166 / 221
救出作戦
追走劇
しおりを挟む捕虜として捕まったヌクの仲間にハク達であった
新たに現れた第三勢力の介入での中、
彼等だけが解放されたその真意は……
栗栖「此処にきてからの、お前達の行動、目的、
全て拝見させて貰った……
簡潔に言う、我等もあの施設を狙っている
あの場所に住む人間、異星人と手を組む輩を
野放しにして置く事は日本再建の
脅威となるからだ」
「お前達の目的は捕虜の奪還、そうだな?
私達の目的はあの異星人の居留する施設を
機能不能にする事だ、
利害は遠からず一致している筈、
故に手を貸そう……ただし助けるのは条件がある」
ヒロ「条件?」
栗栖「捕虜の内、我等が選別した人員を兵に貰う、
後、施設内の研究の資料は全て此方がいただく、
人間及び異星人の武器もだ」
ヒロ「……ちょっと待ってくださいよ、
話が急すぎて付いていけない
手伝ってくれるのはありがたいですけど
その人員にって選択権はないんですか」
栗栖「無い、どちらにしろ、その少人数でまともな
武器も無く戦える人員すらままならないのに
我等の助けなしで、どうにか成るとでも?
あの施設関係の施設も動き始めた今
想定外がお前らの本音だろう」
それにだ、今の日本の状況、未曾有の脅威に
立ち上がるのに何故に兵への拒否権があると思う?
何方にしろ奴らの捕虜の行き着く先は実験台か……
家畜、奴隷としての人生の終わりだ……
それ以前に最早、文明を取り戻さねば
お前達の言う人権自体存在せぬ、
戦いを拒否するものは否応なしに処罰する、
日本人として国の為に働くのは当然だ
戦争が起これば自衛隊のみが対処できる事柄など
存在しない、過去、国の利益の為に票を入れ
確立された法案、これは現在生きてる者達の
今世代の意思で可決されたものだ、
民主主義に乗っ取り過半数がそれに賛成したものだ
戦いが大きくなれば参戦するのが当然であり
それが自ら選んだ道なのだ、故に今更反対する者は
処罰するのが当然だ、都合の良い解釈は受け付ける
必要など最早、この状況では一切無い」
タバコを吹かし呑気な顔で栗栖を見るヌク
ヌク「だが此方にも条件を出す権利はあるわな」
栗栖「我等は犠牲を出し尚、
捕虜の命を救う側のどこに」
ヌク「……あるわな?お前達の目的はあの施設の
掌握だ、今の現状からお前達だけで攻め落とせる
ものでは無いから援助を求めとるのだろ」
栗栖「……」
ヌク「その理由、レイダー、異星人、逃げ惑う捕虜
敵を判別し戦うなど不可能に近い
だが物資を節約したい……が正直な所だろ、
全てを倒す程の弾、更に続く戦いに無駄な資源を
使いたくないって言うのがお前らの言い分だ、
弾や武器が簡単に製造できる工場なんて無い
いやあったとしても数は相当少ない筈じゃ
輸入に頼ることも出来ず、限りある資源で
異星人はおろかレイダーに立ち向かうなんぞ
夢のまた夢、捕虜の人数を含め出来るだけ
内部の人間を減らし騒ぎに乗じて
事を起こしたい、今ここで全員を捕らえ置く場所も
参戦させ訓練されて無い人間をまとめ上げる事も
不可能、ならば指示を与え、
今までの動きを見てきたお前はワシ達を自由にし
その上で仲間を無理なく動かし慣れたわしの下で
