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廃墟脱出編
廃墟脱出
しおりを挟む陸「へぇ……力には力では無いんだ、面白い人だねハクさんて」
晴「そうだな、ほら、学校でも部活でも仕事でも、その場の雰囲
気って言うか……武道や喧嘩も力には力みたいな、普通流されて自
分の思うようにはいかないからななぁ……」
陸「そうだね殻って存在してても気づかない事の方が多いよね……
クラスでもそうだった、誰かに追従しなきゃハミ出る、自己主張は
危険、ハブられたりするのも怖いし……」
「今この世界になって前の世界と大きく変わって、あぁあの場所の
空間が全てじゃ無かった……て思ったのに、今僕はまた同じ事を繰
り返してる……環境じゃなく自分の問題なんだって、でもまだ」
晴「俺もアイツに合わなきゃ、新しい戦い方は出来なかったと思う
それなら同じ練習をしたなら練習しただけの分、上級生に勝つには
先輩が衰える年になるまで勝てないという結論しか出なかったもん
な……何年待てって話だな!ハハハ」
「それに俺がやってた武道で言ったら力だけが全てなら元々体躯の
優れた外人には勝てないと負け宣言してるもんだし」
陸「殻、破れるかな……」
晴「破れるかは自分次第だからな、だが破ろうと思えばいつでも破
れるさ、2秒後だって、破ろうとしなきゃ一生破れないさ」
深夜までかかるも着々と準備は整い、朝を迎えた。
陸と共に脱出計画の準備を進める晴、翌朝になり皆んなを集め
話しだした、一階へと降り、一度も見なかった彼等も作戦の予想が
安易に想像できた、しかし不安しか感じない……
晴「パーテーションを繋ぎ合わせた、これの後ろに皆んなで隠れて
ゾンビをやり過ごす」
正人「ドア開けるのか?」
晴「出なきゃ終わりだろ」
ユキ「……まぁそうね」
美香「ちょっと……これ大丈夫なの?こんなので……」
晴「ありあわせだったからな、不安はわかるが、どうなるか予測は
何も出来ない、だがドアを開け外に出るのが最優先だ、なに、大人
しくしてればゾンビも諦めるさ」
晴「はい!では出発の準備して、昼には作戦実行だ!」
正人「やれやれ……元気のいい事で」
文句タラタラながらも身支度を始める5人
時男「上手くいくのか?あんな薄っすいパーテーション如きで」
正人「だが彼の言う通り此処にいても結果は全滅だ、やるしか無い
よ……」
晴「あーそれと皆んな、トイレ行っトイレ」
正人「……」
時男「……」
ユキ「……」
美香「……」
緊張を和らげようとする晴の渾身のギャグに周りが凍りつく
陸「晴さん……寒い」
ギャグセンス等、欠片も持ち合わせていない晴である……
晴「……何かすまん」
長時間が予測される待機にトイレを済ませ皆がパーテーションの
後ろに隠れた。
時男「おい狭いぞ……」
美香「チョット、陸!触らないでよ!」
陸「いや……狭くて」
奥行き60センチ程しかない狭さに皆不安を隠しきれない、晴が隠
れる予定の場所にだけ穴が少し開けられ、合図と共に外に一斉に出
る算段であった、あえてパニックを恐れ彼等の所には穴を開ける事
はしなかった。
晴「いいか?開けるぞ、声を出すなよ、ただひたすらチャンスを待
つんだ」
ーー頷く一同
鉄格子のドアノブをゆっくりと回す、ドアの前にはゾンビは2体
向こうを向いている……
晴の手にも緊張の汗が滴る……
「カチ……キー……」
ゆっくりと、気付かれずスローモーションに……」
5人にも緊張が伝わる、思わず唾を飲み込む時男に皆が睨みつけた
(飲み込むのも駄目なのかよ……)
身を低く、晴も定位位置に着いた……
ゾンビ2体が入る、それに反応し、もう三体が部屋の中へと侵入
してきた、ずるずると足音が不気味に響く。
ーー屋外ーー
佐々木「おっ?やっと動きが出たぞ」
栗栖「そうだな、奴等もギリギリだろうからな」
佐々木「では試練開始だ」
佐々木はビルを跨ぎ、彼等のドアが見える位置に移動した。
栗栖「やれ」
合図と共にドア付近に小石が一斉にばら撒かれる
『パラパラ』
『コンコンコーン……』
音のない場所での、その音に敏感に反応するゾンビが集まる。
ーー廃墟 籠城ビル側ーー
晴(何だ?ビルが崩れたのか?何故小石が……マズいゾンビが集
まってくる……)
そして一つの石が彼等の居る部屋へと投げ込まれた。
ユキ「チョットなによこの小石!」
小声で喋る口を美香が慌て塞いだ。
美香「アンタ声デカイ」
ユキ「モゴモゴ……」
(アンタの声の方が大きいじゃない……)
時男「モゴモゴ」
(うわっゾンビが!大量に入って来たじゃねーか!)
