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籠城 前編

籠城①

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その正体はグリマンが載るバイク型の乗り物
2台の音であった。
一台は荷車の様な物が付いており一人のグリマンが
搭乗していた。

反重力の作用で動くその乗り物は、地面から本体が
浮き、段差など関係無く素早く移動する、車輪が
ある部分は地面との間に何か空気が歪んだ様に
見えた、
地球で言う三輪バイクの様な大型のマシーンは
巨大な体躯を持つグリマンを軽々しく運ぶ
乗り物であった。

色は様々だったが彼等らしい外見の美しさ
は皆無で手入れ等して居ない感じの汚れた乗り物
荒々しいその姿は世紀末に相応しい風格を
持ち合わせている……

焦るハクは素早く今いる民家の一階へ駆け下りた、
台所付近によくある床に設置された貯蔵用の
穴の蓋を開けて急ぎ中の物を出し、
入れ物である大きい箱型の型を出来るだけ
遠くへ置いた、自分の居場所を探られない為だ、
外した穴から床下に滑り込む様に潜り込んだ。

「……」

暗闇に数分、息を殺し気配も消す、静かな暗闇、
縁の下から差し込む明かりが急速に暗く沈んだ。

「……」

一見、静寂に包まれる空間
音を探るも何も聞こえては来ない、先程までした
グリマンの載るバイク型の音すらしない、

(……通り過ぎたのかな?)

当然そう思う、が仮にそうだったとしても、
この場から移動するには半日は動かない、
用心を重ねた現実が今此処に生きている証である。

そして現実はそんなに甘くは無い
暫くすると、足音が聞こえて来る……

「ドスン……ドスン」

巨躯に相応しい地響きを立てながら
距離は近い……

ビリボ君でスタンガンの特徴を活かすか……『否』
あの巨体に幾らスタンガンでも充分な作用は
望めない、

音に集中する……

人数は……

「ドスドスン」

「ドスン」

「ドスン……」

1

2

3……


三体か……

時折見る少数での狩りを兼ねたものだろう。

生き残った人から聞いた話では、こう言った
少数での行動は多々ある、が全く個別では流石に
行動は見かけないが、彼等はかなり好戦的で
あると判断していた。

わざわざ地上に降りて来る位だ、物資を奪いに来た
意外の目的は人類の根絶やし?

『否』それならば宇宙への攻撃方法を持たない
人類に対し宇宙から攻撃すれば良いだけの話

だが彼等が血を欲しがっている事も知っていた。

恐らくあの巨体、同じ系統の顔にガッチリした体躯

勿論、例外はあったが恐らく彼等はクローンだ。

血液サンプルを欲しがるのも解る、更には数々の星
を蹂躙しているかの様な素早い侵略は
見事と言うべきか……

余程慣れたと言うべきだからだ。

星々の生命体は独自の生態系を備えている筈だ。

酸素濃度が高ければ巨大な生物も生まれやすい、
細菌やウイルスと言ったものも独自の物が
有るだろう、そう言った環境に育った物を研究する
事により、更に強い生物を作ることが出来る。

彼等が地球に存在するゾンビや病原体を無視
出来るのも、そう言ったバイオ技術が特化して
進んだ文明である事は間違いない。

基本酸素は細胞にとっては毒だ、物を腐敗
させたり、劣化を引き起こす。

人類は毒の星と言ってもいいだろう、その中で
動ける事が既に其れを物語っている。

恐竜がいた頃は人間にとっては毒な酸素濃度が高く
血中に含まれる酸素濃度が濃くなるからあの巨躯の
生物が存在できたとはされているが此処地球に
於いても、その濃度をとっても環境の変化は激しい

其れを何かしら調整するマスクなしで彼等は
行動する、以前一度だけ見たカプセル状の薬みたい
なのを呑んでいた、コレは病原菌に対する予防注射
みたいなものだろうか……

地球にもUFOの存在は昔から知られていた。
過去2019年にはアメリカが認めた存在である。

地球には酸素が必要と認識はあっただろうが
無酸素で生きる生物も地球にはいる。

「……」

「◯×△◇%……」

「何やら話し声が聞こえる……しかし当然の事
ながら会話を理解する事は出来なかった。

発音自体が、空気に振動する様な不思議な声を
発していた……

言葉を発しなくなった……

足音がハクの側から霧散する様に徐々に遠くなる

身を小さく屈め辺りの様子を用心深く伺う、
恐らく破壊活動が始まる……

予想通り耳に激しい爆音が飛び込んで来た。

耳を塞ぎ体を守る様に丸くしたハクの居た側で
メキメキメキっと音を立て近くの民家が倒れたの
だろう、崩壊の音がする。

工事現場でも聞かない程のけたたましい音が
あらゆる角度から鳴り響く、体が振動で飛び跳ねる
程に……

更に不思議な音が襲う。

『ヴォン』

その音がした後コンクリート同士が滑る様な音が
聞こえてきた、コレは以前僕が持っていた
グリマンの銃、レーザー兵器だろう、その威力は
建物など真っ二つにする程の切れ味に貫通力だ。

