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救出作戦

純衣戦 4 それぞれの葛藤の真意

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司会「……これは」
観客「何だなんだ!黙ってないで早く言え!裸体で戦うとか言うん
じゃ無いだろうな!」
「おいおい、それ良いな……あの女の体、稀に見るいい女だからな、
それによ、血がまたソソるじゃねぇか!」
観客「脱げ!脱げ!黒田は脱がなくて良いぞ!」
異様な盛り上がりに沸く観客の歓声が地鳴りする程に辺りに響くと
黒田の目が一層冷たい睨みを観客に向けると一瞬で静まり返った。
観客「……モゴモゴ」

司会「次のカードは……」
観客「ゴクン……次のカードは」
観客「脱衣……脱衣」

 司会が怪訝な顔でモニターの方を向き問いかけた、笠田はモニタ
ー越しに試合を観戦しているからだ。

司会「これは……軍で使われた拷問装置ですよね?」
思わず口に出してしまった言葉を聞き驚く相葉だった。

相葉「何だと!どう言うことだ!見せてみろ」
相葉はカードを司会から奪うと記述を読んだ……言葉が出ない。
司会「返してください!」
「ゴホン、これはある教授の実験を基に近年、実際に軍で使用され
た機械を使っての精神拷問器具の一つ、生物兵器の開発の段階で偶
発的に発見、作られた物と言われています、過去色んな拷問は世の
中に有りました、薄暗い地下で滴を等間隔で落とし心を破壊する、
または肉体的苦痛を与え心を折るものも、爪の一つ一つを剥がした
り薬液を用い激痛を伴わせる物、また回虫を体内に入れ込み拷問す
る、これはその内の最新兵器、その学者が生み出した精神の負の部
分を増幅させる事ができるものです、波長を増長し、それに伴い脳
の一部に刺激を加える……うーんなに何、その波長をデータ化、分
析を瞬時にし状況に応じ刺激する事で……」

誠「なんでそんなモンが!それに試合とは関係ないだろうが!」
クリス「……未だこんなもん大事に取っておく馬鹿がいたとは」
裕太「どう言うこと?どういう機械なんだ」
クリス「これは対人間用じゃない……」

騒然とする中ヌクが言った。
ヌク「これは……アイツの研究だ、ワシは知っておる、つまりだ、
行動活性化システム(BAS)の働き医学的に言えば黒質、中脳、腹
側被蓋脳、腹側線条体、前頭前皮質に働きかける構造を利用した物
そこから意図的に激しく反応した部分に刺激を耐え増幅、ドーパミ
ン等を意図的に分泌させたりし、人それぞれの脳にある負の感情や
怒り、悲しみを拾い負荷をかけ続けることにより催眠状態でも脳内
で苦しみを持続、強化する事ができる、更に現実と区別のつか無い
中での強化された負の感情は本体である体を自ら傷つけ破壊する、
体は本来の機能を失いその弊害は強化された機械により即座に肉体
に影響する、まさに真の心の勝負」

孝雄「ストレスをかけると汗をかいたり胃が痛くなったり吐き気や
下痢等、確かにすぐに影響の出る事は現実にある、それが強化され
た装置とは……」

 前説明の様な作用を利用した装置、ドロア教授が試験体から採取
し研究した装置だった、これには科学的根拠もある怒りや負のメカ
ニズムを簡略化させたものだ、あらゆる拷問などの試験データを採
取怒りによるドーパミン等の量も数値化、ホルモンや体の一部を鈍
化させたり負荷をかけたりし、負の感情で起こり得る体の仕組みを
再現する、さらに脳へ直接電気信号を送り目の見えない人を脳に直
接映像を見せる技術を応用し誘導、人それぞれの過去や経験がその
映像を自ら作り出し、良い思い出も悪い思い出に変える事ができる、
サブミナル効果をも利用する、神経は複雑だがあらゆる感情や痛み
を電気化し、あの細い張り巡らされた神経が伝達するように電気の
強弱、内臓到達しその症状を脳が解析し症状を具現化する体の仕組
みを利用した物だった。これは本来、神経系の治療に応用するため
に開発された物だった、医者が患者の痛みや症状を的確に捉える為
の装置としても応用できたが軍はそれを封鎖そしてこのような開発
を独占していたのだった。

 ドロアは独自の研究からそれを考えない生物クローンとして作り
出したのだった。つまり中には生かされている生物の内臓が入って
いる、研究による統計データは非人道的智言える手法だった、あら
ゆる生物に負荷や痛みあらゆる感情に纏わる苦痛を与え、其れを神
経の末端に接続した電極を通し電圧や経路を数値化、生物の細胞に
かかる負荷を調べ到達するルートや増圧する内臓期間を調べ数値化、
それを元に忠実に再現した物だ。

