世紀末ゾンビ世界でスローライフ【解説付】

しおじろう

文字の大きさ
上 下
186 / 225
救出作戦

疲労

しおりを挟む


 其々の想いが交錯する夜が更けていく……

 純衣は1人丘の上にいた、遠くを見つめる先には破壊されて居な
い発電機の搭載の建物の灯りが微かに……そして一定間隔で起こる
爆発の光が彼女の眼に映る、それをただじっと見つめる彼女の背後
にはハクも同じ目線で佇んでいた。

 風が冷たく感じる季節の中、時折吹き荒ぶ風の冷たさは心の暖
すら冷えさそうとする、誰もが人は暖かさに心を癒し明日に希望を
求める……どんなに明日に地獄が待っていようが明日は来る、常に
人生の終わりを告げる存在が辺り中に居たとしても人はその中に
放り込まれるのだ。

純衣「闇に光る炎の中にまた悲しみが増えていっているのね」
 呟く彼女の側で同じ炎を見つめ2人は座り続けた、空は人間社会
の事など何事も無いかのように星々が綺麗に輝いていた、そう何事
もないかのように、昼間は地球に近い大気圏外から映る巨大な宇宙
人の空母が見える、月が昼間でもうっすら見えるかのように今まで
に見られ無かった景色が当たり前の景色として今はもう見える……
皆が皆、あの人類の文明が壊れた時の事を忘れはしないだろう、悲
鳴や怒号、混乱、阿鼻叫喚の感情が声となって辺りに響く中、知人
や家族が地獄絵図という中に取り込まれた、人の想像を超える恐怖
戦争の恐怖、得体の知れないものへの恐怖、人が人でありながら人
を押し退け生きようとする者、諦めの中にただ呆然と立ちすくむ者
やがて多くの人は肉片となる者や変貌しゾンビと化していく恐怖、
そしてそれが当たり前の恐怖……

 大規模な侵略後、人の生活も大きく変わった、昼夜問わず襲いく
るゾンビの恐怖、それは寝る、食うすらもままならぬ状況を強いら
れる、多くの人は食料や水を求め彷徨う、ゾンビがいればそれを回
避し、また多くの時間とカロリーを消費しやがて動けなくなり、ま
た彼等をゾンビに変えていく、宇宙人がこの手法を使う理由として
は実に効果的かつ経済的な手法と言わざるを得ない、まるでウイル
スが人の体内に感染し己が生き残るために母体である人の体を蝕ん
でいく、やがてそれが母体を失う事により自身の命を奪う結果とな
る事となる愚かな生命体、そしてそれはまさに人間も同じだ、環境
汚染に自衛と称し核などを所持する誰もが自身、国の為と称し口だ
けで世界の平和は飾りになり己が欲のために地球という母体を喰ら
い続ける、誰もが分かるはずだ、自身の住む星を壊す行為、それは
人や国の問題など関係ない全てを目先の利益の為に全てを無くす行
為となる事を、そう全てである……どんなに大義名分を掲げようと
大地を失って何が平和であろうか、平和すら殺し合いすら何もかも
できなくなる無が確実に先にあるというのに。

 そして現代に生きる人はサバイバルになると自然界に身を置く動
物よりも弱く、心も遥かに弱い……自ら生命を終わる者も決して少
なくない、田や畑を耕す事の難しさ、平和がいかに大事か、人は当
事者になって初めてそれを学ぶのだ。

