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VS熊
準備
しおりを挟む次の日も地図に書き込み戦術を練る為に調査を
行う2人
クリス「こちら側にはゾンビは多少はいるな……
誠の方角から中央の集会所を通り過ぎる様に
誘導してゾンビに獲物を持たせた廃墟で同士討ちが
理想ではあるが……」
地形や町の路地を見るクリスだったが入り組んだ
町の建物をすり抜けここの位置までの誘導は危険
だと判断した。
中央の集会所が襲われれば本末転倒だ……
頭を抱え路地の椅子に座る
辺りの景色は人が居ないゴーストタウン状態
秋風がクルクルと渦を巻き散らばるゴミが
流れとなって東に流れて行く。
クリス「野生動物相手か……力では敵わない
味方は1人、燃やすか?ガソリンでも撒いて……
駄目だ、駄目だ、実行するなら西側だ
集会所に煙がくればどんな状況になるかわからない
家事になりこの辺一帯が消防がない今、焼け野原
になる可能性も高い……燃やすなら囲いを作って」
持っている鉛筆を思わず握り折った。
「クソ駄目だガソリンの匂いはキツい、獣がそんな
上手く動いてくれるとは思えない、そして2人だ
上手くいったとしても全ての熊が罠にかかるとは
非現実的だ、その後、餌は俺等という事になる」
「弾が欲しい……俺は的を外さない、12発
熊の数だけでいい……」
「無い事を悔やんでも仕方ないアイツなら
無いなら無いで気にしないだろうな……」
「ハク……」
「アイツならどうする……」
ーー2日目夜ーー
何も収穫の無いまま地図を埋める2人
誠「……何かいい案が出たか?」
クリス「……すまない」
誠「気にすんな、考えても出ないものは仕方ねぇ」
話し合いは続く午後9時頃集会所内部が騒がしく
なった。
誠「何かあったのか?」
2人が集まる部屋に照子さんが息を切らした様子で
慌て飛び込んできた。
照子「ハァハァ……ま、また犠牲者が出たの!」
誠「何!どう言うこった!照子さん!物資は俺達が
取りに行くから一週間外に出ない様言ったよな」
照子「……若いもんが余所者に好き勝手させて
いいのか騒いでたのは知ってたけど……まさか
本当に外に出るとは思わなかったんだよ」
誠「……照子さんが悪い訳じゃねぇ、ちと人集めて
くれるか?俺が話す、これ以上犠牲者は増やしたく
ねぇ」
照子「……それはちょっと」
クリス「誠、俺らが中ではよく思われてねぇのは
知ってるな、皆の前で話したとしても反抗は
避けられないぞ、逆に気持ちが昂ってる人等は
責任を誰かに向けたい状態だ、今行くのは得策とは
思えない、照子さんの状況も考えろ!」
2人が言い合うのを自分のせいだと思い慌てる
照子さんの肩を優しく叩く誠
誠「照子さん……今だけ辛抱してくんねぇか?
俺達は必ずこの状況を打破する、いや、して見せる
誰かが犠牲になんてなる必要はねぇんだよ」
ドアの外から複数の40代位の男達が話に割ってきた
御堂「照子さん、コイツらに飯は食わしてやった」
「お前ら、今すぐ此処から立ち去ってくれ」
照子「なんて事言うんだい!病人がいるんだよ!」
御堂「その病人が問題なんだよ、薬も今や貴重な
物だ、この集会所で病気が感染したらそれでこそ
終わりなんだよ、俺達にも家族が居るんだ、
俺は父親として守らねばならないんだよ」
照子「この子達にだって親は居るさ!自分の
家族だけが助かればそれでいいんかい!アンタは」
御堂「今は熊でも精一杯なんだ!これで
インフルや風邪でも蔓延したらどーすんだよ!
外に安直に出れない今の現状じゃ物資だって
いつまで持つかわからねぇ!それを他人の
コイツらに食わせる義理はねぇ!」
照子「自分達だけが助かればいいんかい!
それこそ人は……お終いじゃろうて!」
御堂「自分達だけ?綺麗事抜かしやがって
当然だろうが!」
「ババァ口には気を付けろよ……
今までは好きにやらせてたが、法も倫理も命
あってのもんだ、ウチの子に病気が感染して
責任とれんのか?あぁあ?」
「力尽くで従わせてやってもいいんだぜ!
