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007 鈴蘭の精霊
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『えーっ!? あの子、王子様だったの~?』
「そうなの。私も驚いたわ」
暗い気持ちで部屋に戻ったばかりなのに、その気持ちは一瞬で消えてしまいました。
それは、私の部屋に住む小さな友人のお陰です。
『あんな子どもがこの国の王子様なのね~。今日は霰を降らせたのよ? 全く、ガブリエラったら人使いが荒いんだから。あ、私は精霊だから、精霊使いが荒いって言った方がいいわね!』
窓辺に置かれた鈴蘭に腰掛け、今日の愚痴を漏らしているのは、自称鈴蘭の精霊のフェミューです。
フェミューはブドウジュースで汚れた私の服や髪を魔法で綺麗にしてくれた後、いつも通り今日の出来事を楽しそうに話しています。
フェミューを見ることが出来るのは家族で私だけで、彼女は見た目がどことなくガブリエラに似ていて、銀髪に金色の瞳の小さな女の子です。
絵本で見た妖精に似ていますが、羽はありません。でも、どこへでも自由に空を移動できるそうです。
「今日もお疲れ様。あの王子、ただの勘違い王子だと思ったのだけれど、ガブリエラにされた事を覚えていたの。ルシアンが手伝ってくれたから、怪我はもうないと思うのだけれど、少し心配だわ」
『へぇ~。そんな奴、初めてね。まぁ、難癖つけられたら、私が跳ね返してやるわ!』
フェミューは小さな胸を張って自信満々です。
今までガブリエラへ求婚してきた相手を追い払ってきたのは全て彼女の力で、ルロワ領が発展した事も彼女の功績だそうです。
普段、私の部屋で愚痴ばかり漏らす姿しか見たことはないのですが、彼女の話はいつもガブリエラの周りで起きていることと一致しているので、本当に精霊なのだと思います。
「あら。心強い味方がいて安心だわ」
『ふふっ。それより、どうして元気がないの? 心配事は王子様の事だけじゃないみたいね。美味しいブドウジュースを頭から浴びたことも関係しているの? たまには私がシェーラの愚痴を聞いてあげるわ』
「ありがとう。じゃあ。……サリュウス伯爵について、知っていることがあったら教えて欲しいわ」
フェミューは一瞬ピタッと動きを止めると、遠く窓の外へと視線を伸ばしまし呟きました。
『……い人』
「え?」
『めっちゃ怖い人!』
「そ、そうなの? どんな風に怖いのかしら?」
『血も涙もない冷徹野郎よ! 私はあの人、大っ嫌い』
顔を真っ赤にして怒るフェミューですが、怯えた様子はないので、単に嫌いなだけのようです。
凄く性格が悪い方なのでしょうか。
「そう。だからルシアンは、反対したのかしら」
『反対?』
「ガブリエラは伯爵のご子息様と合わないだろうって」
『ふぅ~ん。――さてさて。もう寝よーっと。おやすみ~』
フェミューは大きな欠伸をするとパッと消えてしまいました。
ルシアンの話が出ると、すぐにフェミューは消えてしまいます。前に、草木に話しかけるルシアンなら、フェミューが見えるかもしれないと話すと、ルシアンには絶対に秘密にして欲しいと言っていたので、どうやらルシアンの事が苦手みたいです。
ですが、フェミューと話していたら、だいぶ心が落ち着きました。
いつも彼女からは元気をもらっています。
「ありがとう。フェミュー」
「そうなの。私も驚いたわ」
暗い気持ちで部屋に戻ったばかりなのに、その気持ちは一瞬で消えてしまいました。
それは、私の部屋に住む小さな友人のお陰です。
『あんな子どもがこの国の王子様なのね~。今日は霰を降らせたのよ? 全く、ガブリエラったら人使いが荒いんだから。あ、私は精霊だから、精霊使いが荒いって言った方がいいわね!』
窓辺に置かれた鈴蘭に腰掛け、今日の愚痴を漏らしているのは、自称鈴蘭の精霊のフェミューです。
フェミューはブドウジュースで汚れた私の服や髪を魔法で綺麗にしてくれた後、いつも通り今日の出来事を楽しそうに話しています。
フェミューを見ることが出来るのは家族で私だけで、彼女は見た目がどことなくガブリエラに似ていて、銀髪に金色の瞳の小さな女の子です。
絵本で見た妖精に似ていますが、羽はありません。でも、どこへでも自由に空を移動できるそうです。
「今日もお疲れ様。あの王子、ただの勘違い王子だと思ったのだけれど、ガブリエラにされた事を覚えていたの。ルシアンが手伝ってくれたから、怪我はもうないと思うのだけれど、少し心配だわ」
『へぇ~。そんな奴、初めてね。まぁ、難癖つけられたら、私が跳ね返してやるわ!』
フェミューは小さな胸を張って自信満々です。
今までガブリエラへ求婚してきた相手を追い払ってきたのは全て彼女の力で、ルロワ領が発展した事も彼女の功績だそうです。
普段、私の部屋で愚痴ばかり漏らす姿しか見たことはないのですが、彼女の話はいつもガブリエラの周りで起きていることと一致しているので、本当に精霊なのだと思います。
「あら。心強い味方がいて安心だわ」
『ふふっ。それより、どうして元気がないの? 心配事は王子様の事だけじゃないみたいね。美味しいブドウジュースを頭から浴びたことも関係しているの? たまには私がシェーラの愚痴を聞いてあげるわ』
「ありがとう。じゃあ。……サリュウス伯爵について、知っていることがあったら教えて欲しいわ」
フェミューは一瞬ピタッと動きを止めると、遠く窓の外へと視線を伸ばしまし呟きました。
『……い人』
「え?」
『めっちゃ怖い人!』
「そ、そうなの? どんな風に怖いのかしら?」
『血も涙もない冷徹野郎よ! 私はあの人、大っ嫌い』
顔を真っ赤にして怒るフェミューですが、怯えた様子はないので、単に嫌いなだけのようです。
凄く性格が悪い方なのでしょうか。
「そう。だからルシアンは、反対したのかしら」
『反対?』
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ですが、フェミューと話していたら、だいぶ心が落ち着きました。
いつも彼女からは元気をもらっています。
「ありがとう。フェミュー」
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