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evil
クリス⑦
しおりを挟むモス「危ねぇ!ハァハァ……」
皆が一旦ドア付近で腰を下ろし安堵の僅かな時間を
過ごすもイルガの一言でその安堵は絶望へと変わる
イルガ「ハァハァ……いい判断だったクリスとやら」
クリス「こりゃどうもハァハァ」
イルガ「そっちは全員無事か……此方の被害報告は」
黒兵「はい……兵残り5名2人は負傷、内1人は
足に怪我、そして手を噛まれたモノが1人」
黒兵が怪我をした隊員の噛まれた手を消毒しようと
手袋を脱がせ傷口を見た、肉は噛みちぎられ筋が
露呈、指は震え中指と小指に至っては既に無かった
出血が酷く持ち合わせた包帯を動脈に縛りつけ
止血するも血は緩やかになるも止まらない。
「防刃手袋だぞ……これ、奴等、奴等そんなの
お構い無しにそこら中、噛み付いてきたんだ!」
治療にあたる黒兵「落ち着け!見ていた……
無茶苦茶だ、前歯が折れようが抜けようが
お構い無しだった、既に歯が無い者までそんなの
お構い無しだった、あれは……あれは
……人間の姿をした化け物だ」
ガタガタと震える黒兵は錯乱状態であった。
急速に顔色が悪くなる状態だが治療にあたる兵士も
医療班ではない、簡素な救命になす術は無かった。
黒兵「寒い……何だ、視界がボヤける……」
治療にあたる黒兵「手や顔が噛まれた後か、
其処らじゅう紫色の内出血に……
凄まじい力だ、肉が噛みちぎられてる場所も
1箇所や2箇所何てもんじゃ無い」
クリス「人間のリミッターはずしてんだろ」
兵達が怪我をした兵に気を取られている今が
好機とばかりにエドが銃をイルガに向けた。
エド「おい、忙しい中すまないが
大人しく銃を捨てて貰おうか?」
クリス「おいやめとけ」
エド「……何故だ、お前まで寝返るつもりか?」
クリス「そうじゃ無い、今の状況からして此処で
撃ち合っても負ける、それに此処から脱出となると
コイツら無しでも不可能だろう」
エド「……」
イルガ「そう言うことだ、何なら俺達と差し違えて
此処で撃ち合ったとて、お前らの勝ちはねぇぞ?
その豆鉄砲じゃ俺達の装備を撃ち抜く事は出来ない
それに来た道帰るか?」
エド「……」
イルガ「止めはしないぞ、銃もくれてやる」
「引き金を引けばお前達全員此処が墓場だ
そして来た道を戻るならばさっきの場所が
お前達の墓場だ……選べばいい」
エドは怪訝な顔をしながら銃を下ろした。
エド「やれやれ……」
イルガは腕に装着されたデカい籠手の様な
モニターを触る、どうやら地図が
表示されている様だ。
イルガ「ロフエル来いっ……お前の調査した地図と
このモニターの情報は一致しているな?」
地図を覗き込み懐から出した地図と照らし合わせる
ロフエル「……OK同じだ」
イルガ「となると……この先は研究施設か」
「行くぞ、こんな場所長い事いるもんじゃねぇ」
ラル「それについては賛成だ」
皆重い腰を皆上げイルガに続き研究施設へと
続く廊下を進んだ」
イルガ「止まれ、キーカードだ」
指で先程のキーカードを開けた兵士2名がイルガと
同じ腕に装着した籠手からワイヤー状の先に吸盤が
着いたモノをキーカードのロックシステムへと
貼り付け画面を指で触りながら作業を開始した。
エド「何だそれ?」
黒兵「……」
ロフエル「彼等のか?キーカードを解除する為の
装置だろう、各個人役割の為の情報システムだ、
この手の解除番号は10分程で新しく更新される」
「それを管理するメインコンピュータが必要な人物
のキーカードに番号を使用する時に送られる
つまり10分で何億通りもある番号を
探し出さねばならない、それが出来る端末が彼等
の持つハンドタイプシステムだ、先にある吸盤が
静電気を制御しガラスを通して電気を運び中を
開けられないこのタイプの回路へアクセス
することが出来る」
