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VS熊
覚醒
しおりを挟むクリスの持つトランシーバーから声がする
健「クリスさん!熊が……熊が
いっぱいいるって、見張りの人が……」
この集会所付近に以前に、『世界の熊博覧会』が
開催されていたらしい、そこから逃げ出した熊が
一時分散され生息していた熊達が今餌を求め此処に
集結しているという事であった……
クリス「……了解した」
クリスは2人に説明をした……
誠「悪い事は続くと言う事か……」
クリス「続きすぎだろ」
誠「……で?ハクはどう思う」
ハク「大丈夫だよ」
誠「ははっお前ならどう言うと思ってたわ」
屈託のない笑顔で笑うハクに安堵を
感じる2人だったが……
同時に事の重大さを理解していないと思える発言に
クリスは苛立ちを感じる。
そして同時にミッション失敗の責任が誠、
クリスの背中に重くのし掛かる。
だが今はハクの復帰に喜ぶ誠
誠「でも良かった!治ったのか!
……いやまだしんどいだろお前」
肩を落とす誠にクリスだった。
誠「だがスマねぇ全部片付けられなかった……」
クリス「俺もだ……偉そうな事を言っておきながら
また大切な人の事守れなかった」
「俺は……いつもいつもそうだ」
誠がクリスの肩を叩きながら言った。
誠「だが、まだ終わりじゃねぇ、ハクも来た、
そうだろ?」
クリス「……だが今更1人増えた所でどうする、
もうバイクの数も2台だ……車も残っては居るが
あの数に今更何しようが」
誠「……」
「まだ言ってんのか……」
「仕方ねぇな……クリス今から俺と勝負しろ」
クリス「は?何言ってんだ馬鹿かお前、
この状況で何言って」
言葉を全て吐き出す前に渾身の力を込めた誠の拳が
クリスの顔面に強烈なパンチが抉り込む。
誠「オラァ!」
「立て……」
「負けかどうか此処で俺と勝負してから言えや!」
地面に倒れながら誠を睨むクリス
クリス「お前日本語おかしいぞ!」
誠「言葉なんかどうでもいいんだよ……」
「俺と勝負してから答え出せや……お前の中の
自分によ、勝った負けたは自分が決めるもんだ」
クリス「……」
ジッと黙って見守るハク
クリスはハクを見て誠を見た。
頭は真っ白だった……だがそのお陰で余計な雑念は
消え去り、本当の心が見えて来る。
静かに口から出る血を拭い立つクリス
「……たくっクールじゃねーな」
クリス「答えは出ねぇ!だが見えそうなのも事実だ
その何かはわからねぇ……ここに来るまで
何度かあった……その何か……誠、お前が言う通り
その喧嘩買ってやる、そこで答え見つけさせて
もらうぜ!」
ハク「ほいっ」
ハクが2人にmp3を投げ渡した。
誠「……」
クリス「……」
その中には誠の好きな音楽が入っていた。
そしてクリスには彼が持っていた荷物の中にあった
何時も聴いているmp3だった。
ハク「聴きながらタイマンだよ2人共
音楽は人の気持ちを素直に出す、そして心の中に
ある周りに流されない本当の自分を
自分で居させてくれる」
ハク「今のクリスには必要な物だと思うよ?」
ニコリと笑うハクの空気は絶望の中に身を置く
環境だとは思わせなかった……
絶望が薄らぐ……
文章で表せば答えは同じかも知れない、
言葉で表せば答えは同じかも知れない、
強力な銃を手にした時、絶対的な力を持つ映画や
ゲームの勇者が俺を守ってくれているような……
軍隊がこの場で助けてくれる様な……
答えは同じかも知れない、だが違う
違うんだ……仲間が此処にいる安心さは
決してこの絶望の環境を覆せるとは思えない
だが、コイツらなら、そしてハクなら……
いやハクの元に集まるコイツらとなら
その為に必要な幹となるモノ……
それは言葉で納得するモノでは無かった。
そして誠を見た
彼の折れない態度と殴った拳の意味は感じた。
言葉の意味は滅茶苦茶だったが真意は理解した。
そして敢えてソレに乗れるか……今問われている事
それはハク、誠に?いやそうじゃない自分にだ
彼等は言葉では無く俺にきっかけを
与えてくれているのだと感じた。
クリス「……おいクソヤンキー」
誠は乱れた髪をかき揚げ威勢良く答える
誠「おうっ!」
クリス「お前に甘えるぜ!こうなったらとことん
付き合って貰うぜ!」
言うが早いか右ストレートが誠の顔面に打ち当たる
先程の誠の拳同等の渾身のパンチを今度は誠が
食らい吹っ飛んだ。
誠「イチチ……たく面倒くせー野郎だ、
だがそれでいい」
再び立ち上がり2人は耳にヘッドホンをさし
構え対峙した、其々の耳に、胸に其々の心を
揺さ振る音楽が流れる……
2人だけの世界、そして1人だけの世界が彼等を
包んだ。
ハク「……」
「さて……僕も僕の成すべき事をしますか」
2人を背に振り返るハクの前には
一頭の熊がジッと見ていた……
ハク「彼等には決して近づけないよ?熊さん……」
睨む熊も2人にゆっくりと牙を剥きながら近寄る
口には人かゾンビを襲った後の様に
滴る血を垂らしながら……
ハクは2人を守る様に怖れず熊と歩を
同じく前に進めた……
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