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出産の記憶 3
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経験したことのない激しい痛みと半日以上戦い続けた明け方、やっとハチと会える瞬間がやって来ました。
痛くて痛くてたまらない、何で無痛分娩を選ばなかった自分? そうだ陣痛の経験を一度でも体験してみたかったという単なる好奇心とM心からじゃないか。やばいトイレ行けてない。だって排泄物と一緒にハチが出そうで怖かったから行けなかったやばいこれ一緒に出ちゃうパターンじゃないか恥ずかしいでも下半身全部丸出しで今更恥ずかしいもあるかい! でもそれとこれとは別だ。そう言えば旦那に連絡してくれたのか? 早く来て欲しいけど間に合うのかこれうわぁぁぁぁぁ。
と、当時こんな風に頭の中がグルグルとしていた記憶があります。
分娩台に乗り、いよいよ出産本番です。陣痛は何分おきかもわからないくらい頻繁に襲い、そのたびに勝手に入る力。
破水はまだだったので、助産師さんが何やら道具を使って破水させてくれました。あとはもう産むだけです。産む「だけ」。
これが意外と難行でした。頭の片隅にう◯ちの心配もあって、ここにきて羞恥心が蘇ってきたのです。
今更トイレに行けるのか、出ちゃったらどうしよう、と痛みが引いてるわずかの隙に助産師さんに告白したら。
「あ、もう出ちゃってるから心配しないでいいよ」
……「出ちゃってるから」……?
うっそ! 出てる? 気づかない間に人の目の前でう◯ち漏らしてた!?
そういえば便意がない気がする。さっきいきんでたのは便意だったのか。そもそも便意といきみは似ててわかりにくいと聞いたことあるような。
齢三十も過ぎて、人前でう◯ちを漏らすなんて、考えもしませんでした。
えーいもう出ちゃったならしょうがない! と自棄になりあとは身体の自然な反応に任せて、助産師さんの「ゆっくり息吐いて」「目は閉じないで」等のアドバイスを受けつつ何度かいきんだところで、助産師さんが「はい、頭出て来た! もう少し! 頑張れ!」と、励ましてくれました。
頭が出たら、あとは楽に、つるん、という感触と共に。
午前6時半。ハチ、誕生!
へびゃぁぁぁ~! へびゃぁぁぁ~!
なかなかに独特な産声をあげ、3300グラムの大きめの男の子が産まれました。助産師さんが、言葉通り『生まれたてほやほや』のハチの姿を見せてくれました。そこで抱いた第一印象は、「おじいちゃん」でした。本当に、旦那の父親にそっくり過ぎて。思わず
「じぃじだねー」
と、笑っちゃいました。
終わったぁぁぁぁぁ……、と、激しい痛みからの開放感に浸っていると、先生登場。
「おめでとうございます」の言葉と共に、産後の処置です。
人によって、産む少し前にアソコにハサミを入れて切るのですが、私の場合、早くいきみ過ぎたこと、分娩台が開くまで時間がかかってしまったことから、切る前に数カ所自然に裂けてしまっていたのでした。
切ったのならば、縫うのも楽だし抜糸の時も楽でそれほど痛くないのですが、裂けてしまったら縫うのも少し複雑、抜糸の時も痛いという地獄コースです。私がお産した産院は、溶ける糸ではなく、普通の縫合糸を使っていたため、しばらくは座るのも辛い、抜糸も痛いというところでした。
まあ仕方ない。運とタイミングが悪かっただけだ。自然にまかせたお産だったと思えば。痛いけど。
一通りの処置が終わり、分娩室から隣の休息室に移り、そこで綺麗にしてもらった我が子を連れてきてもらいました。
産まれてすぐに顔は見たのですが、綺麗になっても印象は「おじいちゃん」でした。
目もはっきり開いていて、赤ちゃんはこんなにも澄んだピュアな目をしてるのか、と感動しました。
ピュアなおじいちゃんを抱いて、可愛いと素直に感じました。
そしてまだ現れない旦那。どうした連絡は行ってないのか。
病室に移って、ようやく旦那登場。出産後2時間経った頃に、電話があったそうです。
旦那は「いよいよか!」と電話に出たら、看護師さんからの第一声が、
「すみません、産まれちゃいました……」
だって。
バタバタしてたもんねぇ。
でも無事に産まれて良かった、お疲れ様の一言で、全部が吹っ飛びました。
お疲れ、自分! お疲れ様、助産師さん! お疲れ様でした、先生!
