25 / 49
第1部
15
しおりを挟む
そして舞踏会当日、キースがいつものように迎えに来て、馬車に乗る。
私はキースに、次の舞踏会はバカンスを挟んで9月になると思うけど、エスコートはお願いしないかも、と伝えた。
キースは目を見開いて、静かに、
「エスコートをイーサン様にお願いするのかな?」
と聞かれる。
私は慌てて、
「まだ分からないわよ!もしも!
もしもの話!」
と返すもキースは無言。
そのうち会場に着いてしまった。
ケイトとウィリアム様がいたので手を振りかけよる。
キースは飲み物をとりに行くと向こうへ行ってしまった。
そんなキースの様子を不思議に思ったケイトに聞かれ、先ほどの馬車での会話が原因かも、と顛末を話すと、ケイトは私は鈍感だとは思っていたけどもう呆れるレベルだと睨まれる。
「なんで?」
と問うと、
「自分の胸に聞いてみて。
まず、アイシャはイーサン様が好きなのよね?」
と問われ、ギクリとする。
イーサン様と2人で会うようになって、確かに私はイーサン様に惹かれている。
時々胸が苦しくなるあの感じ、イーサン様と一緒の時にしか感じたことはないもの。
その時ちょうどイーサン様が会場に着いたのでまた胸が高鳴る。
イーサン様はいつもパートナーが違う。
今日は学園では見た事のない茶色の髪の大人っぽい女性、平民かしら、同じ職場の方だろうか。
そんな事も気になる、前は気にならなかったのに。
イーサン様はあとで、と口パクして向こうへ行った。
私はにっこりと微笑むと頷く。
そんな様子を見てケイトは、キースはどうするの?と聞いてきた。
「キース?どうするって?」
「あーっ、私から言うのもあれだし、全くキースも…」
とぶつぶつ悩ましい顔をしている。
そんな私達を見ながらウィリアム様が、ちょっと席を外すね、と去って行った。
そして、その先には前に楽器屋で見た黒髪の美女が。
「あの方は誰?」とケイトに聞くと
「オクサナ伯爵令嬢じゃないかしら、私たちより4つ上の最上級生よ」
「そうなの、ところであれはいいの?」
ウィリアム様とオクサナ様はダンスフロアに手をとっていく。
「いいんじゃない、ダンスくらい。
彼女は遊び人らしいけど、ウィリアムは相手にされないと思うわ」
とケイトは強気な発言。
この前、楽器屋で2人を見た事を言おうか…と悩んでいるうちに、キースがシャンパングラスを2つもってやってきたのて、話は途中となった。
8月はバカンスとなり、1ヶ月ほど休みとなる。
舞の世界の夏休み、てやつね。
舞はずっと入院していたから夏休みというものもよく分かってなかったよね、たぶん…。
名前は違えど、学生にとっては楽しみにしていた長期の休みだ。
今回はケイト、キース一家も一緒に秋の国、メルクールへ行くことになった。
メルクールもレーゲンブルク同様1年中気候が穏やかで快適な国で、実りも多く穀物をたくさん輸出している。
私も美味しい食べ物と、紅葉狩りが楽しみだ。
ケイトはゴシップ誌を移動中に読みながら、メルクールの王太子は美男子らしいわ、見てみたい!と言っていた。
メルクールに到着し、母親達はスパにいったりお買い物に行ったりして、私達は護衛を連れて、ケイト、キース、モナハン、ケイトの弟のカイン、キースの妹のエレナと一緒に、キースの兄のクリスは遠乗りに行き別行動なので、計六人で観光を楽しみながら、夜はイーサン様と通信し今日の報告をする。
イーサン様はまたまたオリバー兄様と一緒にうちの別荘を拠点に、キャンプや狩猟を楽しんでいるらしい。
今日も通信を終え寝る準備をしていると、今度はキースから通信がきた。
「明日、湖にカヌーをしに2人で行かないかい?」
と誘われる。
「ケイト達は?」と聞くと
「ケイトは弟妹達も一緒に高原に行くみたいだけど、僕は湖に行きたくてね。
兄様は山歩きに行くらしくて一緒に行く人がいないんだ、どうだろう」
カヌーは初めてだわ。
やってみたかったので、いいわよ、と返事をするとキースは喜び、ケイトには言っておくから、と明日の集合時間を決め通信を切った。
翌日のカヌーは午前中のスタート。
おっかなびっくりカヌーに乗り込むと、キースは慣れた様子でゆったりと漕ぎ出す。
目の前には紅葉に染まった高い山がそびえ、湖の青とのバランスが本当に美しい。
しばらくその光景に見惚れていると、キースが突然ぽつりと、
「アイシャ、僕は、君のことがずっと好きだ。
…幼馴染としてではなく、女性として」
という。
私は、びっくり…ではないのかもしれない。
もしかしたら、と思ってはいた。
でも余りにもキースのと距離はずっと近く、よく分からなくなったのかもしれない。
私は景色からキースの方へゆっくりと向き合った。
キースは
「アイシャは、僕の事をどう思っている?」
