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最終章
001 籠の鳥
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「ビリー。明日ルナステラへ立つ。そう心得ておけ」
ヴェルナーが告げると、ビリーは牢の中でハッと青白い顔を上げた。
「あ、明日ですか? 第一王子様の誕生パーティーはまだですよね?」
「ルナステラ国王が崩御されたのだ」
「そ、そんな……。嫌だ。帰りたくない。アレクシア様に殺される。陛下は、きっとアレクシア様に暗殺されたのだ」
鉄柵にしがみつき恐れおののくビリーに、ヴェルナーは呆れ返った。アレクシアを何だと思っているのだろうかと。
「何を馬鹿なことを。しかし、お前はアレクシアに忠誠を誓っていたのではなかったか?」
「あれは、アレクシア様の指輪のせいで言わされていただけだ。アレクシア様は、ルナステラ王を凌ぐ力を持った恐ろしい魔女なのです。だから、陛下はアレクシア様を……」
「勝手だな。自分より秀でた者を排除することしか出来ない者など、王である資格もない。それにお前も、命を助けてくれたアレクシア様を恐ろしい魔女だなどと言うとは……。もう話すことは無い。明日の準備をしておけ」
呆れを通り越して怒りすら覚え、ヴェルナーは踵を返し牢を去ろうとしたが、ビリーはその背に向かってまだ声を発し続けてきた。
「ああ。そうか。知らないだもんなぁ。――なぁ。ひとつ良い事を教えてやる。アレクシア様に関する重要な事だ。聞くだけでも聞いてくれ。それでもし、有益な情報だったら……。この国の法で私に罰を与えてはくれないか?」
しつこく懇願するビリーに聞く耳は持つまいと考えていたヴェルナーだが、アレクシアに関する事と言われると足が止まった。
ここまで言うのなら聞くだけならありかも知れない。嘘ならば無視すればいいだけの事なのだから。
しかし、裁きに関しては言及できない。
「聞いてもよいが、お前が求めることは、俺には決められない」
「なら、ベネディッド王子を呼んでくれ。頼むっ」
「分かった」
◇◆◇◆
ルナステラ城のとある一室にて、アレクシアは寝る前に手帳に言葉を綴っていた。ルゥナは今頃どうしているだろうか。
ロンバルトの従者が結界を張るようになってから、ルゥナ本人とのやり取りが難しくなってしまっていたが、今夜は言葉が届いたようで、ルゥナからの返信が来た。
「婚約を破棄していただきありがとうございます。ロンバルトの方がついてきてくださるとは驚きです。父の葬儀は、私を帰還を待ってから行われるそうです。焦らず気をつけて帰ってきてください」
『ありがとうございます。なるべく早く戻るようにします』
「はい。お待ちしています。……と。すごいわ。ルゥナは……」
アレクシアが文字を綴り、ため息混じりに呟いた時、扉がノックされた。この部屋に入ることができるのは、限られた侍女とアレクシアの兄だけである。
「お兄様?」
「失礼するよ。アレクシア」
「……どうされましたか?」
兄、レオナルドの後ろには数名の宮廷魔道士がいた。杖を構え、アレクシアにそれを向けていて、彼らから緊張が伝わってきた。
レオナルドはいつも通りの笑顔をアレクシアに向けた。
「父の葬儀の日に、もう一人送り出したい人がいてね」
「それは、どなたのことですか?」
「アレクシア。君だよ」
レオナルドは躊躇することなく当たり前のように言葉を発し、アレクシアは一瞬言葉を失った。宮廷魔導師達の手に力がこもり、それを牽制すべくアレクシアは言葉を返した。
「な、何を仰っていていらっしゃるのですか?」
「父はもういない。アレクシアを邪険に扱う人間は居なくなったんだ。アレクシアにとって、ここで生きることが一番だと思わないか?」
「ここで?」
「私の支えになってくれ。アレクシア」
手を取り微笑むレオナルドに、アレクシアは戸惑うばかりだった。アレクシアの一番の理解者であり、頼れる兄だと思ってきたのに、言葉の意味が理解できない。想い人への気持ちを兄も応援してくれていたのに。
「ですが、私は他国の方との婚姻を……」
「しなくてよいのだよ。アレクシアは死んだことになるのだから。王家の紋章を付けた者がアレクシアなのだから。――大丈夫だ。マルクが上手くやってくれるさ」
「もしかして、マルクにルゥナを……」
