記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子

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第ニ章 記憶喪失の転生幼女〜幼女×モフモフは最強説!?

初めての依頼任務

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魔力暴走の騒動から暫く立ったある日のこと。
王都ではとある噂で持ちきりだった。
最強冒険者ルークが遂にパーティーを組んだと言うのだから、誰もがそのメンバーに興味深々だ。

切っ掛けはカンザックのギルド鍛錬場で起こった魔力暴走事件。
この件で、暴走した魔力の塊をシークが闇魔法の上級魔法である『常闇ブラック・ホール』で消し去った事により良くも悪くも目立ってしまった為、新しくパーティーを結成して保護することにしたのだ。

そして気になるパーティーメンバーはS級冒険者ルークを筆頭に、A級冒険者アレク、B級冒険者サニア、B級冒険者ミリーナ。
そして元王宮魔道士であったジーニアも冒険者登録を行い、その実力から飛び級でA級冒険者となった。
そこに新しく新人冒険者として登録した闇属性のシーク、癒やし担当のアイリが加わり、総勢7人の最強冒険者パーティーが結成された。



そんな今大注目の最強パーティーは、結成後初めての依頼任務で魔の森付近の草原に来ていた。

「アレク、サニア。周りを警戒しろ。」

「ミリーナはアイリの側に。シークはジーニアの言う通りに行動するんだ。」

ルークがピリピリとした緊張感を持って指示を出していく。


「⋯よし。ではここで依頼の『薬草採取』を行う。目的の薬草はコレだ。アイリとシークで手分けして採取するんだ。」

「⋯ルークさん。ちょっと大袈裟すぎませんか?」

流石のミリーナも呆れている。


そう、最初の依頼である『薬草採取』は新人冒険者であるシークとアイリが受けたD
魔の森付近と言っても、ここは町にも近く子供でも普通に来れる場所だ。

⋯いくら何でも過剰戦力かほごだ。


「まぁ、アイリ様もシークも町の外に出る事がそれ程ありませんでしたし、今日は森付近の散策もかねて、いつもより護衛を増やしたとでも思っておきましょう⋯」

ジーニアも苦笑しながら、何とか落とし所を見つけたのだろう。

この任務に護衛がいる事自体はおかしな話ではない。
現にミリーナも、初めての薬草採取の依頼を受けた時、アリシア(非戦闘員)に教わりながら当時C級になったばかりのサニアが護衛に付いてきてくれたのだ。

⋯本来なら護衛もその程度のランクが請け負うのだが、そこはもうルーク保護者のゴリ押しでもぎ取ってきたのだろう。

「私とジーニアさんだけでも充分過ぎるんですけどね⋯」

ミリーナは溜息をつくしかなかった。


「いや、ミリーナの時あの時も少し離れた場所でアレクが付いて行ってたよな?なぁ、アレク?」

ルークにより突然爆弾が投下され、焦ったように言い訳をするアレク。

「はっ!?いやいや、アレは偶々別の依頼で近くにいたからで⋯」

「あー、確か!あの時アレクさん『どこに採取に行くんだ?』って僕に聞いて⋯」

サニアが何か言いかけた所で、アレクに口を塞がれ連れ去られてしまった。

「「⋯⋯?」」

アイリとミリーナは顔を見合わせてコテンッ?と首を傾げた。

その様子を温かい目で見守るジーニアは、若いっていいなぁ~とほのぼの感じていた。


さて、目的の薬草採取は順調に進み、ついでに周りの散策をすることにした。
魔の森まで続く道を進みながら、時折採取ポイントやどんな魔獣が出るかを教わるアイリとシーク。

