記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子

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第ニ章 記憶喪失の転生幼女〜幼女×モフモフは最強説!?

聖獣白虎

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さて現在、ルーク率いるパーティーメンバー御一行は魔の森の中腹辺りまで来ていた。
理由は先日の白いモフモフ幼獣白虎との出会いにまで遡る。


少し前に、魔の森入り口付近で出会った怪我をした白モフ幼獣。この白モフ幼獣をアイリが助けて森の奥へと帰した一件から数日後、再びアイリ達の前へと姿を表した。

それは、アイリとシークの依頼任務を遂行中に突然オークの群れと遭遇してしまい、正に戦闘中の最中。
突然ひょっこり現れた白モフ幼獣さん。

そして知らぬ間にアイリが白モフ幼獣と契約をしてしまい、アイリの魔力を借りて一時的に成体白虎となって、オークの群れを一掃してくれた。

その後ギルドに連れ帰り、やっと落ち着いた所で話し合いを。
何故あの場に現れたのか?アイリと契約をしてしまって本当に良かったのか?等を白虎⋯もといシロちゃんに

そう、実はこのシロちゃん。契約をしていなくても『念話』で会話が可能だったのだ。
それで話を聞いてみれば、中々に大変な状況である事が分かった。

まずシロちゃんと初めて会った日、その日初めてシロちゃんは外の世界に出たらしい。まだ幼獣だったシロちゃんは、本来ならばまだ巣穴で母親と共に過ごしているはずだった。
しかしシロちゃんの母親は衰弱しており、このままでは命の危険があった為、母親を助けたい一心で薬草を集めに外に出たらしいのだ。
その途中で怪我をしてしまい、疲れと痛みで休んでいた所をアイリが来て傷を癒やしたと言う訳だ。
その際アイリが水魔法で出してくれた水を飲んでしたらしい。
⋯うん?この話は一旦保留にしとこう。

一度は巣穴に戻って、薬草を与えて様子を見ていたが母親の容態は変わらず、アイリなら母親を治せるかもと、再び探しに出て再会したのが先日のことだった。

契約に関しては、シロちゃんもアイリの事を気に入っており、助けてくれたお礼もしたかったからと何とも律儀な理由で応えたらしい。
話を聞いていた皆が、シロちゃんの純粋さと母親想いの優しさに絆されてしまった。


アイリの治癒能力に関しては出来るだけ秘密にしたいが、相手が聖獣ともなれば助ける理由には充分だ。
そして何より、シロちゃんの想いに応えたいとアイリたっての願いでもあれば、大人達保護者に否やはない。

そうして話し合った翌日の今日、シロちゃんの母親に会う為、魔の森へと行くことになったのだ。



『もうそろそろだよ~。』

シロちゃんが念話で皆に知らせる。
魔の森は奥深くに行けば行くほどに魔獣のランクも上がってくる為、ルーク達は周りに警戒をして進んでいたが、ここまで他の魔獣と出会う事はなかった。
それもこれも、恐らくは案内しているシロちゃんのお陰だろう。
現在のシロちゃんは成体姿で威風堂々としており、周辺を威圧して他の魔獣を寄せ付けなかった。
魔獣は本能のままに生きる生き物だ。本能でシロちゃんの強さを察し、強い魔獣程近付かないのだ。
無謀にも襲ってくるのは低ランクの魔獣(オークとか)ぐらいだろう。

中々に険しい道程ではあったが、アイリは成体となったシロちゃんの上でモフモフを堪能しており、シークは自分で作り出した「シャドーウルフ」に跨り颯爽と進んでいた。

子供達、全く心配いらなかった。


時折休憩を挟みつつ、漸く目的地まで辿り着いた一行は、立派な洞窟の洞穴の中に案内された。


『ママー!ただいま。連れてきたよー!』

シロちゃんからアイリを降ろすと、嬉しそうに尻尾を振りながら母親の元に駆けていく姿は、まだまだ母親が恋しい子供の姿そのものだった。その後を追って奥に進んで行くと、大きな空間に草等を敷き詰めた寝床の様な所に、横たわるようにして上体を起こした立派な白虎がこちらを見ていた。
ルークや他の皆は、ルークに倣って膝をついた姿勢で頭を下げており、目の前の白虎に敬意を表していた。
アイリとシークも大人達を見倣って座ろうとした時、突然脳内に凛とした優しい声が響いた。

