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第1部

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 そして次の週は舞踏会。
 
 私とイーサンはこの前誂えたお揃いのブラウンの衣装で会場に到着し、シャンパンを嗜む。

 今日はケイトは来ていないわね。  

 ウィリアム様とうまくいっているかしら?

 キースも…いないかやっぱり。

 イーサンとダンスを踊ってから、私はお兄様とアグネス様と一緒に語らっていたが、お兄様から
 「アイシャ、来月は期末試験だろう。
 分からない所があればイーサンに教えてもらえばいい。
 こいつは教え方もうまいからな。
 うちに来てもらえ。
 …父上も紹介して欲しいと思うぞ」
 と言われ、

 「そうね。今日お父様お母様がいたらと思ったけれど。
 まだ正式に紹介していないから…。
 イーサン、いいかしら?」

 「もちろんだ…なんだか、緊張するな。
 オリバーと遊びにいくときにはよく話しているのに」
 と苦笑する。

 そこへ、
 「イーサン殿、アイシャ嬢にダンスを申し込んでも良いだろうか」

 振り返るとエリアスだ。

 プラチナブロンドを後ろに撫で付け、美しいスカイブルーの目が際立つ。

 「…もちろんです。エリアス王子。
 アイシャ、ではここでまた」

 イーサンはお兄様達と談笑しているらしい。

 私はエリアスの手をとってダンスフロアに向かう。

 エリアスと踊るのは久しぶりかも。
 
 なんだか学園でも避けられていた気がするし。

 変わらずエリアスのリードはスムーズで、私はリズムに乗り楽しんでいた。

 そこへエリアスに、

 「…アイシャ、君、イーサン殿とお付き合いしているの?」
 と聞かれる。
 
 改まって問われると照れてしまうが、
 「え、ええ」と返すと

 「キースとはお別れしたのかい」
 と予想外の質問。

 「キース?
 いえ…キースとはそもそもお付き合いはしていないわ。
 仲の良い幼馴染だったけれど…」  

 するとエリアスは苦み走った笑顔を見せて、

 「そうか…。俺は、彼の嘘を信じてしまったんだな」
 と呟く。

 「え?」言ってる意味が分からない。

 「いいや、なんでもない。
 アイシャ、幸せそうで羨ましいよ。
 俺も早く相手に出会えればなぁ!」
 と今回はにこっと笑顔。

 さっきのはなんだったんだろう。

 「エリアスはモテすぎよ。
 なのに相手が見つからないなんて。
 理想が高いのかしら」

 「そうか、そうかもしれないな」

 軽やかにステップを踏んでいると、音楽が鳴り止む。

 「じゃあアイシャ。また学園で」

 「ええ、またね」

 エリアスと別れた後振り返ると、ウィノナがエリアスに駆け寄っていく。

 ベージュのふんわりとした可愛いフリルドレスは華奢な彼女によく似合っているわ。

 舞が夢見ていたお話みたいに、やはり2人はお似合いだわね、とぼんやりと、踊り出す彼らを横目にして、私はイーサンのもとに戻った。
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