都合よく乗っかるのが唯一の最適への道とな」
意図を的確にヌクに読まれたせいか
恐ろしく冷徹な目でヌクを見る栗栖
ヌク「故に捕虜の中に志願する者が居れば
入隊を許可が妥当って話じゃ
その崇高なる意思と説得力で講演するのもよかろう
その上で志願する者が居れば何人でも
入隊させれば良かろうて、
個人の意思だからな、我らに咎める権利は無い。
後はお前さんたちの腕、いや舌次第って所かの?」
栗栖「交渉上手だな……見習おう」
ヌク「決まりじゃ、資料や武器は持っていけばいい
それと多少の武器は此方にも回してもらう
それが譲歩じゃ、お前達のデメリットは
極めて少ないと思うがな」
栗栖「了解した、詳しい話は後で煮詰めよう……」
ヌクと交渉が済んだ栗栖は今度はハクに近づいた。
栗栖「それとハク、味方になれ」
ハク「やだ」
栗栖「お前のノートは見せて貰った
ゾンビ対策には驚いた、ゾンビがゾンビとして
認識する逆の発想で共倒れを狙うなんて研究者の
中でも無かった、脳への原理説明、分布、
更には改良点、我らは実験の結果、成果を上げた
今ある数少ない物資の中であがらえる術を示した、
その発想の力、我ら日本の為に使え」
ハク「やだ」
兵「貴様!それでも日本人か!」
栗栖は手で兵を止めた
栗栖「まぁいい返答は後でも……
お前も知る事になる、大きな力に対抗するには
同じく力が必要だ、歴史は人をあやめ殺す為に
数々の進化を遂げていた、文明の発展よりも
人を殺す技術の中から過去の栄華があった事実を
最先端の技術は常に殺す為に優先し殺すために
発展した意味をな」
古い軍事衛星を使いカーナビ等は劇的に
その精度を上げ様々な進化を遂げた。
古い衛星でこの精度を保つ最新鋭の衛星からの
精度は離れた位置にある針に糸を通すような
精度を持ちミサイルなど誤差数センチで
当てる事が可能だ。
全ての進化は殺戮兵器が優先される事は間違いない
過去黒の塗料も電磁波で人の視界を捻じ曲げる装置
遺伝子、クローン、様々なものが存在するも
優先順位は全て軍事である。
ヌク「人は進化しずぎたのだ、暮らしは楽になり
堕落が蔓延り知能や筋力は低下の一途
過ぎたる事は人の体を構築された神様の心理からも
外れる、いかに科学が発展しようが筋肉は使わねば
発達する事はない、また頭脳もそうだ
行き過ぎた文明に人の行き着くところは自らの破壊
それでしかない」
ヒロ「筋肉を増強させる機器や薬もありますよ」
ヌクに頭を叩かれるヒロ
ヌク「馬鹿かお主は、いくら機械で筋肉を増強
させようが鍛える過程で同時進行される脳の……」
ため息を吐きヤレヤレと言った表情をした。
「いいか、筋肉を鍛える時に限界を超えねば
それに適応しようと筋肉は増大する、
その中で限界を越えるために必要なのは強靭たる
意思だ、増幅する後一回を超えられるかどうか
その一回が精神と肉体、別なようで一つの物が
完成される、いかに筋肉だけ増幅しようが
いざとなった時に発揮される必要な動きは
そこから生まれるんじゃ、苦境に立った時
自らより強い者の前で立ち上がる勇気に
支えられるのは常に努力と見合った精神だ
お前ならもうわかるだろう?
