世紀末ゾンビ世界でスローライフ【解説付】

しおじろう

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救出作戦

裕太戦 6 不利

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 防御に徹する裕太に攻めることのみのグリマン、その大きな力の
差に加え爆弾を抱える裕太ではあったが何かに気付き始めていた。
グリマン「逃げ惑う事では勝てないぞ!その身が千切れようが足掻
らえ、先程の力はどうした!幾千もの戦いの中逃げて勝利を成し得
た者はいない、いくら敵が強かろうがその絶対的な方程式は変わら
ぬ!」

裕太「……」
『今の僕じゃ彼に遠く及ばない、チャンスがあるとすればあの動き
しかない、だが秘密は何だ……い、いや例え偶然だったとしても起
きた事は事実、ならば再現出来ない筈はない、ないんだ」

 大きく体勢を崩し又も地面へと倒れる裕太に猛追の嵐は止まない
地面へと転がり何度も何度も避け凌ぐも危険な場面は顕著に増えて
いく、それをグリマン側も感じてか重き一撃の強さは全てがとどめ
とも見える程の圧があった、そうなった原因、致命的だった一つの
要因は疲れ以外にパターン化する動きであった。
レイダー「ありゃ駄目だな、いつか捕まる上に当たりゃ肉片、ミン
チだな……動きも読まれ始めてるように見える」

 だがきっかけが掴めない、少しでも気を抜くとグリマンの猛攻に
耐え切れなくなった時ふりかかる自身がミンチにされる事を想像す
るに容易かった、そして遂に裕太の防御した上からでも容赦なく振
り下ろされた一撃を皮切りに遂に捕まってしまう。

 懸命にガードする腕ごとその上から容赦ない連撃の雨、グリマン
と比べると小さき体を生かし衝撃の反動を上手く利用するガードに
より衝撃は大きく緩和しているもののその腕は腫れ上がり皮はかす
める度に千切れ飛んで行く。

レイダー「ひでえ皮膚が剥がれ肉が……こりゃ見てらんねぇ」
ヌク「これはマズイぞ……」
裕太『は、反撃なんて、気を抜く暇もない、息する余裕すら……』
グリマン「どうした?もう終わりか……貴様もか」

 『駄目だ……目が霞む』
レイダー「あいつもう駄目だな、意識飛び始めてやがる」
グリマン「そんなものなのか!ならばこのまま肉の塊になるまでこ
の拳、撃ち続けるまでだ!ワシの見誤りか、くだらない戦いのまま
終わるのか!」
裕太「……」

 その時リングの側で瓶の割れる音が辺りに響いた、打撃重い音に
甲高い音は彼らと辺りの者のの視線を集めた、隣会場に投げ入れら
れた酒瓶をハクが手製ラケットで彼らの会場に向け振り放ったから
だった。
裕太「ハ……ハク」
「立て、裕太」
隣の会場からハクが叫んだ。
グリマンの手も止まり怒りに満ちた目で柵上のハクを睨みつける。
「またお前か……」
ハク「裕太が望んだ試合だ、戦え」
 その冷き視線に声のトーンは彼に似つかわしく無かった意外性に
皆は驚きつつも嫌な声が辺りに散らばり始める。
レイダー「なんだあいつ?自身は安全な場所で何言ってやがる」
 ざわつく会場の中、裕太戦を見ているレイダー達からも冷たい
視線を集めたが言葉は続く。
ハク「身が裂けようが血が出ようが戦え裕太」
腕を組み柵の上で彼らの会場を見下ろしていた。
裕太「……ごめん」
 謝りながらも片膝をつき立とうとする裕太の膝は震え目からは戦
意を感じられなくなっていた。
レイダー「あいつ仲間を殺す気か?あんななってまで戦った仲間に
何言ってやがる、命尽きるまで戦えってのか?」
ハク「そうだね、その人の言うとおり命尽きるまで戦え裕太」

レイダー「ひでぇ……俺たちよりひでぇ、この戦い仲間の為に志願し
たって言うじゃねぇかアイツ、しかも一番やべぇ異星人相手にだぞ
その仲間にかける言葉がそれか、仲間を道具としか見てねぇ」

