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evil
クリス27 バイオ兵器
しおりを挟む彼は泣いた、大声で……
そして下を見続け
そして
立った……
クリス「……ドロア見てんだろ」
「俺は行く……彼女の為にお前の都合のいい様に
動いてやる!
それがシルブァの想いを紡ぐ事になるからな……」
「俺が倒れなきゃ転移はしねぇんだよな
この命、シルブァ……ボルドが乗っかってんだ
ゾンビになっても友が成そうとした事は
この俺がやり遂げてやる」
「その後なら俺もゾンビとしてお前の実験に
でも使え」
ドロア「……その必要は無い」
「ワシからのシルブァへのたむけだ……
お前が意識を失っている間に血液を採取し
数少ない抗体を搾取しておいた、それを培養し
既にお前の体内に入れておいた……」
「助かる確率は五分五分だったがな、
お前は生き残った……
主の気持ちもあっただろう、通常大量の強化抗体を
体に慣らさず大量に入れて無事である可能性は低い
体の細胞をも破壊しかねないからな」
クリス「そうか……」
(最後まで2人に助けられたのか……)
ドロア「……西だ、西へ行け」
(すまぬシルブァだがこうするしか手は無い
ワシはお前に恨まれようが成し遂げならねばならん
彼を帰れぬ道へと誘おうがな……)
クリス「お前の指示に従う、だから彼女の事は頼む
ゾンビに喰わせるんじゃねぇぞ」
ドロア「……了解した既にその場所への通路は
一つを除き他のクラスターゾンビに封鎖を命じ
完了済みだ」
「西に向かい放射能管理室へ迎え、
そこに作業用のパワーアーマーがある、
だがその施設へ辿り着く前に……」
クリス「……言え」
「俺は彼女の生きた証だ、俺の成すことは
シルブァの成す事だ……必ずやり遂げる」
ドロア「……」
「その施設前に通らねばなら場所がある、
そこへ続く通路は大量のゾンビにより破壊され
瓦礫で埋まっておる、撤去する時間は無い」
クリス「で?手があるから話進めてんだろう
手早く言え」
ドロア「そうだな……先ずはそこから
100メートル程進んだ場所にBETA保管庫が有る
其処にバイオ兵器の試作物がある、
其れに乗り込み、東へ進め、貯水庫がある
破壊された貯水タンクの下は地下水脈と繋がって
目的の場所へと続いておる」
クリス「了解だ」
そう言うとクリスは立ち上がった……
そしてシルブァの方を一度振り返る、子供の様な
悲しい目をした彼の目は再び前を見据えた時
クリス、シルブァ、ボルト3人の魂が篭った力強く
そして冷たい目をした彼がいた。
バルグ「教授、強化抗体が過剰摂取したにも
関わらずあの人間が生きている事が私には
未だ信じられません……先程言っておられた
彼の気持ちとは……」
ドロア「……そうじゃな、人が瀬戸際を迎えた時
最後に必要となるものは何じゃ」
バルグ「……体力かと」
ドロア「正解であり不正解だ、ワシも信じては
おらん力だが稀に100ある体力を使い切った
人間でもこの世には生還する事例はたくさんある
バルグ「精神力による細胞の活性化ですか」
ドロア「そうだな……現実にある力は認めねば
ならんな」
(人の力を超えるもの、そしてそれは単体では
発揮出来ない人の力と言うやつか……)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シルブァに託されたドラグノフを手に彼は前を
見据え駆けた。
狭い場所でのライフルは不利しか無かった、
だが迫りくるゾンビを卓越した腕と経験でいなす。
託された武器を使い難いと切り捨てるのではなく
その思いを力に変えライフルという武器に
執着と決意を込め、邪魔な固定観念を捨てる、
それはただの固執なのだろうか……
今の彼には全てがドラグノフを使う理由にあった。
通路の曲がり角に差し掛かると人影が角に映る。
クリス(ゾンビ2体、影が長い、そして薄い
距離は5メートルってとこか……そして通路の先は
火があると言う事)
近く落ちている小さな瓦礫を拾うと曲がり角に
向かい跳弾する様に角度をつけ投げ入れた。
音に反応しゾンビ背後を転がる瓦礫方向を2体の
ゾンビは見た、それを鮮明に映る影と投げ入れた
見えないまでも己が投げた瓦礫までの距離、
そこに重なる影で敵の正確な位置と距離を
察知する、素早く動き通路にいるゾンビに姿を
クリスが現すと既に狙いが正確なドラグノフの
銃口が静かに火を吹いた。
2体の頭が重なる様に撃ち抜く、ライフルの
貫通力を生かした弾の節約だ、彼はこれを
ホラーゲームで培った技である。
火を掻い潜りドロアの指示もありダクトも使い
目的地へと到達する……
ロックを解除しドアを開けると其処にあったモノを
見たクリスはしばし立ち竦んだ……
「何だこれは……」
其処に存在していたモノは5メートルはあろうかと
思う巨大なゾンビの肉体である、先程の戦いの
ゾンビよりも遥かに大きい巨軀だった。
