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「アニス、大丈夫っ!?」
「ええ。私は大丈夫ですわ。でも……オルフェオ様が心配です。──あのっ。リオン様。どうかオルフェオ様を助けていただけませんか?」
アニスはまだオルフェオ様を気に掛けていて、リオン様も困った顔をしていた。
「俺に……あ。私に出来ることはありません。コールマン公爵はエミリア様を気に入っていていらっしゃるので、婚約を破棄したことが分かればそれだけで勘当されるかもしれませんし、リーゼロッテ様や兄を敵に回してしまったことも分かれば、もう公爵家に彼の居場所はないでしょう」
「そんな……。でも、自業自得かもしれません。お姉様をずっと傷付けていたのはオルフェオ様ですもの。──リオン様。エミリアお姉様のこと、よろしくお願いいたします」
アニスは涙を拭いリオン様に深々とお辞儀をし、私はアニスを抱きしめた。
「アニス……」
「お姉様は私の憧れなのです。だから、幸せになって欲しいの」
「アニスっ。先日は、叩いてしまって申し訳なかった。浅はかな父を許しておくれっ」
私とアニスを父が抱きしめ、ボロボロ涙を溢すと、アニスもまた涙を流した。
「いいのです。オルフェオ様を好きになってしまった、私が悪いのですから……」
母はそんな三人を見て微笑むと、リオン様に視線向けた。
「あらあら。もうオルフェオ様は忘れましょう。リオン様、良かったらご一緒にお食事なんていかがかしら?」
「で、ですが。今日のところは……」
「いいえ。逃がしません。リオン様がどんな方か、ずっと気になっていましたのよ」
母はライナーに目配せして扉を閉じさせた。
アニスもスッと泣き止み父の手を押し退けてリオン様へ詰め寄った。
「そうよ。お姉様は何も教えてくださらないし。……お姉様ったら、毎日チューリップの花束を愛おしそうに眺めているのですよ」
「そうそう。後、可愛らしい小箱を何度も開けたり閉めたりしていて、ずっと笑っているのよ」
「そ、そうでしたか……」
母とアニスの話を興味深そうに聞くと、リオン様は私の方へと視線を伸ばす。
「お母様もアニスも、リオン様に変なことをお話ししないで下さいっ」
「ほほぅ。私もお話しをお伺いしたいですな!」
ずっとグズグズ泣いていた父が復活して、ノリノリでリオン様を確保した。
こうしてリオン様は私の家族に捕まり、夕食をご一緒することになった。
◇◇
「リーゼロッテっ! よくも俺を嵌めたなっ。コールマン公爵家を潰す気かっ!?」
ブロウズ伯爵邸から城へと直行したオルフェオは、リーゼロッテに向かって怒鳴った。対するリーゼロッテはにこやかに微笑んでいる。
「はい。どうでもいいことですわ。オルフェオお従兄様」
「貴様っ……」
「だって、オルフェオお従兄様だったら、エミリアを任せられると思っていましたのに。他のご令嬢とお戯れになり、挙げ句の果てにアニスに手を出すなんて。見損ないましたわ」
リーゼロッテの顔からは笑みが消えると、オルフェオは正気に戻り、怒りを忘れ恐怖を覚えた。
リーゼロッテには隣国の第二王子が付いている。
外交を掌握しているのはレクルシオ王子なのだ。
「ほ、他の令嬢となど遊んでいないっ。エミリアが勝手に勘違いしたのだっ」
「勘違いさせたのはお従兄様……いえ。もうお従兄様ではなくなりますわね。ルシオ様、リオン様の事を城から追い出そうとしたこと、大層ご立腹ですのよ。コールマン公爵様にお伝えしたら、オルフェオはもう息子ではありません。とルシオ様に仰ったそうよ」
「そ、そんな……」
膝をつきその場に崩れ落ちたオルフェオにリーゼロッテは更に追い討ちをかけた。
「早くお帰りになった方がよろしいかと存じますわ。帰る場所があれば、ですけれど?」
