記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される

マー子

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第一章 記憶喪失の転生幼女〜ギルドで保護され溺愛される

街でお買い物

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アイリの今後の話も決まった所で、丁度お昼を迎えていた。
このままギルドで昼食をとってもいいが、折角なので街を案内がてら外で食べる事にした。
ついでにアイリの身の回りに必要な物も買うようにとシリウスに言われ、ルークとアリシアとアイリの三人で出掛けることになった。

街に出ると、アイリは初めて見るものばかりで目をキラッキラにさせて喜んでいた。

「あれはなーにー?」
「これは食べれりゅの?」
「かわいーの。キラキラなの。」

キャッキャとはしゃぐアイリにアリシアは一つ一つ丁寧に教えていき、ルークはアイリが興味を持ったものを片っ端から買い始めた。

「ルークさん、これは買いすぎです。お店に戻してきて下さい。」

途中で気付いたアリシアに止められなければ、全て買い尽くされていただろう。


三人は一先ず露店に出ていたお店でいくつか食べ物を買い、通りに設置された椅子とテーブルで昼食をとることにした。
ここは誰でも好きに使える場所で、皆で譲り合いながら綺麗に保つことで成り立っていた。

アリシアとアイリが椅子に座ると、ルークが飲み物を買ってくると席を立った。
待つ間に二人で買った物を広げていると、アイリの後ろから誰かが声を掛けてきた。

「貴方、さっきルーク様と一緒にいた子よね?」

アイリが声がした方に振り返ると、豪華な服を身に着けた可愛らしいご令嬢が立っていた。
恐らくどこかの貴族だろうその出で立ちに、アリシアは面倒事にならないよう注意しつつ言葉を返した。

「失礼致します。私は冒険者ギルドに勤めておりますアリシアと申します。恐れ入りますが、どちらかのご令嬢とお察し致します。この子はギルドにて保護しておりまして、今は私がお世話係として付いております。宜しければ代わりにご用件をお伺いさせて頂きます。」

アリシアの言葉に、令嬢は傲慢に返す。

「あら、貴方ギルド職員だったのね。ルーク様の使用人か何かかと思ったわ。ワタクシはリンナー伯爵家の娘マーガレットよ。ところでこの子だけど、どうしてルーク様と一緒にいるのかしら?まさかと思うけれど、隠し子なんかじゃないわよね?」

令嬢の直接的な物言いに、流石のアリシアも表情を強張らせる。
こんな街中の目立つ場所で、王弟であるルークを貶める発言をするなんて普通は考えられない。この若いご令嬢は、恐らく冒険者として活躍するルークしか知らずに淡い恋心を抱いていたのだろう。

アリシアはルークに知られる前に何とかこの騒動を収めようとしたが、丁度そこへルークが飲み物を手に戻ってきてしまった。

「何か騒がしいと思えばここだったのか。何があった?」

最悪のタイミングだ。
しかしアリシアが話す前に、令嬢がルークに話し掛けた。

「ルーク様。あの、私リンナー伯爵家の娘マーガレットと申します。街でルーク様をお見かけして、こちらの女の子とご一緒だったので何かかと思いまして⋯気になってお声を掛けてしまいましたの。」

少し言葉を変えてはいるが、これでも充分不敬に当たる発言だ。
ルークはそんな令嬢を一瞥すると、気に留める事なく飲み物をアイリの前に置いて自身も椅子に座り食事に手を付け始めた。

「アイリ、これはこうやって食べるんだ。美味しいぞ。」

パンの中に甘辛いタレで煮込んだお肉を挟んだ物を、紙で包んでアイリに食べさせる。

「はむはむ⋯⋯すっごくおいしいでしゅ。」

口の周りをソースで汚しながら満面の笑みを浮かべるアイリに、ルークも嬉しそうだ。

そんな二人に無視される形となった令嬢は、顔を真っ赤にして目の前にあったアイリの飲み物を掴むと中身をアイリに向かってぶち撒けた。


バシャンーーー

そこにはアイリを庇って、代わりに水を被ったルークがいた。

「あ⋯⋯わ、わたくし⋯」

令嬢は真っ青になって震えてしまっている。アリシアも直ぐに拭くものを取り出しルークに差し出す。

「ルークさんっ!!大丈夫ですか?」

「俺は大丈夫だ。アイリ、大丈夫だったか?」

ルークは自分の事よりもアイリを優先し、そんな姿に令嬢もこの子がルークにとって大切な存在なんだと漸く理解できた。

「ルークしゃん、わたしは大丈夫でしゅ。ルークしゃんが風邪引いちゃう。ご飯はギルドに戻ってまた食べよ。」

テーブルの上の食事は全て水浸しになってしまい、とても食べられそうにない。残念だが廃棄することにして、ルークを早く着替えさせなければとまだ水を滴らせるルークの手を取りギルドに向かおうとした。

「アイリ、これくらいなら直ぐに乾くから心配いらない。『ドライ』」

ルークがそう言うとあっという間に服が乾き、濡れた髪も元通りだ。

「しゅごいのっ!どうやったのー?」

アイリは初めて見た魔法に、尊敬の目でルークに釘付けになっている。その様子に満更でもなさそうに口元を緩めるルーク。


未だ呆然としている令嬢に、アリシアは厳しめに声をかける。

「リンナー伯爵令嬢。貴方の振る舞いはギルドから正式に伯爵家へ抗議致します。彼女はギルドで保護しているとお伝えしたはずです。そしてルークさんへの暴挙は、またから抗議がいくでしょう。事情はお父様に直接お伺い下さい。それでは失礼致します。」

周りへ水浸しにしてしまったことを謝罪しつつ、テーブルの上を片付けると三人はその場を去っていった。
令嬢の近くにいた侍女も、まさか自分の主がこんな事を仕出かすとは思わずに顔面蒼白だ。何とか令嬢を連れてその場を去り家に帰ると、事情を聞いた伯爵にルークの出自を聞き更なる己の失態を悟った。
マーガレットはその後謝罪の手紙をギルドに出すと、自身は辺境にある修道院に身を寄せたのだった⋯⋯。



そして街ではその日のうちにルークの隠し子疑惑が上がったが、直ぐに誰も何も言わなくなった。だが、代わりにあのルークが幼女を溺愛していると噂が広がり、アイリもまた愛らしい姿で街ゆく人を虜にしていた。

そんなひと騒動もあったが、初めての街歩きはアイリも楽しかったらしく、ギルドに戻ると疲れたのか直ぐに眠りに落ちた。
そんなアイリを優しい目で見守ると、ルークは正式にアイリの後見人となる為王都にいる兄リンカルトへ手紙を書いていた。
なるべく兄の手を煩わせたくはないが、今回ばかりはそうも言っていられない。
今日のように知らずにアイリに害が及ぶ事を懸念すれば、一度兄と会って話しておく方が安全だと判断した。

数日後、王宮からギルドに手紙が届き、アイリを連れて会いに来るようにと書かれていた。
ギルドからは護衛用に数人の冒険者を出し、ルークとアイリは王都に向かうことになった。
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