ただ大きいだけでは無かった、複数の機械に
繋がれたソレは体と頭は離れ、
何やら至る体の部位に配線や管が複数付いている、
近づいて良く見ると首の付け根に鉄板の様なモノで
結合部を覆っている……頭の付け根部分の首にも
同じ様な鉄板が付いていた。
身体部分の血管には横にある培養液の様なものに
多数繋がれており、おそらくは体の機能を維持する
為の点滴みたいなモノなのだと予測される。
頭部分にも然り。
背中に回ると大きく背骨に縦筋が入り有袋類等と
綺麗なモノでは無くまるで内臓器官へと人が
入れるような感じであった。
ドロア「その中へ入れ」
クリス「……入れるのか」
ドロア「無論、その為の器だ」
「その入り口は人間で言う肛門や性器といった
構造だ、内部は内臓だ、人の構造上、内臓へと直接
繋がるにはそれが一番良いからな、お前の動きは
直接中にある電極板が改造ゾンビと同じく、
お前とこの器と同調するのだ、
お前が体を動かす様にこの内部に入れば電極板を
通じお前自身がその器の脳となり
自由に意思で動かせるのだよ」
クリス「こんなものまで作ってやがるとは……」
ドロア「生命維持に頭は必要だからの、今は機能を
損なわ無いために頭と繋いである、頭はそのまま
にして乗り込め、お前が内部に入れば優先順位は
近い者の神経を優先する」
「いいか良く聞け、身体側に取り付けられた管は
酸素を直接供給している、それを外し起動すると
お前同様、器も酸素不足に陥る」
「内部に入り頭を上部に押し出すとお前の首は
その中へと入り呼吸する事は出来るが先程言った
通り酸素を取り込む事は出来ん、
其処で人が人工心臓を入れる様に内部に
酸素を蓄えたボンベが入っておるのだ」
「お前と器の酸素による生命維持、活動時間は
酸素が切れるまでの時間、およそ90分だ
激しい動きをすれば当然時間も減っていく
それは人と同じだ」
「器自体は過度な刺激を与え続け長年かけて培養
し今の大きさになった物だ」
「今繋いである頭は内臓器官を動かす為だけの
モノだ、お前が気にする器は人工培養、
人がベースでは無い」
クリス「……」
「後は乗り込んだ後に説明して行く、時間が無い」
クリスはその背中の位置から肉の感触を
感じながらも内部へと入った。
「……気持ちの良いモノでは無いな」
(ぬるぬるしているな……これは……女性の性器か、
と言う事は子宮内部に俺が入る、つまりは赤子が
母体を動かす様なものか)
ユックリと頭を指定された上部へ押し出すと
肺機能の場所へと頭が入る、其処には空間があり
まるで宇宙服のヘルメットの様な空間だった。
「何だ目が見え無い……」
ドロア「両手も後10センチ程下に入れれば内臓の
空間部分に入る」
指示に従い位置をずらし腕を伸ばすとヌルヌルと
した感触を通り過ぎたかと思った瞬間、鉄の感触が
手に伝わってきた。
ドロア「その鉄に両手を広げ密着させるがいい」
手を密着させると今まで暗闇で見えなかった視界が
一気に拡がった。
ドロア「器の首以外にも背中にも目を移植してある
今首と切り離し、胴体部分の目が一斉に開き、
制御板からお前の手に神経が繋がった」
クリス「……後も見える、普段の視界とはまったく
違うな……」
「背中は小陰唇の様な役割で決して衝撃には強くは
ない密封はできるが、そこで横にある鉄板で出来た
リュックの様なものを背負え、緊急で用意したもの
だが役に立つだろう、背後の目は背中の弱点を補う
為のものだ」
ドロア「慣れる時間は無いぞ、しかし今まで見た
お前の思考は普段人が行う一人称視点とは別の
2人称、3人称視点に長けた行動が見られた
すぐに慣れるだろう」
クリス(成る程な……今は混乱してたが、感じると
確かにこの視点はゲームの2人称や3人称が
複合してるだけだ、VRに近いゲームか……
これならやれる)
ドロア「身体を動かしてみい」
「機械操作と違い人の神経だ、複雑な操作は無い」
指示通り指や体を動かす
「ほんの少し反応が遅いな」
ドロア「ほほう、その誤差を感じるとはな、そうだ
脳が身体を動かす指令を出し神経がそれを伝達する
配線の役目を果たす、お前が出した指令がお前の体
を通り過ぎ試検体の体の神経を伝う長さが伸びる分
僅かだが誤差が出る、しかしそれに気づくとはな」
クリス「問題ない」
「まさにゲーム感覚て訳か、願ったり叶ったりだ」
「後は動きながら確認する、さっき言った場所まで
急ぎ誘導してくれ」
クリスは指示通りのルートを通り試験体を走らせた
重厚感のある肉体はパワーアーマーよりも地面から
伝う衝撃も吸収し快適であった。
ドロア「急げ、時間がない試検体が彼等に到達する
までそんなに時間はかからないぞ、それに何やら
動きがおかしいのだ……奴には知性がある何か
嫌な予感がするのだ」
クリス(見ててくれシルブァ……ボルド)
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