「ああ。そうだよ。顔色が悪い。喜んでくれると思ったのだが」
喜べるはずがない。頬に添えられたレオナルドの手は冷たく、アレクシアの熱を奪っていく。でもそれのお陰で、少しだけ冷静さを取り戻せて、アレクシアは無理やり口角を上げて笑みを作った。
「……とても、良い案ですわね。お兄様。ですが、ルゥナはマルクからの紹介なのです。ですから、マルクは裏切るかもしれません。私からマルクに命令を出してもよろしいですか? 私の命令ならマルクも腹を決めるでしょう」
「確かに。マルクはどうしてか、あの庶民を庇っていたな。しかし……いいのか?」
「はい。私もお兄様とずっと一緒に居たいですから、マルクに連絡しますね」
「そうか。そうだったか。先に話しておけば良かったな。てっきり反対するかと思ってな」
機嫌よく声を弾ませレオナルドは笑い、アレクシアは震える手で手帳を開いた。ルゥナに一刻も早く知らせなければ。
『マルクは兄に脅されルゥナを暗殺しようとしています。逃げてくださ』
そこまで記した時、レオナルドはアレクシアから手帳を奪い、アレクシアの両手を片手で拘束した。
「お兄様っ。離してくださいっ」
「アレクシア。これはどういう事だ。替え玉がそんなに大事か? それならマルクへ私が殺さないように指示を出そう。アレクシアが、私の側にいてくれると約束するならば。どうなのだ?」
「約束します。ですから、ルゥナには手を出さないでください。あの子は私の代わりに何度も危険な目に遭ってきたのです。やっと任務を終えて帰って来るのです。どうか……」
「おお。任務を終えたのか。ならば、ルナステラへ向かう道中なら、ロンバルドの保護下でもなく扱いやすいな」
レオナルドはアレクシアから手を離すと、手帳を破り捨てた。
「お兄様っ!?」
「アレクシア。いくらお前でも、この人数の宮廷魔道士には敵うまい。アレクシアを傷つけたいわけではないのだ。私の言う事を聞きなさい。さもないと、マルクやスーザンも帰ってこなくなるぞ?」
「…………分かりました。お兄様、ルゥナは」
「その子は駄目だ。アレクシアの代わりに死んでもらわないと。それぐらいしないと、アレクシアは、また私に嘘を吐きそうだからな」
「そんな……」
「さて、部屋を閉鎖しろ」
レオナルドの指示により、宮廷魔導師達は杖を掲げアレクシアへと向けた。
ヴェルナーが告げると、ビリーは牢の中でハッと青白い顔を上げた。
「あ、明日ですか? 第一王子様の誕生パーティーはまだですよね?」
「ルナステラ国王が崩御されたのだ」
「そ、そんな……。嫌だ。帰りたくない。アレクシア様に殺される。陛下は、きっとアレクシア様に暗殺されたのだ」
鉄柵にしがみつき恐れおののくビリーに、ヴェルナーは呆れ返った。アレクシアを何だと思っているのだろうかと。
「何を馬鹿なことを。しかし、お前はアレクシアに忠誠を誓っていたのではなかったか?」
「あれは、アレクシア様の指輪のせいで言わされていただけだ。アレクシア様は、ルナステラ王を凌ぐ力を持った恐ろしい魔女なのです。だから、陛下はアレクシア様を……」
「勝手だな。自分より秀でた者を排除することしか出来ない者など、王である資格もない。それにお前も、命を助けてくれたアレクシア様を恐ろしい魔女だなどと言うとは……。もう話すことは無い。明日の準備をしておけ」
呆れを通り越して怒りすら覚え、ヴェルナーは踵を返し牢を去ろうとしたが、ビリーはその背に向かってまだ声を発し続けてきた。
「ああ。そうか。知らないだもんなぁ。――なぁ。ひとつ良い事を教えてやる。アレクシア様に関する重要な事だ。聞くだけでも聞いてくれ。それでもし、有益な情報だったら……。この国の法で私に罰を与えてはくれないか?」
しつこく懇願するビリーに聞く耳は持つまいと考えていたヴェルナーだが、アレクシアに関する事と言われると足が止まった。
ここまで言うのなら聞くだけならありかも知れない。嘘ならば無視すればいいだけの事なのだから。
しかし、裁きに関しては言及できない。
「聞いてもよいが、お前が求めることは、俺には決められない」
「なら、ベネディッド王子を呼んでくれ。頼むっ」
「分かった」
◇◆◇◆
ルナステラ城のとある一室にて、アレクシアは寝る前に手帳に言葉を綴っていた。ルゥナは今頃どうしているだろうか。
