世紀末ゾンビ世界でスローライフ【解説付】

しおじろう

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evil

クリス17送電線

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二手に別れ送電線を目指したイルガ、ラル達は
配線の切れた場所へと向かう。
通路の幅は5メートル程ありガラス窓は無い故に
大量のゾンビが雪崩れ込むと言った状況は避けれる
ものの通路の幅からして一度進路を塞がれると
それは終わりを意味する。
剥き出しになった通路を駆ける2人もそれを
理解していた、保管庫で選んだ武器がショットガン
なのは通路に対し逃げ場の無い環境に適した武器を
選んだのは闇社会で生きる彼等の知恵だったに
他ならない、だがゾンビの数は減ったとは言え
油断出来ないのは変わらなかった……

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ラル「此処に来るまでゾンビ30体は倒したよな……
減ったのか?これでも」

ロフエル「まぁ通路だからな、中央ドームの中が
減ったから30で済んだんだろう」

前方に火花が散る場所が目に入り、後や前に警戒
しながらも無事到達する事に成功した。

ラル「此処か……時間はあと8分か」

「同時に繋げないとショートする可能性がとか
言ってやがったな、こんな薄暗い所で他の電灯まで
消えた日には目も当てられないぜ……」

ラルがいる場所は配線が切れたと思われる
コンクリートが大きく抉れ剥き出しの場所。

薄暗く空気が重い……

上を見ると露出した水道管が何本も通っているのが
確認出来た。忙しく水滴が落ちるその場所は
他の音以外を遮断する様だった。

ただ水滴の音と破裂したと思われる一つ大きく
穴の開いた水道管がまるでシャワーの様に
流れる音だけだった。

ラルもロフエルも市街戦には長けた経験を持つ
曲がり角に天蚕糸の様なモノで其れを自分達が
いる場所の結界を貼る様に人間の大きさに合わせ
足の高さ、道の高さに合わせ糸を張り巡らせ
自身の指に巻き付け警戒を怠らない。

音が頼りにならないこう言った場所では通常糸を
張り、缶などぶら下げても気付かない事が多い
まして相手はゾンビ、その音が自らの危険を呼ぶ
事を彼等は理解していた。

ラル「準備出来たな、ちと俺はあそこでシャワー
でも浴びらせてもらうか」

ロフエル「おいおい送電線繋げるのに水浴びかよ
俺も返り血だらけなんだ」

ラル「お前が元々裏切ったから、この結果
なんだろうが、殺されないだけありがたいと思え」

服を脱ぎ優雅にシャワーを浴びるラルの裸には
無数の弾痕の後や刃痕の跡があった。
何度も危険を潜り抜けた黒豹の様な身体が動く度に
美を醸し出す様だった。

ラル「ふぅ……生き返る様だぜ」
血が流れ徐々にロシア人の特徴でもある白い肌が
露出する様を恨めしそうに見るロフエルだった。

ロフエル「……いい身体してんな」

ラル「気持ち悪い事言ってんじぁねぇよ」

「お前は調査専門の依頼が中心だったんだろうが
俺はクリス同様最前線で活動する依頼が中心だった
からな、生きる為だ、自然とこうなった」

ロフエル「成るべくしてなる……か」

「さっき言った裏切りだが、それについては
謝る気はねぇぞお前も同条件なら同じ事を
していた筈だ」

ラル「……まぁな」
「俺は奴等と違って情や感情よりも優先順位は
損得で動くタイプだからな、こうなった以上
ゴタついても意味はねぇ、お前とイルガから
報酬を貰えれば今更、文句はねぇよ」

「戦場で情に流される何て愚かな事はしねぇ」

「あえて言うが、損は選ばねぇ……意味わかるな」

ロフエル「あぁ裏切ったら俺も殺すって事だろ」

ラル「そう言うこった、命あっての得だからな」

シャワーを浴び終わり服を持った手が止まる……

『ピクン・ピクン……』

ラル「チッ!」

ラル「人が気持ち良く水浴びてる時に!来たぞ!」

全裸のままシャワー状の水道管から離れ
ラルは銃を握り構えた。

ロフエルも同じく耐電圧の手袋をしながら
銃口をラルが向ける方向へと向けるーー

音は頼りにならない、水滴が邪魔する前方に意識を
集中する2人引き金に置く指に力が入る。

ラルの髪から滴り落ちる水滴が小さな水溜りを作る
程の時間が過ぎた……

「……」

ラル「……来ねぇな」

ロフエル「!」

ロフエルは叫んだ。
「背後だ!」

後方の通路に同じく仕掛けられた糸がロフエルの
指に緊張を伝えたのだった。

『ヴォオオ』

いきなり現れたかの様な大型ゾンビにロフエルは
振り向く暇も無く勢い良く引っ張られた糸により
身体ごと引っ張られ緊張に耐えられなくなった
絡めた指が無残にも宙に舞った。