誠「ちとハクの所行ってくるわ」
裕太「駄目だよ、今はそっとしておいてあげて、さっき迄、僕に異
星人対策の修練で疲れてるんだから」
クリス「お前はそういう所は見た目通り配慮が無ぇんだな」
誠「う……そ、そうだな、息抜きにトランプでもするか」
クリス「元気だなお前は、俺は体が千切れると思う程に全ての関節
が軋み肉があり得ない程の筋肉痛だぜ」
誠「痛いわな確かに、だが心地良くもあるじゃねぇか、またこれが
筋肉となり仲間を救う力となる」
裕太「相変わらずプラス思考だね」
クリス「馬鹿なんだなうん、そうなんだな、馬鹿はほっといて、裕
太、対策は出来たのか」
裕太「彼等の力が何処まで強いのかも明確にはわからない状況だか
ら半分は出たとこ勝負になりそうだけどやれる事はやったよ」
クリス「彼等のような力と対峙した事が以前ある、遺伝子操作され
たクローンだ、仕組みは同じだろう、人で力で対抗するのは正直
難しい……圧倒的な力の前では全てを潰される」
誠「だろうな……ゾンビ熊と戦った事はあるが奴らはそれ以上」
裕太「乱戦時、熊と対峙するグリマンを見たけど熊よりは強いね、
あれで半分と言った所かな」
誠「半分か……だが雪丸は倒したんだろ?しかも複数体、手はある
筈だ」
裕太「そこだね救いは、だけど彼も普通じゃない」
クリス「技の極みが力を凌駕した結果なのかわからないが、まとも
に戦えば負けは確実だ、いくらお前に力があってもフルパワーで戦
う事が出来たとしてもだ、しかも爆弾付きとなれば尚さらだ」
誠「でハクの作戦は何だ、アイツも普通じゃ無ぇ、普通じゃ無い者
同士なら奇策が通用する可能性もまた高いはずだ」
裕太「基礎は聞いたけどこればっかりはやってみないとと言ってい
たよ」
クリス「そうだな……だが握力だけでも人の頭骨を割る位の奴等だ
野生のゴリラとかなら同じ事出来るかもな、野生はまだ生きる本能
が強い分無理はしない、ゴリラも頭脳を持ったら確かに同じ可能性
もある」

裕太「2人は大丈夫なの?」
クリス「……」
誠  「……」
クリス「正直言って良いとはいえないな……痛みもだが思うように
腕に自由が効かない、範囲は広がっているだろうな、今は誠がカ
バーしてくれてるがそれも今の状態が進行すれば……」

誠「俺も視界の悪さが狭まってるのを感じる、この先、戦いが続い
た、いや生きてる限り何処に行ってもあるだろうが戦力として成り
立つかどうかは……」
裕太「……大丈夫僕が仲間を守る、もう僕らは家族だから」
クリス「お前も次どうなるかわからないぞ、無事ですむ戦いなんぞ
そうある物じゃない」

 暗い雰囲気が部屋の空気に漂う、だが近くで遊んでいる子供達の
声が場違いの中聞こえてきた。

誠「まっいいじゃ無ぇか、あの笑い声を守れてんだから、それによ
考えたって仕方無ぇ、考えるだけ疲れる、疲れるより、あの笑い声
を聞いて笑っていようぜ」

 目を細め静かにつぶやく誠の笑顔は作り笑いでは無かった、心の
笑みは辺りを黒からオレンジ色に変えるように皆に安心感と決意を
心に刻ませた。

誠「そういえばあんなに騒いでた勝木トリオとポルキはどうした、
相葉のオッさんも見かけ無ぇが」
クリス「あの3人は騒ぎに乗じてグリマン内部に侵入してもらった
今頃、救出作戦の準備に取り掛かってる筈だ、あの混乱はチャンス
だったからな、ゾンビも異星人達が参入した事によりグチャグチャ
だ、誰が犠牲になったか区別なんてつかないからな、ポルキがそれ
に上手くやっているはずだ、向こうのテクノロジーを使って」

裕太「作戦は?」
クリス「知らん」
誠「おいおい知らんて」
クリス「この展開がお前に読めるか?俺には無理だね、状況は二転
三転してる、即座に対応出来る策をいくつか用意はしているが、各
個人個人同じ意思、目的で進めば策はおのずと繋がるはずだ」

ーー丘の上の2人ーー
純衣「……悲しいね」
ハク「……悲しみだけで世界は染まることは不可能だよ」
純衣「うん……」
ハク「それでも人は快適な暮らしを見つけ生き残りさえすれば」
純衣の肩に手をやると一言呟いた。
ハク「いつか本当のスローライフを」
 純衣はハクの方へと寄り添いいつまでも星に希望を込めて、そし
て嫌でも視界に入る絶望の炎に狭間でただ側にいる事で締め付ける
何かから身を守ろうと彼にしがみ付いた。












しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

銀河英雄戦艦アトランテスノヴァ

マサノブ
SF
日本が地球の盟主となった世界に 宇宙から強力な侵略者が攻めてきた、 此は一隻の宇宙戦艦がやがて銀河の英雄戦艦と 呼ばれる迄の奇跡の物語である。

びるどあっぷ ふり〜と!