蠢く異臭のゾンビは獲物が居ないか彷徨うパーテーション越しに
ゾンビの声が間近で囁く……
天井から漏れる水滴にもいちいち反応するゾンビに恐怖心が増し
てゆく。
……息が苦しい
時はこの状態のまま1時間が経過していた、時折ゾンビがパーテー
ションに持たれかかる毎に緊張の汗がでる……
人の緊張度が耐えられる時間はとうにすぎたこのまま飛び出して
しまいそうな心の葛藤が見え始めていた。
晴「……疲れて来るな、しかし、もう動く事も出来ない、こんな多
くのゾンビがこの部屋に集中するなんて……おかしい」
異変に気付くも、どうしようもない……
美香が貧血状態で倒れそうになるのを隣にいる陸が支える。
美香の顔は真っ青である……
声が出せない状況下で身振り手振りで時男に美香を一緒に支える
よう促すが、時男は視線が合いながらも見て見ぬ振りをする。
時男(……冗談じゃねぇ俺も限界なんだよ)
正人、ユキも状況がわかっていてもどうする事も出来ず、ひたすら
耐えた。
どうしたって、もう駄目だ……いや現実感が無い自分が今ゾンビの
餌になるなんて
ーー誰かが何とかしてくれるーー
頭の中に順番に感情が入れ替わる、時間が経てば経つ程希望は薄
れ、諦めが頭の中を支配して行く。
陸(重い……)
晴が陸の腕を掴み少しでも楽になるように支え、応援するも寝不
足に加え疲労が溜まった晴もかなりきつい状況に置かれていた。
徘徊するゾンビにも変化が出てきた体のエネルギーを消費しない
為の本能かゾンビも倒れ動かなくなる者も数体で始めた。
正人(おい!聞いてないぞ、今パーテーションにもたれかかってる
ゾンビ寝たのか?出ていかねーじゃんか!)
確かにそのゾンビは生きている、生きている彼等に挙動が見られ
れば即座に動き出すであろう。
ユキに限ってはモジモジと挙動がおかしくなってきていた、失禁
だった……仕方の無い状況だった緊張に壁はコンクリートの中、流
れる尿に地面から湯気がたつ……その側で横たわる先程のゾンビに
液体がかかり始めた……
暖かい温度に反応しゆっくりと体を揺らし始めたゾンビが流れる
液体に手を伸ばし探り始めるのだった。
ユキの足にゾンビの手が触れる、思わず声を挙げてしまいそうにな
るが自らの手で口を覆い堪える、小指が足に触れ、離れたかと思う
も今度は中指と小指が足に触れる……その動作一つ一つにユキの肩
が上がり覆う手に力が入っていった、抑える手が緊張のあまり震
え、力強く抑えすぎていた前歯が折れる、自分の歯が折れた事に気
付くユキ、口から暖かい血が指の隙間から流れ落ち腕を伝った。
血の匂いにも敏感なゾンビに口から流れる血を今度は更に力強く
押さえつける、その状況に時男も気付き、慌てユキの口を塞ぐ、時
男も流石にゾンビに皆の居場所がバレると確実に自分も……今まで
は想像もし得なかったゾンビの餌となる、生きたまま内臓を引き裂
かれ食われる事が現実味を帯び、その手は過剰にユキの口を鼻を塞
いでしまうのだった。
ユキ(く!……苦しい!)
踠き始めるユキを見て正人も小声で言った。
「抑えすぎだ!鼻も塞いでる!」
小声でありながらもその声反応し動かなかくなったゾンビが一斉
に立ち上がり始めた……
ーー絶体絶命の危機ーー
その言葉が皆の脳を駆け巡っていった……
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