【電極 電気を通す時の経路、流れる側=陽極・流れ込む側=陰極】

 装置は取り付けられ試合は始まった、精神に直接作用するこの装
置は例えるならばストレスを人為的に与えた胃が分かり易い、傷も
ない胃からジワジワと出血が始まる現象が起こる、つまり心と体は
常に繋がり常に一つだと言うことだ。

 2人は静かに座して心の奥深く眠る普段は自己が防衛の為、封印
した記憶の中に静かに確実に入っていった……。

 数分が経ち美唯に変化が起き始めた……最初は然程変化は見られ
なかったが徐々にソレは牙を剥き始めた、目に涙を浮かべ初めた彼
女は突然狂ったように発狂し髪の毛を自身の手でむしり取ったのだ、
引き裂かれるようにむしり取られた頭皮からは血が流れ、髪と顔は
血で染まり、体は小刻みに震えたかと思えば次第に大きく体は揺れ
始めると、あり得ない指の関節の曲げ方で立てた爪を深く体の皮膚
にめり込ませ更なる出血を誘った……泣き叫ぶ顔は恐ろしく声は辺
りに聞いた事のない様な音階を響かせた、そし突然怒りに燃えた表
情を浮かべ笑いだす、やがて鼻から失血し白目をむき痙攣しながら
口からは泡を噴き出した……。

司会「これはマズい!」
 予想範囲を越えた状況に慌てて司会は美唯の体や頭についた装置
を取り外したのだった。
司会「医療班を!」
相葉「なんだこれ……こんなの人につける物じゃない!」
 会場も皆、青い顔で引いた……そして医療班も美唯を助けようと
はしなかった。
司会「……続行です」

ーー笠田陣営ーー
秘書「これは効果満点ですね、あの2人の性格からして敵には負荷
による廃人を、そして黒田の性格からして装置の効果は彼の凶暴性
を高め更なる強さを生み出すでしょう」
笠田「お前の案だったな……」
秘書「彼等は現実に目覚めるべきです、肉体的苦痛に強い野蛮人な
ら尚更その力に溺れ力と言う殻に守られた心は弱い筈」
笠田「弱者は常に強き者から虐げられ屈辱の中に心を鍛え、傲慢の
強さは常に支配する事により体は鍛えられるが心は弱い、か」
秘書「均等にすれば凡人、特化すれば何方かに傾く、それが人であ
り人間の限界かと」
笠田「その負に耐えられるのは悪意、憎悪、妥協か、なまじ正義感
や理性の高い人間ならば苦痛、だが痛みを恨みに変える事が出来る
人間はマイナスの負に身を寄せる事は容易くそれを力に変える事が
この痛みから抜け出す簡単な方法という訳だな」

ーー試合ーー
 その状況を凝視した後でも眉一つ動かす事なく静かに目を閉じる
と地面に鎮座した黒田だった。
黒田「……」

 黒田は過去に起こした過ち、裏切り、悔恨を見た、遠くで声が聞
こえる、その声は誰なのか、自身の声にも聞こえる不思議な空間に
身を置く感じだった。

 裏切りの感情が高まる、目を閉じても脳の中では虚像とも言える
リアルな映像が流れた、楽しい時、幸せな時を踏み台にし裏切りは
一番残酷な場面に登場するまでその姿を擬態する、感情が高まり、
そして安定を生むと静かに、そして突然その姿を現す、しばし虚像
の中の世界から抜けれない自身の心とリアルが牙を剥きその両方か
ら心を引き裂かれるのだ。

 傷つき倒れる度に人は愚かにも同じことを繰り返す……いつか見
た虚像の幸せを求め彷徨い、また真実に擬態した裏切りと出会う、
やがて心は輝きを失い猜疑心と自身の信じることが出来無い自身の
心と二つの刃でまた傷つけていく、傷ついた心は自己防衛能力が働
き、妥協、譲歩、屈服、あらゆる言い訳と逃げ道で自身の本心を鉄
よりも硬い殻で覆い日の差さない日陰へと追いやるのだった。

「人を信じるからこうなる……誰かに寄り添うのは自身の弱さ、裏
切りには破壊、その現実も存在も消してしまえばいい、身も心も2
度と嘘をつけないように裂き、苦痛の中にその罪を償わせる……小
さな裏切りも許さない、その芽は地面に出ている見た目と相反し根
は大地へと張り巡り許容範囲を超えたからこそ出るもの、全てを破
壊すれば裏切りは起こらない……」

