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匂いの暴力、それは飯テロ③
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「これで足りるかな?」
とりあえず、さっき串焼きを二本買うのにセイは銀貨を出してお釣りをもらっていた。一本だいたい100ガルドだとして普通は在庫ってどのくらいあるんだろ?……ええいっ、考えるのが面倒になってポーチから出す風で困った時の金貨を一枚取り出した。……あれ?金貨っていくらだっけ?さっきのギルドで壊したヤツも足りたのか?やっぱりちゃんと覚えとかないとダメだな。
「イリヤ様、とりあえずこちらで十分かと」
俺が手のひらに乗せて差し出した金貨を引っ込めさせるとセイは微動だにしない少年の手を取り銀貨を数枚握らせた。……やっぱり間違ってたのか。
「お代は払いましたので焼いていただけるかしら?」
人差し指を唇に当てて首を傾げながらにっこり微笑むセイに目の前の幼い兄妹の顔は途端に赤くなる。うん、黙っていれば美少女だし微笑めば超美少女だもんな。
「お、お兄ちゃん?」
「や、焼けば良いのか?その、コレつけて……」
「焼けたらこのタレにつけて焦げない程度にまた少し焼くというか炙るくらいで良いかな。その後、食べる前にタレをつけてくれると尚良し」
焼き肉ではなく串焼きなだけにタレつけは焼き鳥のようにするしか無いだろう。ギルドで買ったプレイヤーさん特性レシピな焼き鳥のタレもあったけど、今は焼き肉な気分なんだ……でも焼き鳥のタレでイカとか焼いたらうまそうだな。てかこの世界にもイカってあるのか?あとバター醤油な帆立とか!
そんな風に俺が横道に逸れていると、壺に入った白い粒々( 白胡麻 )が浮いた黒茶の液体に少し引き気味の少年が、甘くて芳醇な立ちのぼる匂いに自然と口内に溜まった涎をゴクリと飲み込んだ。
うん、そうなるよな。焼き肉マジック。
「イリヤ様が見本をお見せしたら早いのでは?」
「んー、……手順を見せた方が早いか。ちょっと借りるね」
壺を持ったままの少年を覗き込むとぶんぶんと頭を振るように頷いたので、下拵えして串に刺してある肉を串焼き用のコンロ状のものの上に乗せると肉の焼ける独特の音が聞こえ始めた。
「あと、必要になると思うので串焼き用の肉を出して下さい。先ほど買取に出してしまったのは惜しいことをしましたけど、ボアのお肉お持ちですよね?出すのは下位種限定でお願いします」
「なんで肉?普通のボアなら死蔵してるのがあったな、確か」
ボアの肉は確か買取金額が5000ガルドだったからそれの何が惜しいのか俺にはまったく分からないが……だって良い肉いっぱいインベントリに入ってるし。
そういえばこの世界は金貨一枚で一ヶ月何人か暮らせるとか言ってたような?食費も庶民だと一人一日分500ガルドちょっとくらいって聞いてびっくりしたっけ。このデカイ串焼きが100ガルドだもんな。あまり柔らかそうじゃなかったけどパンだってカゴにたくさん盛って100ガルドだから物価がかなり安いのかもしれない。食の質的にはアレだが。
言われた通りに至って普通のボアの肉を出すとそれを受け取ったセイは良い笑顔で妹の方に下拵えをするように促した。……やっぱり食べるの専門らしい。確かに料理スキルを持たない上に肉を粉砕しかねないセイはやらない方が良いだろうけど、あんな小さい子を働かせるのはなんか違和感というか抵抗あるんだよな。
「それさ、スキル使えばよくね?」
「そう言えばイリヤ様は登録できるんでしたね」
料理人をカンストさせてるしエタブレ仕様の俺はゲームの時同様に料理の工程も登録出来る。
串焼きをひっくり返すのを少年の方に任せてボア肉をカットしてクシに刺し、それを自分の魔導書にレシピ登録した。あとはボア肉と串さえあればスキルで量産できる。
「両面焼けたよ」
「そっちも登録しとくか」
「それも良いんですけど、数本で構いませんので並行して手でも焼いて欲しいのですけど」
タレまでつけた焼き上がりを登録すればスキルでちょちょいのちょいと作れちゃうんだが、実は食いしん坊なセイだし目の前で焼きたてなのを食べたいとかか?
