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evil

クリス35 エピローグ

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ーードロアの研究施設内

ドロア「……私には私の……いっ……いや
何でもない……が礼を言う……」

治療の為にガラス越しの円筒で出来た治療用保存
カプセルの液体内で横たわるクリス
その周りににイルガ、黒兵、そしてラルは居た。

イルガ「クリス、よくやった……
お前は確実に人類を救ったのだ、
最高勲章を与えても足らない功績だ」

ラル「命あっての功績だろうが……金も名誉もな」
返せない言葉に押し黙るイルガではあった、そんな
事は彼も重々承知、だが掛ける言葉は彼への
温情でありたい思いから出た言葉だった。

黒兵「……彼にはもう助かる道はないのですか?
此処の研究施設なら……私は彼に生きて欲しい、
何とかならないのですか教授!」

俯きしばし黙る教授は辺りを見渡すと
ゆっくりと口を開いた。

ドロア「助かる道は無い事はない、
だが保証は出来ない、放射能での遺伝子の
損傷が激しいでな……クラスターとしての道も
こう傷んでては……」

イルガ「……ではお願いします」
ドロア「いいのか?何も聞かずに」

イルガ「聞いた所で我々の理解する所で
はないでしょう……彼の戦い方は守るべき家族の為
ならばクラスターであろうが何であろうが
生きる事を彼は望む筈ですから」

ドロア「そうか……そうだな」
「だが時間はかかる、簡単に言うと細胞分裂の際
遺伝子に傷が付くと、コピーされた次に細胞もまた
傷がつき病気や疾患を起こす」

「故に今現存する正常な細胞を体から取り出し
全ての体全体の細胞を取り替える」

黒兵「そんな事できるのですか?」
ドロア「わからん……ワシも初めてだが、
この施設の装備ならあるいは」

「多幹細胞を使い心臓、胃、肝臓等、内臓を
そっくり作り替える、移植全てを行う、
脳は搭乗型の様に別で保管、ないし生命活動を
維持できるのは知っての通り完成しておる
それにもう直ぐ完成と言われておるアルツハイマー
型の治療方法は知っておるか、あれは失われた細胞
を復活させる事が出来ると言ったものだ、脳が
記憶する情報は脳の分野に左右はされておるが
その情報はあらゆる電気信号で管理されている
細胞が一つ一つ記憶していると言っても
過言では無い」

「もともと指や手、腎臓一つとっても
その動きや肯定は習ったっものでは無い、そして
動きに不備が出た場合、それを改善する
プログラムが遺伝子の中に入っておるからだ
傷が多少なら元の状態に戻る、これもそうだ
大きい怪我である場合体はその機能に自然と
優先順位をつける、多少ならば元の状態、それは
隣の細胞が隣の細胞を記憶しているからだ
傷が深い場合基本機能を失わない為、傷を残し
修復機能を優先する事により傷が残るのだ」

「その信号を妨げ、優先順をこちら側で操作する
と言った具合いだ、近年、人の寿命を伸ばすのに
人類は二千二十年頃までは病気を克服する事により
伸ばしてきた、昔は盲腸でも助からない命じゃった
からな、そしてそれは細胞学に移行し、
細胞そのものの活性化、コピー、そして修復により
発展してきた、例えば血液だ……」

「血液は理論的に証明されている、そうだな国の
重要人物の寿命は今や200年はくだらないだろう
これも2020年、若い血液を入れ替える事により
若返る実験は既にマウスで証明されていたな」

「総合的に全ての工程を同時進行する
そして最終的にはその脳をも取り替えるのだ、
記憶は脳からの夢や右脳左脳からの情報を電子化
させ記憶として外部コンピューターに保存、
それを新しい脳にすり込む、大半の情報は失われる
だろうが……人を超える脳のコンピューターは近年
開発はできておる、無論この施設にもそれはある」

「一つは直ぐに脳に情報を引き出す事も行う
睡眠時に催眠術の様に幼少期からの情報を引き出す
人が生まれて記憶に残る確変期を中心に
特に幼少期の思い出はその人物の根本的なベース
その記憶を問いかけ夢で出た映像を此処に
記憶させるそれを元に復元していくのだ
脳に電極を繋ぎ視力を失ったものでも目が無くても
外部の視界が蘇るのは知っておろう、
それを逆で行い映像化させる」

黒兵「……」

ドロア「難しいか、これは後々クリスと関わる
可能性のあるお前達にはある程度理解
してもらわねばならぬ、記憶の断片が抜けている
部分はお前達が同時にワシから送る情報を基に
クリスという人物と関わり、記憶を埋め込むのだ」