 機械からの影響でより多くのホルモンやドーパミンが体の中で激
しく分泌していく、些細な怒りが20とすれば機械によって昂る感
情は100となり例えようのない怒りが彼の脳や体を支配していく。

 今まで出会った人の姿が見える、そんな彼を憐れみ、蔑み、助け
ようと近寄るが臭い歪んだ口からは虚偽の言葉で並べられ、黒く歪
み、隙を見て彼から全てを奪うとする影に映る、身近な存在である
親の姿はまた彼の現実から虐待の思い出をより機械で増幅させ映っ
ていく、その記憶が捻じ曲げられるかのような強烈な映像に体感、
元は事実からなる記憶の元に脳が痛みや苦しみを増幅させた記憶は
元がある分脳に入りやすく現実のものとなる、増幅された架空は現
実として再び脳に上書きされる、人は体調や気分によりその時々受
ける印象は時や場所によっても大きく変わるからだ……そして黒田
の中の静かな心に燃える憎悪をより激しく焚きつけていく、その心
は強靭で恨む気持ちが強い程に波に乗り、より強く持続性のある力
となりて心に宿る……。

「鼻っから信じてはいない、生まれたのも、ただの生物が存続する
為の流れのみ、其処に依存する必要は微塵も無い、奴らにとって子
は金を食い荒らし時間を奪い成長する程に親である存在を疎う者だ、
邪魔であるのが自然だ、俺が受けたものは普通の出来事、そして愛
は美しく着飾られた欲望の塊、肉欲、寂しさ、富、自己評価の対象
より良い物件が出るまでの借りの依代の代名詞、そんなモノは要ら
ない、何故俺を傷つける為に近づく……だがこの怒りは私を隠れ蓑
にしてくれる、やがて私は進化した、自身が壊れないように厚く、
厚く心を憎悪で覆う、無敵の防具だ、怒りは更に私を強くもする、
判断は殺す事のみ、情けは無用、それにこの類の痛みや恨みは常に
常に常に!味わってきた……今までは殺せなかった、何故だ、情の
欠片がまだあった私は……いや、ただ社会から排除される事を利と
しなかった、それだけだ、だが今の私なら」

 彼の捩れた心の元によるこの力は増幅された苦痛を苦痛に感じさ
せず更にはそれを糧に更に大きくなっていく……。

純衣もまた静かに座し深い心の中へと入っていく。

ーー裏切り
 裏切りは寂しい……信じていた事が全て0になる、切なくて苦しく
て苦くて……そして暗く、とても寒い、自分の全てをも全否定してし
まう哀しみは戻らない時間の中、瞬間的に出会い、そして近づき、
そしてまた離れていく、今まで話し通じ合ったと思う絆、一緒に居
て過ごした時間の中の楽しさや思い出、共有するもの全てが一瞬で
全てを色褪わせ、灰色の嘘の塊に変化する、どんなに足掻き相手を
肯定させようとしても変わらない事実がある、そのかけがえの無い
全てを捨ててでも行われた行動……裏切りという言葉、寂しい、心
が凍りそうだ、私は小さく蹲り目に映るもの全てが暗く映る中、身
を丸め小さくなり泣いている……泣いても叫んでも助けには来ない、
その助けようと近づく人が、存在がそもそも裏切るからだ、誰も信
用出来無い、誰も私を認め無い……悲しい、だけど私はその寂しさ
の中に自ら火を灯そうと足掻きもがき続ける、悲しみの中にある原
動力を自ら奮い起こし、私は私の中の小さな世界にある悲しみを拾
い、一つづつ大事そうに抱え丁寧に暖め育てようとする……だけど
それとは反対に私の心は……寂しい、どうしようもない虚無感と冷
たさ、孤独が私の爪先一つまで覆っていく、すがる様に暖かい思い
出や顔を思い出そうとするがそれは過去の出来事、生きている間そ
れをどんなに懸命に心に刻もうとしても薄れゆく現実、その人のシ
ワ、仕草、匂い、感覚にすがるように脳の中で語りかけても、その
答えは霧のようにぼんやりと薄れる、時もまた彼女のする行動全て
を否定し全ての行いが自己満足で得るものも無く、過ぎゆく時の中
でただ通り過ぎる影の一つである自身の命にまた悲しさや虚無を感
じるのだった、ただ何故、彼女はその虚無や悲しみの中に常に足掻
くのだろうか、そしてその力とは……ただその小さな力が押し寄せ
る津波のような黒く冷たい感情の中にでも失われず自我を保つ事が
出来たか、それは美唯が持ち合わせてはいなく彼女が持っている力
の他ならななかった。

