世紀末ゾンビ世界でスローライフ【解説付】

しおじろう

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廃墟脱出編

其々の銃口

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佐々木は心の底からハクに怒りを覚えた、激情に
駆られ殺意が湧き上がる。
ハクの行動は明かに自分の真意を読まれていた
からだ、彼は人の心を折る事に自信を持っていた。

今までそうして来た、平和な時代も、ゾンビが徘徊
する現在も人は環境が変わっても心は同じだと……

人は醜い、力は全て、今まで自分を馬鹿にしてきた
人間が、自分に平伏す姿を見た、そしてそれは
自分がやってきた事への勝つこそが正義、プライド
羞恥も、金、権力、女、友、命すら力が全てだと、
その定義が尽く壊されて行く……

ハクの存在は自分を否定する存在であると

佐々木「……俺とタイマン張れ」

時男「おい!お前マチェット持ってんじゃねーか!
そんなタイマンあんのかよ!ハクは先がもう丸く
なって突く事も出来ない槍しか持って
ねぇじゃねーか!汚ねぇぞ!」

佐々木「何が汚ねぇだ、現状の獲物使うに何が
アレが駄目だコレが駄目だってゴチャゴチャ
言ってんだ、甘ちゃんが!反吐が出る」

正人「お前人数ではもう此方が優位なのわかって
んのか?ハク、わざわざタイマン何て受ける必要
ねーぞ、皆で袋にしちまおう」

佐々木「おうおう!有利になったらソレか!強く
出たなウジ虫共」

晴がユキと美香に支えられ前に出て来た。

晴「お前が言う正人達は以前の正人達の事
だろ?もうお前の知ってる陸、時男、正人、ユキ、
美香は此処には居ねぇよ」

佐々木「はっ……笑わすなよ!」
「……人は簡単には変わらねーよ、状況が
悪くなりゃ元に戻るさ」

晴「……まだ解らないのか」

晴「簡単では無かったから今、正人達は俺を
守ってるのに気付かないのか……」

ハク「晴は正人らを成長させた、俺では出来ない事
をやってのけるのが晴だ」

晴「ハクは希望を見せてくれる、いつも」

ハク「晴は仲間を、人間を作る、いつも」

佐々木「……」
「……黙れ」
「ウゼェ……ムカつくぜイチイチ」
「所詮人は1人だろうが」

佐々木は懐から銃を取り出し銃口をハクに向ける、
そうして1人、1人に向けて引き金を引く真似をした

「ばーん!バババーン!はいこれでお終い」

佐々木「ヒャハハ!どうだ?俺がタイマン張る理由
がわかったか!タイマンをわざわざ俺様が張って
やろうってんだ!
コイツで撃てば済むのによ!ワザワザだ!感謝
される覚えはあっても説教される筋合いは
ねーんだよカスが!」

ハク「いいよタイマンで」

佐々木「これでも何も無かったかの様な面か……」
「へっへっへ、そうこなくちゃ!」

「優しいだろ?俺様は」

ハクの持つ槍の先がゾンビを刺した行動で削れ
丸くなっているのを確認し、木の素材が脆く、
叩くと折れる桐である事を確認しての
周到さであった。

マチェットを振り威嚇する佐々木

ハク「……」
無言で槍を足で折った、折れた棒は先がイビツに
裂け、先程の槍よりは長さは短いモノのマチェット
より遥かに長く、その先を佐々木に向け突き出した

佐々木「……」

切っ先は真っ直ぐに佐々木の喉元を狙う……

佐々木の喉が鳴る「ゴク……」

佐々木を無視してハクは陸に向かい叫ぶ

ハク「陸!もうゾンビは数が減ってきた、長さは
短くなるが折れば直ぐにでも武器になる」

陸「は、はい!」

ハク「桐は加工しやすいけどパイン素材でも
棒状のは折るのは簡単だから、無理しないで」

事実である、桐素材はアスファルトでも簡単に削る
事が出来る、天然のヤスリであるのだ。
桐は軽く女性でも持ち運び、投げる事も出来る。
叩けば折れるが突けば武器としての強度はある。


正人らは女性はそれを作り、
男達はそれを武器にゾンビを刺し倒して行った、
簡単に作れる槍は折れようが、構いはしない、
折れたら折れたで、その先は更に短いが更に鋭利な
槍と化けるのである。

