前世を思い出した侯爵令嬢ののんびり生活

ツナコ

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第1部

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 休みも終わり今日はクラブ活動の日。

 吹奏楽の全体練習で先生の話を聞いていて、ふと外を見たら、ポロクラブが競技場で練習していた。

 ポロクラブは1番人気のクラブよね。

 きゃあきゃあ騒いでいる女子一団の先を見ると、エリアスが白の帽子を被り馬を走らせていた。

 美麗な笑顔を振りまいて、女子の目はハートだ。

 ウィノナもいる。

 エリアス、凄く楽しそうね。

 エリアスとは舞踏会以来、敬語なしで話すようになって距離が近づいたと感じる。

 といっても「アイシャ、おはよう」「アイシャ、今日のランチはなんだか分かる?」「アイシャ、じゃあな、また明日」くらいの会話しかないけど。

 月末の舞踏会は来るかしら?などとボーっと考えていたら、演奏が始まってしまい、いけない、とすぐにサックスを構えた。







 週末はケイトの希望でダーツバーへ行ってみた。

 お昼の時間なので酒も出ないし健全な雰囲気。

 ダーツ、奥が深いわね、全く思う方向にダーツが飛ばない。

 えぃっと何度も練習しながらケイトを見ると、ダーツグッズが販売されているコーナーをのぞいている。

 「ケイト、何見てるの?」

 「ふふ、実は、吹奏楽クラブの同じチューバ担当の、ウイリアム様とね、仲良くなったのよ」

 ウイリアム様?全くどなたか分からないわ。
 
「エバートン男爵の次男なの。3つ上の先輩で、すごく優しく吹き方を教えてくれて、いろいろ話してたら、来週の日曜に演奏会に2人で行こうって誘われたのよ!
 それでね、ウイリアム様、お誕生日が近くて、ダーツが好きだって言ってたから、ダーツボードでもプレゼントにどうかなって思って」

 「まあ!そんなに仲良くなった方がいるの!
 ケイト、モテるのねぇ、なんだか羨ましい」

 するとケイトは急に冷めた表情になり、

 「アイシャ、アイシャは鈍感すぎるのよ、まあ、あと見た目でとっつきにくく思われるのかもね。 
 綺麗すぎる」

 「冷たそうと思われてるのは分かるわよ。でも鈍感って何?」

 「教えないわよ。自分で気づいてちょうだい」
 何なのかしら。

 でも、来週デートということはケイトは舞踏会には行かないのね。
 
私も今月はやめようかなぁ。







 そして月曜の放課後、今日は吹奏楽クラブはお休みなのでまっすぐ帰ろうかな、昨日のダーツで筋肉痛だわ、と思いながら荷物を整理していると、キースが一緒に帰ろうとやってきた。

 「ん?キースのテニスクラブは今日あるんじゃないの?」

 「友達と一緒に入ったんだけど、もともとやっぱり得意じゃなくてね。
 幽霊部員になりそうだよ」と苦笑いする。

 ケイトは用事があるらしく、私の馬車を返してキースと2人、キースの馬車に乗せてもらうことにした。

 「アイシャは今度の舞踏会に行くの?」

 「えぇ。ケイトは行かないみたいでやめようかとも思ったんだけど、今度の舞踏会は魔鉱石職人の方々も呼ばれているから興味もあるし出ようかなって。
 キースは?」

 「僕も出ようかと。
 それで、あの、パートナーは今回どうするの?」

 「まだ考えてなかったわ。
 キース、良かったら今回も一緒に行かない?」

 「!うん、行こう」
 ニコニコしてキースが言う。

 ふふ、キースもパートナーに困っているようね。

 キースの妹のエレナはまだ12歳だから、他にいないのね。

 そう思いながら、馬車に揺られ帰途に着いた。
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