「ええ。私は大丈夫ですわ。でも……オルフェオ様が心配です。──あのっ。リオン様。どうかオルフェオ様を助けていただけませんか?」
アニスはまだオルフェオ様を気に掛けていて、リオン様も困った顔をしていた。
「俺に……あ。私に出来ることはありません。コールマン公爵はエミリア様を気に入っていていらっしゃるので、婚約を破棄したことが分かればそれだけで勘当されるかもしれませんし、リーゼロッテ様や兄を敵に回してしまったことも分かれば、もう公爵家に彼の居場所はないでしょう」
「そんな……。でも、自業自得かもしれません。お姉様をずっと傷付けていたのはオルフェオ様ですもの。──リオン様。エミリアお姉様のこと、よろしくお願いいたします」
アニスは涙を拭いリオン様に深々とお辞儀をし、私はアニスを抱きしめた。
「アニス……」
「お姉様は私の憧れなのです。だから、幸せになって欲しいの」
「アニスっ。先日は、叩いてしまって申し訳なかった。浅はかな父を許しておくれっ」
私とアニスを父が抱きしめ、ボロボロ涙を溢すと、アニスもまた涙を流した。
「いいのです。オルフェオ様を好きになってしまった、私が悪いのですから……」
母はそんな三人を見て微笑むと、リオン様に視線向けた。
「あらあら。もうオルフェオ様は忘れましょう。リオン様、良かったらご一緒にお食事なんていかがかしら?」
「で、ですが。今日のところは……」
「いいえ。逃がしません。リオン様がどんな方か、ずっと気になっていましたのよ」
母はライナーに目配せして扉を閉じさせた。
アニスもスッと泣き止み父の手を押し退けてリオン様へ詰め寄った。
「そうよ。お姉様は何も教えてくださらないし。……お姉様ったら、毎日チューリップの花束を愛おしそうに眺めているのですよ」
「そうそう。後、可愛らしい小箱を何度も開けたり閉めたりしていて、ずっと笑っているのよ」
「そ、そうでしたか……」
母とアニスの話を興味深そうに聞くと、リオン様は私の方へと視線を伸ばす。
「お母様もアニスも、リオン様に変なことをお話ししないで下さいっ」
「ほほぅ。私もお話しをお伺いしたいですな!」
ずっとグズグズ泣いていた父が復活して、ノリノリでリオン様を確保した。
こうしてリオン様は私の家族に捕まり、夕食をご一緒することになった。
◇◇
「リーゼロッテっ! よくも俺を嵌めたなっ。コールマン公爵家を潰す気かっ!?」
ブロウズ伯爵邸から城へと直行したオルフェオは、リーゼロッテに向かって怒鳴った。対するリーゼロッテはにこやかに微笑んでいる。
「はい。どうでもいいことですわ。オルフェオお従兄様」
「貴様っ……」
「だって、オルフェオお従兄様だったら、エミリアを任せられると思っていましたのに。他のご令嬢とお戯れになり、挙げ句の果てにアニスに手を出すなんて。見損ないましたわ」
リーゼロッテの顔からは笑みが消えると、オルフェオは正気に戻り、怒りを忘れ恐怖を覚えた。
リーゼロッテには隣国の第二王子が付いている。
外交を掌握しているのはレクルシオ王子なのだ。
「ほ、他の令嬢となど遊んでいないっ。エミリアが勝手に勘違いしたのだっ」
「勘違いさせたのはお従兄様……いえ。もうお従兄様ではなくなりますわね。ルシオ様、リオン様の事を城から追い出そうとしたこと、大層ご立腹ですのよ。コールマン公爵様にお伝えしたら、オルフェオはもう息子ではありません。とルシオ様に仰ったそうよ」
「そ、そんな……」
膝をつきその場に崩れ落ちたオルフェオにリーゼロッテは更に追い討ちをかけた。
「早くお帰りになった方がよろしいかと存じますわ。帰る場所があれば、ですけれど?」
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