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VS熊
決着完結
しおりを挟むハク、御堂、誠、クリスは合流し熊との対戦は
最終局面を迎えていた。
誠「ハク!手を出すなよ!コイツは俺達でやる」
(じゃないと泣きそうだ……)
ハク「口は出してもいいって事ね、ほーい」
ハク「ねぇ……なんで後方の攻撃、
体にしてるの?」
クリス「は?何故?って何故だ?」
誠「……」
「的がデカくて攻撃をこちらに
向けさせる為に力一杯……そのゴニョゴニョ」
「えと……」
「何……か間違ってます?ハクさん?」
ハク「……」
「アキレス腱狙いなよ」
誠 「……あ」
クリス「……あ」
そう言うと直ぐに背後に陣取った誠がアキレス腱を
狙いノコギリバットを振った。
犬など四足歩行に多く見られるアキレス部は
太腿に繋がる部位にあたる。
つまり太腿の下後方関節部位だ。
的は大きく振り下ろしながら切れる為人間の部位
よりは遥かに狙いやすい。
更に他の部分より脂肪も少なく、
機敏さは肉食動物同様前上半身に集中した
筋肉や脂肪といった防護壁も薄く、簡単に熊は
機動力を奪われた。
ゾンビ熊に痛みがあろうが無かろうが関係無い
切れた健にあの体重だ元々ゾンビに器用に歩く
事もままならずクルクル回ることしか
出来なくなった熊は既に
先程までの脅威は完全に消えた……
誠 「アレ……」
クリス「アレレ……」
またも空気の読まないハク
そしておにぎりを食べ終わった彼は和かに笑った
どう答えていいかわからない2人は顔を引きつらせ
その笑顔に愛想笑いで返した。
誠「グヘヘ……」
クリス「……」
誠 「クリス……帰ろうか」
クリス「……了解……だ」
拍子抜けする2人を他所に御堂さんは2人の戦いも
見ないで懸命に熊を車体に乗せ
帰る準備をしていた。
誠・クリス「ふーん……」
こうして戦いは終結を迎えたと思った。
その矢先ーー
熊の悲鳴に似た鳴き声が皆の耳に響き渡る。
誠「まだいたのか!」
急ぎ皆で声のする方へ向かうと其処には
相葉達が熊を囲んで居た。
その熊は身体が小さく小熊を抱え守っていた。
相葉「おう!いい所へ来たな、俺達も熊退治に
一役かってんぜ」
男「さっきまでグチグチ言ってたのに小さい
熊見つけた瞬間コレか……」
(結局帰りたいんじゃねぇか)
相葉は棒で熊を叩きつけていた。
それを見たハクは飛び出し熊の前へ立ち塞がるも
相葉が殴る棒がハクを襲う。
頭を擦り肩で棒を受け額から血を流れた
それを見た御堂父が血相を変えて叫ぶ。
御堂父「お前ら!何してんだ!恩人に!」
いきまく御堂を手を広げ行動を抑止するハク
同時にハクの前にクリス、誠が立ち塞がる。
言葉は発しないが2人は相葉に向けて
異様なまでの殺気を漂わせ睨んだ。
相葉「おいおい俺達も手伝ってるだけだろ」
ハク「この熊は小さい、それにあの群れには
居なかったよね……熊だから全て倒すのかい?」
相葉「危険は排除するって言ったろコミュニティ
の為だ何が間違ってる?」
ハク「……何か勘違いしてるみたいだけど」
ハク「この地球は人間だけのものじゃ無い、
危害を加える熊に対しては仕方ないけど
貴方達は人間以外、全てを排除するつもりなの?」
相葉「意味がわからん」
ハク「視野が狭いって言ってんの、
だから地球は……そして地球が」
言い掛けた言葉を飲み込んだハク
「……フゥ」
軽くため息を吐くも諭すように口を開いた。
「いい?この子達が全滅したら、
それはそれで同時に人間も全滅する事になる、
今は人間という狭い視野じゃなく生きる物すべて
いや……地球全体に向ける事が最も大事だ」
相葉「訳わからねぇわ!今ここでこの熊を倒して