以前のお前は武道経験もあった、普通に強い
だがそれを発揮できる機会はあった筈だ
だがお前は一歩を踏み出す勇気、事後の後の
マイナスを考え勝てる自信が自らの行動を
制御してきた、その制御は行わなければ
1でも2でもない0じゃ」
「話がずれたの、それにだ、
過剰に供給を望む人類が核を作り環境を破壊し
生ける物の命をも自らの欲望の為に奪っていく
残酷な生き物は生物の生態系を壊し今も自ら立つ
地球をも破壊しておる……
いつまでも利権を争い堕落を貪り、
尚かつ地獄の亡者のように堕落と快楽を求め彷徨う
人間こそが地獄を作り出した、結果、異星人に
資源が破壊される前に狙われた……と言う所かの」
栗栖「……世界が均衡を守り、
いち早く地上に向けての兵器開発をと我々、
いや諸外国の若手も助言してきた……
だが、老害の彼等は己の利益のみ追求し今がある」
「だからこそ、選挙で勝つ為に嘘や虚言を繰り返し
進まない政治に我々が今立ち上がるべきだと
少数派の意見をいちいち聞いては埒があかない
強い判断力と実行力を持つ真の政治を
率いるトップが今日本に必要、それは人類の勝機
と共に日本が世界のトップとなりて地球は変わる
このチャンス……逃しはしない」
ハク「国……人は人に、力に頼り過ぎてる
地球のあるべき姿こそが真の地球の一部
誰もが自身の力を侮り、自身の力で生きるべきだ
助け合い、繋ぎ、其処から生まれる絆を元に
生成されるべきなんじゃないかな
国を作るより先に人が成長し
自然と人が集まりやがて国が生まれる
だから僕は君達には従わない、自由に生きる」
栗栖「国が先か人が先か……か」
参謀が栗栖に近づき耳打ちをすると
兵は慌ただしく動き出し始めた。
栗栖「ハク、お前の考えの片鱗は理解したつもりだ
かわしながら本音を言わないお前の性格もな
真理を言葉で探ろうとする無粋な真似をした、
お前とはいつか酒でも飲んで語り合いたい、
だが……お前とは恐らく、
そうだとしても敵として会う事もまた真理か……
言葉の裏に隠された真理が私と同じだと良いがな」
「だが今は共同戦線だ、心理戦は無駄だったな、
言った通りだ、全ての条件も飲もう、
我らは無駄な兵力を使う訳にはいかぬ
援助はするが此方がどう動くかは
此方の判断で動く、無線を持つ部下を
お前に就かせる、自由に使え」
中馬「無線担当の中馬と申します」
上田「同じく上田と申します」
富田「同じく富田と申します」
背筋を伸ばし精悍な顔立ちの三人からは
軍人という職が似合う男衆であった。
栗栖「今連絡が入った、奴らの仲間数人が中継地点
で待機していたようだ、西に800m
我らの姿を敵に知らせる訳にはいかぬ、
故に車を一台用意した、敵の数は未明、
バイクを複数台、車2台だ。
敵が此方の手に落ちたとなれば……」
腕時計を見た栗栖
「制圧から17分……動きはない、
捕虜から聞き出した情報によると30分毎の
定期連絡、此処は電波が悪い、
旧型のトランシーバーを使用している事、
捕虜から聞き出した情報だと30分毎の定期連絡を
している事から予測と合致、
罠なのかどうかは不明」
それを聞いたハクとヌク、ヒロは立ち上がり
駆け出した、その後に3人も追う。
岡村「良いのですか?このまま行かせて……」
栗栖「察知がいいな……
罠であろうがタイムリミットは残り10分って所か
捕虜を何人か西側に立たせカモフラージュしてやれ
多少、報告の時間の誤差はこれで誤魔化せるだろう
あと西田、垣根両名、狙撃範囲内2キロ範囲で
狙撃体勢にて待機、
時とタイミングを見て手伝ってやれ、
ただし必要以上に彼等に近づく事は許さん
絶対に我らの存在をコミュニティの奴らに
悟られるな」
更に栗栖は中馬達に別指令も与えていた。
奴らの存在が我らにとって利なるならば生かせ
敵、ないし脅威となる存在ならば『消せ』
この度の作戦失敗時にも消せ、
判断はお前達に委ねるとの事だった。
駆ける自衛隊3人が先行し、用意された