ハク「道具?そうだね、戦う道具か、上手い事言うね彼」
その言葉で火がついたのは他ならぬグリマンであった。
グリマンは辺りに落ちているかなり大きい石を握ると呟いた。

「……吠える猿め、そこが安全だと思うなよ」
 投げたその大きな石は下から上にいるハクに向けられ簡易で建て
た柵に当たるとリングは大きく揺れ柵の鉄は大きく曲がり石は木っ
端微塵に砕け散った。

 再び石を掴み大きいモーションを取り投げた石は先程の曲がった
鉄柵目掛け正確に飛来するとその凄まじい破壊力に簡易鉄骨などひ
とたまりも無い程の威力は数回投げ入れればハクのいる天井は破壊
され下のいる雪丸のリングへと落とされるであろう、だが石は空中
で一際大きい音を立て空中で無数の破片と化したしたのだった……
レイダー「何だ、石の破片や石粉で見えねぇぞ」
 だがグリマンの視線はハクでなくその下を見ていた、その粉砕し
た張本人が雪丸であったからであった。

雪丸「俺の戦いだ、手出しは無用、そして邪魔する事勿れ」
グリマン「その戦いを汚そうとしたのは奴だろう」
雪丸「……瓶の事か、投げ入れたのはレイダー、投擲場所がハクに
より落ちた場所がその方向だっただけの事だ」
グリマン「……庇うか、何故だ」
雪丸「庇ったわけでは無い……が結果それによりこの戦いに於いて
貴殿の助けを得る事となるのは俺の思うところでは無い」
グリマン「姑息な卑怯者と戦う価値があると」
雪丸「……卑怯者は俺が判断すべき事、貴殿が卑怯者と言って手を
出せば俺の中に存在する奴と貴様との意見の相違が生まれるだ、そ
して俺はハクを卑怯者とは思わない貴殿が戦いの邪魔をされたのな
ら貴様の行為もまた俺にとっては同じ、故に俺は俺の為に貴様が起
こす行為は貴様同様俺にとって全てが邪魔、俺の戦いに水刺す行為
は全て防がせて貰う」
「貴様もまた闘いを尊ぶ者か……ならば好きにするがいい、だが言わ
せては貰うぞ」
グリマン「聞け卑怯者、戦いに身を投じる者に貴様の様な安全な場
所に逃げ戦わぬ者が何をほざく!仲間など意味は無いが貴様がワシ
と戦う者を愚弄する事は断じて許さん!」

 睨みながら懐の中に手を入れカプセルを飲むと充血した目が一層
赤く輝き身を震わせるグリマン、体温は上昇し肩から湯気の様なも
のが湧き上がっていた、そして再び裕太の方へと歩だすグリマンに
ハクはまたも口を挟むのだった。
ハク「君の星の文化に食事はある?」
グリマン「……」
無視しようとするグリマンに更に一言加えた。
ハク「それ興奮剤だよね?」
グリマンの動きは止まった。
「これは酸素に適応する為の物だ、それに何が含まれようと我が種
族にとっては当たり前の物だ」
ハク「ふむふむ、成る程、それに興奮剤も入ってると、よくそれで
対等な闘いと言えたね、笑っちゃうんだけど」
グリマン「適応せねば戦えぬ」
ハク「ふむふむ成る程、酸素以外に興奮剤か……対等ね?なら酸素
適応するものだけで戦うのが対等なんじゃない?そういうのが無い
なら元々これは仕組まれた闘いか、卑怯なのは貴方も同じだね」
グリマンの目が一層赤く光ると両手を組み近くあった岩に向け組ん
だ両拳を高々と振り下ろすと凄まじい音を立て岩が破壊された、そ
の一際大きい岩を剛腕でハク向けて投げ入れた。
グリマン「侮辱するか!猿めええええ」
 だがその先に立ちはだかるのは雪丸、その肉体もまた筋肉が一層
膨らむと凄まじい踏み足を立て砂ほこりと共に岩に向かい飛ぶと岩
を瞬時に発勁の技で粉砕したのだった。

 グリマンと雪丸双方に譲れぬプライド、それは最早戦いにおける
崇拝とも言える情熱は互いの闘いに一切の陥入する事を決して許さ
なかった。
グリマン「……」
雪丸「……」
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