「もう一度部分を抜擢していう」

「完全にこれができるには後少なくても500年は
かかるだろうが……完璧ではないが
出来ない事はない……肉体も総入れ替えだ
細胞自体は本人のものである為、拒絶反応も
少ない可能性もある。血管や神経はお前達も
見たことがあるだろう、2018年に開発された
指が生えてくる治療法だ、隣の細胞は隣の
細胞を記憶している、後は血が流れるのを止める
よりも細胞分裂の速さを上げるのだ、これにより
応急処置を体がしようとするよりも早く元に
戻す事ができる、細胞はおろか爪なども忠実に
再現可能だ、あれから時は経ち、飛躍進化した
今なら細かい移植をせずに全てを揃える事が出来る
多幹細胞が臓器を作るまで、こいつには
冷凍保存で我慢してもらう、全てのパーツが揃えば
それを各部位の内臓から神経や筋繊維を自らで
生成しクラスターでは無く人間として蘇る可能性は
ゼロではない」

「この方法はクローンに近い……むしろクローンで
あればそう難しくはないが……」

「クローンについては……」

イルガ「全てを語らなくても皆理解しております」

ドロア「……そうか」
黒兵「教授も少し変わりましたね」
ラル「いらねぇ事言ってんじゃねぇよ、それに
クローンは別人格だ、どんなけ化学で本人と
言っても奴じゃねぇ、これだけはハッキリ言える
奴自身を復活させねば意味も真理もねぇ」

「後、こいつの家族の処遇だが俺は外で聞いたぞ
アイツら俺達に恩賞などくれてやる気は更々
ねぇぞ、それにこいつの家族、軍が押さえたとも
聞いた、どうなってんだ」

黒兵「……私もさっき外部連絡を
取ろうとしましたが失敗しました、この施設の
妨害電波のせいではありません、特定の軍が使う
周波数のみ妨害されています、それを知っている
つまり外の連中の仕業です」

イルガ「それについてはまず外の部隊と合流した
際の非礼を心から詫びる……ラル」

ラル「気にしちゃいねぇよ……よくある事だ
そう……よくある事なんだ俺たちみたいな者はな」

黒兵「それでお前これからどうするつもりだ
さっき変な事言ってたな」

ラル「あぁらしくなかったな……でも本気だ」

イルガ「……いいのか、お前の存在はこの世から
消えてなくなるのだぞ?それがどう言う意味を
なすか理解はしているだろう」

ラル「あぁ……そうだな、俺が1人外へ出て行った時
俺も色々考える事があってな、俺と言う存在が
この世の中ではなんも意味がねぇって事に」

黒兵「生きる事に意味が無いなんて事はないぞ」

ラル「慰めはいらねぇよ、真実は真実だ言葉で
納得できるもんじゃねぇ」

「それに……俺の人生の中で信じられる者が
居るって事がどんなに価値があるもんか知った
親に捨てられずっと他人は敵だと思ってた
仲間さえもな、そしてそれは真実だった
それが俺の生きてきた人生だ」

「のうのうと生きてきた奴には解らねぇだろうがな
犯罪によって得られた国籍って俺も外に出るまで
知りもしなかった……だがまともな国籍も無ぇ
職も夢を持つ事すら出来ねぇ、選ぶ選択は……
分かるよな、何もかも生まれた時から無ぇんだ」

「お前らより俺は……蜥蜴の気持ちが分からなくは
無い、俺も奴と同じ道を辿ったら……
きっと同じ事をした悪いがそう確信してる」

黒兵「お前……」

ラル「この世にはな、そう言った奴がごまんといる
これだけは忘れんな……愛情や友情なんて甘いもん
欠片もねぇんだ、どんなに寒かろうが、暖かい暖は
自分でもぎ取り奪うしかねぇ……全ては生きる為だ
その背後には常に人生の終わりが張り付いてんだ」

「弱いものは淘汰される……人を信じるな……
例え側にいる人間が助けを求めよううが
それを踏み台にして笑う事がこの世の理だと
実際そうだった……そうやって社会や人、
大きさは違えど人が集まれば縮図が変わろうが
やってる事は皆……同じだ」

「俺は何も信じない、俺自身もだ……未だ俺が
した過ちや行いを俺自身が許せない、そんな
甘い俺に腹がたった、だが同時に自分を
納得させなきゃ未来は無い」

「筈だった……」

「通り過ぎる命は過去数え切れないくらいあった
それこそ普通の人間らしく通り過ぎる当たり前の
寿命に他人事、俺が痛いわけでもねぇ、俺は
そうならない為に……上手く言えねぇわ」

「モスが最後に言ったろ、俺は恨まれて妬まれて
蔑まれて生きて来た、モスだけじゃねぇ色んな
奴等にな……」

「だがコイツは違った、この場で何人もの命
背負って来やがった……あまちゃんにも程がある
俺は俺の命で精一杯どころかそれしか無かった、
俺とは違うコイツが俺ので出会った中で
一番嫌いだった、俺の全てを否定する存在
そしてそれに何回も救われた……」

