのお名前を少しいじって採用させて頂きました♪
他にも使ってどうぞ!と言う方はコメント頂ければ候補として検討していきます(笑)
ちょっとアレンジしても難しそうな場合は、すみません⋯^^;
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