エド「電気ってガラス通さないのにか?そんなの
俺でも知ってるぜ?」
ロフエル「別タイプのか、これはそのタイプにも
対応出来るだろう、吸盤は高熱を発しながら
電気を通すナトリウムを含むガラスは熱を
加えると絶縁体では無くなるからな」
「恐らく何か障害があった時の対処法で作られてる
のだろう、まぁ国や施設によってロックシステムは
其々だがな」
イルガ「あと何分かかる?」
黒兵「およそ2分位かと」
その時、治療にあたる黒兵が叫び声を挙げた。
「やっ!やめろ!!」
一斉に声を上げる黒兵に皆が視線を向けた先に
見たものは噛まれた兵の目が白くまさしく先程
襲われたゾンビと同じ状況に成り果てた黒兵が
治療にあたる兵の顔に噛みつき頬の肉を抉り取る
瞬間だった。
モス「クソ!何だ!これってさっきの奴等と」
エド「映画と同じか!噛まれれば終わりなんて
そんな現実にあんのか!」
イルガが銃を構えクリスらを押し除け前へ出た
かとおもえば白い目をしたゾンビの額に
おもむろに銃弾を打ち込んだ。
そして……
噛まれた兵にも銃を向ける。
黒兵「た!隊長!やめてくれ!何故だ!」
イルガは無表情で懇願する兵の額に同じく
ハンドガンの引き金を引いた。
『ドサッ……』
イルガ「噛まれれば変異する……皆、理解したな」
エド「おい仲間だろ!さっきの奴はそうだったかも
知れねぇが、コイツは違うかも知れねぇじゃ」
クリス「やめとけ、あれが正しい……」
イルガ「お前達から仲間なんて言葉が
聞けるとはな、だが現実はコレだ、今は
論議している時間は無い、弾も有限だ、
不安要素は消しておく」
クリスが今度は銃を構えイルガに向けた、
その動きに反応しモス、エド、ラルが黒兵と
ロフエルに向け銃を構える。
クリス「これで数共に対等だ、短銃であろうが
今撃ち合えば銃を構えてる俺達が有利、
装備を整えていようが頭を狙えば俺達が勝つ」
イルガ「……愚かな」
クリス「あぁ愚かだな」
モス「さすがクリス状況判断が早い、
お前達銃を此方によこしな」
クリス「いや……銃はいらん、お前達が持っとけ」
エド「おいおい、何が何だか話が分からねぇぞ」
クリス「あくまでも対等という条件だ、コイツらが
いう様に此処からの脱出は俺達だけでは困難だ
問題は一つずつ片付けて行こう」
「イルガと言ったな」
イルガ「……」
クリス「弾を均等に分けろ、そして指揮は此処の
状況を把握しているお前に任せる」
モス「おいおい冗談じゃない!さっきの奴みたいに
最後は撃たれるのがオチじゃねーか!」
クリス「俺は最善の判断をしたまでだ、
意見は聞かない」
そういうと銃をモスに向けた。
モス「ハイハイ、俺達に選択権はゼロなのね」
クリス「……すまん今は争う時間も無い、
早急に動く必要があると判断した」
モス「そういえば、あん時も予期せぬ事が起きて
お前の判断で命救われたっけかな……わかった
俺はコイツに従う、イルガお前にじゃないからな」
イルガ「……いい判断だ、約束しよう、此処を
出る迄はどんな優位な展開になろうが
俺達はチームだ裏切りは無しだ」
クリス「それでいい」
こうして即席のチームが出来た。
生き残り黒兵イルガ合わせ2人そしてロフエル
此方はクリス、ラル、エド、モス系6名
□タッチパネル□
スマートフォン等、指で触ると反応するガラス
本来はガラスは絶縁体であるがスマートフォン等は
薄い膜の様な静電気をいつも帯びている。
指で触るとその静電気が指に吸い取られ、
その場所を機械が完治し反応すると言うわけだ。
ではガラスは電気を通さないモノなの?
それはまた否である。
熱を加えるとナトリウムを含むガラスなどは
イオンが動けるようになり電気を通すこととなる。
同じ物体でも環境が変われば性質も変わる。
そう一つのものは一つの結論だけで
終わるものではない。
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