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救出作戦

純衣戦12 行く末

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 背後から声がした方向を皆振り返るとそこには異様な顔立ちをし
た輩達がハク達の方を見て嘲笑っていた。、その集団の顔は醜悪、
性格は顔に出ると言うがその典型的な例と言っていい程にだ。

黒田「お前達は……なぜここに居る」
輩「俺達はお前の配下だろう?居て当然じゃねぇのか?」
黒田「呼んだ覚えはない、其れに俺の配下だと?俺の指示にいつ従
った事があった」
 輩は含み笑いをし黒田を見る事もなく純衣の方を見て悦に浸って
いる様子だった。
「ウルセェな、お前の中途半端な仕事の後始末やカッコつけだけの
男の汚れ仕事をしてきた俺達によく言えたもんだ、まっ、俺達にと
っちゃ楽な仕事だらけだけどよ、お前が取りこぼし、弱った敵のト
ドメさしゃ上からご褒美がもらえる訳だ、だが勘違いすんなよ、俺
達は自由だ、人を殺したいときに殺し、奪い、女をいただく、誰も
俺たちから真の自由を奪う事は許さねぇ、其れがボスの命令であっ
てもだ、俺らの強さを認めたボスとの契約だ、お前の配下って名目
で動いてやってるが其れは報酬が美味いからだ、ボスの配下だと思
った事は一度も無ぇ、そっちこそ勘違いすんな」

 この男は黒田と共に笠田に拾われた男の1人、以前は組に属して
おり、あの襲撃前には殺し屋として組に飼われていた黒田との連絡
係であった男だった、性格は残忍、組でも扱いが出来ずいつでも尻
尾切りができる所謂チンピラであった。

 ニタニタ笑いながらも統率が取れていた、誰がボスでも無い、其
れは悪友という感じの集団だった、そのうちの1人が決められたボ
スと言う感じでもないが坂月が中心となっている感はあった、そし
て首輪をつけた大人の女を引き連れていた、首輪には棘があり彼女
達の首には傷が生々しくついていた、その目は生きているとは思え
ない絶望から輝きは失われただ存在しているだけの無気力な物に感
じた。

ヌク「酷いの……」
 統率は集団行動が出来るかで構成される、ボスですら集団生活の
出来ない輩衆は笠田すらも制御不能だった、群れに入れればや規律
を守らない彼らの行動はコミュニティの統率を乱したが、そんな彼
らゴミにも使い道はある、統率下の土地に彼らに自由の土地を与え
生贄の人間を定期的に送る事により彼らの欲求を満たし、また囲う
事で戦力として、そして近隣コミュニティーに恐怖と防衛に役に立
つ、損得で動く笠田にとってはこれもまた事実上は支配下に治めて
いたのだった、餌を与えれば謀反を起こす事も無い。

黒田「美学の欠片も無いお前らを一度も配下と思った事はない……
呼んだのはボスだな、カメラは壊した筈、そしてボスが
此処まで来るのに必要な通路は警護と称し信頼に足る配下が全て封
鎖した筈」

輩「お前この世界に本当に忠実な配下なんぞ存在するとでも思って
んのか?ククク、つくづくおめでたい頭だな、ここではボスに逆ら
う奴は居無い、なぜだかわかるか?所詮な、人は自己中心、褒美が
もらえるから従事する、所詮配下は配下だ、お前に付くよりお前を
配下に置くボスに付くのが当たり前だ、いつでも首切れるお前と比
べたら答えは明白だ、お前まさか、さんざ人の心を否定する口叩い
といて、お前自身が人の心を信用して警護させたってのか?アハハ
腹痛ぇ、もっとわかりやすく言ってやろうか?其れは褒美によって
移り変わる浮気心ってやつか、褒美が心、人の心は利用するだけの
道具だ、社会はそれで成り立ち、夫婦でもそうだ、女は男の金、生
活の保障、人生における当たり前から逸れないように妥協と賄賂の
額で相手を決める、男は其れがわかって顔やスタイルで尺度を測り
欲望に見合った相手を選ぶ、そしてさも普通の暮らしに溶け込み、
裏の顔だけを外に出し本心は見せず生きていく、其れが人間だ、社
会は全てが裏の顔、つまり作られた虚像の自分だけを表現し構成さ
れた嘘しかねぇ社会だ、そしてそれが強さだ、俺らは自由、歯向か
う者に情けなんて欠片も持っちゃいねぇ、真の自由を持つ俺達こそ
が強い者、この世に残るべき人間だってそうだろ?過去支配者が立
てた遺跡がいい例だ、お前らみたいな仲良しゴッコで偉大な建築物
が作れるか?人を支配し、思うがまま行動し、逆らうものには容赦
ない制裁による恐怖の方が遥かに建築スピードは早いだろう?」

