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evil
クリス32 ざわめき
しおりを挟む暴行を加え続ける兵達にただ体を丸め無抵抗な
ラルだった、浴びさられる暴行の行く先は
人種差別や格差、そして兵士達の憂さ晴らしに
人を使った『遊び』でもあった。
歪んだ社会の中ではよくある事だ、皮膚の色、国
また格差や学歴、世界ではどこにもあるありふれた
状況でもある、ネットの中、法が届かない場所
男と女、会社や学校問わず、最後にあるものは
持つものがもたらざる者への虐待だ……
その力はお金や皮膚、国、そして暴力、歪んだ正義
力は色んな姿に変え人は人のみならず
全てのものへと愚かなる力を振るう。
真理なき暴力に理性という壁はいとも簡単に
破壊されるものだ……
ラル(殺す気か……)
執拗な暴力は続きラルは地面へと這いつくばった。
「クソ野郎が……」
兵「どうだ、此処には弁護士も警察もいねぇぞ?
元々人権なんかお前には無いけどな
ほら、俺達に命乞いしねぇと殺されても仕方ねぇぞ
お前みたいな蛆虫がこの世にいるから世の中が
よくならねぇんだよ!」
(俺には何も無い……お前ら守るものがあるから
兵士やってんじゃねぇのか……少なくともモスや
イルガ、クリスは守るものの為に戦って来た
そういや中でもソレは生まれたんだよな、
クリス、今お前が戦ってんのはシルブァや
ボルドの為でもあったな……)
兵「おら立て!お前の命の価値なんざねぇ」
拍車の掛かる暴力は這いつくばるラルの顔を
足で踏みつけた。
(俺には何も無い……理念も、心情も
守るものさえも、目的の無い俺は
奴等の言う通り価値なんかねぇわな、何もない俺は
コイツら糞より価値がねぇ……確かに
だが、んな事は俺が一番わかってるさ……)
ラル「ゲホッゲホ」
目は腫れ左目から見える景色がボケた
世界を映し出す額から流れる血も生暖かく感じる、
イルガの心配をした兵がラルを起こそうと手を
差し伸べるがそれを払い退けラルはフラフラと
しながらも膝に手を当てると立ち上がった。
「よぉ……お前らに質問だ」
『お前達は何の為に戦う』
兵「国の為に決まってんだろ馬鹿かコイツ」
ラル「んなお決まりのセリフなんざどうでも
良いんだよ本心はどうなんだ、あの上官だ
本心歌っても咎められる所か本音の方が喜ぶぜ」
兵(確かに、指揮官は実績主義だからな、今も
私怨に囚われているが任務には忠実だ……
此処は素直に吐いた方が利益とも言えるな)
側にいた指揮官が拍手をしながらラルへと
近づくとこう言った。
指揮官「面白い事を言うな、ラル、皆、私は
実績主義だ、結果さえ出し私に忠実であれば
主旨や理想論など無駄なものは吐き捨てても
良いぞ、言ってやれ」
腫れた目でも指揮官を睨むラルの口が緩んだ。
「たまには良いこと言うねぇ……」
兵「そう言う事なら、言わせてもらうぜ!
俺は職業だからだ!やりたくてやってんじゃねぇぞ
おら、告白一つ目だ!」
兵はラルの腹を蹴り上げた。
指揮官「選んで来たものばかりでは無い、
そんな事はどの社会でも常識だ、与えられた仕事を
こなせば私は文句はないぞ」
それを聞いた兵達は此処ぞとばかりラルに群がり
始めた、憂さ晴らしに嫌悪感を抱く兵達もだった
普段上官の前では口が裂けても言えない事を
堂々と言える快楽に皆酔いしれるように。
特殊任務の未知への対象物の戦闘になるかも
知れ無い恐怖と言うスパイスと
快楽が理性を上回ったのである。
指揮官(兵達のストレス解放に私の指揮にも良い
影響が出るだろう……ふふふ部下の信頼も得る、
これもまた人を操り出世に繋がる、馬鹿な者は
お前らも同じだ、これでイルガ射殺に反論する者
も居なくなるだろう)
指揮官は兵達に本音を吐露させ互いの言っては
ならない証拠を握りこの場を掌握していた。
懐には音声録音器を忍ばせていた、
これは無論自分の会話を入れず兵達の言葉のみ
録音されていた。他の兵士には無論そんな機器は
彼が持つ事を許す筈もない、指揮官の立場を利用
する彼の出世の術の一つだった。
邪魔者は消す、それが彼のやり口だった。
兵「次は俺だ!俺は銃を撃ちたかった!
