姉の私が身代わりで醜い伯爵のご子息に嫁ぐことになりましたが、その方は私の好きな人で妹の初恋の方でした

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021 近衛騎士と王子(レオナルド視点)

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「はぁぁぁぁぁっ!? 貴様っ。今何と言ったんだ!?」

 王城にレオナルド王子の叫び声がこだました。しかし、目の前の近衛騎士は変わらず満面の笑みで祝辞を述べた。

「おめでとうございます! 陛下もお喜びで、ガブリエラ=ルロワ嬢との婚約を認めてくださいました。王命、すぐにでも出してくださるそうですよ~」
「おめでたくなんかない! 昨日のことを話したのか!?」
「はい! レオナルド様がいつまで経ってもお話にならないので」
「ふざけるなっ。そんな王命認められるかっ。僕は――」

 どうしたいのだろうか。皆が噂しているから、どんなものかと思って精霊の加護を受けた娘に婚約を申し込んでみた。
 でも、ガブリエラは恐ろしほど美しく冷淡で、化け物伯爵の息子との婚約が嫌で僕に狙いを定めてくるような女だった。
 婚約するなら、あいつだけは絶対に嫌だ。僕が間違えて婚約を申し込んだ姉のシェーラは、平凡だが優しく心に残る女性だったのに。
 姉のせいで無理やり結婚させられるとか言ってたけど、絶対に嘘だ。しかも、逆に貪欲な姉に婚約をプレゼントしてあげるとか言っていたから、シェーラ嬢の方こそ無理やりあの化け物の息子との結婚させられてしまうんだ。

「王命なら、あの化け物は引き下がるかな?」
「はい?」
「王命で出された婚約なら、他の誰にも奪われないか。って聞いたんだ」
「そりゃあ逆らう者などいませんよ。って、レオナルド様ってば、ガブリエラ様のこと、どんだけ独占したいんですか? ――あっ。今すぐ王命欲しい感じですか?」
「馬鹿かっ。そんな事を言いたいんじゃないんだ。……父上には、王命は暫しお待ちいただくように伝えておいてくれ」
「ん?」

 至極不満そうに聞き返す近衛騎士に、何を言ってもガブリエラに都合の悪い解釈は出来ないものなのだと理解した上ではぐらかすことにした。

「……こういうことはタイミングが重要なんだ」
「おぉっ。レオナルド様。好きな女性が出来たら、急に成長されましたね!」
「ああ。それから、この事は内密に頼む」
「はい! サプライズですね!」
 
 近衛騎士はスキップしながら部屋を出ていった。交代の時間だが、絶対に他の近衛騎士に言いふらすんだろうな。
 取り敢えず僕も婚約を喜んでいるように思わせておこう。余計なことは言わない方がいい。  
 どうせガブリエラに魅せられ騒ぎ立てるだけの阿呆な騎士に成り下がってしまった奴らなのだから。

 それよりも、シェーラ嬢が心配だ。あんな化け物の婚約者を押し付けられてしまったのだから、落ち込んでいるに決まっている。屋敷に婚約者を名乗る男がいたけれど、あの化け物を目にしたら直ぐに逃げ出すだろう。
 でも、きっと僕なら止められる。王命の婚約者の名前をシェーラ嬢にすることが出来れば守れるはずだ。
 僕はシェーラ嬢の様子を見に行くことにした。今日は学園にいるはずだ。部屋を出て、扉の前に待機している近衛騎士に声をかけた。

「暫し、花を摘みに行ってくる」
「は?」
「だから、付くてくるなって言ったんだ!」
「ああ。では、一定の距離を取っての護衛を致しますね」
「……。ふんっ」

 僕は近衛騎士をその場に残し(多分付いてくるけど)、学園へ足を向けた。



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