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第ニ章 記憶喪失の転生幼女〜幼女×モフモフは最強説!?
三国間会議 前編
しおりを挟む聖獣様の話を聞いたルーク達は、ひとまず巣穴に結界と認識阻害の魔導具を設置し、一旦ギルドに戻ることにした。
ギルドに着くと、ルークは状況をすぐに手紙に認め、王宮に遣いを出した。直ぐに陛下が動くだろう。
シロちゃんには一旦巣穴で待機して貰い、母親の様子を見てもらいながら、こちらの準備が整い次第迎えに行くことにした。アイリとシロちゃんは契約で結ばれている為、例え離れていても念話による意思疎通が可能だ。
あちらに何かあれば直ぐに知らせて貰い、こちらからも連絡を取ることができる。
王宮へと手紙を出したあと、ルークはシリウスにも今回の聖獣の番の件を話した。
ルーク率いるパーティーメンバーは、今後聖獣の番の奪還をメインに動く事になるだろう。そして聖獣の子供であるシロちゃんを守る役目も負っている。
他の依頼を受ける余裕がなくなる為、予めシリウスには調整を頼んでおいた。
恐らく他国のギルドとも今まで以上に連携をとって対応にあたることになるだろう。
それから割と直ぐに王宮から聖獣様の保護の準備が出来たと連絡があり、アイリからシロちゃんにその事を伝えてもらった。
そして王宮から派遣された騎士数名を引き連れてルーク達一同は再び巣穴へと向かった。
流石に大型の白虎と幼獣を引き連れての移動は目立つ為、王宮からは豪華な荷馬車を送ってもらい、そこに聖獣様を乗せて丁重に運ぶことにした。
シロちゃんは幼獣姿でアイリに抱っこされて満足そうにしている。
一同が王宮まで辿り着くと、陛下や宰相など国の上層部の者たちが出迎え、聖獣様を手厚く歓迎した。
聖獣様は物理・魔法防御結界をかけた綺麗な部屋に案内され、そこで体調面も見ながら問題解決まで保護することになった。
シロちゃんもそこで保護する事も可能だったが、本人の希望でアイリと一緒に行動する事になり、パーティーメンバーに白モフが追加された。
ルーク達一行は早速陛下に面会し、事の重大性から宰相なども同席して話をすることにした。
アイリとシークとシロちゃんは聖獣様の部屋で一緒に遊びながら待っている。
ライオネル公国のきな臭い噂はリンカルト達国の上層部も勿論知っており、聖獣の子供に手を出そうとしていた事や汚いやり方に同じく憤っていた。
ライオネル公国が何を考えているのかは不明だが、このままにはしておけない。
リンカルトはオブザーク王国、リューン帝国、セイラン王国の三国間での緊急会議を決めた。
東のライオネル公国へ行くにはリューン帝国を通るルートが一般的になる。
ライオネル公国は唯一魔の森と隣接しておらず、セイラン王国ともエルフの森を介している為直接的に隣接していない。
もし無謀に魔の森を突っ切るにしても、泉が隔たっている為それも難しい。
そしてライオネル公国は他国とは閉鎖的な国である為、どうしても情報が少ないのだ。恐らく一番情報を持っていると思われるリューン帝国から話を聞いて、今後の対策をとるのが一番だろう。
早速陛下は両国の王に緊急会議への招集の遣いを出した。
事は聖獣に関している為、二国共招集に応じ、早い日程での三国間会議の開催が決定した。
そして数週間後、オブザーク王国に各国の王が集まった。
まずはセイラン王国のライオンの獣人、ラオール国王。次にリューン帝国の人族と龍人族の亜人であるオルビス国王。そしてオブザーク王国のリンカルト国王だ。
三国のトップによる緊急会議が幕を開けた。
「この度は、急な招集にも関わらず応えて頂き誠に感謝する。事は聖獣様に関わる為、この場での話は外に出さない事を誓って頂く。」
「リューン帝国国王、オルビス・ドロイ・リューンの名において誓おう。」
「同じくセイラン王国国王、ラオール・ジラスタ。我が名において誓う。」
開催国であるリンカルトの挨拶から始まった会議は、まず聖獣白虎の話から始まった。
これは元王族であり、今回の任務の責任者となったルークが代表して詳細を説明し、そして今回の話が事実であると証明する為に、聖獣の子供シロちゃんにも参加して貰っていた。
「⋯⋯と言う訳で、今聖獣白虎様は番と引き離され衰弱していらっしゃいます。そして番を監禁しているのはライオネル公国です。」