そうして進んでいると、どこからか「キューン、キューン」とか細い鳴き声が聞こえてきた。

「⋯なきごえがきこえりゅの。」

「⋯鳴き声?」

アイリの呟きにシークも耳を澄ませる。

「⋯僕には聞こえないけど⋯」

「ううん。⋯あっちなの。」

アイリにはしっかりと聞こえる鳴き声を追って、一同は魔の森の入り口近くまでやってきた。

「⋯これ以上奥は危ない。アイリ達はここに残って待っててくれ。俺とサニアで付近を見て回ってくる。」


ルークとサニアが森に入っていく。

少し待つと、先程よりも鳴き声が近くに聞こえた。

「こっちにゃの!」

「あっ、アイリ!一人はダメだよ!」

突然走り出したアイリをシークが追っていく。

「チッ、ミリーナ、ジーニアさん。ルーク達を呼んできてくれ。俺とシークで嬢ちゃんを追う。」

舌打ちをして言うや否や、すぐにアイリ達の後を追っていくアレク。


「⋯キュゥーン⋯⋯キュゥーン⋯」

「あっ、いたのー!!」


そこにはプルプル震える、真っ白いフワフワした生き物がいた。

「どうちたのー?こわくにゃいよー?」

アイリの呼び掛けに反応して顔を上げた生き物は、どうやら足を怪我しているようだった。
そこに漸く追いついたアレクとシーク。

「嬢ちゃん、一人で動くと危ないだろっ!?」

「⋯その子、怪我してるの⋯?」

追いついたアレクには怒られてしまったが、シークはアイリの前で蹲っている白い生き物に気付いたようだ。
アイリはこの子を治してあげたいと言い出した。

「アイリ⋯その子は今は子供だけど、魔獣だよ。大きくなったら、凶暴になるかもしれない⋯」

シークの言う事は最もだ。それでもアイリは諦めきれない。

「とりあえず、ルーク達も来てから考えるか?」

アレクでは判断できず、皆が来るまで待つことにした。その間アイリは水魔法で出した水を幼獣に飲ませている。

少しして慌てた様子のルーク達がやってきた。アイリが無事な様子を見て安堵していたが、もう勝手に一人で行動しないようにと約束をして、漸く幼獣の様子に気付いた。

「この子がけがちてないてたの⋯」

ジーニアが幼獣の怪我の具合を見て、骨に異常はなくこれなら傷を塞ぐだけで治るだろうと判断した。
アイリの「お願い」で、仕方なく治癒魔法の許可を出す。あくまで傷を塞ぐだけだと約束して。

アイリが足元の怪我に触れると白くポワっと光り、スッと傷が塞がった。
元気になった白い幼獣はアイリの手をペロペロと舐めると、森の奥へと帰って行った⋯。


その後ろ姿を名残惜しそうに見つめるアイリだが、魔獣と人間は一緒には暮らしていけない。
魔獣は魔の森の特殊な環境の中でしか生活できない。そして魔獣が増えすぎるとあぶれた魔獣が森を出て、村や人を襲うのだ。
そうならない為に、ルーク達冒険者が定期的に討伐をして数を減らしている。

あの子も大きくなったら、討伐されてしまうかもしれない⋯寂しいけれど、それが魔獣と人々が共存する為にも仕方のないことなのだ。
こうしてアイリにも、少しずつ冒険者として大切なことを教えながら依頼をこなしていった⋯。


そして遂に、Dランクの魔獣狩りの依頼を受けたアイリとシーク。
増えすぎた虫型の魔獣を討伐する依頼で、アイリが水魔法で弱らせ、シークがとどめを刺して倒す。
大人達は周りを警戒しつつ、二人で処理しきれない部分を手伝いながら倒していった。

順調に倒していき、ほぼ壊滅に追いやる事が出来た。
そしてあと少しという時に、突然オークの群れが現れたのだ。
一体ならCランクでも大丈夫だが、群れとなるとBランク任務以上に相当する。

直ぐにルークとアレクが前に出て、アイリとシークを守りながら倒していく。
ミリーナとサニアがそんな二人を補助し、その隙にジーニアがアイリとシークを保護して結界を張った。


だが、倒しても倒してもキリがない。
数が多い。どうやら異常発生しているようだ。
サニアが状況をギルドに報告しに行く。

アイリとシークも、いつでも魔法を発動出来るように気を付けて周囲を見ていた。

すると、アイリの視界の端に白いモフモフした生き物が映った。

⋯ん?白い⋯モフモフ⋯?
つい最近、何処かで似たような生き物を見た気がする。

もう一度そちらに視線を向けると、間違いなく白いモフモフさんがいる。
するとアイリを探していたのか、視線が合うと嬉しそうにこちらにトテトテッと走って(歩いて)来た。

そこに一体のオークが向かっていく。


「っ!?あぶにゃいのー!!」

アイリが叫ぶと同時に、白いモフモフの体が光った。
光が収まると⋯そこには大きな体躯の白虎が立っていた。


突然現れた白虎に驚いていると、正に飛び掛ろうとしていたオークが白虎の前足により叩き飛ばされた。

バシッ!!⋯⋯⋯⋯ドゴーーンッ!!

木をなぎ倒しながら遠くまで吹き飛ばされたオークは、ピクリとも動かなくなった。

「しゅごーい!シロちゃん、ちゅよいのー!!」

アイリは、この大きくなった白虎があの白いモフモフだと分かっていた。


しかし、突然現れた白虎と吹き飛ばされたオークに危機感を覚えたのはルークだった。

(アレは⋯そこら辺の魔獣とは格が違う。⋯強い)

ルークですら怯むほどの強さに、一気に緊張感が高まる。何としてでもアイリ達子供だけでも逃さなくては。

しかし、当の白虎はアイリに褒められて嬉しいのか尻尾をぶんぶん振って喜んでいる。

「キューン、キューン!」

「えっ?シロちゃんもいっちょにたおちてくれるの?」

「キュウーン!」

「ありがとぉー、シロちゃん。」

そんなアイリと白虎のやり取り?にその場にいた全員が驚き固まってしまった。






※追記
先に読まれた方はすみません。
お気付きになるかならないか?の微妙なとこですが、アレクの口調で「ルークさん」を「ルーク」と呼び捨てに変更しました!
理由は年齢設定の際、アレクの方が歳上になるからです。
以前の口調は今後直していきます。

お気付きになられた方は、アイリからの「しゅごーい!」を差し上げます。
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