 純衣の閉ざした目から大粒の涙が溢れていく、身は震え、自身の
腕で本能的に身を守る姿勢をとる純衣の体からは生きる事を拒絶す
るかのように自然と皮膚が割れ、そして血が流れた……だが双方が
美唯の時の様にその立てた爪を立てる事はない、体は反応するも双
方が持つ種の違う根本の力が自傷行為、つまり自らの存在を消える
ことを心は良しとしない抵抗の証だったからだった。

 そして黒田の体もまた無数の傷が彼の体から発生するも、彼女と
はまるで逆のその血は赤く紅葉し、怒りのエネルギーが身体中を巡
り行き場のない力が身を裂き溢れる現象にも見えた。

会場で見守る彼等から見ても不思議な光景が映る。
ヌク「マズイな、極限の意識が体にモロに影響が出始めた、黒田は
ともかく元々毒で弱った純衣の体の方が負荷の影響をより強く感じ
とる筈だ、肉体もだがそれより先に心が壊れてしまうぞ……」

彼等の魂から叫ぶ応援は純衣には届かない……。

ーー罪
 それがどうした?人は罪を犯し生きる生物だ、反するものを除外
し、より多くのものを拾い上げる、同じ罪なら大きい方を救うのは
論理的だ、だが俺は誰も救たくはないし救われたくも無い、誰も俺
に近づくな、誰も俺を見るな、誰も俺を語るな、誰も俺を思い出す
な、誰も俺に頼るな、誰も俺をテメェの欠けたパーツにしようとす
るな、だが俺は罪を犯すつもりは無い、何故俺の近くに来る、俺は
誰も傷つけたいわけではない、社会や人はこぞって俺を訳のわから
ないルールという沼に誘い込もうとする、国は住むだけで金を取り、
買い物をすれば金を取り、生きてる間、いや逝った後ですら国は金
をむしり取る、そう全てにおいて金をむしり取る、挙句、戦争にな
れば人をゴミのように戦場へと向かわす、その行為は常に弱い者へ
と犠牲が出ることを知りながら、そう人もそれの集合体である国も
全ての根源の罪は人だ、いつもだ、それは大小関わらず近づいてき
たもの全ては俺を利用する為に生きてる、その為に俺は俺を拒絶し
隔離する為に罪を犯す、その方がより小さな罪で済むからだ、私の
方が本来は愛がある、そう愛だ、より多くの血を流せば、それに関
わる人間の罪を消せる、存在を消せ、俺の為に、皆の為に、だから
俺は闇に落ちた。

ーー罪
誰もが誰かを傷つけなく生きる事は出来ない、それは人を殴ったり
心を刺したり、万引きだってそう、その人の小さな頑張りを奪う、
恋愛が人を傷つける事もある、相手の想いを取れない場合もある、
私は1人だ、好きじゃない相手に自分に嘘をついてまで付き合う事
も出来ない、それは相手を傷つける事にもなるから……でも振った
所で傷つけるのは変わらない……ご飯だってそう、命をいただき生
命から命を奪い生物は生きていく、罪は生きる事……救済は消える
事?それもまた多くの人を傷つけ罪を重ねていく、生命がそう巡る
定めならば其処に何か意味がある筈だ……その大義はわからない、
命が輝き尊い生命の起源……それは人の科学や文明、宇宙を超えた
何かしらの真意なのかも知れない、科学には限界がある、だが思想
や人の持つ心は絶えず生み、育み、そして永遠に繋ぎ重ねる事が出
来る、それは今の私たちには想像もつかない別世界の話なの?だが
何故心が存在するのか……そう言った中に真意がありヒントが隠さ
れている筈……その答えを導き出すには人の想像の中、心の中に隠
れる頭で操作できない魂の感情なのかも知れない……愛は何、それ
は誰にもわからず誰もが知っている魂、誰かが誰かを愛し育み、そ
れを繋ぎ一つになる事……『不可能な言葉の中にこそ真理がある』

見えかけた問いに霧がかかる。
 わからない……見えかけた問いの答え、罪は人との繋がり?出会
い次に進むためのもの、永遠は簡単には手に入らない、私だって多
くの裏切りをしてきた、誰もがその気持ちに応えたい、だがそうい
う人が全てではないし、そういう人であっても裏切りという言葉は

 次々と断片を凄まじい勢いで脳を駆け巡る中、答えを導かせない
悪魔の様な誘惑の問うものが頭に巡る、過去聖書の様な書物にある
悟りを邪魔する存在の悪魔を思わせた……人は昇華する際に必ず邪
魔をする存在が思想の中に入り込む、まるで人の進化を邪魔するか
のような存在、それは人の中に住んでいるのかも知れない。

