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第1部

アイシャ&ケイト13歳

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 4時間目の授業が終わり、私はケイトと学園内の園庭でランチタイム。

 幼馴染のキースも前は一緒に食べていたのだが、去年くらいから女の子と食べるのが恥ずかしいと他に行ってしまった。

 学園にはカフェテリアもあるものの、もう少し大きくなってからね、と母に言われ、マルテッロ家お手製のランチボックスを毎日持参している。ケイトも同じだ。

 ケイトはジグムント侯爵の長女で、ブラウンの髪と目のちょっとぽっちゃりとした、愛嬌のある可愛い女の子だ。

 でも可愛いだけではない。

 13歳にして社交界の噂話や流行の先取りに長けていて、ちょっと話題に上った私の休学の理由についても、あまり広められたくないことを察知したケイトが上手く兄や母に説明し、体調不良が続きやむなくの休学となっていて、私はとてもありがたかった。

 ケイトは私の前世について知っていて、

 「アイシャ、それ、前世の記録にあったカラアゲってやつなの?美味しそう」

 「そうよ。食べる?1つあげる」

 「いいの?ありがとう~! …うん、美味しーい!」

 前世で知った食べ物を色々記録しているのだ。

今のブームは唐揚げ。

 醤油とか、実在しない材料があると大変だけど、代用できるもので結構近いものは作れる。

 次は何を作ってもらおうかな、お寿司とか食べてみたいけど…そんな事を考えていたら、もぐもぐしながらケイトが、

 「その、前世の女の子も病気だったから、あまりこういうもの食べられなかったでしょうね」

 「そうね…食べたいもの、いっぱいあったみたいよ」

 「そっか、いろいろ、アイシャが再現して教えてよ。美味しいもの、いっぱい」

 「ふふ、そうだね。一緒に食べようね」

 「ええ!」

 
 ケイトの5つ上の兄、ギルバートも前世を発現している。

 前世は夏の国の、15歳くらいの男の子だったらしい。

 学校で友達とふざけあっていたら2階の窓から転落死してしまった。

 平民だったみたいで、反抗期真っ只中だった彼は、親には無愛想で逆ギレばかりしていた。

 最後に思いうかんだのは両親ともっと話したかった、という後悔。

 発現したギルバートはその子の親を探して、お墓参りもしたらしい。

 その子の両親は涙を流して感謝していた。

 そのせいかギルバートは反抗期もなく、両親にも優しいしっかり者の長男、らしい。




 アイシャが優雅に微笑みながらカラアゲをはむはむと食べている。

 ケイトはアイシャが大好きだ。

 優しくて賢くて、何よりとても美しい。

 13歳になって背が伸びてケイトが見上げるくらいだけど、体重はケイトの方が重い…。

 均整のとれたスタイルがケイトはとても羨ましい。

 きっと社交界デビューした日にはあらゆる男性から声がかかるだろうな。

 今だってトピアリーの後ろから先輩達、あれは17歳のクラスの子爵令息とかね。チラチラこちらを見てる。

 でもアイシャ、全然気にせずカラアゲとタマゴヤキをほおばってるわ、本当可愛い。

 
 園庭で遊んでいたエリアス王子のボールが、アイシャ達の方へ転がってきた。

 アイシャは軽く会釈をしエリアスにボールを手渡す。

 他の女の子なら、王子の美男子ぶりに顔を真っ赤にしちゃうわ、私もよ。

 だけどアイシャはあまり興味ないみたい。

 男の子より美味しいものを食べることや私達といることが楽しいといってるわ。

 「アイシャ殿、その茶色いのはなんだ?」

 「これはマルテッロ家のオリジナル料理、カラアゲです。召し上がってみます?」

 そう言ってピックでカラアゲをエリアスに差し出す。え、アイシャ、それ、アーン…?

 周りの男の子達も固まっている。

 エリアスは一瞬目を見開き顔が真っ赤になったが思わずパクンとくわえた。

 「…もぐもぐ…!美味い!」

 「ね、美味しいでしょう?」

 「…ああ」

 …アイシャったら、天性の小悪魔、ってお母様ならいうかしら、本人は分かってないけどね。ケイトはふふと微笑んだ。
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