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第1部
②
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キースのお誘いにのって次の日は二人で、といってもムスタファとキースの護衛も後ろにいるけれど、ロートブルのアクアリウムへ行った。
冬の国といえばやっぱりペンギン!
この辺り、舞の影響か名前はニホンゴなのよね。。
「マイの世界にもペンギンがいたわ」
「君の前世?こことは違う世界というのが面白いね。
呼び名は同じでもその世界の生き物はまた違うのかなあ。
…そうだ。そういえばエレナが昨日から微熱気味で今日は部屋で休んでいるんだけど、もしかしたら発現かもしれない。
馬車に飛び出していってしまう男の子の夢を見るんだって」
「まあ!私も熱が出たからそうかも」
エレナはキースの4つ下の妹だ。
ちょうど発現する年頃ね。
「そうだね。周りは見守るしかないからね」
「そうね…」
そんな事を話しながら、群れで歩くペンギンが可愛くてキースと二人でにこにこと眺めてしまう。
「可愛いね~!ずっと見てられる」
「ああ、本当に…、アイシャ、明日は何か予定ある?
凍った湖に釣りに行こうと思ってて、良かったらアイシャも」
「明日はモナハンとそり遊びしようと約束したの。
明後日なら大丈夫だよ。
それにしてもキースのとこのこの生地、本当水を弾いて素晴らしいわ。重宝するわ」
ビリニュス家は紡績業と布地の生成を生業としていて、最近開発した魔鉱石の風の魔法を利用した、水を弾く生地が大人気だ。
「はは、それは父上が喜ぶよ。
うん。じゃあ明後日行こう」
その後ランチは近くの屋台へ行ってみようとなり、屋台の集まる広場へ移動した。
私はキョロキョロと周りを観察して、
「見て!あの鶏の丸焼き!
なるほど、パンに挟むのね、キース、どう?」
「いいよ、美味しそうだね」
私達が近づいていくと、屋台がザワザワとしているのに気づいた。
よく見ると肉を手にとった少年が店主に腕を掴まれて、暴れている。
「万引きだ!誰か警備騎士を呼んでくれ」
少年は9、10歳くらいだろうか。赤毛で青い切長の目で、色白のガリガリに痩せた体で必死に引きずられるのに抗って、何かを叫んでいる。
「何か訴えたいようだわ」
気づくと足を踏み出していた。
キースもムスタファも止めようとするが聞かない。
「すみません」
「あぁ!?こ、これはお嬢さま?」
服装でお金持ちだと判断したのかしら。急にかしこまる。
「警備騎士は少し待っていただけますか。
私がお代をお支払いします。
その子の話をちゃんと聞きたいので」
店主が渋々と了承したところで、少年に向き直る。
「あなた、お名前は?」
「…ソアレス」
「ソアレス、どうして盗みを?」
「…っ!どうしてって!
母ちゃんが俺たちを置いて帰ってこないから、金も食べ物もなくなったんだ。
妹と弟が待ってる!
腹が減って死にそうなんだ!
俺が捕まったら誰も気づかないで、死んじゃう!」
ソアレスが泣きじゃくりながら叫ぶ。
育児放棄だ。
「分かったわ。
すぐにソアレスの家に行きましょ。
ムスタファ、何か食料と飲料をこれで買ってきてくれるかしら。
消化のいいものをね。
キース、ごめんなさい。また明後日…」
「帰るわけがないだろう。僕も一緒にいくよ」
「私も、同行してよいだろうか」
冬の国といえばやっぱりペンギン!
この辺り、舞の影響か名前はニホンゴなのよね。。
「マイの世界にもペンギンがいたわ」
「君の前世?こことは違う世界というのが面白いね。
呼び名は同じでもその世界の生き物はまた違うのかなあ。
…そうだ。そういえばエレナが昨日から微熱気味で今日は部屋で休んでいるんだけど、もしかしたら発現かもしれない。
馬車に飛び出していってしまう男の子の夢を見るんだって」
「まあ!私も熱が出たからそうかも」
エレナはキースの4つ下の妹だ。
ちょうど発現する年頃ね。
「そうだね。周りは見守るしかないからね」
「そうね…」
そんな事を話しながら、群れで歩くペンギンが可愛くてキースと二人でにこにこと眺めてしまう。
「可愛いね~!ずっと見てられる」
「ああ、本当に…、アイシャ、明日は何か予定ある?
凍った湖に釣りに行こうと思ってて、良かったらアイシャも」
「明日はモナハンとそり遊びしようと約束したの。
明後日なら大丈夫だよ。
それにしてもキースのとこのこの生地、本当水を弾いて素晴らしいわ。重宝するわ」
ビリニュス家は紡績業と布地の生成を生業としていて、最近開発した魔鉱石の風の魔法を利用した、水を弾く生地が大人気だ。
「はは、それは父上が喜ぶよ。
うん。じゃあ明後日行こう」
その後ランチは近くの屋台へ行ってみようとなり、屋台の集まる広場へ移動した。
私はキョロキョロと周りを観察して、
「見て!あの鶏の丸焼き!
なるほど、パンに挟むのね、キース、どう?」
「いいよ、美味しそうだね」
私達が近づいていくと、屋台がザワザワとしているのに気づいた。
よく見ると肉を手にとった少年が店主に腕を掴まれて、暴れている。
「万引きだ!誰か警備騎士を呼んでくれ」
少年は9、10歳くらいだろうか。赤毛で青い切長の目で、色白のガリガリに痩せた体で必死に引きずられるのに抗って、何かを叫んでいる。
「何か訴えたいようだわ」
気づくと足を踏み出していた。
キースもムスタファも止めようとするが聞かない。
「すみません」
「あぁ!?こ、これはお嬢さま?」
服装でお金持ちだと判断したのかしら。急にかしこまる。
「警備騎士は少し待っていただけますか。
私がお代をお支払いします。
その子の話をちゃんと聞きたいので」
店主が渋々と了承したところで、少年に向き直る。
「あなた、お名前は?」
「…ソアレス」
「ソアレス、どうして盗みを?」
「…っ!どうしてって!
母ちゃんが俺たちを置いて帰ってこないから、金も食べ物もなくなったんだ。
妹と弟が待ってる!
腹が減って死にそうなんだ!
俺が捕まったら誰も気づかないで、死んじゃう!」
ソアレスが泣きじゃくりながら叫ぶ。
育児放棄だ。
「分かったわ。
すぐにソアレスの家に行きましょ。
ムスタファ、何か食料と飲料をこれで買ってきてくれるかしら。
消化のいいものをね。
キース、ごめんなさい。また明後日…」
「帰るわけがないだろう。僕も一緒にいくよ」
「私も、同行してよいだろうか」
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