卯野の独り言

魔女の一撃

　重たいものを持ち上げようとしたとき、床に落ちたものを拾おうとしたとき、くしゃみをしたとき。
　そんな些細なきっかけが引き起こす悪夢。
　急性腰痛、いわゆる「ぎっくり腰」です。その突然さと痛みに、ドイツでは「魔女の一撃」と言うそうです。文化が見えて面白いです。

　ある日のことじゃった……

　と、つい昔話風になりそうですが、私の身に起きたことと、いざぎっくり腰になった時の対処法を備忘録がわりに書いておこうと思います。もし、誰かの何かしらの役に立ったなら幸いです。

　私がぎっくり腰になったきっかけは、単純に

「わかりません」

　本当に謎です。重いものを持ったわけでもなく、床のものを拾おうとしたわけでもなく、くしゃみをしたわけでもありません。
　普段から軽い腰痛はあったのですが、立ち上がろうと軽くかがんだ瞬間、腰に激痛が走りました。
　本当に動けなくなります。どんな不自然な姿勢でも、少しでも動こうものなら腰に激痛。

　かといって、立ち上がろうとした中途半端な姿勢のままではいられない。ゆっくり、痛くない姿勢を模索しながら、少しでも楽な姿勢を求めて体勢を整えます。
　なんとか休める体勢をとり、スマホで解決策を探す。この時、私は自分がぎっくり腰とは思いませんでした。理由は、上記のきっかけが何も思い当たらなかったから。

　ただ、普通に立ち上がろうとしただけです。腰に負担のかかる何かをした自覚がまったくなかったのです。
　しかし、常に痛いわけではありません。ゆっくり、まるでカタツムリのように這い、立ち上がれば歩くのは苦ではありません。たまに痛むけど、この痛みに慣れてしまえば意外と平気になってきました。

　厄介だった点は、痛い姿勢と痛くない姿勢の線引きがまったくわからないところです。さっきは痛くなかった姿勢をとったら激痛が走り、痛かった姿勢が今度は痛くない。まさに爆弾を抱えているような感じでした。

　翌日、朝起きたら寝てる姿勢でも痛い。これは出勤は無理だと判断し、休みを取りました。子供たちの朝食を主人に丸投げし、動けるようになるまで休み、お腹も空いてきたので朝食を取るために起き上がる。
　起きて靴下を履いて、着替えを用意して階下に降りる。
　これだけの作業に、ゆうに三十分はかかりました。

　おっかなびっくり着替えを済ませ、朝食を摂り、かかりつけの病院へ。
　レントゲンを撮り、診察の結果、ぎっくり腰と言われました。そこで初めて自分がぎっくり腰と知った私は、驚いてしまいました。
　でも何かの病気の影響とかじゃなくて良かったです。聞いた話ですが、腰痛で病院に行ったら癌だったというのもあったので。

　先生から聞いた、ぎっくり腰の対処法を簡単にまとめてみます。

　発症してすぐの動けないときは安静に。
　痛みは徐々に軽くなる一方。
　動ける程度に痛みが引いてから、病院へ。
　安静にするのは最長五日まで。それ以上休んでると、筋肉が衰えていって逆に腰に良くない。
　一度やると再発しやすい。
　ストレッチ大事。
　湿布の上からカイロで温めても大丈夫。ただし、湿布でかぶれやすくなるから要注意。
　
　数日、湿布を同じ箇所に貼り、寒い日はカイロを貼ってたものだから見事にかぶれました。
　痒い痒い。触るとザラッとしたブツブツができてる。
　主人に見てもらったら、「赤くてブツブツがある。ゾンビになる一歩手前みたい」と言われたので、思わず、
「かゆい、うま」
　とリアルで口にしちゃいました。

　先生曰く、今は寒い時期に加えてテレワークも増え、ぎっくり腰になる人も増えているようです。
　確かに、テレワークの時って動かないんですよね。気がついたら二時間三時間座りっぱなしなんてザラ。会社なら、適当にトイレだとか飲み物を買いに行くとかでサボるために席を立つのですが（笑）

　皆様も、不意の「魔女の一撃」を喰らわぬよう、お気をつけください。本当に動けないから。