と問う。
私はしばらく考えて、
「…ごめんなさい、キース。
私、キースの事は大好きだけど、恋人とかは思えない」
と正直に答えた。
「他に好きな男性はいる?」
と重ねて聞かれて、私は気になる人はいる、と答えた。
「イーサン様?」
と言われ少し驚きながら頷く。
気づいていたのね。
キースは、私を微笑みながら見つめた。
「分かっていたんだ。
僕は君の幼馴染、それ以上にはなれないだろうって。
でも僕が何か言ってこの関係が壊れるかもと思っていても、聞きたかった」
「キース…」
「ごめんね、誘っておいて、今日はもう帰ろう」
しばらく黙って2人カヌーを漕ぎながら、岸にたどりつく。
「ホテルまでは馬車に乗って。
僕は少し散歩してから帰るよ」
と馬車まで送ってくれる。
「…アイシャ、僕とまだ幼馴染でいてくれるかい?」
「もちろん、私の大事な親友よ」
と返すとキースは泣きそうな笑顔で、
「…ありがとう。
次に会う時は今日の事は忘れてて欲しいな。…僕も忘れてる。…またね」
と林の中へ歩いて行った。
私は、キースの背中をずっと見つめていた。
次の日から、キースは秋の魚の研究をしたいから、と遠乗りが好きな兄のクリス様とキャンプに行く事になり、そのままバカンスが終わるまでホテルに戻る事はなかった。
私はキースに、次の舞踏会はバカンスを挟んで9月になると思うけど、エスコートはお願いしないかも、と伝えた。
キースは目を見開いて、静かに、
「エスコートをイーサン様にお願いするのかな?」
と聞かれる。
私は慌てて、
「まだ分からないわよ!もしも!
もしもの話!」
と返すもキースは無言。
そのうち会場に着いてしまった。
ケイトとウィリアム様がいたので手を振りかけよる。
キースは飲み物をとりに行くと向こうへ行ってしまった。
そんなキースの様子を不思議に思ったケイトに聞かれ、先ほどの馬車での会話が原因かも、と顛末を話すと、ケイトは私は鈍感だとは思っていたけどもう呆れるレベルだと睨まれる。
「なんで?」
と問うと、
「自分の胸に聞いてみて。
まず、アイシャはイーサン様が好きなのよね?」
と問われ、ギクリとする。
イーサン様と2人で会うようになって、確かに私はイーサン様に惹かれている。
時々胸が苦しくなるあの感じ、イーサン様と一緒の時にしか感じたことはないもの。
その時ちょうどイーサン様が会場に着いたのでまた胸が高鳴る。
イーサン様はいつもパートナーが違う。
今日は学園では見た事のない茶色の髪の大人っぽい女性、平民かしら、同じ職場の方だろうか。
そんな事も気になる、前は気にならなかったのに。
イーサン様はあとで、と口パクして向こうへ行った。
私はにっこりと微笑むと頷く。
そんな様子を見てケイトは、キースはどうするの?と聞いてきた。
「キース?どうするって?」
「あーっ、私から言うのもあれだし、全くキースも…」
とぶつぶつ悩ましい顔をしている。
そんな私達を見ながらウィリアム様が、ちょっと席を外すね、と去って行った。
そして、その先には前に楽器屋で見た黒髪の美女が。
「あの方は誰?」とケイトに聞くと
「オクサナ伯爵令嬢じゃないかしら、私たちより4つ上の最上級生よ」
「そうなの、ところであれはいいの?」
ウィリアム様とオクサナ様はダンスフロアに手をとっていく。
「いいんじゃない、ダンスくらい。
彼女は遊び人らしいけど、ウィリアムは相手にされないと思うわ」
とケイトは強気な発言。
この前、楽器屋で2人を見た事を言おうか…と悩んでいるうちに、キースがシャンパングラスを2つもってやってきたのて、話は途中となった。
8月はバカンスとなり、1ヶ月ほど休みとなる。
舞の世界の夏休み、てやつね。
舞はずっと入院していたから夏休みというものもよく分かってなかったよね、たぶん…。
名前は違えど、学生にとっては楽しみにしていた長期の休みだ。
今回はケイト、キース一家も一緒に秋の国、メルクールへ行くことになった。
メルクールもレーゲンブルク同様1年中気候が穏やかで快適な国で、実りも多く穀物をたくさん輸出している。
私も美味しい食べ物と、紅葉狩りが楽しみだ。
ケイトはゴシップ誌を移動中に読みながら、メルクールの王太子は美男子らしいわ、見てみたい!と言っていた。
メルクールに到着し、母親達はスパにいったりお買い物に行ったりして、私達は護衛を連れて、ケイト、キース、モナハン、ケイトの弟のカイン、キースの妹のエレナと一緒に、キースの兄のクリスは遠乗りに行き別行動なので、計六人で観光を楽しみながら、夜はイーサン様と通信し今日の報告をする。
イーサン様はまたまたオリバー兄様と一緒にうちの別荘を拠点に、キャンプや狩猟を楽しんでいるらしい。