ハク「プププ、やらないクセに」
輩「あ?黙れカスが、やる時ゃやるんだよ」
ハク「やらない人の常套文句いただきました」
輩「……お前後でミンチだ、話を戻すぞ、それにお前たちが苦しん
だこの装置恐らく人の良心って奴、文明が育んだ愚かな洗脳により
育まれた心のバランスを利用し苦しめるもんだろ?俺たちみたいな
本当に人間らしい者には素晴らしく精神を破壊する所か快楽に導い
てくれるマッサージ機器みたいなもんだったぜ?」
輩衆「あぁ苦しむ意味がわからねぇわ」
輩衆「そうだそうだ、お前達にも誰もが人を殺めたいと思った事が
あっただろ?苦しんで虐げられるより排除すればもうそこから地獄
は消え去るってのによ、何を躊躇うことがあるのか」

黒田「……」
輩「お前が苦しみ、足掻き到達した至高の強さ、プププ、じゃ俺ら
お前より強いって事だ、笑えた、笑えた、あんな苦しんで目真っ赤
にしてよ、俺はレベルアップしたみたいな顔してよ、なぁみんな」
輩達「あぁ、バレねぇかと心配するくらい腹抱えて笑った笑った」
輩「人の努力する姿はいつ見ても滑稽だわ、懸命にってか?恥ずか
しく無ぇのか、平和な時代でも正しい事言ったり馬鹿みたいに将来
役にも立たないスポーツの汗流してよ、マゾかってんだ、其れに見
てても不細工だぜ、其れに強さなんてもんは、薬で決めれば誰でも
普段以上の強さを身につけられる、仕事は騙し合い、よりずる賢い
方が勝つ、恋愛はいかに化けるか、だ本当の愛なんてもんはこの世
にある訳はない、皆やりたいからやって年取りゃ保身のためにガキ
を産み、その条件は相手ではなく分身である子の為、要は自分の為
故に結婚の条件はズバリ金、あとは邪魔な亭主をいかに退けながら
楽しむか、これが結婚の本当の姿だ」
輩衆「その女なんか結局メソメソ泣いてて何が強さだ、頑張る姿程
笑えるものは無いね、自身で苦しんで満足してるだけだって」

黒田「……私が認めた存在を嘲笑うか」
輩「無理無理もうやめて、腹が痛い笑いすぎて」
純衣「ククク確かに笑える」
輩「ヒャハハ認めてやがるぜこの女」
純衣「お前らにだよ、黒田、お前の目指す頂はこういう輩のお山の
大将か黒田「……」

 心の中にざわつく感覚が黒田を襲った、今まで見た人間は強さや
強欲に忠実な人間、一度地位を築けば尻尾を振るばかり、自身は努
力し築いた力でさえも素質だと言われ褒め言葉の中に棘を刺してく
る、だが現実は努力を努力と認識せず自らその力を身につけたもの
達こそが自身が壁として認める強さを持つ人間であった事実、腐っ
た目をし人を嘲笑い、今も背後からナイフを突き立て足でコミュニ
ティーの仲間すら殺し回る姿に悪寒すら感じる、一方其れを防ぎ、
仲間を救おうと賢明に動くコイツらの仲間、其れに賛同した者達、
その目は美しく生きる意味を眼差しで感じた。

