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evil
クリス⑤
しおりを挟む彼等の到達した地点は最深部と思われる場所だった
研究施設へと続く筈の壁が赤く塗られている事
自体が否応なしに雰囲気がおかしいとしか
表現出来なかった、
鮮血の色に赤いサイレンが回る
その色に意味はあるのだろうか……
施設内部に人の最後をまじかに接して来た彼等
でさえ身の震えが出る程だった。
空気の重さを肌で感じる、たったドア一枚で
隔てられる空間の違い、この世とあの世を繋ぐ
境界線……と言うべきなのか
エド「おい此処本当に逃げ道なのか?
嫌な予感しか、むしろそれしか無ぇ
身震いが止……止まらねぇぜ」
ラル「……ゴクン、確かにな」
ドアの窓を指差しモスは言った。
モス「おい赤いサイレンが回ってる
左の壁見てみろよ」
クリスが窓を覗く
「……」
続いてラルが窓を見た。
回転灯の赤の光が壁を照らし出す、一周回る毎に
濃淡の赤や色の違いが微妙に感じる赤が目に入る。
ラル「おい……赤の壁で解りずれぇが……
アレって血痕だ、だよな、少し色が違う所あるだろ
しかも、あの量とそれにあの塊って」
皆がドアの窓に張り付き様子を懸命に伺う
よく見ると食い散らかした様な盛り上がりのある
物体がチラホラ……
「に……肉片だよな、明かにおかしいぞ」
モス「銃痕でも無いな、なんだ?まるで獣でも
襲われて喰われた様な」
ロフエル「だが中に入るしか逃げ道ははねぇぞ、
来たみ道は既に施設兵やら得体の知れない兵に
制圧されてるだろう俺達は彼等の気付かない出口
からでるしか手はねぇんだ、出口は調査済みさ、
ほら!行くぞ」
急ぎ中に入ろうとするロフエルの肩を掴み
クリスが止める。
クリス「いや待て、中に入るのはよそう」
ロフエル「おいおい裏の有名人何怖気ついてんだ、
進しか手はねぇんだぞ」
クリス「なぜ通路に肉片が飛び散る?
それにテメェの案内は深部へと案内してる
ようにしか感じられない……」
「ロフエル何だ、どうせ罠だろ?地雷かなんかの
安心しろ地雷探知機は持ってる」
当時地雷探知機は小型化されトランシーバーの様な
小ささだった、其れを皆に見せる様に懐から出す。
クリス「……施設に地雷?」
クリスの右手が短銃を持とうとする動作をした瞬間
ロフエルが見越した様に先にモスの頭に
短銃を突きつけた。
モス「……おいおい」
「どうなってんだ?この状況」
両手を挙げ降伏の姿勢を見せるモス
ロフエル「悪いな銃を下ろせ」
突然の展開に困惑するも皆が銃を下ろす、
ロフエルが右手を挙げたと思えば近くに潜んで
いたと思われる黒い兵達が手際良く
彼等を一斉に囲んだ。
完全に包囲された。
クリス「二重スパイって事か」
ロフエル「まぁそう言う事だ」
ラル「テメェ……」
ロフエル「金が良い方に傾く、俺達は所詮金で動く
生業の者じゃねぇか?お前らとの違いは桁が違う
仕事を受けた時の双方のツテがあるか
どうかなんだよ、俺はでかいヤマがいつかくると
思って人脈を広げる為に今までボスの下で働いた
そうそれだけだ、ようやくだ命を賭けて
このチャンスをモノにしたんだ」
「より良い条件で仕事を引き受ける、
そう当然の事をしたまでだ」
クリス「……」
モス「テメェ」
ロフエル「悪く思うな、この一件が片付きゃ褒賞は
幾らだと思う?8億だ……俺達がいくら人生を賭けて
行こうがこんな大金手にするチャンス
なんかねぇんだよ」
エド「8億だと!確かに予想より規模がデカい
仕事な筈だ」
クリス「国が絡んでるのか?」
ロフエル「……それは聞かない方が身の為だ
まぁどの道お前らが此処から生きて出る事は
ないだろうがな」
黒い兵の1人が指揮官らしき一際でかい体躯を持つ
者に1人が耳打ちに声を掛ける。
黒兵「イルガ隊長、キーカードです」
カードを手にしたイルガがクリス達に向けられた
銃を納める様に指示したと思えば声をかけてきた。
イルガ「この先に我々は用がある、お前達にも
ついて来てもらう、おい」
そう言うと黒兵が銃を俺達に突きつけ
歩けと囃し立てた。
キーカードで不気味なドアを開ける、
湿度の高い空気がドアを開けた瞬間ドライアイスの
煙の様に足元に流れた。
通路は長さ10メートル程しか無く、指示のまま歩く
そして角を曲がった瞬間、思いもよらない光景が
彼等の目に映る、それはジャングルの様に木々が
生茂るまさに自然の光景であった
広さは一つの町位ありそうな広大な土地に見える。
モス「……おいおい何だこれ」
ラル「地下施設にこんな場所作って何してやがんだ
此処の施設は一体何を研究してんだ」
彼等が入った瞬間、木々がざわめき、
空がホログラムで出来ているのか鳥が飛び立った。
イルガ「見せかけだ……見た目ほどは広く無い」
クリス(鳥が上空高くは飛んではいないな、
ホログラムという訳か……
鳥の飛ぶ高さは……成る程、
高さはビル五階分ってところか)
鳥は見える情景よりも遥かに低い位置で一定の高さ
以上を飛ぶ個体はいなかった。
『ガサガサ』
時折横切る影に怯える黒兵達
イルガ「落ち着け、猿だ、
気をつけるべきはZだけだ」
クリス(z?)
