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第1部
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次の日、学園のカフェテリアへケイトと行ったら、「ケイト」と呼ぶ声が。
見るとダークブロンドに薄い青の目の、優しそうな青年が立っている。
「クライド!驚いた、何故学園に?」
「実は先月、家が男爵の称号を授けられてさ。
僕、あと在学が1年だけど、少しでも貴族の学園で学んだ方がいいとかって、父親に1月から編入させられたんだ。
周りになかなか馴染めなくてさ、君を見つけてめちゃめちゃ嬉しかった」
「まあ!凄いわね、良かったら一緒にランチをどう?アイシャ、良いかしら?」
私はもちろん、と返すと3人でランチをいただくことにした。
彼はクライド、ルメール男爵の長男だ。
ルメール家は靴職人で始まり、今はこの国に靴屋を何十店舗も経営する実業家だ。
国へ一定の寄付を行い、先月男爵の称号を父親が授けられた。
ケイトが小さい頃から利用しているルメールの店に、クライドも小さい頃から通っていてよく話すようになったらしい。
2人の仲の良い様子が微笑ましかった。
クライドの話し方は今どきの若者?みたいで新鮮で面白いわ。
学園から帰り、今日はイクラと庭でも散歩しようかしら、と厩舎に向かったところで、イーサンから通信が入る。
「はい、イーサン、もうお仕事は終わったの?」
「…ああ。アイシャ、ちょっと相談したいことがあって、…これからお伺いしてもよいだろうか」
イーサンが平日に来るなんて、珍しいわね。
「大丈夫よ。ディナーも一緒にいかが?」
「…いや、今日はすぐに帰るから。
今から30分後くらいに行くよ…ありがとう」
通信が切れたので、私はメイドにこれから来客があるのでとお茶を頼んだ。
30分後、正確にイーサンはやってきた。
「いらっしゃい。
お父様とお兄様はまもなく帰ってくるわ。 お母様はいるけど、後で挨拶してくれる?」
「…分かった」
何だか重い表情のイーサンを私は部屋へ案内した。
2人で向かい合ってソファへ座ると、メイドがお茶と菓子を置いて、去っていく。
「イーサンが平日に会いにくるなんて、珍しいわね。何かあったの?」
イーサンは一瞬私の顔を見て、俯く。
そのまま
「お願いがあるんだ。一度、兄上と2人で会ってもらえないだろうか」
「セドリック様に?」
なんでだろう、結婚を前提としたお付き合いについて、セドリック様から何か言われるのかな?
でも、2人で?
「結婚についての話かしら?2人なの?
イーサンは一緒じゃないの?」
イーサンはずっと俯いている。
「イーサン?」
「…違うんだ。
兄上が、貴女とデートをしたいと」
「え?」
「…一度でいいんだ、アイシャ。
…すまない」何を言っているの彼は?
「何故セドリック樣と私がデートを?」
「…兄上は君を一目見て惹かれたらしい。
俺は、兄上の言う事には逆らえない」
目の前が段々と暗くなっていく。
「ふざけているの?」
「ふざけてなんか」
「何故私が貴方のそんな頼みを聞くと?
もしデートをしたとして、私がセドリック様に…抱かれたとしても良いという事?」
「…兄上はそんな事をしない」
「分からないじゃない!