今日も通信を終え寝る準備をしていると、今度はキースから通信がきた。
「明日、湖にカヌーをしに2人で行かないかい?」
と誘われる。
「ケイト達は?」と聞くと
「ケイトは弟妹達も一緒に高原に行くみたいだけど、僕は湖に行きたくてね。
兄様は山歩きに行くらしくて一緒に行く人がいないんだ、どうだろう」
カヌーは初めてだわ。
やってみたかったので、いいわよ、と返事をするとキースは喜び、ケイトには言っておくから、と明日の集合時間を決め通信を切った。
翌日のカヌーは午前中のスタート。
おっかなびっくりカヌーに乗り込むと、キースは慣れた様子でゆったりと漕ぎ出す。
目の前には紅葉に染まった高い山がそびえ、湖の青とのバランスが本当に美しい。
しばらくその光景に見惚れていると、キースが突然ぽつりと、
「アイシャ、僕は、君のことがずっと好きだ。
…幼馴染としてではなく、女性として」
という。
私は、びっくり…ではないのかもしれない。
もしかしたら、と思ってはいた。
でも余りにもキースのと距離はずっと近く、よく分からなくなったのかもしれない。
私は景色からキースの方へゆっくりと向き合った。
キースは
「アイシャは、僕の事をどう思っている?」
と問う。
私はしばらく考えて、
「…ごめんなさい、キース。
私、キースの事は大好きだけど、恋人とかは思えない」
と正直に答えた。
「他に好きな男性はいる?」
と重ねて聞かれて、私は気になる人はいる、と答えた。
「イーサン様?」
と言われ少し驚きながら頷く。
気づいていたのね。
キースは、私を微笑みながら見つめた。
「分かっていたんだ。
僕は君の幼馴染、それ以上にはなれないだろうって。
でも僕が何か言ってこの関係が壊れるかもと思っていても、聞きたかった」
「キース…」
「ごめんね、誘っておいて、今日はもう帰ろう」
しばらく黙って2人カヌーを漕ぎながら、岸にたどりつく。
「ホテルまでは馬車に乗って。
僕は少し散歩してから帰るよ」
と馬車まで送ってくれる。
「…アイシャ、僕とまだ幼馴染でいてくれるかい?」
「もちろん、私の大事な親友よ」
と返すとキースは泣きそうな笑顔で、
「…ありがとう。
次に会う時は今日の事は忘れてて欲しいな。…僕も忘れてる。…またね」
と林の中へ歩いて行った。
私は、キースの背中をずっと見つめていた。
次の日から、キースは秋の魚の研究をしたいから、と遠乗りが好きな兄のクリス様とキャンプに行く事になり、そのままバカンスが終わるまでホテルに戻る事はなかった。
18
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
オネェな東宮に襲われるなんて聞いてないっ!
鳩子
恋愛
時は平安。
伯母上に誘われて宮中へ遊びに行った藤原高紀子(たかきこ)が目にしたのは
一人の麗しい女房(侍女)………だとおもったら、
ええっ? あなたは東宮殿下(皇太子)っ!?
十二単を着込んだその男性は、間違いなく、現在の皇太子。
しかも、
「アタシの秘密を知ったからには、宮中(ここ)から帰すわけには行かないわ!」
と無理やり拉致監禁!
その上、押し倒されそうになって・・・?
強引な男前オネェと温和系姫の平安ラブ!
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
【R-18】SとMのおとし合い
臣桜
恋愛
明治時代、東京の侯爵家の九条西家へ嫁いだ京都からの花嫁、大御門雅。
彼女を待っていたのは甘い新婚生活ではなく、恥辱の日々だった。
執事を前にした処女検査、使用人の前で夫に犯され、夫の前で使用人に犯され、そのような辱めを受けて尚、雅が宗一郎を思う理由は……。また、宗一郎が雅を憎む理由は……。
サドな宗一郎とマゾな雅の物語。
※ ムーンライトノベルズさまにも重複投稿しています
※ 表紙はニジジャーニーで生成しました
【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで
あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。
連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。
ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。
IF(7話)は本編からの派生。
年に一度の旦那様
五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして…
しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる