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救出作戦
純衣戦 9 力とは
しおりを挟む誠「チッやる……」
衆の動きは誠達の攻撃に対し恐怖を感じ無いようであった。
クリス「奴ら俺達の攻撃に対し最低限の避け方しかしねぇ、軽い攻
撃なら構う事なく躊躇なく突っ込んでくるな」
誠「舐められてるって事か……へへ上等だ」
黒田にやられる畏怖、恐怖それは彼等を背後から統治したやり方
による恐怖だった、ミスをすれば躊躇なく背後からナイフを突き立
てる、実力は最高峰にありながら甘んじて下についたフリをするの
はより実戦に近いミッションをこなし自分の力を高める為だった、
その行動は今は時代に合わせ暴力が支配する中とはいえ彼等に恐怖
を感じざるを得なかった事実だった、そして恐怖はより強い方へと
心引かれるものだ。
クリス「だが油断は出来無い、幾つか手合わせしただけでこちらの
弱点をうまく突いてくるしたたかさも備ている」
誠「危ねぇ!」
クリスの腕が上がらない上部攻撃が襲う、誠は持ったバットをバ
ントする姿勢に変え両手でその攻撃を防いだが瞬時に誠の視界が塞
がれた方向から剣が狙う、その攻撃をクリスが寸前で誠の持つバッ
トを掌打で打ち数センチずらし攻撃を防ぐ、互いがわずか数センチ
の隙を狙う攻撃だった。
衆「いい連携だ……だが時間がない、我ら黒田様の加勢に行くので
な遊びは終わりだ、次で最後」
誠「願ったり叶ったりだ、俺らも暇じゃないんでな」
頷く両者は一斉に動く、二列編成で互いが駆け出した、両腕に双
剣を持つ2人の衆の構えは一風変わっていた、並行するように駆け
互いの距離の間に剣をクロスさせるハサミの様な形に空いた剣はめ
いいっぱい広げていた。
衆「真ん中に捉えれば挟み撃ち、反対側の手には広範囲に広がる2
人の剣、防御も攻撃も隙のない攻撃、これで終わりだ!」
誠「へへ、そう来るか」
クリスが頷くと誠はブレーキをかけ、敵に背を向ける、両腕を組
み構えた先にはクリスが躊躇うこと無く誠の両手に足を駆けた。
誠「行くぞ!ぶっ飛んで来い!」
大きくジャンプし敵に向け背面状態で空へと大きく飛び出した。
敵「何!」
空に羽ばたいたクリスの飛行は敵に向け剣の届かない、予想外の
動きに一瞬動きが止まりクリスに目が行く2人の衆達に向け誠が背
面から即座に体勢を立て直し振り向く挙動を利用して持っていたバ
ットを回転するよう投げ放った、空気を切り裂く音に我を取り戻し
た衆の目の前にうねりを挙げたバットが襲いかかる、同時に上空か
らの投げナイフ攻撃が彼等2人の間に投げ込まれた、バットの平行
飛来と上空からナイフに困惑した彼等の取る挙動はバットを弾けば
ナイフ、ナイフを弾けばバット、瞬時の判断は左右に離れる事がベ
ストだと感じた。
バットとナイフが地面へと弾くように転がるとーー
衆「うわっ!も、もう目の前に!」
気の取られ分断された衆のすぐ目の前に誠の姿がーー駆け出した
スピード、それは気の緩んだ人間の意識からすればまるでワープし
たかのように感じる、よそ見をして車の距離が知らず知らずに距離
感を狂わせるのと同じだ、それに進んだ相手に向かって勢いの乗っ
た彼の動きはパワーも加算されている、誠は肘を突き出し、耐衝撃
に負けない様にあたる寸前身を横にし敵に当たる肘を反対側の手で
支える様に躊躇なく突っ込んだのだった、衆の体に誠の肘がめり込
む、鳩尾に当たった肘の衝撃は衆の衝撃に耐える筋肉の硬直という
動作をキャンセルさせる、急所に当たるとはこういう事なのである
人の持つ脳で考える予備動作をあがら得ない本能での動作、それは
力を入れささず抜く事にある、衆の体は大きく身を捩らせゴム人形
のように大きく吹き飛ばされると痛みと回転する自身の空間把握が
出来ない脳のバグりと合わせ一瞬で彼の意識を途絶えさせたのだっ
た。
誠「視野が狭くても正面なら何とかならぁなぁ!」
滑空する者に対した敵は視野に入りやすいクリスに迎撃体制に入
るクリス「肩が上がらないならその弱点を無くすまで、今の俺に隙
は無い」
衆「馬鹿め!いくら弱点を補おうが空中では体勢を変えられないだ