そして合法的に人を殺すことが出来る、殺す事が
更に英雄となんだぜ、金に名誉、欲望!
良い所取りだ!その場所も軍が提供してくれる
願ったり叶ったりだ!そら!告白二つ目だ!」
兵はラルを無理やり立たせ顔面に拳を叩き込んだ。
指揮官「素晴らしい、そうだぞ戦争は
『人を殺す事以外目的は無い』のだから、
その意気込みで活躍してくれ、そこに理性は
要らない、あるものは倒れ、無いものは立つのだ
それをけしかける連中は政府も含め民間人も
有り余る程、大量に居る」
ラル(……クリスなら殴りかかってんだろな、
こんな俺のようなクズ相手でも俺を
守ろうとするんだろうな、へへ馬鹿な奴だからな)
兵「俺もだ!戦争となれば法や秩序なんてネェ
いつかそん時が来たら勝てば官軍、好き放題だ
女抱きまくって法で守られてるやっちゃいけない
事が平気で出来るんだぜ?こんなパラダイス何処に
あるよ!おら!立て!告白3つ目だ!」
指揮官「命をかけて戦う兵の恩賞は太古から
相場が決まっておる、負けたものの命は勝った者の
ものだ、その場では法も秩序も無い、犯罪など存在
しない、お前の趣味などどうでも良いが、それが
出来るのは戦場のみだ!
お前の選んだ道はお前の欲を満たすだろう!」
繰り返される暴力が続く中、指揮官は兵を
押し除けラルへと近づき、這いつくばり口から
血を流すラルの顔を上げ耳元で呟いた……
指揮官「私はな……本当は弟の事なんざどうでも
良いんだ……お前ならわかるだろう?
兄弟が愛し合うなんざ、皆が皆同じ理論では
生きてはいない事位はな、本心を言うと
実はな次の会議で、イルガの出世の
話が来ておるのだよ……このままだと私と同等の
地位になる可能性があるのだよ、困るだろ?
奴は人望が厚い、このままでは私を追い抜くかも
しれないからなぁ、雑草は抜かないとな」
ラル「……」
指揮官「この作戦、私は志願してここにいる
兵も私が厳選した、特殊任務だからな、
ここにいる奴らは皆問題のある兵ばかりだ
大概は消えても問題視もされる事は無い
故に私も兵を掌握するにも手を焼いておってな、
功労者に本来はこんな野蛮な事は軍でも
しないのだがな、運が悪かったなラル
ここは特殊な任務に場所……研究所から出る
妨害電波のお陰で本部にも状況は掴めないのだよ
それ位危険でそして自由なのだよ」
『法が届かぬ場所、そこは悪魔が法律なのだよ」
俺はシルブァの言ってた言葉やボルド、教授の話を
思い出していた……どちらが人か、クリスの
言ってた言葉や行動の真意に
少し触れた気がしていた。
指揮官「そういえば資料の読み忘れがあったよ……
お前、家族もいないのか、つまりは天涯孤独て
やつか、此処でくたばっても何も問題は
ないんだよなぁ……」
嫌な顔でニタつく指揮官の顔の唾を吐きかけた。
冷静にポケットからハンカチを取り出しラルの口に
それを捻り込んだ。
「ラル君、君の功績は素晴らしい、褒賞当然の事だ
私は君に感謝もしているよ……君の事は軍本部にも
必ず伝えておく、国籍の無い君にも褒賞は当然
与えられるだろ」
ラル「……治療費も上乗せしとけよ」
指揮官「あぁ勿論だ、私の指揮も上がった、
邪魔者も消せる状況も君達のお陰で出来た……
更に褒賞まで私に与えてくれるのだからねぇ」
ラル「……どう言う事だ」
指揮官「……君がこの場で消えても誰も探す手立ては
無いと言う事だ、なんせお前自身犯罪歴を
消せと言った、私はそれを喜んで上部に伝えよう
だがそれを失った時、犯罪を犯し事務処理上、
無理矢理作らられた国籍までお前は失う事に
なるのがわからないか?この世から消えるんだよ
お前自身の存在が、色々と調べはついている、
隠し口座もな、そこに金を約束通り入れておく、
そして引き出すのは誰かな?」
ラル「……」
「そんな事出来る……」
指揮官「シッ……出来るさ、私には国がついている
それにまともな口座をお前が作れる訳はない、
つまりマフィアが用意した口座だろ?