ロンバルトの従者が結界を張るようになってから、ルゥナ本人とのやり取りが難しくなってしまっていたが、今夜は言葉が届いたようで、ルゥナからの返信が来た。
「婚約を破棄していただきありがとうございます。ロンバルトの方がついてきてくださるとは驚きです。父の葬儀は、私を帰還を待ってから行われるそうです。焦らず気をつけて帰ってきてください」
『ありがとうございます。なるべく早く戻るようにします』
「はい。お待ちしています。……と。すごいわ。ルゥナは……」
アレクシアが文字を綴り、ため息混じりに呟いた時、扉がノックされた。この部屋に入ることができるのは、限られた侍女とアレクシアの兄だけである。
「お兄様?」
「失礼するよ。アレクシア」
「……どうされましたか?」
兄、レオナルドの後ろには数名の宮廷魔道士がいた。杖を構え、アレクシアにそれを向けていて、彼らから緊張が伝わってきた。
レオナルドはいつも通りの笑顔をアレクシアに向けた。
「父の葬儀の日に、もう一人送り出したい人がいてね」
「それは、どなたのことですか?」
「アレクシア。君だよ」
レオナルドは躊躇することなく当たり前のように言葉を発し、アレクシアは一瞬言葉を失った。宮廷魔導師達の手に力がこもり、それを牽制すべくアレクシアは言葉を返した。
「な、何を仰っていていらっしゃるのですか?」
「父はもういない。アレクシアを邪険に扱う人間は居なくなったんだ。アレクシアにとって、ここで生きることが一番だと思わないか?」
「ここで?」
「私の支えになってくれ。アレクシア」
手を取り微笑むレオナルドに、アレクシアは戸惑うばかりだった。アレクシアの一番の理解者であり、頼れる兄だと思ってきたのに、言葉の意味が理解できない。想い人への気持ちを兄も応援してくれていたのに。
「ですが、私は他国の方との婚姻を……」
「しなくてよいのだよ。アレクシアは死んだことになるのだから。王家の紋章を付けた者がアレクシアなのだから。――大丈夫だ。マルクが上手くやってくれるさ」
「もしかして、マルクにルゥナを……」
「ああ。そうだよ。顔色が悪い。喜んでくれると思ったのだが」
喜べるはずがない。頬に添えられたレオナルドの手は冷たく、アレクシアの熱を奪っていく。でもそれのお陰で、少しだけ冷静さを取り戻せて、アレクシアは無理やり口角を上げて笑みを作った。
「……とても、良い案ですわね。お兄様。ですが、ルゥナはマルクからの紹介なのです。ですから、マルクは裏切るかもしれません。私からマルクに命令を出してもよろしいですか? 私の命令ならマルクも腹を決めるでしょう」
「確かに。マルクはどうしてか、あの庶民を庇っていたな。しかし……いいのか?」
「はい。私もお兄様とずっと一緒に居たいですから、マルクに連絡しますね」
「そうか。そうだったか。先に話しておけば良かったな。てっきり反対するかと思ってな」
機嫌よく声を弾ませレオナルドは笑い、アレクシアは震える手で手帳を開いた。ルゥナに一刻も早く知らせなければ。
『マルクは兄に脅されルゥナを暗殺しようとしています。逃げてくださ』
そこまで記した時、レオナルドはアレクシアから手帳を奪い、アレクシアの両手を片手で拘束した。
「お兄様っ。離してくださいっ」
「アレクシア。これはどういう事だ。替え玉がそんなに大事か? それならマルクへ私が殺さないように指示を出そう。アレクシアが、私の側にいてくれると約束するならば。どうなのだ?」
「約束します。ですから、ルゥナには手を出さないでください。あの子は私の代わりに何度も危険な目に遭ってきたのです。やっと任務を終えて帰って来るのです。どうか……」
「おお。任務を終えたのか。ならば、ルナステラへ向かう道中なら、ロンバルドの保護下でもなく扱いやすいな」
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「お兄様っ!?」
「アレクシア。いくらお前でも、この人数の宮廷魔道士には敵うまい。アレクシアを傷つけたいわけではないのだ。私の言う事を聞きなさい。さもないと、マルクやスーザンも帰ってこなくなるぞ?」
「…………分かりました。お兄様、ルゥナは」
「その子は駄目だ。アレクシアの代わりに死んでもらわないと。それぐらいしないと、アレクシアは、また私に嘘を吐きそうだからな」
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