高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。 どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。 ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね? ※すでになろうで完結済みの小説です。

【北の果てのキトゥルセン】 ~辺境の王子に転生したので、まったり暮らそうと思ったのに、どんどん国が大きくなっていく件について~

次元謄一
ファンタジー
タイトル変更しました→旧タイトル 「デッドエンドキングダム ~十五歳の魔剣使いは辺境から異世界統一を目指します~」 前世の記憶を持って生まれたオスカーは国王の落とし子だった。父の死によって十五歳で北の辺境王国の統治者になったオスカーは、炎を操る魔剣、現代日本の記憶、そしてなぜか生まれながらに持っていた【千里眼】の能力を駆使し、魔物の森や有翼人の国などを攻略していく。国内では水車を利用した温泉システム、再現可能な前世の料理、温室による農業、畜産業の発展、透視能力で地下鉱脈を探したりして文明改革を進めていく。 軍を使って周辺国を併合して、大臣たちと国内を豊かにし、夜はメイド達とムフフな毎日。 しかし、大陸中央では至る所で戦争が起こり、戦火は北までゆっくりと、確実に伸びてきていた。加えて感染するとグールになってしまう魔物も至る所で発生し……!? 雷を操るツンデレ娘魔人、氷を操るクール系女魔人、古代文明の殺戮機械人(女)など、可愛いけど危険な仲間と共に、戦乱の世を駆け抜ける! 登場人物が多いので結構サクサク進みます。気軽に読んで頂ければ幸いです。

魔族に育てられた聖女と呪われし召喚勇者【完結】

一色孝太郎
ファンタジー
 魔族の薬師グランに育てられた聖女の力を持つ人族の少女ホリーは育ての祖父の遺志を継ぎ、苦しむ人々を救う薬師として生きていくことを決意する。懸命に生きる彼女の周囲には、彼女を慕う人が次々と集まってくる。兄のような幼馴染、イケメンな魔族の王子様、さらには異世界から召喚された勇者まで。やがて世界の運命をも左右する陰謀に巻き込まれた彼女は彼らと力を合わせ、世界を守るべく立ち向かうこととなる。果たして彼女の運命やいかに! そして彼女の周囲で繰り広げられる恋の大騒動の行方は……? ※本作は全 181 話、【完結保証】となります ※カバー画像の著作権は DESIGNALIKIE 様にあります

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける

気ままに
ホラー
 家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!  しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!  もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!  てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。  ネタバレ注意!↓↓  黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。  そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。  そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……  "P-tB"  人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……  何故ゾンビが生まれたか……  何故知性あるゾンビが居るのか……  そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……

【改訂版】ピンク頭の彼女の言う事には、この世は乙女ゲームの中らしい。

歌川ピロシキ
ファンタジー
エステルは可愛い。 ストロベリーブロンドのふわふわした髪に零れ落ちそうに大きなハニーブラウンの瞳。 どこか舌足らずの口調も幼子のように天真爛漫な行動も、すべてが愛らしくてどんなことをしてでも守ってあげたいと思っていた。 ……彼女のあの言葉を聞くまでは。 あれ?僕はなんで彼女のことをあんなに可愛いって思ってたんだろう? -------------- イラストは四宮迅様(https://twitter.com/4nomiyajin) めちゃくちゃ可愛いヴォーレを描いて下さってありがとうございます<(_ _)> 実は四月にコニーも描いていただける予定((ヾ(≧∇≦)〃)) -------------- ※こちらは以前こちらで公開していた同名の作品の改稿版です。 改稿版と言いつつ、全く違う展開にしたのでほとんど別作品になってしまいました(;´д`) 有能なくせにどこか天然で残念なヴィゴーレ君の活躍をお楽しみいただけると幸いです<(_ _)>

処理中です...