「拝啓、遠くへ行った君へ」

2007

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小春のスイートピー

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 「大学、楽しくない」と、高校の友達にラインを打つ。あの時が一番楽しかった。仲の良い四人グループでよく寄り合っていた。そのメンバーでずっと固まっているわけではなく、同級生のだいたいの女子とは話したし、男子ともよく話していた。今とは大違いすぎて呆れる。あの頃に戻りたいと切実に願う。でも良い思い出ばかりではない。後悔もたくさんあった。例えばあいつ。思い返すだけでも気恥ずかしくなる。

 初めてあいつのことを認識したのは小学校の中学年のときだ。詳しい時期は覚えていないが、その引出しの景色は中学年が使う階から見た風景だから、なんとなくわかる。授業中に不意にあいつが後ろを向いてきて私のノートを見た。当時、私は授業中に落書きしかしてなかったため、あいつに描いていた絵を見られた。そしてあいつは「目描いてるだ??うめぇじゃん」とかまあまあ大きな声で言いやがった。一瞬怒りが湧いてきたが、先生がこっちに向かってくるのを見て恐怖を感じた。そして雷が落ちた。大勢の前で叱られるという経験はこれが初めてだった。怒られたあと、泣き腫らした顔で前に座るバカを睨み続けた。休み時間になったら文句の一つでも言ってやろうと思っていたが、あいつはすべて覚えていないような清々しい顔でサッカーに行ってしまった。バカでどうしようもないガキ大将というのが第一印象だった。

 そこから何回か話した記憶は朧げながらあるが、中学生になると、男子なんて馬鹿らしいと思いあまり話さ無くなってしまった。今思うと思春期真っ只中だった。もう一度強烈に会ったのは高校生になってからだ。地元じゃ二番目くらいの進学校に進学し、目をキラキラさせて入学式に参加した。そして、あいつの姿を見かけた。意外だった。記憶の中のあいつはもっと馬鹿だった気がしたからだ。

 それでも結局高校2年生になるまで同じクラスにならなかった。それまで会話も交わさなかった。関係性が変わったのは2年の秋。席替えであいつは私の前に座った。昔の嫌な思い出が蘇って来るようで多少憂鬱に感じたが、あいつは何も覚えていないようなケロッとした顔で「同じ中学だよね」とか聞いてきたので力が抜けた。やっぱりこいつは馬鹿だと心の中で毒づいた。しかし意外にもあいつと話すのは苦ではなかった。私が知らない間に大人になっていた。背も高く、体格も良くなってて、別人のようだった。ついでに顔も良かった。

 
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