ハクの居た床下から2メートル程離れた場所で青い
レーザーが光る。

「!」

思わず声を挙げそうになるのを手で口を押さえ込む

(僕の持っていた銃は赤だ、コレは青、レーザー
兵器にも種類があるのか……)

その青い光は切断用に思われた、線というより
幅広い、斬馬刀の様な光の帯が見えた。

更に交互で聞こえるけたたましい音

コレは銃と言うよりは大砲に近い

先に付いた鉄球の様な物は建物の壁等簡単に
吹き飛ばす威力があった。

一発、一発球を放つ物では無く、一度放ったら
鎖の様な物が巻きつけ戻る様な物だ、と言っても
鎖では無く雷をそのまま鉄球と発射台の様な大砲
とを繋ぐ様に繋がれている様に見える。

荒削り……何故かその言葉がシックリ来る様な
無機質、野蛮で粗雑な武器であった。

彼等に壁は通じない、レーザーで斬り殺されるか
貫通、もしくはその武器で壁ごと肉の塊にされる
のが必然だ。

体感は震度3位の地響きに床の天井からチリや
コンクリートが粉々になったものが頭上に
パラパラと落ちてくる、

もう身動きも出来ないーー

後は運だ、元々この世界になった時から
生きているかどうかは運による物が大きい。

地面が揺れ、建物もが崩壊する中、賢明に息を殺し
ひたすらジッとするハク

この場で彼が抵抗する武器は何も無い

人数、火力、武器、アイデア、全てを凌駕する存在
を前に赤子の様に包まる事しか出来なかった。

破壊活動は数十分にも及ぶ、

軒下迄は丁寧に破壊する事がない彼等が唯一の
生きる方法だ、逆にコレが人間ならば軒下等すぐに
発見されるだろう、その一点に賭けた。

実際、粗雑な彼等は丁寧な破壊は行わない、
力の暴走、侵略者の優位性を見せつけるかの様に
破壊した、この破壊活動を目にすれば人は世紀末を
身をもって知る事になる、正常で居られる事は
難しい、暴徒と化すのも先に未来が見えないから
だろう……
あの惨劇を免れた者であっても助かった自ら
命をたつものも多い……

誰でも思った事があるだろう、

『この世なんか一度破壊されればいい』

今がその一番近い時なのだろう
そして其れはいつ何時、来るかわからない物なのだ

音は止んだ……

静かにしているとバイク型の音が聞こえて来た、
去った様だ……

この人口500人ばかりのハクが居た町の破壊時間は
ほんの20分程たった頃だった。

そっと貯蔵庫の蓋を開けようとするが歪みが出て
上手く開かない、しかし勢い良く開ける事は危険
である、慎重に、持っていたバールを使い10分
かけてようやく外れた。

鏡を穴から出す。

光に反射しない様に角度は浅めに先ずは直ぐ手前の
辺りの様子を探った。

コンクリートが粉塵となり、空中を彷徨う
安全を確認後蓋を開けた、彼は急いでいた
理由があった。

「……なんだコレは」

20分足らずで起こった出来事、ハクの目に映った
光景は焼け野原だった……

「たった20分で町が……」

凄惨な光景だった、ついさっきまで小さいとは言え
町が存在していた、民家が立ち並んだ光景だった筈

しかし時間の余裕は無かった、危険度50だったが
勢い良く穴を出たハクは少なからず残った家を
目視で探す、全ての家は破壊されてはいたが半分に
切り裂かれ放置された民家の中でも縦で切られて
ある程度の高さのある建物

一軒目

「駄目だ、人が上がれば直ぐに倒壊しそうだ」

二軒目「アレも同じく……」

三軒目「……」

四軒目「横に切られて一階はまだマシだが
駄目だ壁がない」

五軒目「!」

「あった!地盤は崩れていない、切り方は45度
位に切り取られた2階建ての民家」

部屋は露出していた、隣の大木も切られてはいたが
視界を防ぐには、まだ葉が多少付いている。

急ぎ、近くにある材木や使えそうなゴミを集めた

「時間が無い!」

そう町には人がいた可能性が高かった、故のゾンビ
大量発生する危険性が高かったからだ。

近くの町に蠢く体が一体……そして2体……

予感通りだった……町に居た人間の数200人程の
コミュニティが存在していたのである。

そしてゾンビと化した数およそ120体であった……
その大群がハクの入る町の廃墟へと一斉に動き
始めたのであった……

































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