車両の場所まで先行する。
乗用車一台、バイク2台、いずれも民間が乗る
車両だった、その横に放置してある軽トラを
見つめると一斉に近くにあるガラクタや資材
目に入ったものを詰め込む、
ヌクが運転席ハクとヒロは後に飛び乗った。
富田「え?……乗用車では」
ヌク「こちらの方が使い勝手がええ、
その大層な車はお前達が使え」
富田「お言葉ですが、見た目は普通ですが
軍が細工した車両です、防弾ガラスに
ナビ等は衛星が使えない分、
中には軍がプログラムした機器が入っています」
ヌク「あっそ」
話を聞いていない感じのヌクは無視して
軽トラに荷物を注ぎ込んでいた。
ファンベルトを取り替え、かなりきつめに
セッティングをする。
上田「と、ともかく付いていけ、俺と富田で
バイク、中馬さんは乗用車で行きましょう」
ヌク「お前らは要らん、付いてきたけりゃ
好きにするがええが、邪魔じゃ、
奴らから見えない位置で追尾及び待機しとれ」
中馬「邪魔?我等が?」
ヌク「ホイホイ邪魔」
ハク「ホイホイ邪魔」
ヒロ「すいません口が悪くて、このお二人……」
3人は顔を見合わせ不思議そうな顔をした
銃を持つ彼等は戦力になる、だが何故邪魔なのか
考える暇もなく軽トラはエンジンを吹かし
猛ダッシュで西へ向かった。
富田「なっ!早い……軽トラですよねアレ」
上田「改造車にしたな、見事だ、あの短時間で
できる最大の改良と言える、
と言ってる場合じゃない急げ置いてかれるぞ」
後を距離を取り敵から見えない位置取りで追随する
ヌク「ええか?報告の正確な時間が分からん、
早々に見つかり我等を囮に敵を追従させろ」
両者頷くと荒っぽい運転で荒れた地を砂煙を立て
駆ける軽トラの中で何かを制作し始めた2人。
早々に着くと派手にスピンを利かせ激しくターン
敵の視界へと入る3人に驚いたレイダーが見えた、
その場所には車は一台、
敵は逃げた奴らを追う役目も担っている事は
視野の中にあった、
刑事ドラマでよくある待ち伏せ組
戦国時代でいう落武者狩り
捕虜捕獲の際は警護を担当する
敵が慣れた指導者なら当然の配備だ。
レイダー「コミュニティの奴らだ!運転はジジイ
あとはヒョロイの2人だ!他はない、追え!」
次々とバイクに跨り追走するレイダー
2台が早速、軽トラの後に張り付く、
ヒロ「おいでなすったね!」
ヒロは板にゴムを貼り釘で打ちつけた簡単な作りの
ボウガンの様な物で転がるガラクタを球に
敵に向かい放つ、だが悠々と敵に避けられるも
警戒からしばらく距離を取ったり狭めたりを
繰り返し様子を見ているようでもあった。
ヌク「ほほー!気持ちええのぉ!風は良い!」
ヒロ「1人盛り上がるのはいいですけど
此方は大変なんですよ!」
ヌク「いいか、追従するバイクの軌道変更は
初動で約1秒半、幅にしてバイク本体の約1台分、
人の脳へのスピードから計算を間違うな
動く相手の適応スピードはボウガンの向き
お前の仕掛けたガラクタを張り詰めたゴムの伸びる
位置をマイナスとして計算しろよ
どうせ馬鹿だから線で飛ぶガラクタでも飛ばし、
当たらなーいとでも騒いでいるんじゃろ」
ヒロ「……ング」
ヌク「釘とトンカチが入っとった筈じゃ!
それを十字に打ち付け、そこに平行にゴムを張れ、
ボウガンの形になったらガラクタを仕込み
斜めに撃て、直線の風と車から流れる流線風が
軌道を読み辛くしてくれるぞ、
真っ直ぐな棒があれば、逆に真っ直ぐ撃て、
抵抗が少ない上に加速が付く、野球の様に
目に慣れさせるな、緩急をつけるんじゃ」
ヒロ「わかりました」
ヒロはすぐ様それを作った、と言っても板を2枚
十字に置き、何やら作ってるのに気づいたハクが
支えの足を置き、釘を3本とゴムの箸に2本ずつ、
制作は40秒もかからなかった。
言われた通りに撃ち始めると敵2台のバイクを
撃破、更に現れた2台に撃つも敵も先程の動きを
見ていたのか、距離を開け判断が鋭く避けていく。