 自問自答を繰り返す度に迷い、そして苦しみ傷を増やす、人は傷
つき踠き汚されて成長する、答えに安易な物はない、いや安易だか
らこそ真理に辿り着く事ができないのかも知れない、苦しみの中に
光はある、其処を超えて苦しまない事に光はある、似た様な言葉と
行動を示した人物が居た、それは地球上で唯一神の存在に生きなが
ら昇華したと言われる誰もが知る存在だ。

ーー会場ーー
 静かなる残酷の中の戦いの中、地鳴りが辺りに聞こえ始めていた、
その音に反応するも座して動かない戦う2人にグリマン達、レイダ
ーと笠田陣営は得体の知れない地鳴りに動き始めたーー

夏帆「……何か聞こえ無いか?地響きも微かに感じる」
由美「確かに……」
菅「……まさか」
その振動に微かな笑みを確かに浮かべた菅の顔を垣間見た夏帆は菅
のいつもとは違う表情に人間らしさを見た気がした。

 更に静かなる戦いの最中に意識の中では遠く離れた場所で何かが
起こっているような地響きや音が微かに聞こえたが、深い瞑想状態
の彼らの意識はまた深く暗い闇に沈んでいった……。

ーードロア談ーー
ワシの開発した拷問装置は対異星人向けの物だった、無論、医療へ
の開発も進めたが真の目的はそれだった。

近年、未確認飛行物体や異星人の報告例が後を立たず、わしは侵略
が近づいていることを察知した、彼らは我々の科学を超えた場所に
堂々と基地などを作る、一つは火山だ、そして海、宇宙に関しては
ワープが出来る技術があり地球人はそれを持た無いが電波や赤外線
などがある事からその場所をあえて作る必要も無く直接内部へ侵入
してきたのだ。

人間に対しての拷問は既に他の方法も作った、それは睡眠誘導を施
し内部に聞き出したい映像を送る、あとはどんなに抵抗しようが夢
の中、人は行動する時に過去の記憶を基に全てを決める生き物だか
らだ、あとはそのキャッチした電波を相互通信で映像化しモニター
に移せば終わりだ、だが稀に夢の中を意識出来る者も存在する、そ
ういう時は麻酔を使う、深い眠りに誘えば人の脳に残る前頭葉部分
の意識は薄くなり抽出できる訳だ。

異星人に関しての情報戦は近年の現代戦争においても最も重要な戦
いの鍵となる、だが宇宙人の文化や生命体の構造が生き物として正
常化であるとは限ら無い、そういう者から情報を得るためには今み
たいな映像化から得られる情報は解読に時間がかかりすぎると考え
アナログに苦痛を与え直接聞き出す方法が一つの手だと考えた。

先程言った映像を抜き出したとしてだが、例えば文字を異星人が浮
かべたとしてその言語を理解することは極めて困難だ、それは太古
の文明から発見された文字を解読するより困難だからだ、人の文明
はある程度の法則性がある、だが環境が全く違う場所で発生した文
明においては地球という惑星が育んだ生命体の法則が当てはまら無
い確率は高い、では映像から見たものを解読、これも不可能だろう
見たこともない映像が見えるだけだろう、アナログだが苦痛という
ものがいかに命に関わるかという点では生命体ならば効果的、と言
わざるをえないだろう。

だが違う視点でこの研究が進めば人の文明は大きく変わり、また論
理や倫理も大きく変化するだろう。
簡単にいうと法則性から派生する多様性を基礎の部分さえ見つける
事ができれば動物や虫などの生命が発する感情や行動が理解できる
様になるからだ、だがそれは同時に脳の大きさや環境に左右される
が言葉を理解出来たら我々が食べている肉や魚等、残酷でそれこそ
倫理という問題では多種多様な意見が出るだろう、我らの科学は
発展すればする程、神の領域を犯し生きるためにより多くの罪を背
負い生きねばならなくなる、そして会話できる、いや意志を持つ生
命体がそういった問題を克服する者たちならば我ら人間も宇宙人か
ら見れば食料の一種とも取れるだろう、家畜が構成する社会など彼
等の倫理から人権など無いに等しい、我らが彼等の構築する野生や
環境を破壊し、人の社会が侵略するのと同じく、我らが哺乳類を飼
い、食し殺す事となんら変わりは無い、やはり豚や牛といったもの
なのだろう、ただ会話する事が出来るだけの家畜と言わざるを得無
い、私は恐ろしい……そういった観念からより多くの人間という種
を絶やさ無いために世界の融資を元に研究を続ける……。
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