人類が終わりってか?アホか……
熊なんぞ湧いて出るだろうが」
またも彼のプライドを逆撫でたようだ。
顔が紅葉し怒りの吐口をハクに向けた。
相葉「お前ら……俺がやる事にイチイチ反論
しやがって!俺がやる事が気に入らねぇ
だけだろが!どけよ!おら!」
声を荒げ相葉が彼等の背後に居る
熊に更に棒を叩きつけようとした。
だがハクがそれを庇う様に立ち塞がる。
ーーが
危害を加えようとする人間に敵味方等理解が出来ず
ハクの背中に爪を立て切り裂いた。
だがハクはピクリともその場から動かず
依然相葉の棒から熊を守る姿勢を解こうとはしない
そのハクを守る様に誠が立ち塞がりクリスが
更に振り下ろされた棒をマチェットで切り裂くと
素早く相葉の首に切っ先を当てた。
首に切っ先が当り血が相葉の首に滲む……
素早い彼等の行動に身動きが取れなくなった相葉
相葉「……まて」
「わかったから……」
後退りする相葉の首に切っ先の狙いを首元に
定めたまま構えを解かないクリス
左手でナイフを持ち土台である右手の掌をナイフの
尻に当てがい黒豹の様に身体を丸め、いつ飛び出し
相葉の首を掻っ切るか分からない気配だ。
「……」
相葉「だがな言っておく、お前達のやり方は甘い、
理想論、正義感ぶった茶番だ!反吐が出る、
いい子ぶって結局は損をするだけだ」
「人間てのは元々利己的に出来てんだ、
欲望に従って何が悪い、過去だってそうだ、
人は身勝手で都合の良い条件の元で生きてんだ」
「最初は奴等だって全てが反対した訳じゃないだろ
考えない奴、文句だけ言う奴、結局は人任せで
動こうとせず俺の指示に従おうとした奴等
中には俺を尊敬してるだ抜かしてた奴もいたな
熊退治にも行かなかった奴だ、あのまま事を
進めても結果はそれなりに社会は出来てたはずだ」
「それにな……」
「お前らが言う人間らしさて人口数が利己的に動く
人間の数に勝るとは思えないがな、そして数の
多い事で構成されるのが人間社会なんだよ
頭悪い奴等め……社会の構造も理解してない癖に」
ハク「……」
「社会の構造ってアンタらが勝手に作ったもの
でしょ?数なんてどうでも良い」
「僕達は地球人……いやこの広がる宇宙全体の
生命体の目指す真理として行動する」
相葉「は?訳わかんねぇやつだな、あれか
異常精神論者か」
御堂父「もう止めろ!」
割って入る御堂父
「相葉、もう良いだろう、何か熊が悪さしたら
その時退治すれば良い……この熊だって子供を
懸命に守ってるじゃ無いか、その姿は俺達と
変わらないじゃないか」
相葉「ボケ!熊は熊だろうが!犠牲が出てから
言っても遅いんだよ!」
ハク「相葉さん、貴方人間以外の生命すべて
絶滅させるつもりですか?」
相葉「必要ならな」
ハクは相葉から視線を逸らしある方向を見ていた
そして口に出た言葉は……
ハク「……ご飯食べれなくなる」
誠「おい!其処かい!」
誠「そのすまん……ツッコミを止められねぇ
性格なんでな、今は引け、な相葉さん」
クリスは未だ相葉の喉目掛け構えを解く気配は
無かった。
相葉「もう俺達は戻らねぇよ、お前達のやり方に
従うなんてまっぴらゴメンだわ」
男(さっきまで戻る口実に熊狙ってた癖に)
御堂父「そんな事言わず戻って来いよ……
お前、子供や奥さん巻き込んでるぞ、お前達だけで
この先生きていけるのか?冷静になれ、
皆には俺から話すから……
居場所がない事なんかしないから」
相葉奥さん「アンタ……意地張らずに
戻ろう?ね?」
奥さんの手を握りしめる幼い
子供はずっと泣いていた……
相葉「うるせーよ、今までも俺が働いてお前を
食わせて生かしてやってたんだ、イチイチ口
出すんじゃねーよ!」
相葉「それに御堂、情け無ぇな……
意見コロコロ変えて、何か?