ハク「ほい」
ハクは鋸で先端を切った駐車コーンに最初から
軽トラにつみ混んであっった砂を詰めると
持ち上げ砂をばら撒く、先端から出る砂は
敵目掛けなくなるまで放射する様に流れていく
メットを被らない敵は先端を切り一気に放出
しない砂の放射の長さに目を閉じて運転する訳
にも行かず次々と転倒、
すぐ様更に2台が間に入る……
ヒロ「ひぇ……まだ来ます、
今度はメット被ってます……」
ドンドン近づくバイクに対し
ヒロは平板を手に取るとそれで仰ぐ様に敵に
当てようとするが当たらない所か風で煽られて
落ちそうになる所をハクがベルトを引っ張って
助ける。
ハクは2×4の板の先に適当な切れ端の平板を取る
2×4の端に切れ端を重ねると上からトンカチで
釘を一本打ちつけた。
ハク「どぞ」
ヒロに渡すとTの形になった棒を使い
範囲の広くなった棒を使い敵を牽制
手が滑って板を落とすも平板の部分が風を受け
直線上に更に威力を増し、避けようとするバイクは
横に身を切ろうとするが板の先も風の煽りを受け
非規則な動きを見せ横になるとバイクに当たった。
ヒロ「これ簡単でいいですね!」
ハク「打ち止めでーす」
ヒロ「えー!」
ヒロ「資源がかなり減ったから節約しようね」
車の脇を覗き込むハク
ハク「寒冷地使用なら予備バッテリーないかな……
繋がってるか……残念
12ボルトでもスパーク利用できたらド派手な物も
簡単に作れるし火も起こせるし取り出しても
使い道は多種多様ナンダケドナ……」
ヒロ「それ揺れる車では怖いからあっても
やめましょうよ……」
ハク「はーい」
その隙に運転席側に回るバイクがヌクの乗る側の
ドアに向け刃物をガンガン当てて来ていた。
ヌク「邪魔じゃ」
ヌクはタバコを吹かしながらドアを開けると
一台は大きく転倒し転がっていく
更に一台が反対側の助手席側のドアに手を掛け、
バイクから飛び乗りブラがって入ろうとするも
ヌクはめんどくさそうに身を助手席側に
身を乗り出すと吸っていたタバコを
窓に手を掛ける指に軽く押し当てた。
ヌク「邪魔と言っとろーが」
またも振り落とされるレイダー
だが予想外の結果がまた彼らを襲う
別働隊の車達がバックミラーに映っていた
ヌク「追加注文入りましたぞい、ポテト並みと
言いたいが、ありゃビッグバーガーって所かの、
こりゃヤバいな」
ヒロ「アワワワ、どうしましょうハクさん!
あのヌクさんがヤバいて言ってます!」
ハクを見ると違う意味でやばそうな顔をしている
ハッとしたヒロはヌクの顔をじっと見た。
ヒロ「……楽しんでる、ヤバい意味はこっちか」
ハク「乗り込むときに砂に被せてあった青い
ビニールシートの穴に何でもいいから
重しになるものを」
それを二つ折りにして端と端をヒロとハクは
持った、風が中に入り込まないよう支え持つ
バイクが3台、軽を追って背後につく
ハク「広げたら風で煽られて一気に広がるから
その時、離して!」
パラシュートのように開いたシート
すぐに手を離すとバイク複数台の前に被さるように
包み巻き込み、砂煙を上げ、激しく転倒する
後に配置していたバイクもその転倒に
巻き込んで一気に数を減らした。
ヒロは手持ちのブルーシートの余り
先程のブルーシートの様に大きくはないので
同じ作戦には向かない物を急ぎカッターで
細かく線状に切っていく
風でなびく切ったブルーシートはまるで
凧の先の様だった、細い木材の先に結び
近づく敵に向けなびかせる
敵「くそ前が見えづらい!邪魔だ!」
手で振り払おうとするも、なびくシートは風で
振り払えない、怒ったレイダーはそれを握ると
ヒロは引っ張ると体勢を崩し転倒
同じやり方で隣のバイクにもするが流石に見ていた
レイダーは握るタイミングを慎重に見計らい
転倒してくれはしない、
今度は近づくバイクに側面から
投げつけると前輪タイヤに絡みこみ
一台を撃破したのだった。
ハク「やるねー!」
ヒロ「もうブルーシートもありません!