黒兵「はっ申し訳ありません」
イルガ「良いかお前らは俺達が常に監視している
コレをお前に渡す」
そう言うとイヤホンの様な無線機をクリスに渡した
クリス「……何故俺に渡す?」
イルガ「無駄口は叩くな指示通りに動けばいい」
クリスは言われた通り耳に無線機を取り付けた。
その理由は一番生き残る術に長けてそうだから
であった。
イルガが手を挙げ指を2本立てた時、黒兵達が
一斉に胸に付いたボタンの様な物を押すと彼等の
周りの空間が歪み始めやがて背景と溶け込むように
身体が消えるのであった。
モス「おいおい!どうなってんだ!消えたぞ」
クリス「慌てるな、耳を済ませろ」
不可解な出来事に皆クリスの言う通り耳をすませた
すると……ほんの僅かなプロペラ音が聴こえる。
ロフエル「クリスが無線機を渡された
理由がそれだからだろ、て言うか何で味方の俺に
無線を渡さねぇんだよ、チッ……まだ信用されて
ねぇって事か、まぁいい」
モス「どう言う意味だ」
ロフエル「わからないならそれでいい」
クリス「世界がパワーアーマーを製作、完成し
各国が所持し実戦投入されている噂位は聞いた事が
あるだろう、そういう物だと思う」
「よく見てみろ、2メートル位の高さに
丸い物が宙に浮いてるだろ」
ラル「これか?」
触ろうと手を差し伸べると手は何かに当たり
ラルの手は弾かれた。
ラル「成る程ね……透明人間てとこか」
モス「アレか車のカメラみたいなものか」
そうプロジェクトマッピングを利用した物だった
上空に飛ばした各個人個人の持つ小型ドローンに
搭載された機器は車のナビに付いている駐車場を
上空からの見下ろし画面に映し出す、それを内部
機械が兵の身体に周りの景色を瞬時に解析し
動いても映像を擬態化させる様に彼等の身体を
視界から消す様に映し出す物であった。
クリス「以前これと似た奴等と戦った事がある
少し前まで電磁波をスーツの周りに張り巡らせ、
人の目から反射する光を屈折させ、見た者には
その背後が映るものだった」
「そん時は空間に歪みが出るから対処は出来たが
これは最新式だな……なぁイルガとやら、
つまりコイツらは軍の奴等だ」
イルガ「……」
ラル「くそ、俺もこんなの欲しいぜ……
女、覗き放題に銀行なんか襲い放題じゃねぇか」
モス「馬鹿か、軍事搭載だろ、国がこんな美味しい
物、民間に売らせるかよ、仮に売ったって市民が
手を出せる値段で買えるわけねーだろ」
ロフエル「確かにな」
ラル「裏切りもんが会話にはいんじゃねぇよ!」
ロフエル「さっきまで仲間だったじゃねぇか
連れねぇな、どうせ此処でる時はお前はこの世には
居ない、会話出来るだけ楽しめ」
ラル「……クソが」
(しかし上手い事コイツら出し抜いて
兵の1人の装備を奪う事が出来たら脱出も可能だな
更に其れを売っても金持ちか……いや犯罪もし放題
これは逆に大チャンスかもな)
モス(こんな装備の奴等に得体の知れねぇ施設
こんな所でくたばってたまるか、なんとか逃げる
道を探さねば)
ロフエル(これが終われば……もう少しだ、
もう少しで俺は全てから解放される貧困も劣等感も
女だって選び放題だ)
イルガ(この先はデータが少ない、最大危険区と
聞いた、この先の生贄にはお前らになってもらう
故に生き残る確率が高いクリスと言ったか
アイツにマイクを渡した)
其々の思惑が巡る……
彼等は指示に従い歩き始める、湿度の妙に高い
この部屋と言うべきか空間が時折歪む。
クリス「これはどのジャンルだ?……
ホラーだけは勘弁しろよ」
其々の思いと未知な空間が彼等の周りを不気味に
そしてゆっくりと囲み出す……
□今日のポイント□
パワーアーマー
タクティカルアサルトライトオペレータスーツ
『タロス』
現段階でもうすぐプロトタイプが完成と
言われているものだ、
銃弾を防護、動力付で重い物を運び、怪我をすれば
傷口を泡で塞ぐ機能等が搭載されている。
国によって温度差を±50まで内部の人間を守る物も
開発されつつある現代
ますます筋肉が必要なくなり身軽な物が戦闘では
重宝される時代は近い。
軍の走行車等ではパンクしても100キロは走る事が
出来るものや空想に思われるものは影でどんどん
出来ている。
ベンタブラック等、あらゆる分野が進み、人は先に
何を求めているのか……だがその最先端の殆どが
カーナビ初期の様に軍事優先とされる時代。
人は常に殺し合う事を最優先とした時代は
いつ終わりがくるのだろう、それは人の集合体で
ある国としてではなく個の人自体の成長に
委ねられているのかもしれない。
差別、暴力、野蛮な行いが常に人を支配する。
そして小さく纏まった人間が地球という規模で
測った時、まとまるのはおそらく侵略にあった
時だろう、しかしそれもまた規模に関係無く
小さなものだと思わねば人類……いや全ての生物は
殺し合いにより、自ら自滅をはかるだろう。
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