金を握らせればマフィアの口座などいくらでも
操作できる、隠しであろうが元は表に出せない
金だからな2千万でも渡せば容易だろう、それに
お前の褒賞は2億は下らない、残りは私が
いただいておく」
指揮官は脇にさした短銃をラルの手元に放り投げた
そして言った。
「おっと銃を落としてしまったな……」
ラル「……そう言うことか」
指揮官「察しがいいな、馬鹿では無いようだ
だが選択肢は少ないぞ?」
「一つ、その銃を取りこの人数相手に
銃撃戦をするか」
「一つその銃で自らの頭を撃ち抜くか、おすすめは
それだがな。私も助かる」
ラルは銃を見つめ……そして指揮官を見た。
ラル「……俺は中に戻る」
指揮官「なんと!第3の選択肢があろうとは!
素晴らしい!認めようでは無いか!上にはこう報告
しておこう、勇敢なラルは仲間を見捨てられず
我らの懸命な説得虚しく中へ戻って言ったと……
そして行方不明となる……か遺体が見つからぬ以上
約束の金は送金される事となり全てが上手くいく
ゾンビ相手に遺体など見つかる方が難しいからな」
拍手をしていると部下の1人が銃を持ってラルに
手渡し呟いた。
兵「守れず、すまなかった……戻るのか、隊長の事
頼む、この最新式の対変異生物特化型の銃を」
手渡そうとした銃をおもむろに指揮官が取り上げ
兵に小声で怒鳴った。
指揮官「馬鹿か!こんな物渡して生き残ったら
どうする!」
兵「しかし……何も物資や武器を渡さず帰ったら
整備担当から報告後、彼に何も渡さなかった事が
証明されバレると都合悪くなりますよ」
指揮官は少し下を向き呟いた「それもそうだな」
「では対戦車ライフルを渡そう、これなら充分な
火力もある」
そう言うと銃を支える土台部分を足で踏みつけ
使えなくしてラルへと渡した。
指揮官「ありがたく受け取れ、反動が大きいから
その手では撃てないだろうが気を付けろよ」
ラル「……ご丁寧な事だ」
「お前さっき落とした短銃、
弾入って無かっただろ」
(今は助かる道はこれしかねぇか……)
そう思うも彼の心は中の地獄へ戻ることに
安心感を少し感じていたのだった。
指揮官「さぁな」
その時、隔壁のドアが閉まり始めた、地響きの様な
音を立て巨大なドアは少しずつ地獄への道を
閉ざしていく、それはまた、クリスの搭乗型の
手から蜥蜴試験体が離れた事を意味していた。
ゆっくりとふらつき歩くラルに指揮官は
逃亡すれば撃てとの指示、兵は常にラルの背中向け
銃先を向けそれを見守った。
だがラルは指揮官を睨み見た後、
細く微笑んだかの様な仕草を見せた、
そして再び正面を向いた時、迷いがないかの
様に全力で走り中へと姿を消した……
指揮官「……誰も此処からは生きて帰さない」
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