☆補足☆
後日、助産師さんに、出産時のう◯ち問題について尋ねたところ、
「全っ然恥ずかしくない! むしろ、私たちからしたらう◯ちが出るのは、赤ちゃんが順調に産道を降りてきて、肛門が圧迫されてることだから、いい状態なのよ。それに、けっこうみんな出しちゃってるから気にしないで!」
と、却って褒められました。
そうか、みんなけっこう出しちゃってるのか……。聞きたくても聞けないけど。
痛くて痛くてたまらない、何で無痛分娩を選ばなかった自分? そうだ陣痛の経験を一度でも体験してみたかったという単なる好奇心とM心からじゃないか。やばいトイレ行けてない。だって排泄物と一緒にハチが出そうで怖かったから行けなかったやばいこれ一緒に出ちゃうパターンじゃないか恥ずかしいでも下半身全部丸出しで今更恥ずかしいもあるかい! でもそれとこれとは別だ。そう言えば旦那に連絡してくれたのか? 早く来て欲しいけど間に合うのかこれうわぁぁぁぁぁ。
と、当時こんな風に頭の中がグルグルとしていた記憶があります。
分娩台に乗り、いよいよ出産本番です。陣痛は何分おきかもわからないくらい頻繁に襲い、そのたびに勝手に入る力。
破水はまだだったので、助産師さんが何やら道具を使って破水させてくれました。あとはもう産むだけです。産む「だけ」。
これが意外と難行でした。頭の片隅にう◯ちの心配もあって、ここにきて羞恥心が蘇ってきたのです。
今更トイレに行けるのか、出ちゃったらどうしよう、と痛みが引いてるわずかの隙に助産師さんに告白したら。
「あ、もう出ちゃってるから心配しないでいいよ」
……「出ちゃってるから」……?
うっそ! 出てる? 気づかない間に人の目の前でう◯ち漏らしてた!?
そういえば便意がない気がする。さっきいきんでたのは便意だったのか。そもそも便意といきみは似ててわかりにくいと聞いたことあるような。
齢三十も過ぎて、人前でう◯ちを漏らすなんて、考えもしませんでした。
えーいもう出ちゃったならしょうがない! と自棄になりあとは身体の自然な反応に任せて、助産師さんの「ゆっくり息吐いて」「目は閉じないで」等のアドバイスを受けつつ何度かいきんだところで、助産師さんが「はい、頭出て来た! もう少し! 頑張れ!」と、励ましてくれました。
頭が出たら、あとは楽に、つるん、という感触と共に。
午前6時半。ハチ、誕生!
へびゃぁぁぁ~! へびゃぁぁぁ~!
なかなかに独特な産声をあげ、3300グラムの大きめの男の子が産まれました。助産師さんが、言葉通り『生まれたてほやほや』のハチの姿を見せてくれました。そこで抱いた第一印象は、「おじいちゃん」でした。本当に、旦那の父親にそっくり過ぎて。思わず
「じぃじだねー」
と、笑っちゃいました。
終わったぁぁぁぁぁ……、と、激しい痛みからの開放感に浸っていると、先生登場。
「おめでとうございます」の言葉と共に、産後の処置です。
人によって、産む少し前にアソコにハサミを入れて切るのですが、私の場合、早くいきみ過ぎたこと、分娩台が開くまで時間がかかってしまったことから、切る前に数カ所自然に裂けてしまっていたのでした。
切ったのならば、縫うのも楽だし抜糸の時も楽でそれほど痛くないのですが、裂けてしまったら縫うのも少し複雑、抜糸の時も痛いという地獄コースです。私がお産した産院は、溶ける糸ではなく、普通の縫合糸を使っていたため、しばらくは座るのも辛い、抜糸も痛いというところでした。
まあ仕方ない。運とタイミングが悪かっただけだ。自然にまかせたお産だったと思えば。痛いけど。
一通りの処置が終わり、分娩室から隣の休息室に移り、そこで綺麗にしてもらった我が子を連れてきてもらいました。
産まれてすぐに顔は見たのですが、綺麗になっても印象は「おじいちゃん」でした。
目もはっきり開いていて、赤ちゃんはこんなにも澄んだピュアな目をしてるのか、と感動しました。
ピュアなおじいちゃんを抱いて、可愛いと素直に感じました。
そしてまだ現れない旦那。どうした連絡は行ってないのか。
病室に移って、ようやく旦那登場。出産後2時間経った頃に、電話があったそうです。
旦那は「いよいよか!」と電話に出たら、看護師さんからの第一声が、
「すみません、産まれちゃいました……」
だって。
バタバタしてたもんねぇ。
でも無事に産まれて良かった、お疲れ様の一言で、全部が吹っ飛びました。
お疲れ、自分! お疲れ様、助産師さん! お疲れ様でした、先生!
☆補足☆
後日、助産師さんに、出産時のう◯ち問題について尋ねたところ、
「全っ然恥ずかしくない! むしろ、私たちからしたらう◯ちが出るのは、赤ちゃんが順調に産道を降りてきて、肛門が圧迫されてることだから、いい状態なのよ。それに、けっこうみんな出しちゃってるから気にしないで!」
と、却って褒められました。
そうか、みんなけっこう出しちゃってるのか……。聞きたくても聞けないけど。
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