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evil
クリス25 割り切れ
しおりを挟むラルの耳打ちから何か様子がおかしい
モスは少し下を向き頷いた……
時折り身震いする腕をもう一方の手で
抑えるかの様に
ゆっくりとクリスに近づいた
彼の握るナイフが今度は躊躇うかの様に
肉に突いたかと思うと後退りした……
モス「こうするしか……」
イルガ「何やってる!」
叫んだイルガが猛然とモスを殴りつけ覆い被さり
胸倉を掴むと鋭い視線で彼を睨む、
その理由は改造ゾンビの肉では無くクリスの足に
向けてナイフを突き立てたからだった。
モスと入れ替わる様にラルが近くの血だらけの
ゾンビを乱暴に拾い上げたかと思えば
クリスの傷口にその血を捻り込む様に
擦りつけたのだった。
反応が遅れた黒兵がラルに向け銃口を向け構えるも
ラルはキッパリと言い放つ。
ラル「こうするしか無ぇだろうが、
この先、グズグズしてる暇は無ぇ筈だ!
ゾンビがまた来る、時間も無い、しかもだ!
後に控えてんの試験体の化物なんだろーが!」
叫ぶラルの言う事に否定は出来なかった。
ラル「モス、さっきも言ったが、お前にも
家族があんだろ、此処でくたばって良いのかよ?
あ?いくら仲良くてもな、友情ゴッコじゃ命は
守れねぇ!それが現実だから、
お前は俺の言う事に自分で決断して行動した」
「……だろ?」
俯きのまま動か無いモス
「それにクリス、此処まで来るまでにお前の
友情ゴッコに巻き込まれんのはもうウンザリだ」
黒兵「それで此処まで来れただろうが……」
ラル「運だろ?……運に頼る程甘い人生を送って
来てねえからな」
「シルブァとやら、親であるドロアに逆らうと
爆発するの知ってるぜ、
今お前の心残りを消してやったまでだ」
「クリスはもう感染者だ、くたばればゾンビ、
このまま放置していけば、この首無しが勝手に
コイツを始末もしてくれる、弾も無駄にしねぇ」
「いずれにしろコイツを助ける理由はもう
微塵も無ぇ筈だ」
意識が飛びそうなクリスが囁ような声で
ラルに言った。
クリス「……ラルありがとよ、それで良い、
シルブァ現実を見ろ、コレで良いんだ」
シルブァの目は赤く身体から怒りが収まらず
無数の剣や突起物が皮膚を持ち上げ今にも身体から
出そうな勢いだった、だがクリスの言葉に
ラルを殺そうとする湧き上がる
怒りを抑えるのに必死だった。
ラルは視線をイルガに向けた。
「イルガ、お前は任務優先だから、こうなっちゃ
選択肢はもう無い筈だ、間違いは起こさねぇ……
だろう?俺やモスを撃つか?あ?非合理的に?」
「此処でクリスを救う手立てに時間を食えば
ゾンビか試験体に囲まれて一巻の終わりだ、
救えるかどうかもわから無い者に時間を費やす
無駄は俺が無くしてやったまでだ」
「俺を撃てば実質戦力はクリスだけにとどまらねぇ
俺、モス共に撃てば……解るよな」
イルガは黒兵がラルに向けた銃口を手で抑え
下に下させた。
黒兵「……隊長」
イルガ「……行くぞ」
「結果が全てだ、こうなってはもう奴の言う事に
反論する点は無い」
ラル「シルブァ、もうコイツはダメだそんな奴に
何期待してんのかしらねぇが、義理立てしても
くたばるしか無いコイツからはご褒美は
何も返っちゃこねぇぜ?」
「これはな遊びじゃねぇんだ、一つしか無い命
賭けてんだ、ロフエル、エド、黒兵、が消え
俺、イルガ、モス、黒兵、ボルドの命が
掛かってんだ、其れにお前の親が言う様に、
この作戦に地球の命とやらもかかってんだろうが、
行くぞ、来い!ボルドお前もだ、使命を果たせ
俺達の為にその命使い切れ!」
モニターを監視するドロアからも連絡が入る
静かにイルガはマイクをステレオにし皆に聞かせた
ドロア「彼の言う事が正しい……我が子よ目的を
見失うな、此処で試験体が外に出れば生態系は
おろか、全ての生物、そして地球は破滅しかね無い
状況下におかれる事は熟知しておる筈だ」
「それにこの先コイツらが倒せなければ最終手段、
全ての防護壁を完全に閉じるつもりだ
……私も含め此処にいる試験体全てを
此処に閉じ込めるつもりだ」
「出す訳には行かないのだ……」
「生物は等しく寒さに弱い、配管を含め出口を全て
無くすにはもう施設内のスプリンクラーを放出後
全てを凍らせる、此処の冷房システムは
もしもの時の為に細胞拡散やウイルスに備え
異常自体に陥った時の設備もありそれを可能にする
これで出口は完全封鎖されロシアの寒さが
やがて施設を氷で覆い尽くし体積は隙間なく埋め
永久凍土にしてくれるだろう、
この国においての原発廃棄物の処理方法と同じだ。
施設は時間をかけ氷に閉ざされ私もお前の
家族である試験体全てが此処に閉ざされた時
人類の希望も消え失せるのだ」
ラル「はっ元々俺達が脱出後そうしてくれる方が
人類の為だとは思うがな!」
「結局の所ありえねぇ異星人対策だろうが」
クラスターなんて必要ねぇし、こんな化け物共
外に出したら試験体より怖いぜ」
シルブァ(私達が化け物……)
其れを汲み取ったクリスが言った。
クリス「……お前は人間だよ、誰が何と言おうが
俺の中では人間だ……言ったろさっきも」
「人であるかどうかは見た目じゃねぇ……
母がそう言った……俺もそう思う、俺の心配して
くれんなら行け」
徐々に締め付けがキツくなり苦悶の表情を
浮かべながらも其れを見せ無い努力をするクリス
にシルブァの心は決まったように立ち上がった。
シルブァ「解りました」
ラル「良い子だ、さて行きますか、その方が
人間らしいぜシルブァさんよ」
シルブァ「私は残ります」
ラル「なっ何を言ってる!お前は馬鹿か!
此処に残っても意味なんかねぇんだよ!」
シルブァ「意味は私が決めます」
ドロア「良いのか……」
シルブァ「……はい」
ドロア「反乱は規則を持って粛清の掟だ
これを曲げる事は今もなお仕事をしている
クラスターゾンビ全ての規律に関わるのだ」
「曲げる事は決して……出来無いのだぞ」
シルブァはそっとクリスの髪を撫でた……
シルブァ「私の事を人間として見てくれている
此の方を見捨てては私は本当に化け物になって
しまう……」
「私は……人で……ありたい」
クリスは既に意識が朦朧としていた……
ラル「ゾンビになってもバカは治らねぇか」
ラルはそう言いながら持ってきた度数の強い
酒をクリスのポケットに入れた、
ラル「手向けだ、持ってけ」
イルガ「……行くぞ」
決意した彼女に意思の変更は叶わぬと見た
イルガ達はラルを含め其処を後にしたのだった。
ラル「所詮、化け物でありガキか」
モス「……すまない」
イルガ「……」
黒兵「……」
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