今は家族にへつらって生きるのか?好きにしなよ、
男はな家族養ってんだよ!プライドで生きてんだよ
おら!来い!俺達の事はほっといて貰おうか」
「何回も言うが御堂どうせコイツらだって
自分の為にやってんだその内背後取られない様に
気をつけんだな」
ハク「……」
「あれあれれ?バレた?折角民衆を味方に
付けたのにいいい!」
誠「……」
「そうだな……俺とハク、クリス
力で抑えることも簡単だ、リーダーである
照子さんも御堂さんアンタも俺達に味方するだろ?
御堂父「……誠さんハクさん何言って」
信じられない言葉に唖然とする……
ハク「飯の沢山あるあのコミュニティのっとって
贅沢するつもりだったんだけどなぁ」
御堂父「……嘘ですよね」
ハク「健も単純だったからのせるの簡単だったし」
御堂父は健の事をいわれブチ切れた。
猛然とハクの顔面に拳を叩き込みハクはぶっ飛んだ
御堂父「ハァハァ……健の悪口は許さない」
だがハクは悪態を続けた。
相葉「見ろ!ほら見ろよ!危うく騙される所
だったんだぜ!な!」
クリスはそれでも動かず相葉の首を狙い続ける。
相葉「……ゴクン」
「ま、まぁそう言う事だ」
「こんなクズにコミュニティ奪われる所
だったんだ」
誠「へっよく言うぜ……」
御堂父「……私が甘いのか」
相葉「そう言う事さ」
御堂「ならやはりお前が必要だ、俺は学がない
戻ってくれ頼む」
土下座して頼む御堂父
相葉「……」
「戻ってやってもいいがコイツらは
追い出せ、いいな?」
御堂父「……だが折角の功労者だ、もし何かあった
時は俺が『刺し違えても』コイツらを止める
だから今夜だけは健の為に祝賀会には参加させて
やってくれ」
相葉「……」
考える相葉は自分の立ち位置を考えていた。
相葉「解った、いきなり追い出したんじゃ
また俺が悪者って事になりかねないからな」
「そのかわり終わったら御堂、お前がコイツらの
正体を皆に話し事情を説明した上で追い出せ
いいか?俺達が暴いたんだ、
それを言うのを忘れるな」
御堂父「……わかった」
こうして熊退治は終わりを告げた。
不穏な空気の中、追い出されるハク達だけが
何故かいつもの様に明るかった。
□宴の場□
御堂父がハク達の前へ現れた。そこには健も
一緒だった……
御堂父「健……よく聞け」
神妙な表情に健も正座をして父の言葉を待った。
「彼等は今日此処をたつ」
健「え?何で!何でなの!」
御堂父「お前には言う……この人達は俺達の為に
出て行くんだ……お前に大人の事情は
まだわからないだろうが」
健「嫌だ!なにさ!大人の事情ってさ!」
誠「……アンタわかってたのか」
御堂父「先程は殴って申し訳無かった……
あんな極端な芝居に気付かない方が
おかしいってもんですよ……」
ハク「ウグッ」
喉に飯を詰まらせるハク
バレてないと思っていたのだろう。
誠「まぁあの極端な芝居じゃなぁ……ハク
バレてないと思う方がおかしいぞ」
ハク「……へい」
御堂父「相葉家族の奥さんと
子供の為ですよね……」
酒を一気に飲み干し、ため息をつく御堂父だった。
健も察した……父の悲しげな顔に本当は出て行って
欲しくないという強い哀しみを感じたからだ。
健「……解った何も言わない」
名残惜しそうにクリスの腕に絡み付く健の姿は
クリスの心に痛みを感じさせる、
だが決してさっき言った言葉を覆さない健を見る
クリスもまた寂しい表情を堪えた。
御堂父「……本当にすまない、そして有難う」
ハク「いいんですよぉ……どうせ僕達は京都へ
向かう途中だから此処には居られないから」
御堂父「私は人生の中で平和な時代よりもっと
多くの大切な事を貴方達から学んだ。
あのまま貴方達が現れず、照子さんが貴方達に
私達の意見に逆らってまで助けなければ……
沖高先生が協力してくれ無ければ……
家族の絆も……いや命も無かったでしょう」
誠「……男だね御堂さん俺達も貴方に逢えて