「一個しかない命なんだぜ?馬鹿だろ、だけどな
コイツから受けたものは暖かかった……
学がねぇからよ、上手く言えないが」

イルガ「上手く言う必要などない、言葉より
思いが伝わるのが本音だ」

「生まれて25年……ずっと氷の世界にいる
みたいだった、暖はあっても胸の中はいつも
寒かった……気晴らしに教会へも何ども足を運んだ
だが……いくら祈っても答えは返しちゃくれねぇ」

「蜥蜴に針打たれて意識が朦朧とした時、ハッキリ
わかった事がある、アイツの目俺を真っ直ぐ
見やがった、薬のせいだろう、アイツから発する
言葉はひでぇもんだった、それこそ殺意しか
湧かねぇ位だった……だけどどこか違和感は
感じていた、コイツが……?そして奴は口を閉じた
そしてただ俺を瞬きもせず見てたんだ」

「俺を信じて疑わない目でよ……言葉じゃねぇ
そん時思ったよ……俺自身とコイツ
どちらが信じられる、そして信じたいかって……な

イルガ「……」
黒兵 「……」
ドロア「……」

ドロア「……早速始めようか、ラル時間は無い」
ラル「あぁ……」

黒兵「何をするん……」
イルガは言いかけた黒兵の言葉を手で遮った。

イルガ「俺たちも行く、ラル達者でな、
いつかまた会おう」

ラル「あぁそうだな」

クラスターに連れられドロアとラルは研究施設内部
へと姿を消した。

イルガ「俺達は俺達の為すべき事をするぞ」
黒兵「……はい」

出口のハッチが再び開き久しぶりの眩しい朝日が
差しこみ、思わず手でそれを遮った
視界がハッキリ見え始めると指揮官が率いる軍が
敬礼をし迎えていた。

黒兵「あれ?ラルから聞いた状況と違いますね」
その場には指揮官の軍の他日本の自衛隊が
待機していたのだった。

悔しそうな顔をしながらも無理やり作る引きつった
笑顔で指揮官がイルガの前へ立ち敬礼をする。

指揮官「ご苦労だった……資料は回収済みだ」
顔を近づけイルガだけに聞こえるように囁いた
「運がいいな……だが次はない、いついかなる
ミッションでもお前をいつか蹴落としてやるわ」

イルガ「……」

自衛隊の指揮官が前へ出た、そして一斉に敬礼

それを割って出て来た政治家の秘書が
イルガの前に立つ、

秘書「私は日本の栗栖総理大臣の秘書をさせて
頂いております高月圭吾と申します、
この度、総理大臣の子供であるクリス殿をお迎えに
上がりました」

黒兵「クリス?総理大臣?の息子??」

秘書「そうです公には出来ませんが確かな情報を
下にこちらに参りました、政治的配慮から詳しくは
話せませんが……」

「で、何処におられますか?」

黒兵「あの……」
イルガが前に出て秘書に向け話し始めた。

イルガ「彼は内部の戦闘で負傷、動かせない状況に
あります、此処に私の部下を置いていきます、
身柄及び安全は我が国が保証します、それを
総理大臣にお伝えの旨、国に確認と許可を
お願いいたします」

秘書「……わかりました、イルガ軍曹ですね
お話は常々聞いております、貴方の保証なら
信じれるでしょう、私から総理大臣に
お伝えしておきます」

互いに敬礼を交わし迎えのヘリに乗り込んだ2人
訳のわからない状況に困惑する黒兵がイルガに
話を聞こうとしたが、イルガが放った言葉は

「知らない方がいい事もある……がお前も枷を
背負う事になる、それでも聞きたいか」

黒兵は頷いた。

だがその思い口から言葉が出るまでには
時間を要した……

施設内部
ドロア「いいかイルガが作った時間は一年だ
この間にお前の顔を整形しクリスの顔にする
お前はクリスとしての生を生きる事になる
そして本人が治療を無事終えられた時、ラルと
言う人物はこの世から消える事になる……
いいのだな」