ロフエル「うぐ!クソ!イテェ!」
すかさず身を起こし銃を構えるも体躯は
2メートル半はある大型ゾンビとの距離は
もう目の前だった。

□頭皮

焦りながらも本能ですかさず引き金引くも
痛みで頭を狙う筈の的がズレた、だが近距離特化の
ショットガンの弾はゾンビの左腕を吹き飛ばした、

ーーが痛みの無いゾンビは右手でロフエルの
腕を万力の様な力で掴むとリミッターゾンビの
特長である限度の無い腕力と握力で彼の
腕をまるで雑巾の様に締め付けるのだった、

『メキメキ……ボキ……メキ』

音をたてながら砕かれるロフエルの腕

ロフエル「グガっ!」
「ラ!ラル!たっ助け……」

その視線をラルに向けるも彼もまた前方から来る
大型ゾンビに向かい戦っている、

すぐ様ロフエルの肩に岩石の様な重さのある頭が
ぶつかったかと思う衝撃がーー
脳にかつて無い痛みが痛烈に襲った。

大型ゾンビの顎や歯が肉厚のあるロフエルの
肩を抉りとる、痛みで気が遠のきそうになるが
第二、第三のウエーブの様な痛みが彼に意識を
失わせる暇を与えなかった……

「ヒィィ!」

抉り取られた肩を見る彼の目に肉に食い込む
大型ゾンビの幾つもの抜けた歯が剥き出しになった
肩の肉に絡む様に残るのだった……

ロフエル「じ、自分の歯がこんなになる迄、
噛み付くなんて!この化物め!」

更に肉を頬張るゾンビの口が間近に居る
ロフエルの目に否が応でも入る。

ゾンビの抜けた歯とロフエルの肉が口の中で
グチュグチュと音をたて腹に入れてゆく……

己の歯で傷ついた口は血だらけで噛む程に頬から
切れた傷口からゾンビの歯とロフエルの肉が
ソーセージの様に圧力でしたたり落ちるのだった。

「ヒィィ!クソ!クソ離せ!」

尚もしつこく捕食は続く、再びゾンビはロフエルの
肩に噛み付いた、2度目の噛み付きは1度目に
歯が大量に抜けたせいか肉がなかなか抉りとる事も
叶わず、何度も何度もむしゃぶり被り付く。

その醜悪な顔と被りつかれた時に見るゾンビの
頭部は禿げ、数本の髪の毛が残す様まで間近で
見させられたのだった。

流石の出血に意識は朦朧とし空間が歪むロフエル

ラル「クソ!何だこのゾンビ!撃っても倒れねぇ」

微かに聞こえるラルの方を見たロフエルは
自身の持つショットガンを力無くラルに投げた……

ラルは走りロフエルのショットガンを持つと
小声で彼に問うた……

ラル「楽になりたいか……」

力無く頷くロフエル

ラル「……」

ラルは前方にいる大型ゾンビに2丁ショットガンを
構え勢い良くぶっ飛ばした。

強化され防御板が身体に埋め込まれたゾンビも
二丁同時に放たれた弾の威力に首事吹き飛び
大きな図体は地面へと沈んでいった……

そして振り向いたラルは静かにショットガンの
引き金をロフエルの額に向けて構えた
項垂れるロフエルの額の方向は今尚、肩に
むしゃぶり大口を開けているゾンビの口腔内だった

ラル「……あばよ」

ロフエル(何故俺が……
幸せになりたかっただけだった……のに
俺が幸せになっちやイケネェのかよ……)

(これが最後だったのに)

遠くで耳鳴りがする……
キーン……

ロフエルの世界は白く彩られ
やがて意識もろとも世界は……

消えた
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