…一体、貴方は私を、何だと」
悲しくて涙が滲んでくる。
「アイシャ!すまない…愛してるんだ…」
イーサンは立ち上がり私に触れようとする。
咄嗟に嫌悪感が湧いた。
「触らないで」
「アイシャ?」
「…もう貴方に触れられたくない。
…さようなら、もう、帰って」
ここまで言って涙が溢れた。
イーサンは苦しげに
「アイシャ…待ってくれ」
「ごめんなさい。
私には理解できないわイーサン。
…さよなら。
ケルシー、お客様がお帰りよ。
お送りしてちょうだい」
私はメイドを呼び、イーサンから背を向けた。
「アイシャ…」
イーサンが私に近づいてきたけど、ケルシーが呼び止めてくれた。
「お帰りはこちらです」
「アイシャ…、また、連絡する。
申し訳、なかった」
彼が去っていく足音を聞きながら、私はベッドに突っ伏した。
「うっ…ううっ…」
これまでのイーサンとの楽しかった思い出、イーサンとのこれからの未来をワクワクしながら想像していた、あの頃が全て終わったのだ、と考えれば考えるほど、涙が溢れて止まらなかった。
見るとダークブロンドに薄い青の目の、優しそうな青年が立っている。
「クライド!驚いた、何故学園に?」
「実は先月、家が男爵の称号を授けられてさ。
僕、あと在学が1年だけど、少しでも貴族の学園で学んだ方がいいとかって、父親に1月から編入させられたんだ。
周りになかなか馴染めなくてさ、君を見つけてめちゃめちゃ嬉しかった」
「まあ!凄いわね、良かったら一緒にランチをどう?アイシャ、良いかしら?」
私はもちろん、と返すと3人でランチをいただくことにした。
彼はクライド、ルメール男爵の長男だ。
ルメール家は靴職人で始まり、今はこの国に靴屋を何十店舗も経営する実業家だ。
国へ一定の寄付を行い、先月男爵の称号を父親が授けられた。
ケイトが小さい頃から利用しているルメールの店に、クライドも小さい頃から通っていてよく話すようになったらしい。
2人の仲の良い様子が微笑ましかった。
クライドの話し方は今どきの若者?みたいで新鮮で面白いわ。
学園から帰り、今日はイクラと庭でも散歩しようかしら、と厩舎に向かったところで、イーサンから通信が入る。
「はい、イーサン、もうお仕事は終わったの?」
「…ああ。アイシャ、ちょっと相談したいことがあって、…これからお伺いしてもよいだろうか」
イーサンが平日に来るなんて、珍しいわね。
「大丈夫よ。ディナーも一緒にいかが?」
「…いや、今日はすぐに帰るから。
今から30分後くらいに行くよ…ありがとう」
通信が切れたので、私はメイドにこれから来客があるのでとお茶を頼んだ。
30分後、正確にイーサンはやってきた。
「いらっしゃい。
お父様とお兄様はまもなく帰ってくるわ。 お母様はいるけど、後で挨拶してくれる?」
「…分かった」
何だか重い表情のイーサンを私は部屋へ案内した。
2人で向かい合ってソファへ座ると、メイドがお茶と菓子を置いて、去っていく。
「イーサンが平日に会いにくるなんて、珍しいわね。何かあったの?」
イーサンは一瞬私の顔を見て、俯く。
そのまま
「お願いがあるんだ。一度、兄上と2人で会ってもらえないだろうか」
「セドリック様に?」
なんでだろう、結婚を前提としたお付き合いについて、セドリック様から何か言われるのかな?
でも、2人で?
「結婚についての話かしら?2人なの?
イーサンは一緒じゃないの?」
イーサンはずっと俯いている。
「イーサン?」
「…違うんだ。
兄上が、貴女とデートをしたいと」
「え?」
「…一度でいいんだ、アイシャ。
…すまない」何を言っているの彼は?
「何故セドリック樣と私がデートを?」
「…兄上は君を一目見て惹かれたらしい。
俺は、兄上の言う事には逆らえない」
目の前が段々と暗くなっていく。
「ふざけているの?」
「ふざけてなんか」
「何故私が貴方のそんな頼みを聞くと?
もしデートをしたとして、私がセドリック様に…抱かれたとしても良いという事?」
「…兄上はそんな事をしない」
「分からないじゃない!
…一体、貴方は私を、何だと」
悲しくて涙が滲んでくる。
「アイシャ!すまない…愛してるんだ…」
イーサンは立ち上がり私に触れようとする。
咄嗟に嫌悪感が湧いた。
「触らないで」
「アイシャ?」
「…もう貴方に触れられたくない。
…さようなら、もう、帰って」
ここまで言って涙が溢れた。
イーサンは苦しげに
「アイシャ…待ってくれ」
「ごめんなさい。
私には理解できないわイーサン。
…さよなら。
ケルシー、お客様がお帰りよ。
お送りしてちょうだい」
私はメイドを呼び、イーサンから背を向けた。
「アイシャ…」
イーサンが私に近づいてきたけど、ケルシーが呼び止めてくれた。
「お帰りはこちらです」
「アイシャ…、また、連絡する。
申し訳、なかった」
彼が去っていく足音を聞きながら、私はベッドに突っ伏した。
「うっ…ううっ…」
これまでのイーサンとの楽しかった思い出、イーサンとのこれからの未来をワクワクしながら想像していた、あの頃が全て終わったのだ、と考えれば考えるほど、涙が溢れて止まらなかった。
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