ラル「やってくれ……これしか道はない
クリスの家族を守るにはイルガの協力と本人の
素性そして日本の協力が不可欠だ、
家族をマフィア、軍、全てから守る為に」

「それによ……コイツの代わりに日本に行けるんだ
総理大臣の息子だぜ?楽に生きれるチャンスって
もんだろ」

戯けて笑うラルだった。

ドロア「そんな楽なものの訳が無かろうが……
隠し子であるクリスが必要な事態だ、裏があるに
決まっておる、恐らく……私の研究も急がねば
ならないようだ」

ラル「……だろうな」

「ともかくだDNA検査は教授の知り合いと
イルガが何とかしてくれんだろ?」

ドロア「それは問題ない……あちらはどうも本人か
どうかはどうでもいいらしいが……建前上だろう
裏は読んでもキリがないほどあるが
全てが何かある」

ラル「……そこから守るのも俺の役目だ、
上手く行かなくても俺が消えるだけだ、本人は
生きてる、後の生き方はクリス自身に決めさせろ」

ドロア「……何故そこまで」
ラル「おっさんは人に心から信じてくれる友人や
恋人、家族ははいたか?」

ドロア「……」

ラル「なら言う事はわかる筈だ……
俺はあの暖かさもう知っちまった……
もう前のようには戻れねぇよ
あんな寒くて……苦しい生き方はな
なら俺は温かい方の苦しみを選ぶさ」

「いいか俺の事はクリスが治っても絶対言うな
俺は奴が復帰した時点で姿を消す
これが俺の人としての最初で最後のケジメだ」

ドロア「悲しい男じゃな……」
ラル 「おっさんもな……」

こうしてイルガ・ラル・ドロアによる裏工作が
始まった。

ラルに施された手術は見た目をほぼ完璧にクリスに
近づける、もともとロシア特有の白い肌は共通
そこに人格を埋め込むと言う奇想天外な物だった

クリスの脳から映像化した記憶を一時的に
脳の活動を著しく低下させた状態、つまり記憶喪失
状態を作り出しラルの脳へと流し込む、
それを何ヶ月もかけ行う事で本人には
あたかも自分の記憶と変わらず埋め込む事ができる
それは本人にとってもどちらが自分の人格かさえ
判断しかねる程に、合わせ筋肉をコンピュター解析
を行い電気として筋肉を刺激する事により走る
記憶は記憶としてではなく実体験となる、歩く時は
歩く、苦痛の記憶には苦痛を機械的に与えるのだ。

これにはクラスター半分の人数での作業となったが
彼等もこの戦いを見、意欲的に行なった
だがこの試験もなた愛情や同情だけとは言えない
部分もあった……

脳を保存そして本人とし生き返らせる事は
国の代表や要人にないかあった時、代替えではなく
本人をクローンではない物とし緊急時には政治
ないし危険から統括できるものを作る事も含まれる

そうして肉体をも複製する事により人は永遠の命
そして原発国が増える中、被災者支援という名目も
ありその賛否は分かれる、故の極秘プロジェクト
でもあった……

いかなる非人道的研究も言葉や論理で正義にも
悪にもなる、非人道的という言葉は人という字を
使う人が決めた道理は人によりどちらにも解釈は
可能だ、裏で行われている実験や戦争兵器
誰もが何を開発していたか最初からわかっている
情報なぞ殆どない。

人は何処に向かい何をしたいのか……

イルガ「2人はもう俺にも区別はつかないだろう
3人で話し合った後、俺は教授と話した
再生の確率は良くて30%出そうだ」

「故に……ラルには語ってはいないもう一つの方法
それはラルとクリスの脳を取り替える、その上で
記憶を混濁させあたかもラル自身が本物のクリス
として生きる選択だ」

黒兵「そんな事出来るのですか!」

イルガ「キメラが作れるのだ、それに正常なDNA
を基に体を複製させて記憶を埋め込む方法も
言っていた、これなら……本人と変わらん」

黒兵「だけどそれではラルの意見が!」

イルガ「選択肢は教授に委ねてある、目的は
あくまでもクリスという存在をこの世に留める
事だ……それしか彼の家族を救う手段は無い」

「軍は存在しない者、身内の居ない彼の功績を
消すだろう、その意味はわかるな」

黒兵「そんな……」

イルガ「……」

「上手くいけば日本が彼の身柄を保証する
そして家族への恩赦もあるだろう、それは
同時にマフィアの縁も切れる事になる」

黒兵「俺そんなものの為に命かけてるんですか」

イルガ「いいか裏があろうが無かろうが、お前の
家族、そして人々の為、活動は無駄ではない
大きな組織になれば表立った正義の裏には
同じ大きさの闇が存在する」

「俺達はそれを行い、上がそれを使役する
こうやって社会は成り立つのだ、後は上の判断が
間違わないかを祈るしかない」

黒兵「……」

イルガ「だが……間違った道に人類が走れば
それはもっと大きな間違った力により破壊される
だろう、そうならない事を祈ろう」

黒兵「祈る……しか無いのですか」

イルガ「……」

こうして時は経ち、クリスとしてラルは日本の地を
踏んだ……いやそれもクリス本人かそれは当人
さえも知る由がなかった、人を入れ替えるという
事を意図的にするには本人にもわからない様に
する事が重要だと教授は言った……
それはどちらかがダメになった時、本当の意味で
本人となる為に……











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