こっちは力自慢の5人だ、纏めて叩き出してやる」
照子「……」
椅子に座ったクリス立ち上がり、ツカツカと男達を
纏め代表する御堂に近寄る。
クリス「5人で勝てると思うのか?俺達に?
照子さんに怒鳴る様なお前ら如き俺1人で充分だ……
お前らの言う力尽くで従わせる考えなら
此方も話は早いがな」
鋭い眼光に異様な雰囲気を放つクリスに危険を
感じる御堂達に焦りが見える。
大抵は力で抑制を図るタイプは自分より強いと
感じると恐れを抱く、顔や体格、雰囲気で判断する
負けるかも、殴られるかも、恥ずかしいと
言った感情が芽生える。
御堂「ちょっと待てよ……あ、あくまでも
皆の意見だ、お、落ち着け」
クリス「……俺は落ち着いている、冷静にお前ら
一人一人を切り刻んで熊の餌にしてやる事に3分も
かからない……」
目は冷酷でロシア在住時に見せる戦場での彼の顔に
戻るクリスの肩を叩き首を横に振る誠
誠「落ち着けクリスそしてアンタらも、
その自慢の力でも熊には勝てねぇから
悩んでんだろ?」
誠「お前らの言う事も正論だろう
だが此処はもう少し我慢してくれ、アイツを此処に
今しばらくだけ置いてくれ!」
そう言うと地面に頭を擦り付け土下座で懇願する
誠だった。
弱い立場を見せる誠に御堂は自分達の優位性を
見出した彼等は、再び威勢が良くなる。
御堂「お前ら此処何日何してた?結果なにも
してねぇじゃねーか!外行って帰ってタダ飯食って
病人に俺達の大事な薬与えてるだけの穀潰し
だろーが!」
他の男達「そうだ!出て行け!俺達だって家族
守ってんだ!引く訳にはいかねぇ!」
「刺し違えてもお前らぶち殺してやる」
クリス「何だ?誠が土下座した途端コレかよ?
糞が!刺し違えるだ?実力も無ぇくせに、
仮に俺がお前達と刺し違えたとして後、
残された子供はどうなる?
お前達の言ってる事は全部、子供の為なんか
じゃねぇ!本当に大事なら、お前がその子にとって
たった1人父親なら、軽々しくこんな内輪な現状で
刺し違えるなんて軽く言うんじゃねー!
お前達の今の行動は自分への保身一点だろが!」
腰に携えたナイフを取り出そうとする手を
誠が抑え言った。
「言い訳はしねぇ……すまない、結果が出せて
ねぇのは事実だ、3日くれ!頼む!この通りだ」
クリスは誠の土下座を見て苦悩した、黙らせるのは
簡単だ、力で抑え、結果が出せれば良い話だと
しかしそれは解決したとしても後々のこの集会所
における治安統制に響くと判断した誠だろう、
照子さんの立場も含めてだった。
照子さん「私からもお願いするよ……頼みます
どうか、どうか彼等を今しばらくだけ置いてやって
おくれ……」
自分にハクに優しくしてくれた照子さんが頭を
下げて懇願する姿を見たクリスはひたすらに心が
痛んだ。
(何故!何故こんな奴らがのさばって……
何故?照子さんが頭を下げる!誠が頭を下げる!)
だが理解もしていた、クリスもゆっくりと
膝を落とし2人同様頭を深々と下げた……
「……お願いします」
御堂も3人に土下座をされ困惑する……
力尽くでと思っていた彼等も初めて近くで見た
誠とクリスの本物の強さを持つ雰囲気に負けるかも
という思いもあったからだ。
だが譲歩は最低限に抑えた、これは彼等が病気を
恐れた事もあるが、今までの優位性、子供に強き
父を見せる為、そうそれはただのプライドによる
虚勢、他ならない。
御堂「……明日までだ、明日の夜叩き出す」
照子「よ、夜って!そんな!そんなの殺すのと
変わらないじゃない!」
御堂「譲歩した、いいか明日だ」
クリス「!」
(夜だと……俺達に餌になれって宣言してるのと)
顔を真っ赤にし今にも飛びかかりそうなクリスを
手で抑制し誠が口を開いた。
誠「……わかった」
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