ハク・純衣「納得、アイツら、あの拷問装置が効か無いって事は」
ヌク「く」
誠「そ」
クリス「だ」
裕太「な」
ヌク「嘘発見器のように当たり前のように嘘をつく人間に対し機械
は反応しない、人の良心に呼応するあの装置に対し平気って事は性
根が腐ってるという事じゃな、そう言う意味ではクズ発見器として
役立ちそうだな」
ヒロ「物騒なこと言わないでくださいよ……やですよあんな装置、
観念が違う異星人に効くかどうかも怪しいですよ」
ヌク「そうじゃな、聞いた話では奴らは旧戦争時代、また宗教戦争
においてもあった固定観念自体が違う、人は時々の文化により正義や
悪を人間自らが作り出す、国のために逆らう者には制裁を、崇拝する
存在が違い意識が違うと悪、そして其れは現代も同じ、自らが作った
正義が正しいなんてもんは神様しかわらんものだ、そう言う意味で
はドロアの作ったこの装置、無駄だったかも知れん」

輩衆「おい、遊びは終わりだ」
 そういうと徐に彼らは近くにいる人間やゾンビ構わず持っていた
ナイフや鎌を使い手当たり次第刺していった、その姿に一瞬気が逸
れた隙を狙い輩3人が菅めがけ横腹にナイフを携え突っ込んで行く
菅の顔はもう真っ青だった、彼女の視界にナイフが映るが避ける体
力もない彼女は黒田の姿を最後に焼き付けようと探す、が見当たら
無い、ため息を一つついた彼女は目を閉じて呟いた。

菅「……贅沢ってもんか」
 狂気のナイフが菅のび容赦なく牙を剥く、出血により既に痛みの
無い彼女はそのまま意識を失ったのだった。
純衣は内1人を、ハクもまたその内の1人を倒し残った1人が刺した
相手は菅の前に腕を差し出し守った黒田の腕を刺し貫いたのだった
そしてその腕は真紅に染まる……其れを見つめていた純衣は言った。

純衣「痛いか?」
黒田「……」
純衣「痛みより心が軽いだろ」
ハク「その守った手の痛み、その痛みが菅さんの命を守ったんだ、
人の人生は短いようで長い、逆も然り、だけど君の人生と同じく彼
女にも人生がある、君が見下した人間、長い月日の中で生きた決断
と成長の彼女の中にしかない世界が今君を苦痛から救ったんじゃな
い?そしてその命を君が救ったんだ」

黒田「俺が救った……」
ハク「痛みにも種類があるって事だね」
輩「邪魔しやがって、まぁいい、こっちも面倒事は損しか無ぇから
なおい、黒田、最後の恩赦だ、俺たちが何故ここに居るかは想像付
くだろう不測の事態に備え、そして今がその時だ、利己の野心の為
にカメラを壊した事をボスに報告するかどうかはお前の行動次第、
お前も剥け切れてねぇが今からどうすれば良いか位わかるだろ、お
前を生かしとけば俺たちの仕事も楽だからな」

輩「おい」
頷いた輩の1人が虎の女の背後から躊躇いも無くナイフが背中に刺
さる呼応するかのように狂人のナイフは豹と虎のメンバーに襲いか
かった次々と倒れる仲間達に叫びながらも救おうと懸命に虎と豹の
仲間達が戦った、そして骸はゾンビと化し守ってくれている仲間の
背後から襲う。

輩「阿鼻叫喚……ククク賢明に救おうとした仲間に食われてちゃか
ける言葉は一つだな」
「馬鹿」
輩「いいか、殺しはな、ためらった方が負けだ、お前もわかるだろ
邪魔なもんは消して仕舞えばいい、そうすりゃやがて逆らうものは
いなくなり天国だ、欲しいものは奪え、合わない者は殺してしまえ
機嫌が悪けりゃより深く人に不機嫌にさせて自分を回復しろ、より
弱い者に暴力を、力だけじゃなく精神にも、誰もが自分が大事だ、
自分の為に生きりゃいい、黒田!良いかこれが最後だ、殺せ」