ろうが!串刺しにしてやるわ!」
双剣の切先が落ちてくるクリスの頭を捉える寸前、身を翻すクリ
スその頭が空中で一瞬止まったかと思うと頭半分上へと押し上げら
れるように跳ね、衆の攻撃は空を斬ったのだった。
衆「は?は?何で」
あまりの勢いに自身も無様に滑り着地するするクリスが言う。
クリス「バク宙の一つ、スワンって知ってるか?まぁちと着地が無
様になっちまったがな」
衆「は!体勢を崩しといて何ほざいてやがる!」
クリス「馬鹿はテメェだ、そんなお前にもう一つ助言してやろう、
いいのかよそ見して、あ、もう遅いか……」
衆は腹を抱え急に倒れたのだった。
バク宙技、器械体操の一つ、体をそわせることで頭軸を中心に胴
と足を回転させる、それは白鳥の羽ばたきの様な技である、その勢
いのまま敵の頭上を通り過ぎたクリスは囮であった、空中の敵から
視線を外す事など出来る人間は少ない、空を見上げた状態の衆の腹
の筋肉は伸びそこを狙い打ちする様に誠は落ちたバットをスライデ
ィングで拾い投げつけると投げ入れていたのだった。
衆「囮だと……弱点を補い、且つ弱点を我らに作らせるか、それに
まさか1人で我ら2人を相手するなど思う筈無い……だろ」
衆の2人は倒れた。
クリス「技は格闘技だけが人を倒す術ではない、人が作りし技は全
てが全てに通ずる、ハクや交渉人相葉が俺に教えてくれた、本当に
通ずるかどうかは賭けだったがな」
誠「賭けじゃねぇよ、一長一短でそんな技できる訳は無いだろ、お
前の生きてきた証が今俺達に勝利を掴ませた、そしてアイツらにそ
れは紡がれるのさ」
来栖ーー
「このままではまずい……」
敵のラッシュは凄まじい、槍の先に無数の檄が施された槍術と近
接に特化したサイの攻撃は彼等を苦しめた、だが近距離に遠距離と
言う攻撃に対し辛うじてはいるが突きに関して勝るものなしの中距
離戦闘に特化した来栖のレイピア捌きは彼の実力が特化している証
拠でもあった。
ヒロ「僕が足を引っ張ってる……何とかしなきゃ」
衆「どうしたどうした!後手後手に回っても敵は倒せないぞ」
ヒロ「こんな素早い攻撃にこちら側に攻撃する暇なんて」
来栖は敵の攻撃に対処するのが精一杯であった。
来栖「お前の特技は何だ!」
ヒロ「と、特技?と言われましても絵とか……」
来栖「んな事聞いてんじゃねぇ!絵?そんなもん戦闘の役に立たね
ぇ!聞いてんのは力だ!他に何か使えるそうな特技は無いのか!」
その時ハクの声がヒロに届く。
ハク「絵ねぇ……いいねぇ!じゃそれで行きましょ、はーい此処に
いる人で絵の得意な人手を挙げて!」
乙音「はいはい!」
由美「私も元は美術の先生よ、材料だって此処から近いアジトに」
裕太「僕を忘れちゃいけないよ!趣味は料理に漫画だからね」
ハク「ヒィふぅみぃ……よぉ、おお!沢山いる!」
来栖「ふざけるな!」
ヒロ「……黙ってハクさんの話を、普通に戦っても武力の差じゃ力
じゃ勝てない、それに力が全てじやない力は武力だけじゃない、そ
れを僕は彼を通して見てきた、アナタも彼に何か感じてる筈だ」
ハク「絵が戦闘に役立たない何て誰が決めたのかなかな、僕は決め
てないけどなぁ」
来栖「……策ありか、しかし絵が、まぁいい、どちらにしろこのま
までは体力が尽きる、行け、奴の話を聞いてこい!」
ヒロは慌て駆けハクの元へ。
二体一の状況に倒す事をやめハクに賭けた来栖だった、防御のみ
の攻撃はヒロを守りながら、そして勝利を掴むために隙を見出す洞
察力を消し余分に考える動作がなくなった分切れが増していく、だ
が彼等も手を抜く事はない、ヒロを追って対峙する衆が1人になれ
ば確実にやられる実力がある来栖に対しヒロを追うリスクを避け、
逆に邪魔な防御役が消えた事をチャンスと捉えた衆2人は来栖にと
どめを刺そうと猛追が加速していく。
来栖「5分が限界だ!」
ハク「5分も要らないよ、沢山来てくれたから」
来栖「?」
栗栖の心配をよそに円陣を組み始めるハク達、そこにヌクもいた。
ヌク「ほほぉ面白い事を考えるのぉ……なら効率的に分担して完成
させるぞ」
誠にクリス、孝雄も加わり豹と虎が彼等を守ように戦い始めた。
