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籠城 前編
籠城②
しおりを挟む半分切れた民家に飛び込んだハク、
上部斜め残る民家二階は部屋が丸見えだった
躊躇している暇は無い、彼等『異星人』が破壊活動
を始めて終わるまで20分、ゾンビは音の激しい方へ
向かうは必然、こうやって彼等は生き残った人間の
後始末をさせているのだろう、合理的かつ狡猾な
知的戦略と言える。
唸る声が微かに耳にも届く、今のうちにと
自分に言い聞かせ、リュックからトンカチと釘を
急ぎ取り出し、破壊された壁に死角を作るべく
落ちているベニア板を数枚貼り付けた。
その時点で直ぐに第一陣となるゾンビの集団が
姿を現した、トンカチの音に引き寄せられたゾンビ
はハクのいる建物を中心に取り囲む、
ハクはリュックを抱き抱える様にベニアで囲まれた
暗い空間に身を潜める。
2階に上がる手段は持たないゾンビではあったが
先程の襲撃で生産されたと言うべきか、肉体がまだ
腐敗してない彼等『ゾンビ』の動きは早く、逃げる
決断をしなかったハクの判断は正しかった。
みるみる内に増えるゾンビは大抵が傷つき血を
流していた、夜になり辺りも急速に冷えだし、
体は震え指もまともに動かせない
急ぎ服を取る暇もない状況
そして下には蠢くゾンビの群れ
寒さに震え耐え凌ぐ時間が長く続く
時間が経つにつれゾンビの動きも緩やかにはなって
いたが密集するゾンビの方が体を温める事が
できていた、弱る体はハクの方が早く見えた。
(このままでは……)
焦る気持ちを抑えようとするが寒さの身体的苦痛が
其れを邪魔する、人間は元々、万全の態勢で思考は
より早く、適確に回るものだ……
□時間が経つにつれ状況は悪くなる□
「先ずは打開策が思い付く自分の環境を
整えるのが先だ」
震える体を身動きの取れにくい状況で温める方法
凍える手を先ずは揉み出す。
マッサージだ、血流を良くし発熱を促す
手が温まり足の裏、其れを再び冷えない様に
アグラを組む様に股間近くの太腿に着けた。
「冷たっ……」
体を無理しない程度に力を入れながら揺らして行く
一旦暖まった体温を下げぬ様、体躯座りの姿勢で
全身を丸めた。
(よし、一旦は温まった、今のうちに、体が
動く内に……)
ベニヤの隙間から様子を伺うも状況は悪いのは
変わらなかった、
(リュックからドローンを出す、唸るプロペラの
音でゾンビを引き寄せられるか?)
念には念を入れドローンに鈴を付ける
いつものゾンビおびき寄せ様のビリボ君装備の
小さな物だ。
電源を入れ、発進、上空を円を描く様に、先ずは
ゾンビにドローンを認識させる、
「駄目だ、プロペラの音も鈴の音も小さい……」
数の多いゾンビの呻き声に音は掻き消されてゆく
鈴は屋内用だ、あまり音が大きいと周りのゾンビも
引き寄せる為、持ち運びにも便利な事から小さめの
物を持ち歩いていた。
数体はドローンに気付くも、その他多勢のゾンビに
身動きが取れず、誘導作戦は失敗に終わった。
誘導は失敗したがそのままドローンを操作し
辺りの様子を見る事にしたハクは一気に上空高く
ソレを飛ばす。
「……何か」
「何かないか……」
ハクのいる場所から目で見える範囲は自分の目で
見た光景通り焼け野原が広がる。
炎は焼け焦げた燃えかすの様なものが点在する
ものの煙で一酸化炭素中毒の心配は全くなかった。
視界が遮られていたらいたで移動の可能性も視野
には入れてはいた、危険が伴うがゾンビの視界も
同時に遮るメリットもあったが其れも叶わなかった
冷えた体が冷える元となる水分を体から排出
しようと尿意を催す、ビニール袋を取り出し、
用を足した、その袋の温度は体温と同じ36度前後
漏れない様に体に抱え其れをも暖の代わりにする。
このまま時が経つのを待つのか、と不安がよぎる
風邪を引いてしまってもまた危険には変わらない
逃げる体力も無くなる。
人間も状況所詮生物、自然界のいる動物となんら
変わらない事を思い知らされる。
何も無い状況では皆赤子と同じ、弱い生き物なのだ
特に人間は道具により進化した、其れがなければ
頼った力を放棄した生物は犬や猫にも劣ると言える
リュックの中身で何か使えそうな物は……
「そうだ、カイロを作ろう」
そう濾過用にもらった活性炭がある事を思い出した
のだった、
濾過装置の一つを壊し活性炭を丁寧に取り出す、
○活性炭
○食塩水
水は飲料を持ち歩いている(当然)
塩、これも、必須アイテム人は塩分無しでは
生きられない、当然多めには持ち歩いていた。
○鉄粉
○オキシドール(ゾンビ社会だ、災害を含め
持っていて当然である)
「……鉄粉が無い」
がアルミは持っていた、其れを取り出すと
丸めボール状にした物を露出した剥き出しの
コンクリートに擦りつけ、粉にする。
鉄に限らず金属なら酸化する時には必ず発熱する
其れを利用し鉄粉の代わりにしたのだった。
塩分は濃いめにして塩と飲料水を混ぜる、
入れるものは……
封筒を使った。
酸素が多いと発熱は持続しない事からビニール袋を
取り出すと穴を少し開ける、こうする事で酸素の
供給に制限をかける事で発熱の時間を稼ぐ訳だ。
結果は見事成功、コレを体温がいち早く温めやすい
血流にのせるため、美優、鈴ちゃん時に行った様に
動脈の近くに挟む。
体感する位、体温が温まるのを感じる。
人は寒さには弱い、元々発熱機能は発達している。
発汗作用がそれだ。
寒さに関しては体温を奪わない為の先程の排泄機能
が働くと言った機能しかないのである。
あるのもを逃がさない、それだけである。
心にしてもクールな印象を受ける行動はカッコいい
かも知れない其れは普段暖かいからだと思う、常に
クールという表現が似合う行動をする事は緊迫感を
伴い、疲労、孤独、危機感を兼ね備えて出来る
ものだから……
人は暖かさを好むものだろう、寂しさに人恋しく
なったり、炬燵から出れない事や、寒い時、暖かい
風呂に入ると副交感神経に左右しリラックスを生む
これが通常とされると人は人であるべき行動や
知恵、優しさなどの余裕を持つことが出来る。
「暖かい……」
そう呟くハクは出来るだけ体温を逃がさない様に
持ち合わせていた紙をビニールに入れ服の中に
押し込んで簡易的なダウンコートを作りあげた。
手には一時のドローンを飛ばす事によって調査を
兼ねモーター熱も彼をしばし暖める物の一つ。
そして体力を温存すべく体が滑り落ちない様に
紐で縛り眠りについた……
【今日のポイント】
カイロは作れる、手に入りにくいのは活性炭だろう
緊急時には自作カイロを作る方法を覚えて損は無い
あらゆる物質がなくても物質として存在しない
知恵は出来上がったある物の物質より勝る。
使い捨てカイロの作り方
鉄粉
活性炭
オキシドール
塩
封筒
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