腹を押さえる手から菅の温かい血が黒田の手に流れ脈打つ……
純衣「お前守られてたんだよ、ずっと、其れは恐怖や富の恩恵か?
ならその流れでる彼女の血、今人生を終わろうとしてる彼女自身の
価値より高価な物なのか?」
黒田「……恐怖を前に自決するものも少なくない」
純衣「恐怖に負け流れた血かどうかお前が一番わかる筈だ」
黒田「俺はコイツらに裕福さを与えた、其れがなくなるのが怖かっ
たんだろう……」
純衣「命あっての富だろう」
黒田「……」
かすれた声が黒田に囁いた、震える手で黒田の顔を包み込む。
菅「良いんだよアンタはアンタで……守る価値が誰がなんと言おう
が私にはあった」
純衣「甘いんだよアンタは、コイツは子供だ、まるで愛情を欲しが
り何もできない自分に癇癪を起こし、ただ誰かを待ち甘える」
菅「……其れでも私は愛を止められない」

ハク「黒田、泣き言ばかり言ってないでさ、色々時間がないんだよ
ね……アンタの今までの全てと世の中の憎しみ、葛藤全てを一滴残
らず絞り出して純衣私にぶつけてみたら?恐怖も不安も行動しない
と解決はしない、心と体は常に一体、頭で理解出来る事柄、体で理
解できる事柄、片方だけでは本当の解決にはならない、共に共存し
ている人間の問題は常に同時に一つだ」


菅「今はダメ……か、勝てない
純衣「菅、甘えだけが優しさじゃないよ、黒田、苦しくても、逃げ
たくても得たいものがあるなら苦しめ、その苦しみがなければ、そ
の苦しみが大きければ大きいほど摂理は反動で帰ってくる、そして
時は待ってくれない、誰が社会や人が何と言おうとその時を逃せば
時は戻っては来ないんだ、誰も責任を取れはしない、そして犠牲に
なるのも自分責任を取るのも自分、だが得られるのも自分だけだ、
お前が行動を起こす時間の余裕はない、菅の命が消える時、其れは
お前の終わりを意味する、お前が立つべき時はもう今しかない」

菅「や、やめて!酷い、この人をもう苦しめないで、慌てなくて良
いのよ、その時がくれば今でなくても今じゃなくても!」

純衣「苦しいのか」
黒田「苦……苦しい」
純衣は静かに構えを取った。
「なら解き放ってやろう」
黒田「あぁ……そうだな、もう良い、もう何もかも分からない……
抵抗はしない、やってくれ、俺にはもうわからない、非道さえも勝
てる要素はないのなら……」
菅「やめて!
静かに構え動かない純衣に対し背を向け生気のない男の背中が彼女
の目に映る、が動じることなく言葉を発する。
純衣「黒田、菅に時間はもう無い、私は彼女の意思を尊重する、お
前が立たないのなら、その情けない姿を菅の最後に見る男の姿にし
たいのなら、命を持って全ての戦いを終わせる、そして時が経ち振
り返る事のできない時の後、お前を守るものはもういない、お前は
1人だ、仲間もいず努力を傾け、お前を利用する為に近づく者に利
用されるがいい、結局お前はお前が言う弱き者に利用される更に弱
き者になるがいい、お前の手を握る存在を後々後悔して苦悩と暗闇
の中で菅の思いに応えられなかった事を必ずいつか思い出し後悔す
るだろう、報われない菅の後悔、魂をも永遠に傷付けながら、な」

黒田は俯いたまま武器を拾い上げた、ゆらゆらと体を動かしながら
武器を構え純衣の前に立った。
黒田「どうしたら……」
純衣「言ったはずだ、悩みを苦悩を葛藤を今ここで全て私にぶつけ
ろ、そうすれば、出し切ればお前の答えが見つかるはずだ」
黒田「良いだろう……もう何も無い、せめて戦う姿をこの女に、そ
れには俺は今までの俺の様に菅の命を犠牲にする、助けようとして
いることはわかっている、がさせはしない、矛盾の言葉の通り、俺
の全てでお前に挑む、全てがここで終わるように、この命、強さ、
妬み、羞恥、憎悪、全てでお前の命を貰い全てを巻き込んで全て終
われば俺自身をも消し去って終わりだ!」

純衣「来い!」
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