「なんかよく分かんないけど了解。両面焼けたらこうやってタレにつけて軽く焼く、そしてもう一度タレをつけて……ほら、食べてみな」
そこいら中にあの焼き肉のなんとも言えない甘くて香ばしい匂いが充満する。幼い兄弟に味見として串焼きを手渡した。
「ズルイですわイリヤ様っ!」
「待てって、焼けてるから」
セイに手渡すと俺も串焼きにかぶりつく。うん、旨い。これだよ、コレ。
俺たちは暫し無言で食べ続けた。
とりあえず、さっき串焼きを二本買うのにセイは銀貨を出してお釣りをもらっていた。一本だいたい100ガルドだとして普通は在庫ってどのくらいあるんだろ?……ええいっ、考えるのが面倒になってポーチから出す風で困った時の金貨を一枚取り出した。……あれ?金貨っていくらだっけ?さっきのギルドで壊したヤツも足りたのか?やっぱりちゃんと覚えとかないとダメだな。
「イリヤ様、とりあえずこちらで十分かと」
俺が手のひらに乗せて差し出した金貨を引っ込めさせるとセイは微動だにしない少年の手を取り銀貨を数枚握らせた。……やっぱり間違ってたのか。
「お代は払いましたので焼いていただけるかしら?」
人差し指を唇に当てて首を傾げながらにっこり微笑むセイに目の前の幼い兄妹の顔は途端に赤くなる。うん、黙っていれば美少女だし微笑めば超美少女だもんな。
「お、お兄ちゃん?」
「や、焼けば良いのか?その、コレつけて……」
「焼けたらこのタレにつけて焦げない程度にまた少し焼くというか炙るくらいで良いかな。その後、食べる前にタレをつけてくれると尚良し」
焼き肉ではなく串焼きなだけにタレつけは焼き鳥のようにするしか無いだろう。ギルドで買ったプレイヤーさん特性レシピな焼き鳥のタレもあったけど、今は焼き肉な気分なんだ……でも焼き鳥のタレでイカとか焼いたらうまそうだな。てかこの世界にもイカってあるのか?あとバター醤油な帆立とか!
そんな風に俺が横道に逸れていると、壺に入った白い粒々( 白胡麻 )が浮いた黒茶の液体に少し引き気味の少年が、甘くて芳醇な立ちのぼる匂いに自然と口内に溜まった涎をゴクリと飲み込んだ。
うん、そうなるよな。焼き肉マジック。
「イリヤ様が見本をお見せしたら早いのでは?」
「んー、……手順を見せた方が早いか。ちょっと借りるね」
壺を持ったままの少年を覗き込むとぶんぶんと頭を振るように頷いたので、下拵えして串に刺してある肉を串焼き用のコンロ状のものの上に乗せると肉の焼ける独特の音が聞こえ始めた。
「あと、必要になると思うので串焼き用の肉を出して下さい。先ほど買取に出してしまったのは惜しいことをしましたけど、ボアのお肉お持ちですよね?出すのは下位種限定でお願いします」
「なんで肉?普通のボアなら死蔵してるのがあったな、確か」
ボアの肉は確か買取金額が5000ガルドだったからそれの何が惜しいのか俺にはまったく分からないが……だって良い肉いっぱいインベントリに入ってるし。
そういえばこの世界は金貨一枚で一ヶ月何人か暮らせるとか言ってたような?食費も庶民だと一人一日分500ガルドちょっとくらいって聞いてびっくりしたっけ。このデカイ串焼きが100ガルドだもんな。あまり柔らかそうじゃなかったけどパンだってカゴにたくさん盛って100ガルドだから物価がかなり安いのかもしれない。食の質的にはアレだが。
言われた通りに至って普通のボアの肉を出すとそれを受け取ったセイは良い笑顔で妹の方に下拵えをするように促した。……やっぱり食べるの専門らしい。確かに料理スキルを持たない上に肉を粉砕しかねないセイはやらない方が良いだろうけど、あんな小さい子を働かせるのはなんか違和感というか抵抗あるんだよな。
「それさ、スキル使えばよくね?」
「そう言えばイリヤ様は登録できるんでしたね」
料理人をカンストさせてるしエタブレ仕様の俺はゲームの時同様に料理の工程も登録出来る。
串焼きをひっくり返すのを少年の方に任せてボア肉をカットしてクシに刺し、それを自分の魔導書にレシピ登録した。あとはボア肉と串さえあればスキルで量産できる。
「両面焼けたよ」
「そっちも登録しとくか」
「それも良いんですけど、数本で構いませんので並行して手でも焼いて欲しいのですけど」
タレまでつけた焼き上がりを登録すればスキルでちょちょいのちょいと作れちゃうんだが、実は食いしん坊なセイだし目の前で焼きたてなのを食べたいとかか?
「なんかよく分かんないけど了解。両面焼けたらこうやってタレにつけて軽く焼く、そしてもう一度タレをつけて……ほら、食べてみな」
そこいら中にあの焼き肉のなんとも言えない甘くて香ばしい匂いが充満する。幼い兄弟に味見として串焼きを手渡した。
「ズルイですわイリヤ様っ!」
「待てって、焼けてるから」
セイに手渡すと俺も串焼きにかぶりつく。うん、旨い。これだよ、コレ。
俺たちは暫し無言で食べ続けた。
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