作る暇が無ければ折れば即席武器の完成だ。

佐々木「俺は……眼中に無いってか?」
自分を無視し戦況をドンドン有利に運ぶハクに
苛立ちを隠せない、

指示が終わりハクは佐々木の方を振り返った。

睨む佐々木をよそにハクは何時もの通りボーと
周りを見渡した。

「コロン……」佐々木の喉を狙っていた槍を捨てる

そして近くに落ちている竹箒を拾うと佐々木を
見てニコリと笑う。

佐々木「……お前この後に及んでまだ俺を馬鹿に
してんのか」

ハク「君の言う強さなんて掃除道具で充分」

佐々木「……」

「切り刻んでやる……切り刻んでやる……」
下を向き独り言を呪文の様に呟く

(お前らの心、ハクが希望?この状況でか?
わざわざ槍捨てて箒持ってマチェットを持つ俺と
戦おうとしてるコイツが……
何回でも俺が心を折ってやる、コイツが消えれば
良いだけだ、勝てる訳はねぇ、もしやられても
銃がある、俺に負けはねぇ)

佐々木「やってみろ!」
叫びながらマチェットを高々と挙げハクに襲い
かかる佐々木、だがハクは竹箒で殴る様でもバット
の様に横殴る事もなく『ただ前に掃く部分』である
先を前に出した、ただそれだけだった。


佐々木の顔に向けて出された竹箒に自ら飛び込む形
となった彼の顔に無数の穂先が彼の顔に刺さり、
擦れ、無数の傷と痛みが襲う、

佐々木「ウギャァア!イテェ!イテぇぇぇぇ!」

2、3歩痛みで後退りするもプライド、怒り全てが
彼の凶暴性を高める。

マチェットを構え再び襲いかかる、振りかざした
マチェットで竹箒の無数の穂先事切り裂く様に、

しかしマチェットより遥かに長さのある竹箒に、
ハクは箒を持つ手を踏ん張る事なく脱力した、
切ろうとした先もその威力を逃され、ただ箒を揺れ
動かすだけ……そしてまた、ただ箒を前に出す、
近づく事すら出来ず無数の傷を負う佐々木、

ハクは表情一つ変えず、もう一つ落ちていた竹箒を
掴み、2本の竹箒で佐々木を軽く突いた、だが
佐々木にとっては耐え難い痛みに、しゃがみ込み
顔部分を守る様にやがてはうずくまる……

マチェットを握る手も竹箒の穂先が擦れる痛みに
耐えれず落とし、赤子の様に地面に包まる佐々木に
ハクは言った。

「……君の強さなんて箒にも劣る」

その一言に佐々木は切れた!
銃を取り出しハクの頭に向け銃口を向けた

ハク 「……はい僕の勝ち」
佐々木「……クソが」
「まぁお前の勝ちにしといてやろう、だが本当の
意味での勝ちは俺様だな、箒を捨てろ」

ハクは素直に箒を捨てた……

時男「くそ!きたねぇ!タイマンじゃねーのかよ」
ユキ「銃なんて 卑怯よ!」

佐々木「やかましい!勝てば正義なんだよ!」

「コイツは必ず殺す!」

ハクを睨見つける目が充血し真っ赤になっていた。
悪魔……そう思わせる佐々木の姿であった。

引き金に力が入る……

だが更に意外な事は起きる、

栗栖「そこ迄だ……佐々木、コイツを撃てばお前を
殺す」

佐々木「……」

栗栖「どちらにしろ、お前の負けだ、腹を見ろ」

佐々木は腹を見た、そこには普段使わないハクが
持っている銃が握られていた。

栗栖「同士討ちでもテメェの負けだ、後の残った
奴らはテメェを許さないだろう、そして今、
俺の銃もテメェを狙っている」

佐々木「お前は武装ゾンビを仕掛けた瞬間から
コイツらに成長させる機会を与えたんだよ、
ハクと晴、コイツらは人を育てる……人道に外れ
すぎたお前の誤算だ」

「やり過ぎたんだよ、それにハクと晴がこの場に
居たと言う誤算だ」

「だから俺は身を引いた」

時男「おい!じゃこのゲームとやらアイツが
首謀者て事じゃねーか!どうなってんだ」


ハクも銃を栗栖に向けた。

ハクは栗栖を栗栖は佐々木を佐々木はハクを
其々の銃口が命を脅かす。

この異様な光景に晴を含め、皆、なにも出来ずに
ただ状況を見守るしかなかった……






















































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