まだ来ます!もう勘弁して……」
難を逃れたバイク3台が後を追う
今度はボウガンを持ったバイクだ。
ハク「これ使って!」
そういうと化粧板に取っ手のついたものに
穴を開け腕を通す場所も紐で簡易に作られた盾
合板に圧縮された化粧板の盾は硬く弓矢など
簡単に弾き飛ばした。
(合板には多々あり、硬い物は重さもかなりあるが
安い収納箪笥などに使われる事は多い
故に手に入りやすい)
ヒロ「めちゃめちゃ撃ってきますよ!」
盾で防ぎ縦になりハクを守るヒロ
ハク「じゃ次行ってみよー」
手に持ったのは三角の板の切れ端だった。
ハクはかき集めるとヒロに盾を退かせた
瞬間一気にそれを地面へと落とすと加速のついた
バイクはそれに乗り上げ大きくジャンプしたかと
思えば激しく転倒していった。
ハク「まぁ加速ついたバイクで後を追う事自体
転倒させてくれと言わんばかりだけどね、
別に三角でなくてもいいんだけど」
ヒロ「映画の見過ぎですね……
って次!映画のまんまー!」
口をあんぐり開け放心状態のヒロ
猛追してきたのは車だった
マッド○クス仕様だ。
ヒロ「えげつないもの来てるんですけど……」
ハクは腹を抱え笑っている。
ヒロ「笑ってる場合ですか!
あれゾンビ仕様ですよ!フロントも辛うじて
見える幅しかない、上から攻撃すればだけど
軽トラじゃ、届かない!
更に前輪の部分は突起の付いた完全防備だ!」
近づく車は走る軽トラの後ろに体当たりをする
大きく揺れる事態にヒロは慌てふためいて端の
つい立てにしがみ付いた。
ヒロ「あわわ、ど、どうするんですか!」
物を投げつけるもフロントの盾に弾かれる始末
慌て色んな物を投げようとする手をハクは止めた。
レイダー「何だ?平板もってるぞ?」
レイダー2「構いやしねぇ、どうせ板でフロント
割ろうとしてんだろうが、動く車にこの狭さだ
当たりっこねぇ!」
ハク「平板持って、次接近した時、盾とフロントの
隙間あるでしょ、そこに差し込んで」
ヒロ「は……はい」
その板には上部にゴムが釘で設置してある。
ヒロ「き!来た!」
ハク「行くよ!」
接近をしたフロントと縦の部分に板を上から
刺すように入れた2人はすぐ様横のつい立てに
しがみつく。
『ドン!』荷台の後方部は歪み荷上げする取手は
落下、体を支えた2人の体は激しくバウンドする。
ヒロの方の板は上手く刺さらず弾け飛んでいたが
ハクの方は上手く間にガッチリ入り込んでいた
車は追突の威力で少し下がる。
ヒロはハクの方を見ると刺した板に掛けてあった
ゴムを持っていたかと思うと瓦礫を間に挟み込んだ
のびたゴムが悲鳴を上げる、
その先には瓦礫が結んであった。
ヒロ 「……まさか」
レイダー「……まさか」
ハク「バイバーイ」
放たれた瓦礫は盾に当たるも大きく弧を描き
フロントに当たりガラスは飛散する。
その直撃を受け助手席のレイダーは気絶
レイダー「まだまだ!」
だが走る車に取り付けられた瓦礫はゴムの威力は
少なくなったとは言え走る風は盾方向から巻き込む
形と振動で蠢く蛇の様な動きでフロントガラス
周辺で暴れまくると瞬時に運転側のレイダーの顔面
に直撃すると車は大きく半円を描き滑るように
転倒していった。
ヌク「ワシは風じゃ……」
ヒロ「前も後も普通でない……」
更に追撃の車が2台猛スピードで近づいて来ていた
ヌクはバックミラーを見ながら言った。
「もう終わりみたいだぞ……」
ヒロ「寂しそうに言わないでくださいよ!」
ヌク「ホホホ、どんな時にも楽しむ、わしの信条
アメリカ映画嫌いか?お主」
ハク「好き!」
ヒロ「いや僕も好きですケド……」
ヌク「なら楽しめ、心に余裕が出る、ため息と
同じ効果に笑うと更に健康物質も出るぞい」
ハク「険しい顔したって笑ったって、
ダメな時は同じ、生きる運命なら何したって
生き残るさ」
ヒロ「……そうか、そうかもですね何したって
ダメな時はだめ、イケる時は何したって!」
ヌク「ホホホ、手伝おうか?」
ハク「大丈夫」
爽やかな笑顔で応えるハクを見て猛追する車を
見たヒロ
ヒロ「……まだ無理です」
ハク「はいはいなら手伝って」
ヒロ「もう資材が無いですよ!