『態々このような所までよく来てくださいました。うちの子が無理を言ってご迷惑をかけたみたいで、ごめんなさいね。子供達が困っているわ。皆さんどうぞ楽になさって?』

白虎ママに視線をやると、申し訳なさそうな表情をこちらに向けていた。

「ありがとうございます。貴方の体調が優れないと伺いました。私達でお力になれる事でしたら何でも仰って下さい。」

『あら?貴方は⋯その瞳、懐かしいわね。』

「はい。お察しの通りオブザーク王国の現国王の弟、ルーフェスト・オブザークと申します。今は王籍を離れ、冒険者をやっております。ここにいる者は皆、私の信頼する仲間です。」

ルークにだと言われ、アレクやサニア、ミリーナも嬉しそうだ。アイリとシークも恥ずかしそうにもじもじしており、その様子をジーニアも嬉しそうに見ている。

『ママ、この子がアイリだよ。僕の怪我を治してくれたんだ。僕アイリの力になりたくて、アイリと契約したんだ。』

『そうなのね⋯。貴方の決めた事だから、ママは応援してるわ。アイリちゃん、この子を宜しくね。』

「またシロちゃんがケガちても、アイリがなおしゅからだいじょうぶなの。」

『ふふっ、頼もしいわね。アイリちゃん、それから隣の彼もこちらへいらっしゃい。』

アイリはルークを見ると大きく頷かれたので、隣で戸惑っているシークと共に白虎ママの元へ近付いた。

『アイリちゃんには私の加護を与えましょう。これで体内の魔力反発は抑えられるわ。魔力量に関しても、うちの子に与えてくれれば問題ないわよ。それから彼にも私の加護を。これで足りなかった魔力量を心配することは無いわ。』

その言葉に、ルークとジーニアは頭を下げて感謝の意を伝えた。
子供達が抱えていた問題や心配事を察して、加護を与えてくれたのだ。


それが終わると、白虎ママにはまずは栄養のある食べ物とアイリのを与えて体力を回復して貰った。

しかし、どうしてここまで衰弱してしまったのか?
そしてもう一つの疑問が、何故ツガイがここにいないのか?


「聖獣様。どうしてこのような状態になってしまわれたのか、事情をお聞きしても?」

ルークが代表して尋ねると、白虎ママは悲しそうな表情で事の始まりを語ってくれた。


『あれはまだ私が聖獣として国を守っていた時。混沌とした時代も終わりが見えてきて、世界に光が戻ってきていた。そんな時に私は番と出会った。そして世界が落ち着いたら、私は番と生きていく為にひっそりと表舞台からは遠ざかったの。』

300年前にオブザーク王国を守ってくれていた聖獣は、平和を願いながら番とひっそりと幸せな日々を過ごしていたらしい。

『そして私はこの子を身籠った。この子には私の力を引き継いで聖獣となる素質があったの。それをどこからか聞きつけてきた人間に、この子は狙われるようになってしまった。幼いうちから飼い慣らせば言う事を聞かせられると思ったのでしょう。私の夫は一人で人間に立ち向かって、私達を守ってくれたわ。⋯でも、遂に捕らえられてしまったの。』

まさか、聖獣の子供に恐れ多くも手を出そうとする人間がいたなんて。
ルーク達オブザーク王国の人間は皆聖獣を心から敬っている。それは獣人や亜人なども例外なく、聖獣とは全ての生き物の頂点に君臨する存在なのだ。
そのような存在に危害を加えようとするとは、到底信じられなかった。
しかし、それと同時にルークには心当りがあった。
ルークは尋ねた。

「⋯もしやそれは、ライオネル公国の人間でしょうか?」

そしてその問いに、白虎ママは肯定の意味を込めて頷いた。

『恐らく私の夫はそこに捕らわれているでしょう。番は離れ離れにされると弱っていきます。弱った隙に、この子を奪うつもりだったのでしょう。』

何て酷いやり方だ。番とは、命の絆で結ばれた存在。そんな二人を自分達の都合で引き離し、幼い子を利用しようとする卑怯なやり方に、ルークを始め他の皆も苛立ちを隠せない。

『どうか、私の代わりにこの子を守って下さい。恐らく夫の方も衰弱しているでしょう。この機会に奴等はこの子を狙って来る筈。どうか、お願いします。』

白虎ママが頭を下げてルーク達に頼む。

「頭をお上げ下さい聖獣様。私はアイリを庇護する者として、アイリと契約したシロも既に家族同然です。シロのことは全力でお守りします。貴方もどうか、王宮で保護させて下さいませんか。番は私達が助け出してみせます。」

ルークの言葉に頷き、頭を下げるアレク、サニア、ミリーナ、ジーニア。
そしてアイリとシークも大きく頷いた。

「シロちゃんまもりゅのー!あと、ちゅがいしゃんもアイリたちがたしゅけるのー!!」

『アイリのことは僕も守るよ。』

アイリとシロの決意と共に、ルーク達はまだ見ぬ敵に備えて動き出した。
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