誠「おいおい何やら面白そうな事し始めたな!」
クリス「ククク、次は何を見せてくれんだハク!」
来栖が奮闘する中、徐々に体力が奪われる、敵の攻撃が来栖に擦
り始めた時ヒロの声が栗栖の耳にようやく届いた。
ヒロ「出来ました!僕の方へ!後ろ向きでお願いします」
栗栖「後ろ向き?は?まぁいい防御しながらだ、敵に背を向ける暇
なんぞ無ぇからな!ハクと裕太とやらが助っ人に入るつもりならお
断りだぞ、俺は対戦すると決めたからには意地でも俺の手でコイ
ツら倒す!そうでなければ指導者として俺のプライドが」
ヒロ「安心してください、プライドの高そうな高慢チキだろうから
後は若い者同士でどうぞって言ってもう戻りましたよ」
栗栖「……ふーん」
訳もわからないまま、後退しながらヒロの指示した場所へと到達
する、ハクの指示で一斉に絵を描いた場所を隠す様に固まっていた
所から霧散する仲間達、その絵に到達した敵衆の動きが急におかし
くなった。
衆「何だ!前が歪む?」
衆ニ「お、落ちる!」
ヒロ「チャンスです!栗栖さん、地面を見ないで!」
栗栖「何をした……だがその隙見過ごす程俺は甘くない」
勝負は一瞬だった、栗栖の素早い攻撃は動きのおかしくなった敵
に対し的確に両手首の動脈を切り刻んだのだった、両手首から血が
噴き出し、思わず血でぬめった手首を押さえようとするも片側から
も噴き出す状況に動揺し再び武器を握ろうとする衆の1人もいたが
一度手に着いた血は拭い切れる筈も無く止め処なく再び血で染まる
武器を以前のように握る事は出来なかった。
栗栖「終わりだ、俺はレイピア使いだが日本では剣道も得意だ、手
首は武器を持つ者にとって最も敵に近くそして脆い最大の弱点と知
れ、小手技が長ける日本の武道を舐めるな」
栗栖は戦闘が終わり下を見るとトリックアートが辺り一面と背後
の壁に書かれていた、これは地面などに書いた絵があたかも崖の上
に立つ細い道に見えたり空間を歪める一定方向から見ると上がり坂
に見えるが坂になってたりする芸術と科学が融合した物だった。
栗栖「絵が……こんな使い方があるなんて、アイツは何者なんだ」
ヒロ「ハクさんですから、あるので何とかする人ですからね」
栗栖「……」
彼はハクの認識を変えた、来栖にとって彼の想像物など力の前で
は何もなし得る事ができない、自身では何も出来無い男だと言う認
識が拭いきれずにいた、今までは、現に彼はここに来るまであらゆ
るあるものだけで即座に対応してきた、だがそれは仲間の力を常に
借りてきたものだからだ、だがその一つ一つの原理を応用すればこ
の絵にしても拠点を攻めにきた敵に対しコミュニティー内での仕掛
けを施せば犠牲者を少なく敵に対処出来る、有利に立てる戦略家と
しての才を見出したのだった、それだけではない、彼の周りに集ま
る人のレベルの高さ、無能な人間ならば誰も従いはし無い、力や金
で動く人間と明らかに違う彼の周りの人間のハクに対する想いは彼
の信じてきた力を……首を振り心でその考えを振り払う来栖だった
がそれを認める訳にはいかなかった、彼もまた己の信条を通しブレ
ることが許され無い信念と部下への統率、国としての未来、トップ
がブレる訳にはいか無いからだ。
来栖「違う、敵を粉砕できたのは最後は力だ!圧倒的こそが敵を
粉砕することが出来る」
だが武力のみで戦う事こそが本当の抑止力なのだろうかと疑問が
頭から離れなくなり始めたのだった、地球も経済や流通が一つのネ
ットワークとして成り立っていた令和時代から各国が戦争の為に軍
を強化し疲弊し一つの領土(地球)を犯し大義名分を抱え、視野の
狭い愚かな行動を繰り返した結果、人を裕福にする為に生まれた国
家という組織は人を殺し人から金をむしり差別や偏見、強制力を生
み出した人が作りし文化の中でより良くするものは大切だ、だが変
えてはいけない当たり前の事を変えるのはいつの時代であろうが変
わりはしない、それを改革だ、現状を見ろなどと言う、それこそが
愚かで視野の狭い世界を作り上げる現実だと言うのに……。
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