使える物といえば……持ってきた箱に入った釘は
いっぱいあるけど、木材の端とか、
投げても小さすぎてダメージいはなら無さそうな」
近づく車は普通の車だったがフロントガラスが
特殊な強化ガラスで出来た高級車だった。
ヒロ「あの車……見た事ある、
予測だけど防弾ガラス詰んでるカモです」
ハク「関係ないよん、ほら!投げて!」
言われるまま最初から作っていた物を投げる2人
その形状は『マキびし』であった。
作るのは簡単、廃材の板、形状は問わない
に、釘を斜めに三つ、どこに転がっても尖った方が
上、ないし斜めに立つ形状だ釘さえあれば
かまぼこ板だって作れる、指のサイズしかない
木だって作れる、転がろうが落ち様が
マキびしは実に効果的な追撃様武器であり
自作できるものだ。
一台の車はスピンし舗装されていた過去と違い
所々にガタガタである道に激しくバウンド、
まさに映画のような転倒していく車。
もう一台は大きくケツを振りながらマキびしを避け
大きく蛇行し更に遅れるが猛追を続ける。
ハク「最後は派手に行きますか」
ヌク「ほーほほ!ええのぉええのぉ」
ヒロ「もうついていけない……」
軽トラの中に元々積んである作業用のトラクターを
乗り入れる為の足場が2個それをヒロと2人で持つ
激しい揺れと体当たりに軽トラの後部はもう
ボロボロだった、エンジンからも無理が祟り
加速が徐々に落ちていった。
ヌク「ベルトがもう持たん、いけ!」
差し迫る車の挙動は映画でもあるように遅い
それは加速する車同士の距離感とスピードの誤差
ハク「今!」
そういうと2人は一斉に差し迫る車の前輪に向け
板を落とすとロックされる場所で留め金がはまる
火花を上げながらガリガリと音を立てると同時に
ヌクは急ブレーキ、
ハク「ヒロ飛び降りて!」
速度の落ちていた車からヌク、ハク、ヒロ3
人が同時に車から飛び降りる
敵の車は足場に乗っかり車重と軽のブレーキで
軽トラの運転席はおおきく後方を下に斜めに傾くと
敵の車は軽トラの足場に乗っかり
ジャンプ台と化した車に、まるで大空を
飛ぶかのように運転席を踏み潰しながら
大きく空を舞い地上へとスローモーションの様に
落下しフロントは潰れ、爆発炎上したのだった。
ヌク「いたた……大丈夫か?」
ヒロ「なんとか……」
3人は炎上する車を見つめている
敵が居なくなった後を中馬の3人が追走して
追いついてきた。
ヌク「後始末ご苦労さん」
中馬「……本当に彼方達だけで」
ヌク「じゃ今の車で最後ね、後はよろしく
あ、せっかく用意してくれた車もらっていくぞい」
わしらは一足先にコミュニティに行っとくから」
そう言うと鼻歌まじりに中馬の乗ってきた
車に乗り込む3人は颯爽と姿を消した。
ヌク「急ぐぞ、わしは再び風になるのだ」
ヒロ「はいはい」
ヌク(ワシの持ってきた武器は必要無かったの……)
窓を開け風を頬に受けながらも細く微笑むヌク
燃え盛る車からボロボロのレイダーが
這いでてきた、血を流し倒れたのだった。
中馬「……」
富田「行ってしまいましたね……追いますか?」
上田「かと言ってコイツらほっとく訳には……」
レイダーを放り出す訳にも行かず
コミュニティに知られる訳にも行かず
ただ今はじっと走り去る車を
見つめる3人だった……
そして始まる第一試合『誠戦』
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
Solomon's Gate
坂森大我
SF
人類が宇宙に拠点を設けてから既に千年が経過していた。地球の衛星軌道上から始まった宇宙開発も火星圏、木星圏を経て今や土星圏にまで及んでいる。
ミハル・エアハルトは木星圏に住む十八歳の専門学校生。彼女の学び舎はセントグラード航宙士学校といい、その名の通りパイロットとなるための学校である。