嬉しかったですよ、人は変われるって思う事が
強く感じられたから」
クリス「……俺は仲間が友人が増えた」
御堂父「……いつか貴方達の役に立てる事があれば
必ず、必ず健と共に駆けつけます、私は今、依然の
様に権力は無いが、いつか皆の信用を取り戻し
私は……私はこの世界でも子供が平和な時代より
立派に育って行ってくれる環境を整えます」
「……それが私達大人の役目ですよね」
そう言うと泣きそうな顔を見せたくないのか
御堂父は人気の無い場所へと大きい背中を丸め
出て行った……
沖高先生「よっ此処に居たのか、今回の出来事
ご苦労だったな……皆を代表して礼を言いに来た」
「……で私からのお礼と言ってはなんだが貴方達は
京都に向かう途中だったな」
「人との出会いは人を大きくする、ことお前達は
それをその素直な心で受け止め大きく出来る人間
だと私は思う、だからちと寄り道してみんか?」
ハク「……?」
「滋賀県に私の知り合いがいるのだが中々面白い
人物でな、特にハク君、君とは気が合うだろう
そして君はこの先きっと多くの試練が待って
いるだろう、その時、彼との出会いは君の人生を
大きく左右する事となると私は思うのだよ」
「紹介状を書いておいた」
「それに其処にはお前さんの知ったる
人物もいるぞ?」
ハク「僕の事を知ってる人……」
沖高「あぁそうだ、この騒動の間、私は君を
治療する時、素性を調べさせてもらった」
「こんな時代だからね、誰も彼も助ける訳にも
いかないからな不審人物とあらば心を鬼と
しなければならない事もあるってことだよ」
「話がズレたな、その時リュックから一枚の写真を
見た、その中の1人はあの有名人だったから私も
驚いたが……まぁそれが素性の信頼性を高めたのは
間違いない」
ハク「その人物とは?誰なんですか?」
沖高「名は雪丸、格闘技界最強と言わしめた男だ」
誠「は?雪丸って……ハクお前、雪丸と知り合い
だったのか!超有名人じゃねーか!」
沖高先生「そう何故かあの侵略が起こる2年前から
格闘技界から忽然と姿を消したと言われる者だ」
「私は彼の主治医だったんだ、彼は君の事を
よく語っていたよ……面白い奴がいると」
「そして君の行動を見て理解したよ、
彼の言ってた人物は君なんだなと」
「君は会いに行くべきだろう……
君の為にもそして雪丸君の為にも」
ハクは自分の素性を知る人物に家族への情報や
自分を取り戻す為に沖高先生の紹介状を受け取った
こうして次の行く道は決まった。
しかしこの旅は此処から大きな変化と共に激動の
旅へと様相は一変する事になる……
□□相葉□□
世の中面倒臭い奴ばっかりだ依然家族で出かけた時
身体障害者用の駐車場に時間が無くて止めた時にも
うるせー奴がいた。
少しの時間じゃねぇか、停めて何が悪い、
いつだって空いてる、店の利益率にも悪い
じゃねぇか、そん時1人の男が言ったよ
いつ来るかわからないから開けとけってな
子供も嫁もいた、その目の前でだ、
引く訳にはいかないだろ?
だから言ってやったさ……「言っとけや」てな
俺は家族を守る義務がある。それには尊厳が大事だ
子供や嫁の前で無様な姿は見せれねぇ
なら奴は言った
もし俺がお前を狙わず子供や嫁を狙ったら
お前は俺を止められるのか?
攻撃する側は俺の方が恐らく先だろう、
素早くお前は実力も解らない俺を止められるのか?
お前には的は俺だけ俺には的は三つある、
弱いモノを虐げる様な行動をするお前同様、
俺が同じ行動をとるならば、
合理性をとるならどうだ?
更に俺を倒せたとしても俺も
お前の家族の誰かを倒す事は状況的に簡単だと
脅しやがったんだよ……奴は
クズだろ?大人を舐めてんだ……
そういえばリーゼント風のヤンキーだったな
「……」
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