ルークがそこまで話すと、徐にオルビスが発言した。
「ライオネル公国にいると言う根拠は?」
「今はまだ確証はありませんが、聖獣様本人がそう仰っております。魂の絆で結ばれた番ですので、その繋がりの深さは私よりも余程陛下達がご存知かと。」
ここには獣人であるラオールと亜人ではあるが龍人族の血が濃いオルビスがいる。人族の自分達より余程、番の絆の深さには詳しいはずだ。
「それもそうだな。⋯そもそも、そちらにいる幼獣白虎との出会いから此度の件が分かったとの事だが、どういった経緯があったのか聞かせて貰えるか?」
やはりその点を聞いてくるだろう事は予測していた。ルークはあらかじめ決めていた設定を説明する。
「私が組んだパーティーメンバーと依頼をこなしていた際、怪我をしたここにいる幼獣シロと出会いました。そして治癒をした事がキッカケで共に行動することになり私の従魔となりました。シロは元々弱っている母親を助けたいということで森に出て怪我を負ったので、話を聞いた私達は聖獣白虎様のお力になりたいと会いに行きました。そこで此度の話を聞いたのです。」
間違ってはいない。
怪我をした幼獣に出会い(アイリが)治癒をした。
そして(アイリが契約して)一緒に行動をすることになり、ルークが従魔契約をしている。
うん。ものは言いようだ。
ここでアイリの存在を口にする訳にはいかない。
いくらルークが後見人と言っても、他国の王相手にアイリの魔力やら属性のことやら、ちょっと特殊な癒やしの力やらシロとの契約やら、追加で聖獣の加護まで⋯⋯⋯
上げたらキリがない程問題を抱えているアイリの存在を知られれば、流石にルークだけでは守りきれない。
ルークはちょっと遠い目をしてたが、設定を聞いた王達は納得の表現を浮かべた。
「なるほど。今回の任務に其方が相応しいのも分かった。S級冒険者として名を馳せる其方であるから、元よりそこまで心配はしておらぬがな。ラオール王も、今回の指揮はそちらのルーク殿に一任して問題ないか?」
オルビスの問いかけに、ラオールも頷きながら答えた。
「ああ。私の方も問題ない。」
ここで、両国の王からもルークが聖獣の番奪還において責任者であると認められた。
再びリンカルトが進行をとる。
「では、次に聖獣様の番奪還に関して今後の対策を話し合いたい。まずはライオネル公国の現状の動きなど、何か不審なことがあればお聞かせ願いたい。」
その言葉に、視線は必然的にオルビスへと注がれた。
「そうだな。我が国ではかの国を常に監視している。数年前から少しずつではあるが、国内の魔道士が姿を消す事件があってな。そして魔力の多いとされるドワーフや龍人族の子供が攫われる事件も起こりだした。どうやら調べてみると、この二つの事件にかの国が関わっていることがわかったのだ。」
その言葉に食い付いたのはラオールだった。
「もしや、その誘拐に獣人が加担しておりませんか?」
ラオールが発した言葉に、訝しげな視線をやったのはオルビスだった。
「ほぅ。そちらでも把握はしておったか。⋯子供と言っても、ドワーフや龍人族の子がそうそう簡単に連れ去られる訳がない。そこで調べてみたところ、獣人が関与していた。」
「そうでしたか⋯⋯実は、我がセイラン王国でも獣人が姿を消すという事件が起こっております。特に身体能力や力に長けた種類の獣人が居なくなっているのです。私達には魔力が殆どない為、先程のオルビス王の魔道士が姿を消したと言う言葉が引っ掛かり、もしやと⋯。我ら獣人は庇護すべき子供に対して犯罪を犯すようなことはしない。であれば、それは強制的にさせられているんだと思ったのです。恐らくその獣人達は、魔導具で言う事を聞かされているのではないかと。」
ラオールは苦しげに言葉を繋いだ。
「どうか、我らにも真相を調べさせて頂きたい。同胞を救ってやりたいのです。攫われた子供達も救い出し、親元へ返してあげたい。」
ラオールの意思は固かった。オルビスもここで獣人の立場を追い詰めたい訳ではなかった為、事の真相が分かるまでは誘拐の責任を問わないことにした。
※先日は更新出来ずにすみませんでした。
これから登場人物もまた増えて来るため、ある程度増えたらまた人物紹介に追記していきたいと思います。
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