実技は常に学年トップの成績であったものの、ミハルは最終学年になっても就職活動すらしていなかった。なぜなら彼女は航宙機への興味を失っていたからだ。しかし、強要された航宙機レースへの参加を境にミハルの人生が一変していく。レースにより思い出した。幼き日に覚えた感情。誰よりも航宙機が好きだったことを。
ミハルがパイロットとして歩む決意をした一方で、太陽系は思わぬ事態に発展していた。
主要な宙域となるはずだった土星が突如として消失してしまったのだ。加えて消失痕にはワームホールが出現し、異なる銀河との接続を果たしてしまう。
ワームホールの出現まではまだ看過できた人類。しかし、調査を進めるにつれ望みもしない事実が明らかとなっていく。人類は選択を迫られることになった。
人類にとって最悪のシナリオが現実味を帯びていく。星系の情勢とは少しの接点もなかったミハルだが、巨大な暗雲はいとも容易く彼女を飲み込んでいった。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
青い星の管理人
孤太郎
SF
大宇宙にぽつんと浮かぶ青い星。
そこには80億人もの人間たちが住んでいる。
湾曲した星の表面には幾つもの国家が存在し、多種多様な文化圏があり、幾つもの言語があり、
肌や目の色が違う人種が各々の生活を営んでいた。
だが、そこは星などではなかった......。
球体上の世界ではなく、広大な平面世界の一画にある収容所と呼ばれる施設の中だった。
施設の外周は分厚い氷の壁で取り囲まれ、内側に住む人々は外の世界の存在を誰も知らない。
地図上にある陸地や海が世界の全てだと思い込まされていた。
壁の内側に住む人間たちは囚人と呼ばれていた。
収容所の外側にも世界があった。
そこにも多くの人間が住んでいた。
そこで生まれ育った好奇心旺盛なひとりの若い女性が旅に出る。
彼女は一般人には窺い知ることができない収容所の中を見てみたいという一心から収容所の管理人となる。
年に一度の内部監査で収容所の中に入ることができるからだ。
収容所内を分割統治しているのは外の世界から派遣された(看守)と呼ばれる工作員だった。
所内にいる六人の看守たちを訪ねる一風変わった出張旅行が始まる。
彼女は目を輝かせて入ってゆく、収容所の中へと......。
そこで目にするあらゆるものが彼女の心の奥深くまで浸潤し、次第に魂が変容していく。
初めて対面する見知らぬ自分......、
触発され浮き彫りになる自身の本質......、
所内で繰り返されるおぞましい洗脳......、
迷走する彼女の目に映る異世界は楽園なのか、それとも奈落なのか......。
囚人と呼ばれる人間たちは何者なのか......。
連載長篇小説 青い星の管理人
関白の息子!
アイム
SF
天下一の出世人、豊臣秀吉の子―豊臣秀頼。
それが俺だ。
産まれて直ぐに父上(豊臣秀吉)が母上(茶々)に覆いかぶさり、アンアンしているのを見たショックで、なんと前世の記憶(平成の日本)を取り戻してしまった!
関白の息子である俺は、なんでもかんでもやりたい放題。
絶世の美少女・千姫とのラブラブイチャイチャや、大阪城ハーレム化計画など、全ては思い通り!
でも、忘れてはいけない。
その日は確実に近づいているのだから。
※こちらはR18作品になります。18歳未満の方は「小説家になろう」投稿中の全年齢対応版「だって天下人だもん! ー豊臣秀頼の世界征服ー」をご覧ください。
大分歴史改変が進んでおります。
苦手な方は読まれないことをお勧めします。
特に中国・韓国に思い入れのある方はご遠慮ください。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる