上 下
120 / 221
evil

クリス17送電線

しおりを挟む


二手に別れ送電線を目指したイルガ、ラル達は
配線の切れた場所へと向かう。
通路の幅は5メートル程ありガラス窓は無い故に
大量のゾンビが雪崩れ込むと言った状況は避けれる
ものの通路の幅からして一度進路を塞がれると
それは終わりを意味する。
剥き出しになった通路を駆ける2人もそれを
理解していた、保管庫で選んだ武器がショットガン
なのは通路に対し逃げ場の無い環境に適した武器を
選んだのは闇社会で生きる彼等の知恵だったに
他ならない、だがゾンビの数は減ったとは言え
油断出来ないのは変わらなかった……

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ラル「此処に来るまでゾンビ30体は倒したよな……
減ったのか?これでも」

ロフエル「まぁ通路だからな、中央ドームの中が
減ったから30で済んだんだろう」

前方に火花が散る場所が目に入り、後や前に警戒
しながらも無事到達する事に成功した。

ラル「此処か……時間はあと8分か」

「同時に繋げないとショートする可能性がとか
言ってやがったな、こんな薄暗い所で他の電灯まで
消えた日には目も当てられないぜ……」

ラルがいる場所は配線が切れたと思われる
コンクリートが大きく抉れ剥き出しの場所。

薄暗く空気が重い……

上を見ると露出した水道管が何本も通っているのが
確認出来た。忙しく水滴が落ちるその場所は
他の音以外を遮断する様だった。

ただ水滴の音と破裂したと思われる一つ大きく
穴の開いた水道管がまるでシャワーの様に
流れる音だけだった。

ラルもロフエルも市街戦には長けた経験を持つ
曲がり角に天蚕糸の様なモノで其れを自分達が
いる場所の結界を貼る様に人間の大きさに合わせ
足の高さ、道の高さに合わせ糸を張り巡らせ
自身の指に巻き付け警戒を怠らない。

音が頼りにならないこう言った場所では通常糸を
張り、缶などぶら下げても気付かない事が多い
まして相手はゾンビ、その音が自らの危険を呼ぶ
事を彼等は理解していた。

ラル「準備出来たな、ちと俺はあそこでシャワー
でも浴びらせてもらうか」

ロフエル「おいおい送電線繋げるのに水浴びかよ
俺も返り血だらけなんだ」

ラル「お前が元々裏切ったから、この結果
なんだろうが、殺されないだけありがたいと思え」

服を脱ぎ優雅にシャワーを浴びるラルの裸には
無数の弾痕の後や刃痕の跡があった。
何度も危険を潜り抜けた黒豹の様な身体が動く度に
美を醸し出す様だった。

ラル「ふぅ……生き返る様だぜ」
血が流れ徐々にロシア人の特徴でもある白い肌が
露出する様を恨めしそうに見るロフエルだった。

ロフエル「……いい身体してんな」

ラル「気持ち悪い事言ってんじぁねぇよ」

「お前は調査専門の依頼が中心だったんだろうが
俺はクリス同様最前線で活動する依頼が中心だった
からな、生きる為だ、自然とこうなった」

ロフエル「成るべくしてなる……か」

「さっき言った裏切りだが、それについては
謝る気はねぇぞお前も同条件なら同じ事を
していた筈だ」

ラル「……まぁな」
「俺は奴等と違って情や感情よりも優先順位は
損得で動くタイプだからな、こうなった以上
ゴタついても意味はねぇ、お前とイルガから
報酬を貰えれば今更、文句はねぇよ」

「戦場で情に流される何て愚かな事はしねぇ」

「あえて言うが、損は選ばねぇ……意味わかるな」

ロフエル「あぁ裏切ったら俺も殺すって事だろ」

ラル「そう言うこった、命あっての得だからな」

シャワーを浴び終わり服を持った手が止まる……

『ピクン・ピクン……』

ラル「チッ!」

ラル「人が気持ち良く水浴びてる時に!来たぞ!」

全裸のままシャワー状の水道管から離れ
ラルは銃を握り構えた。

ロフエルも同じく耐電圧の手袋をしながら
銃口をラルが向ける方向へと向けるーー

音は頼りにならない、水滴が邪魔する前方に意識を
集中する2人引き金に置く指に力が入る。

ラルの髪から滴り落ちる水滴が小さな水溜りを作る
程の時間が過ぎた……

「……」

ラル「……来ねぇな」

ロフエル「!」

ロフエルは叫んだ。
「背後だ!」

後方の通路に同じく仕掛けられた糸がロフエルの
指に緊張を伝えたのだった。

『ヴォオオ』

いきなり現れたかの様な大型ゾンビにロフエルは
振り向く暇も無く勢い良く引っ張られた糸により
身体ごと引っ張られ緊張に耐えられなくなった
絡めた指が無残にも宙に舞った。

ロフエル「うぐ!クソ!イテェ!」
すかさず身を起こし銃を構えるも体躯は
2メートル半はある大型ゾンビとの距離は
もう目の前だった。

□頭皮

焦りながらも本能ですかさず引き金引くも
痛みで頭を狙う筈の的がズレた、だが近距離特化の
ショットガンの弾はゾンビの左腕を吹き飛ばした、

ーーが痛みの無いゾンビは右手でロフエルの
腕を万力の様な力で掴むとリミッターゾンビの
特長である限度の無い腕力と握力で彼の
腕をまるで雑巾の様に締め付けるのだった、

『メキメキ……ボキ……メキ』

音をたてながら砕かれるロフエルの腕

ロフエル「グガっ!」
「ラ!ラル!たっ助け……」

その視線をラルに向けるも彼もまた前方から来る
大型ゾンビに向かい戦っている、

すぐ様ロフエルの肩に岩石の様な重さのある頭が
ぶつかったかと思う衝撃がーー
脳にかつて無い痛みが痛烈に襲った。

大型ゾンビの顎や歯が肉厚のあるロフエルの
肩を抉りとる、痛みで気が遠のきそうになるが
第二、第三のウエーブの様な痛みが彼に意識を
失わせる暇を与えなかった……

「ヒィィ!」

抉り取られた肩を見る彼の目に肉に食い込む
大型ゾンビの幾つもの抜けた歯が剥き出しになった
肩の肉に絡む様に残るのだった……

ロフエル「じ、自分の歯がこんなになる迄、
噛み付くなんて!この化物め!」

更に肉を頬張るゾンビの口が間近に居る
ロフエルの目に否が応でも入る。

ゾンビの抜けた歯とロフエルの肉が口の中で
グチュグチュと音をたて腹に入れてゆく……

己の歯で傷ついた口は血だらけで噛む程に頬から
切れた傷口からゾンビの歯とロフエルの肉が
ソーセージの様に圧力でしたたり落ちるのだった。

「ヒィィ!クソ!クソ離せ!」

尚もしつこく捕食は続く、再びゾンビはロフエルの
肩に噛み付いた、2度目の噛み付きは1度目に
歯が大量に抜けたせいか肉がなかなか抉りとる事も
叶わず、何度も何度もむしゃぶり被り付く。

その醜悪な顔と被りつかれた時に見るゾンビの
頭部は禿げ、数本の髪の毛が残す様まで間近で
見させられたのだった。

流石の出血に意識は朦朧とし空間が歪むロフエル

ラル「クソ!何だこのゾンビ!撃っても倒れねぇ」

微かに聞こえるラルの方を見たロフエルは
自身の持つショットガンを力無くラルに投げた……

ラルは走りロフエルのショットガンを持つと
小声で彼に問うた……

ラル「楽になりたいか……」

力無く頷くロフエル

ラル「……」

ラルは前方にいる大型ゾンビに2丁ショットガンを
構え勢い良くぶっ飛ばした。

強化され防御板が身体に埋め込まれたゾンビも
二丁同時に放たれた弾の威力に首事吹き飛び
大きな図体は地面へと沈んでいった……

そして振り向いたラルは静かにショットガンの
引き金をロフエルの額に向けて構えた
項垂れるロフエルの額の方向は今尚、肩に
むしゃぶり大口を開けているゾンビの口腔内だった

ラル「……あばよ」

ロフエル(何故俺が……
幸せになりたかっただけだった……のに
俺が幸せになっちやイケネェのかよ……)

(これが最後だったのに)

遠くで耳鳴りがする……
キーン……

ロフエルの世界は白く彩られ
やがて意識もろとも世界は……

消えた
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

その太ももはなぜ美しい

サドラ
大衆娯楽
暇な日にテレビを見ていると、急にセクシーなドラマが始まって…

Solomon's Gate

坂森大我
SF
 人類が宇宙に拠点を設けてから既に千年が経過していた。地球の衛星軌道上から始まった宇宙開発も火星圏、木星圏を経て今や土星圏にまで及んでいる。  ミハル・エアハルトは木星圏に住む十八歳の専門学校生。彼女の学び舎はセントグラード航宙士学校といい、その名の通りパイロットとなるための学校である。  実技は常に学年トップの成績であったものの、ミハルは最終学年になっても就職活動すらしていなかった。なぜなら彼女は航宙機への興味を失っていたからだ。しかし、強要された航宙機レースへの参加を境にミハルの人生が一変していく。レースにより思い出した。幼き日に覚えた感情。誰よりも航宙機が好きだったことを。  ミハルがパイロットとして歩む決意をした一方で、太陽系は思わぬ事態に発展していた。  主要な宙域となるはずだった土星が突如として消失してしまったのだ。加えて消失痕にはワームホールが出現し、異なる銀河との接続を果たしてしまう。  ワームホールの出現まではまだ看過できた人類。しかし、調査を進めるにつれ望みもしない事実が明らかとなっていく。人類は選択を迫られることになった。  人類にとって最悪のシナリオが現実味を帯びていく。星系の情勢とは少しの接点もなかったミハルだが、巨大な暗雲はいとも容易く彼女を飲み込んでいった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~

十本スイ
ファンタジー
高校生の時に異世界に召喚された主人公――四河日門。文化レベルが低過ぎる異世界に我慢ならず、元の世界へと戻ってきたのはいいのだが、地球は自分が知っている世界とはかけ離れた環境へと変貌していた。文明は崩壊し、人々はゾンビとなり世界は終末を迎えてしまっていたのだ。大きなショックを受ける日門だが、それでも持ち前のポジティブさを発揮し、せっかくだからと終末世界を異世界アイテムなどを使ってのんびり暮らすことにしたのである。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...