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第ニ章 記憶喪失の転生幼女〜幼女×モフモフは最強説!?
白いモフモフ様
しおりを挟むアイリと白虎のやり取り?を聞いていた周りは、驚き固まるしかなかった。
そもそも、魔獣とは意思疎通など出来ない。ただ本能のままに生きる。それが魔獣だ。
しかし、この白虎はどうやらアイリと意思疎通を交しているようだった⋯
そんな事が可能なのか?
誰もが疑問と驚愕を表情に浮かべていたが、今優先すべきはオークの群れだ。
驚き固まっている間にも、オークの群れは押し寄せてきている。再び交戦しようとルークとアレクが構えを直す⋯が
押し寄せる大量のオークを、こともなさ気にビシバシと前足で弾き飛ばしていく白虎。
一人(一匹)?無双状態だ。
そして白虎に怯んだオークの群れは徐々に撤退し、遂には一匹残らず撤収した。
漸く辺りが静かになった。
すると、白虎は振り返り徐にアイリに近付く。
一気に警戒を強めるルーク達だったが、白虎はアイリの前に行くと大きな体を丸めてお座りをして、ぶんぶんと尻尾を激しく振っている。
どうやらアイリに褒めて欲しいようだ。
「シロちゃんしゅごいのー!ありがとねー!」
アイリは警戒することなく、自分の身長よりも大きな白虎に近づくとその首元にダイブした。
「モフモフにゃの~~♪」
アイリは白虎のモフモフな毛並みに幸せそうに埋もれている。
その光景にまたもや固まる一同。
幼女×白モフモフ⋯⋯=尊い。
漸く動き出したのはジーニアだった。
「意思疎通の出来る⋯白虎⋯もしや?以前、王宮に保管されている書物で読んだ事があります。凡そ300年程前にいたとされる、聖獣白虎。」
「「!??」」
ジーニアの言葉に、一同驚く。
「聖獣⋯確かに、俺も王宮にいた頃聞いたことはあるな。人と意思疎通の出来る生物で魔獣とは異なる存在だと。高い知性を持ち、300年前の混沌とした時代に我がオブザーク王国に恩恵を与えてくれた⋯そう王族に伝わっている。」
オブザーク王国に恩恵をもたらしてくれたとされる聖獣白虎⋯その話は最早伝説として語り継がれており、オブザーク王国の者なら誰しも耳にしたことのある話だった。
一同が再び白虎を見遣ると、未だにアイリと戯れて嬉しそうに尻尾を振っている⋯。
従順な大型の⋯猫?犬?
一先ずアイリを落ち着かせ、聖獣?と思わしき白虎について尋ねる。
「アイリ⋯この白虎⋯は、随分とアイリに懐いているようだが⋯?」
「この子はあのとき、足をけがちてた子にゃの。」
足を怪我してた子⋯この言葉で思い浮かぶのは、少し前に魔の森で遭遇した白い幼獣。
しかし、今目の前にいるのは大型の体躯のいい白虎だ。
⋯いくら何でも急成長し過ぎだ。
「あの時の子はまだ小さかったと思うが⋯?今ここにいるのは、明らかに成体だぞ?」
誰もが抱く疑問だ。
そこに、一部始終をアイリの隣で見ていたシークがおずおずと話しだした。
「あの⋯実は、最初見た時は、あの時の幼獣の姿だった⋯。それが、アイリが叫んだ途端に体が光りだして⋯再び現れたら、成体になってた。」
シークの話に、アイリもうんうんと隣で頷いている。
「アイリが叫んだら⋯?アイリ、何て言ったんだ?」
「シロちゃんあぶにゃいっていったのー!」
アイリにシロちゃんと呼ばれ、嬉しそうに尻尾を振っている白虎。
これはもしや⋯
「⋯ジーニア。」
「ええ⋯どうやらそのようですね。」
ルークとジーニアが頭を抱えている中、いまいち状況が飲み込めないアレクとミリーナ。シークはどうやら、アイリのやらかしを察しているらしい。
そんな中、サニアがギルドへの報告を終えて数人の冒険者を引き連れて戻ってきたが、突然の白虎の出現に動きを止める。
とりあえずこの白虎には危険がないこと、オークも撤退したことを伝え、他の冒険者達にはギルドに一旦帰って貰った。ルーク達はこの後どうするか一旦話し合うことに。
「「「えっ?アイリちゃん(お嬢)がこの白虎と契約した!?」」」
アレク、ミリーナ、サニアが声を揃えて驚愕の視線をアイリに向ける。
「恐らく、アイリ様が無意識に名前を呼んでしまい、それに応えた白虎が契約を成立させてしまったのでしょう。」
「そしてこの白虎は⋯我が国に語り継がれている聖獣の子孫だろう。本来は幼獣であるが、アイリと契約した事によって魔力が増え成体となった⋯と予想される。意思疎通も出来るみたいだしな。」
聖獣⋯ルークの言葉に、更に愕然となる三人。そんな伝説級の生物と契約をしたアイリ。
先程ルークとジーニアが頭を抱えていた理由が分かり、同じ様に頭を抱えてしまった。
「とりあえずシリウスにも報告をしたいが⋯このままでは町に連れて帰れないな。」
チラッと白虎を見る。
こんな大型の白虎を町中に連れ帰ったら、それこそ大騒ぎになる。
どうしたものか⋯と頭を悩ませていると、アイリが不安気に聞いてきた。
「シロちゃん⋯いっちょにかえれにゃいの⋯?」
「そうだな⋯せめて最初の時のように小さい姿だったら、誤魔化せるんだが。」
ルークもアイリの悲しげな表情に何とかしてやりたいが、こればかりは難しかった。
「ちいしゃい⋯?シロちゃん、もとにもどりぇる?」
アイリの問い掛けに、白虎は「勿論だ!」とでも答えるように一鳴きすると、シュルシュルと小さくなっていき、初めて会った時の幼獣の姿になった。
「シロちゃんえりゃいのー!ルークしゃん、これでいっちょにかえれりゅ?」
アイリのキラキラとした期待の籠った瞳×白いモフモフ幼獣の円な瞳。
=否やはない。
幼獣となった白虎を連れてギルドに戻った一行は、先程のオークの群れに関しての報告も兼て今回は少し広めの会議室へと案内された。
先にサニアによってオークの群れの報告を受けていたシリウスは、皆の無事な姿を見て安堵する。
しかし、そこへオークの異常発生よりも大きな問題を持って帰ってきているとは思わず、話を聞いた時にはつい無言で遠くを見つめてしまった。
漸く現実に戻ってきたシリウスは、まずは白虎の従魔登録を勧めた。
町中では家畜用に改良された牛や馬や鶏等の魔獣がいる。そして愛玩用や防犯・攻撃手段として飼われている魔獣もいる為、それらは魔の森の魔獣と区別を付けるため従魔登録をされている。魔獣の安全と飼い主が誰かを明確にする為だ。
届け出のない魔獣を所有していた場合、厳重な罰則が科せられる。
本来ならばアイリが飼い主に値するのだが、今回は後見人であるルークの従魔として登録する事になった。
万が一この幼獣が聖獣であるとバレても、王弟であるルークならばまだ誤魔化しようもある。⋯筈だ。
直ぐに手続きをし、従魔の証として首輪を着ける。しかし、これではまた大きくなった時に壊れるだろう⋯。
そう考えたルークは特製の首輪を発注し、大きさを変化させても自動で体格に合わせてくれる首輪を白虎に贈った。
「シロちゃんかわい~の~!にあってりゅよ~!」
「キュン、キューン♪」
シロもご機嫌だ。
⋯そしてまた陛下への報告案件が増えてしまった。
まぁ、アイリ関係のことならば何も問題はないが、流石に聖獣ともなると一度面会に行った方がいいだろう。
そして迎えた面会日。
王宮へ行くと、幼女×白モフモフの組み合わせに歓喜に震え、益々残念になってしまった陛下を見て、初めて共感を覚えた⋯などとは一生心に秘めて生きていこうと誓ったルークであった。
※いつもご覧頂きありがとうございます。告知?してました人物紹介において、サニアの特徴をガラッと変更しました。
以前記載していた部分はそれに合わせて変更しておりますので、ご了承下さい。
ちなみに「青髪で水色の瞳」→「明るい緑髪で翡翠色の瞳」となりました。
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